2009-05-05 00:11:17
●[アメリカ経済] ストレステスト公表はストレスが溜まる
テーマ:投資指標
●ストレステスト公表はストレスが溜まる
http:// ryuzabu ro.sees aa.net/ article /117449 677.htm l
5月4日に予定していたストレステスト結果の公表が、5月7日までに延期することになりました.(CNN Money)
おそらく、自分の不甲斐ない成績に銀行らがテスト結果にクレームをだしているのでしょう.シティとバンクオブアメリカはすでに財務省と「交渉」に入っているとされていますが、悪いとされるウェルスファーゴなどにも資本注入されるかが注目です.
もともとストレステストは、最悪のシナリオを想定しても銀行が十分な資本がある(健全である)ことを証明するためのものでした.しかし、実際にテストを実施すると、事実上債務超過に陥っている銀行を健全であると証明できるはずがありません.
ハーバード教授 大手銀行は破産させるべき
シティーの国有化は近いか?
政府当局は、市場に不安を与えないよういろいろな手を使ってやりくりします..
■ 評価基準を緩めに設定して、テスト結果をよく見せる.
(著名経済学者 ストレステスト(健全性審査)は、でっち上げ、米財務省のストレステスト(健全性審査)は、でっち上げ)
■ 粉飾を可能にする会計ルールを適用し銀行の利益だす.
(シティグループ2009年1Q 合法な粉飾決算、奇妙な会計ルール モルガンスタンレーには逆効果)
■ ストレステスト公表の度重なる延期による時間稼ぎ
(米政府5月にストレステスト一部公表へ)
問題は、どんなに政府が操作しても、結局それをごまかすことができないということです.
本来、不安を取り除くためストレステストが、この政府の対応によって、市場を不安にさせている皮肉な結果となっています.
ごまかすのではなく、「落第」を公表することで、痛みをともなっても前進することが大切だと思います.
このままでは、金融危機が悲劇ではなく茶番劇になってしまいます.
●著名経済学者 ストレステスト(健全性審査)は、でっち上げ
http:// ryuzabu ro.sees aa.net/ article /117449 677.htm l
ニューヨーク大学のノリエル・ルービニ(Nouriel Roubini)教授は、財務省がおこなっているストレステストについて、現在のマクロデータは、すでにストレステスト(健全性テスト)の2009年の 「最悪シナリオ」より悪化しているので、でっち上げテストだと批判した.
ルービニ教授は、バブル絶頂期の2006年9月にIMF総会でアメリカがリセションに入ると予想.見事に今回の金融危機を「予測」した経済学者として一躍時の人になった.このルービ二氏のでっち上げテストという意味は重い.
最悪のシナリオより悪化しているという根拠は、失業率、GDP成長率、住宅価格.ルービニ氏の指摘をCalculated Riskが記事にしていた.
041309 QStressTest.jpg
(Source: Calculated Risk)
■ 失業率
2009年1Q(1月-3月期)の失業率は、8.1%で、すでにbaseline(7.8%)と「最悪シナリオ」(7.9%)を超えている.
Roubini
現在の失業率の傾向からみると、2009年末の失業率はよくて10%強、おそらく11%(平均9.8%)に達する見込み.これら2009年失業率は、ストレステストの「最悪シナリオ」よりも悪化することは間違いないだろう.
基本的に、「標準シナリオ(Baseline)」は意味をなさず、失業率では「最悪シナリオ」よりも経済は悪化の一途をたどっている.
■ GDP成長率
Roubini
現在のコンセンサスでは、2009年1Q(1月-3月期)のGDP成長率は、マイナス5%.2009年年間GDP成長率は、マイナス3.2%とほぼ「最悪 シナリオ」と一致する.しかし、最も信頼されている調査会社のGDP見込みは、「最悪シナリオ」より悪い.また、2010年のGDP成長率見込みは、2% と「標準シナリオ」と一致するが、ゴールドマンサックスは、2010年を1.2%と「標準シナリオ」の2.0%より下回る.つまり、GDP成長率見込み は、すでに「標準シナリオ」よりは外れており、「最悪シナリオ」に近い.
