2006年08月24日(木) 22時59分13秒

「弥勒の掌」 我孫子武丸 2006-108

テーマ:★読後感想:作家別【あ・か行】
前回○○トリックと知っていて読んでしまった「殺戮にいたる病」に続く8月の我孫子氏2作目の「弥勒の掌」読了いたしました。
いやいや、今回は物語の展開そのものに驚きました。
やっぱり前提知識がないってのは良いです。
これぞ物語の基本形である「起承転結」を地でいく作品です。
我孫子氏、良い驚きを提供してくれる作家さんと思いました。

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我孫子 武丸
弥勒の掌
出版元
文藝春秋
初版刊行年月
2005/04
著者/編者
我孫子武丸
総評
22点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:3点 
読了感:3点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:4点 
意外性:5点 
装丁:3点

あらすじ
妻を殺され汚職の疑いまでかけられた刑事。失踪した妻を捜して宗教団体に接触する高校教師。錯綜する事件、やがて驚愕の真相が…。書き下ろし。我孫子武丸スペシャル・インタヴューも収録する。<<Amazonより抜粋>>



「教師」と「刑事」の目線が交互に進み、最後は共通項となる「弥勒」目線で終了します。

「教師」の身に起こった妻の失踪事件と、「刑事」の身に起こった妻の殺害事件。
二つの事件を別々に調査した結果、導き出された共通項は、巷ではいろいろと問題を起こしている、新興宗教の「救いの御手」。
話はそこから「教師」「刑事」が協力して、「救いの御手」の真実を暴こうとします。

これだけ読むと、どうにも「仇討ち」的な、ある意味日本人好みな物語だと思われがちですが、この物語は、感情移入できない別の要素が加わっています。

それは主人公格の「教師」「刑事」が、共に「悪」であるというところ。

例えば、妻が失踪した教師は、実は教え子と浮気をしてしまったところから夫婦関係が冷めてしまった上での失踪であり、その調査動機は、失踪届けを出さなかった自分自身の疑いを晴らすためであり、例えば妻が殺害されてしまった刑事は、暴力団との癒着によって財を成し、その点において悪びれない。

一般社会に潜む「悪」であるからこそ、おおっぴらに「悪」である人間より、より姑息なキャラクターになっております。

そんな「悪」な二人が、被害者となり、加害者であるべき「救いの御手」の真実を暴こうとする構図は、応援するにも、ひっかかる何かが残り、一方でこの物語の展開を期待しちゃう要素ともなるわけです。

で、そんな期待されちゃう展開にちゃんと応えてくれています

起承転結ではなく「起承”超転”結」。

この”超転”と表現された意図は、是非読んでいただきたいところです。
要するにその物語における重要な部分・構図がひっくり返ってしまう訳です。

これには驚きました。

思えば、ミステリーと銘打っている以上、ストレートに物語が収束するわけがないわけで。
じゃ真犯人は誰?と推察すると、意外に登場人物が少なかったりするから、そりゃ思いつきそうな展開だったりするのです。
が、それは読み終わった者の負け惜しみなわけです。

「悪」な二人が被害者となっているこの物語に用意された最高のエンディングがお待ちしております。
もやもや・じりじりしながら、読み進めてみてください。

P・S
ちなみに、この本、巻末の付録が多いので、物理的な本の厚さからラストが来ることを推察すると、エライ目にあいます。
そういった意味でも驚いてしまいました。
”超転”のあとの「結(というか余韻)」がないので・・・・
読まれる方は、本のうしろから巻末が始まるところ探し出し、そこに「終了しおり」でも挟んでおいても良いでしょう。
決して前から探さないことをお祈りします。

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