「イン・ザ・プール」 奥田英朗 2006-130 | 流石奇屋~書評の間

「イン・ザ・プール」 奥田英朗 2006-130

だいぶ前に話題になって、映画とかTVとかで映像化もされている「イン・ザ・プール」読了しました。

どうしてこんな遅れたタイミングに読んでいるかというと、まさに図書館の本予約数の影響でして、図書館借り出し業界(そんな業界はありませんが)では、まだまだ人気作品だったりします。

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奥田 英朗
イン・ザ・プール
出版元
文藝春秋
初版刊行年月
2002/05
著者/編者
奥田英朗
総評
21点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:3点 
読了感:3点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:4点 
意外性:3点 
装丁:4点

あらすじ
どっちが患者なのか? トンデモ精神科医伊良部の元を訪れた悩める者たちはその稚気に驚き、呆れ…。水泳中毒、ケータイ中毒、ヘンなビョーキの人々を描いた連作短篇集。<<Amazonより抜粋>>



三人称表現の5つの中編が所収されております。
現代病と称される病を発症してしまった患者と、それを治療しようとする精神科医伊良部の物語。

「それを治療しようとする」などと書いてしまいましたが、どう考えても「治療しよう」とはしていませんね。
前言撤回します。

で、本作のおもしろさは、「作中の患者は、とても深刻でありながら、読み手から見れば、ちょっとだけユーモアのある病状そのもの」と、「それをまったく治療しようとしない伊良部の存在」と、「なんだかんだいってそれなりに病状が良好に向かうストーリライン」なのですね。

これらの物語を、あたかも漫画を読んでいるように”すんなり・あっさり”読ませてくれるのは、著者の筆致によるものと思いました。
あまりにも”すんなり・あっさり”いっちゃうので、あっという間で読めてしまうのです。

特に気に入ったのは「フレンズ」。
いわゆる携帯依存症の少年が患者なのですが、なんだかとってもリアリティーがありました。
私自身も携帯電話を持っていますけど、あれほど便利なのに不便なものもないです。
で、この微妙なニュアンスを見事に描ききっております。

周知のことですが、この「伊良部シリーズ」は、その後も続いているようですので、徐々に追いかけて行きたいと思っています。