下の表は、ストレステスト「標準シナリオ」、「最悪シナリオ」、Kasriel見込み、ゴールドマンサックスの見込みを表にしたもの (Source: Calculated Risk)
041309 StressTestQGDP.jpg
エコノミストによるGDP成長率見込みは、若干「最悪シナリオ」より良いが、「標準シナリオ」よりはかなり悪い.
■ 住宅価格
Roubini
最近の住宅価格下落率は、2009年FDICの予想より14%高く下落.下落率は、年間ベースで「最悪シナリオ」よりも22%高い.現在の住宅価格の傾向は、「標準シナリオ」の14%よりはるかに下落し、「最悪シナリオ」の22%に近い.
住宅価格については、住宅指標のシラー係数はまだ2009年1月度のデータしかない(2ヶ月の時差))ことと、シーズンによって 価格が変動するので、注意が必要とのこと.
下の表は、シラー係数と「標準シナリオ」、「最悪シナリオ」の比較表だ.まだ1月分しかないが、ほぼ「最悪シナリオ」と一致している.(Source: Calculated Risk)
041309StressTestHousePriceJan2009.jpg
Case-Shiller Composite 10 Index, January: 158.04 (2009年1月)
Stress Test Baseline Scenario, January: 159.69 (標準シナリオ)
Stress Test More Adverse Scenario, January: 158.07 (最悪シナリオ)
Roubini結論
現在のマクロデータは、すでにストレステスト(健全性テスト)の2009年の「最悪シナリオ」(The Adverse Scenario)より悪化している.ストレステストと呼べるものではなく、でっちあげテストである.
Actual macro data for 2009 are already worse than the more adverse scenario in the stress tests. These are not stress tests but rather fudge tests
さすルービニの指摘は鋭い.結局現在のストレステストの「最悪シナリオ」が、本当の「標準シナリオ」に設定しなければならないのだろうが、これがWilliam Black教授が指摘するでっち上げなのか...
●シティグループ2009年1Q 合法な粉飾決算
先日のブログ「シティ・グループ 不可解な25億ドルの利益効果」で、25億ドルの会計利益効果について書きましたが、読者からコメントをいただきその意味が理解できたのであらためて補足説明します(DDさんありがとうございました).
シティグループの2009年1Q(1月ー3月期)の16億ドルの黒字は、会計ルール変更により赤字を黒字決算にした合法な粉飾決算みたなものでした.
粉飾決算というのは、「人為的に決算書の数字を操作(粉飾)した決算のこと」で、主に利益を過大に見せるためにおこなわれます.バランスシート(BS))の資産を増やしたり、負債を減らしたりすることで簡単に、損益計算書(PL)の利益を操作できます.
粉飾決算の基本的な3つのパターン
① 貸借対照表の資産を増やし、損益計算書の売上・利益を増やす。
② 貸借対照表の負債を減らし、損益計算書の売上・利益を増やす。
③ 貸借対照表の資産を増やし、損益計算書の費用を減らす。
Source:粉飾決算の基本パターンについて解説
たとえば、2002年に破綻した米大手通信業者ワールドコムは、通信回線費用の費用として計上すべき項目を、資産計上.ラインコストを全額ではなく減価償却費にとどめ、利益の水増しを行った.これはパターン③に当てはまります.(Source: ウェキペディア)
今回取り上げたシティグループの「不可解な25ドルの利益効果」というのは、会計ルールFAS 159(Financial Accounting Standards Board's rule 159)によるもので、バランスシートの負債額を減らし、利益を増やす、②のパターンに似ています.
会計ルール(FAS 159)は、短期負債やCDSなどすべての負債評価にかかわるルールです.どうしてこのルールがあるのか分かりませんが、負債価値がさがるとそれを利益計上できるルールです.
Source:WSJ Blog (Citigroup: Did It Really Earn $1.6 Billion? Not Really)
例)2009年1月に年利5%の1年社債100ドル(満期日:2009年12月31日)を発行
2009年1月
社債価値:100ドル
1年後返済額:105ドル
元本:100ドル
利払い:5ドル
それが3月末までに、シティグループの信用低下.市場で取引される社債が80ドルに下落します.FAS 159は、シティに20ドルの利益計上を許します.
2009年3月末
社債価値:80ドル
利益: 20ドル
9ヶ月後の返済額:105ドル
さて、社債価値が2009年末まで変化なしに終え、この社債の返済を行います.もちろん返済額は105ドルで変わりません.社債価値が80ドルに減額されているので、元本返済が80ドル、金利の支払いは、25ドル(返済額105ドル - 元本 80ドル)になります.
