2006年12月07日(木) 21時42分53秒

「凍りのくじら」 辻村深月 2006-160

テーマ:★読後感想:作家別【さ・た行】
講談社ノベルズ「凍りのくじら」読了しました。

これは良いです。
久々に作中の登場人物に嫌悪感をいだきました。
人の根底のようなものを見せつけられてしまいました。

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辻村 深月
凍りのくじら
出版元
講談社ノベルズ
初版刊行年月
2005/11
著者/編者
辻村深月
総評
24点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:4点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:5点 
意外性:3点 
装丁:4点

あらすじ
藤子・F・不二雄をこよなく愛する、有名カメラマンの父・芦沢光が失踪してから五年。残された病気の母と二人、毀れそうな家族をたったひとりで支えてきた高校生・理帆子の前に、思い掛けず現れた一人の青年・別所あきら。彼の優しさが孤独だった理帆子の心を少しずつ癒していくが、昔の恋人の存在によって事態は思わぬ方向へ進んでしまう…。家族と大切な人との繋がりを鋭い感性で描く“少し不思議”な物語。<<Amazonより抜粋>>


この物語には2つの読み方が楽しめると思います。
1つは通常通り、ストーリラインのままを”語り手の立場”として読む、読み方。

この読み方の場合、主人公”芦沢理帆子”の成長小説(のようなもの)となり、何となくラストは感動してみたりします。
例えば、それは、理帆子と母の物語であり、理帆子と別所あきらの物語であり、理帆子と郁也の物語であったりします。
藤子F不二雄氏の「ドラえもん」をモチーフとした展開とか、ラストの「テキオー灯」のくだりだったり、この物語自体が「S・F(少し・不思議)」だったりするのもご愛嬌だったり、それはそれで十分楽しめるものであったりします。


で、もう1つは、物語を俯瞰するように、”第3者の立場”として人間の心理のようなものを読む、読み方。
これは結果でしかないのですが、私自身は、こちらの読み方になってしまいました。
もともとこんな読み方するつもりがなかったものの、ある人物が登場(そして、活躍?)したことによって、そうなってしまった訳です。

その人物とは、「若尾大紀」。

若尾大紀は、理帆子の元彼氏という役割で登場し、1つ目の通常の読み方でもそりゃ極めて重要な人物なわけですが、この人物像そのものが、なんというか、もうダメ。
やるせないほど、ダメ。

”なんというか”とか”やるせない”を無理やりキーワードにしてみると、
・かっこは良い。
・エリート思考。(実際に頭は良い)
・自信家。
・努力しない。
・そして、うまくいかないことは、なんでも人のせいにする。
・・・

そんな「若尾大紀」のメッキが、どんどん剥がれていくさま(正しく言うと「狂っていくさま」)をまざまざと見せつけられるわけです。
これって読み手が男性か女性かによってまた違う印象があると思うんですけど、同性である私は、”こういう人って結構多いんじゃないか!!”という絶望感のようなものと、”自分も少しくらい「若尾大紀」が入っていたりはしていないか??”という恐怖感の同時に味わってしまいました。

こんなことを思い起こすに至るほどの登場人物は、(そういないな~)と思い、(読むの辛いな~)と思い、同時に、(これは凄く良い作品だな~)と思ったのでした。

そしてもう一人、変化球的なキーパーソンとして、主人公の”(主たる物語当時の)芦沢理帆子”があげられます。
この主人公も若尾並にとんでもない奴です。
彼女も相当頭が良いのに加え、世間に対して厭世的であり、協調性が必要と感じることから、それを演じつつ、実は自分以外は全員馬鹿だと思い続けるキャラクタなのですが、どうして、そんな若尾を付き合うことができたかというと、それが「同じ穴のむじな」だったりするからなのです。

表現される形は違えど、2人に共通しているのは、徹底的な自己愛によって「自分の世界」と「現実」に大きな乖離がある(自ら作り出している)という点。
この辺りの摺り合わせができないことに加えて、変に頭が良いというのが、どうしようもなさを醸し出しております。

ということで、一般的に高級とされる人間の心理にある闇をうまく表現した作品であり、一方でそれは虚構な人物像を浮き彫りにしてくれた作品だと思いました。

自分を見つめなおすには良い作品でございます。

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