2009年12月末
返済額; 105ドル
元本払い: 80ドル
利払い: 25ドル
このルールの奇妙なところは、負債価値下落分を利益計上(20ドル)できるのですが、負債の返済額はかわらないので、その利益分(20ドル)は返済時に利払い(費用)として発生します.
自社が信用が落ちれば落ちるほど社債(負債)の価値は下がり、利益は上がる.しかし、将来にかかる利払い費用がその利益分増えることになり、本当の利益とはいえないのです.
今回シティがあげたこの25億ドルの利益効果というのは、将来25億ドルの利払いとして払わなければいけない奇妙な「利益」となります.
この架空利益を許すFAS 159ルールは、合法的、且つ国家ぐるみの粉飾決算に見えます.
PS1 「なぜ、このルールが認められたのか?」という疑問を考察
このルールFAS 159はよくよく考えてみると、破綻しそうな銀行にとってはとても都合のいいルールです.
「負債価値が下がる=利益」
「負債価値が上がる=損失」
という構造なので、信用が下がった銀行は損失を最小限に抑えられます.
収益性があがれば、株価もあがる.負債価値が上がって損失を出しても問題はない.
収益性が下がり、株価がさがる.社債の価値が下がり、利益をだすことができる.
大量の不良債権を抱える銀行にとっても都合のいいヘッジですが、銀行の健全性をアピールしたい政府と銀行の利害が完全に一致しますね.
★
依然として世界経済は崩壊の淵を彷徨っている。
トヨタの北米の販売台数は依然として40%減少のままで一向に回復の兆しが見えてこない。
第一四半期のGDP値はアメリカはマイナス6%超で、これは予測を大きく下回る最悪の数字であった。
株式市場はその中身で個人消費などが回復基調にあると言う点を重視し上げたが、注目すべきはそこで無かった気がおいらはする。
銀行に対して行われたストレステストの公表について今揉めている。
当初は全行問題無しで、さらに公表もしないと言うような記事が流れていたのだが、やはり批判が出たのだろう公表されることになった。
そして当初は全行問題無しだったのだが、いつの間にか、そして日々問題のあるとされる銀行として報道される数が増えている。
とにかく甘い数字ばかりが出てくるのだが、至るところで最悪を想定した数字を実際には超えてきている。
改めて言うが基本的に今回の問題は過去の不況などとは桁が違う。甘い期待と言うのは完全に捨てて、とにかく最悪の事態と予想していたものをさらに超えた最悪の事態が来るのが当然だとして行動すべきなのだ。
早ければ連休明け以降株式市場が再び崩れ出し、大手の銀行のどこかが完全に崩壊し、その根拠地である国も危機を迎えるなどして一気に金の流れが途絶えるだろう。
だが、一方で全世界規模で国家が財政出動に踏み切ったおかげで、先に一旦回復基調に乗ることもあるかも知れない。
この辺は何度も書いているが、世界から失われていく富に対して各政府が出す財政出動の額が上回れば、一時的には回復局面が先に来るだろう。下回ったり、時期が遅れたりすれば先に沈むだけだ。
日本の場合は既に輸出額が毎月3兆円以上縮小していて、銀行の損失なども合わさって、政府が出す財政出動規模では補い切れない。そのため今年度のGDP予測が3%~6%程度ものマイナスが予想されるのだ。
その点からすると日本のGDP成長率がマイナスに転じることはほぼ確定的で、これからますます悪化する。それで株価が上がるというのはとてもおかしなことだろう。
十分に注意したいところだ
http://
5月4日に予定していたストレステスト結果の公表が、5月7日までに延期することになりました.(CNN Money)
おそらく、自分の不甲斐ない成績に銀行らがテスト結果にクレームをだしているのでしょう.シティとバンクオブアメリカはすでに財務省と「交渉」に入っているとされていますが、悪いとされるウェルスファーゴなどにも資本注入されるかが注目です.
もともとストレステストは、最悪のシナリオを想定しても銀行が十分な資本がある(健全である)ことを証明するためのものでした.しかし、実際にテストを実施すると、事実上債務超過に陥っている銀行を健全であると証明できるはずがありません.
ハーバード教授 大手銀行は破産させるべき
シティーの国有化は近いか?
政府当局は、市場に不安を与えないよういろいろな手を使ってやりくりします..
■ 評価基準を緩めに設定して、テスト結果をよく見せる.
(著名経済学者 ストレステスト(健全性審査)は、でっち上げ、米財務省のストレステスト(健全性審査)は、でっち上げ)
■ 粉飾を可能にする会計ルールを適用し銀行の利益だす.
(シティグループ2009年1Q 合法な粉飾決算、奇妙な会計ルール モルガンスタンレーには逆効果)
■ ストレステスト公表の度重なる延期による時間稼ぎ
(米政府5月にストレステスト一部公表へ)
問題は、どんなに政府が操作しても、結局それをごまかすことができないということです.
本来、不安を取り除くためストレステストが、この政府の対応によって、市場を不安にさせている皮肉な結果となっています.
ごまかすのではなく、「落第」を公表することで、痛みをともなっても前進することが大切だと思います.
このままでは、金融危機が悲劇ではなく茶番劇になってしまいます.
●著名経済学者 ストレステスト(健全性審査)は、でっち上げ
http://
ニューヨーク大学のノリエル・ルービニ(Nouriel Roubini)教授は、財務省がおこなっているストレステストについて、現在のマクロデータは、すでにストレステスト(健全性テスト)の2009年の 「最悪シナリオ」より悪化しているので、でっち上げテストだと批判した.
ルービニ教授は、バブル絶頂期の2006年9月にIMF総会でアメリカがリセションに入ると予想.見事に今回の金融危機を「予測」した経済学者として一躍時の人になった.このルービ二氏のでっち上げテストという意味は重い.
最悪のシナリオより悪化しているという根拠は、失業率、GDP成長率、住宅価格.ルービニ氏の指摘をCalculated Riskが記事にしていた.
041309 QStressTest.jpg
(Source: Calculated Risk)
■ 失業率
2009年1Q(1月-3月期)の失業率は、8.1%で、すでにbaseline(7.8%)と「最悪シナリオ」(7.9%)を超えている.
Roubini
現在の失業率の傾向からみると、2009年末の失業率はよくて10%強、おそらく11%(平均9.8%)に達する見込み.これら2009年失業率は、ストレステストの「最悪シナリオ」よりも悪化することは間違いないだろう.
基本的に、「標準シナリオ(Baseline)」は意味をなさず、失業率では「最悪シナリオ」よりも経済は悪化の一途をたどっている.
■ GDP成長率
Roubini
現在のコンセンサスでは、2009年1Q(1月-3月期)のGDP成長率は、マイナス5%.2009年年間GDP成長率は、マイナス3.2%とほぼ「最悪 シナリオ」と一致する.しかし、最も信頼されている調査会社のGDP見込みは、「最悪シナリオ」より悪い.また、2010年のGDP成長率見込みは、2% と「標準シナリオ」と一致するが、ゴールドマンサックスは、2010年を1.2%と「標準シナリオ」の2.0%より下回る.つまり、GDP成長率見込み は、すでに「標準シナリオ」よりは外れており、「最悪シナリオ」に近い.
下の表は、ストレステスト「標準シナリオ」、「最悪シナリオ」、Kasriel見込み、ゴールドマンサックスの見込みを表にしたもの (Source: Calculated Risk)
041309 StressTestQGDP.jpg
エコノミストによるGDP成長率見込みは、若干「最悪シナリオ」より良いが、「標準シナリオ」よりはかなり悪い.
■ 住宅価格
Roubini
最近の住宅価格下落率は、2009年FDICの予想より14%高く下落.下落率は、年間ベースで「最悪シナリオ」よりも22%高い.現在の住宅価格の傾向は、「標準シナリオ」の14%よりはるかに下落し、「最悪シナリオ」の22%に近い.
住宅価格については、住宅指標のシラー係数はまだ2009年1月度のデータしかない(2ヶ月の時差))ことと、シーズンによって 価格が変動するので、注意が必要とのこと.
下の表は、シラー係数と「標準シナリオ」、「最悪シナリオ」の比較表だ.まだ1月分しかないが、ほぼ「最悪シナリオ」と一致している.(Source: Calculated Risk)
041309StressTestHousePriceJan2009.jpg
Case-Shiller Composite 10 Index, January: 158.04 (2009年1月)
Stress Test Baseline Scenario, January: 159.69 (標準シナリオ)
Stress Test More Adverse Scenario, January: 158.07 (最悪シナリオ)
Roubini結論
現在のマクロデータは、すでにストレステスト(健全性テスト)の2009年の「最悪シナリオ」(The Adverse Scenario)より悪化している.ストレステストと呼べるものではなく、でっちあげテストである.
Actual macro data for 2009 are already worse than the more adverse scenario in the stress tests. These are not stress tests but rather fudge tests
さすルービニの指摘は鋭い.結局現在のストレステストの「最悪シナリオ」が、本当の「標準シナリオ」に設定しなければならないのだろうが、これがWilliam Black教授が指摘するでっち上げなのか...
●シティグループ2009年1Q 合法な粉飾決算
先日のブログ「シティ・グループ 不可解な25億ドルの利益効果」で、25億ドルの会計利益効果について書きましたが、読者からコメントをいただきその意味が理解できたのであらためて補足説明します(DDさんありがとうございました).
シティグループの2009年1Q(1月ー3月期)の16億ドルの黒字は、会計ルール変更により赤字を黒字決算にした合法な粉飾決算みたなものでした.
粉飾決算というのは、「人為的に決算書の数字を操作(粉飾)した決算のこと」で、主に利益を過大に見せるためにおこなわれます.バランスシート(BS))の資産を増やしたり、負債を減らしたりすることで簡単に、損益計算書(PL)の利益を操作できます.
粉飾決算の基本的な3つのパターン
① 貸借対照表の資産を増やし、損益計算書の売上・利益を増やす。
② 貸借対照表の負債を減らし、損益計算書の売上・利益を増やす。
③ 貸借対照表の資産を増やし、損益計算書の費用を減らす。
Source:粉飾決算の基本パターンについて解説
たとえば、2002年に破綻した米大手通信業者ワールドコムは、通信回線費用の費用として計上すべき項目を、資産計上.ラインコストを全額ではなく減価償却費にとどめ、利益の水増しを行った.これはパターン③に当てはまります.(Source: ウェキペディア)
今回取り上げたシティグループの「不可解な25ドルの利益効果」というのは、会計ルールFAS 159(Financial Accounting Standards Board's rule 159)によるもので、バランスシートの負債額を減らし、利益を増やす、②のパターンに似ています.
会計ルール(FAS 159)は、短期負債やCDSなどすべての負債評価にかかわるルールです.どうしてこのルールがあるのか分かりませんが、負債価値がさがるとそれを利益計上できるルールです.
Source:WSJ Blog (Citigroup: Did It Really Earn $1.6 Billion? Not Really)
例)2009年1月に年利5%の1年社債100ドル(満期日:2009年12月31日)を発行
2009年1月
社債価値:100ドル
1年後返済額:105ドル
元本:100ドル
利払い:5ドル
それが3月末までに、シティグループの信用低下.市場で取引される社債が80ドルに下落します.FAS 159は、シティに20ドルの利益計上を許します.
2009年3月末
社債価値:80ドル
利益: 20ドル
9ヶ月後の返済額:105ドル
さて、社債価値が2009年末まで変化なしに終え、この社債の返済を行います.もちろん返済額は105ドルで変わりません.社債価値が80ドルに減額されているので、元本返済が80ドル、金利の支払いは、25ドル(返済額105ドル - 元本 80ドル)になります.
2009年12月末
返済額; 105ドル
元本払い: 80ドル
利払い: 25ドル
このルールの奇妙なところは、負債価値下落分を利益計上(20ドル)できるのですが、負債の返済額はかわらないので、その利益分(20ドル)は返済時に利払い(費用)として発生します.
自社が信用が落ちれば落ちるほど社債(負債)の価値は下がり、利益は上がる.しかし、将来にかかる利払い費用がその利益分増えることになり、本当の利益とはいえないのです.
今回シティがあげたこの25億ドルの利益効果というのは、将来25億ドルの利払いとして払わなければいけない奇妙な「利益」となります.
この架空利益を許すFAS 159ルールは、合法的、且つ国家ぐるみの粉飾決算に見えます.
PS1 「なぜ、このルールが認められたのか?」という疑問を考察
このルールFAS 159はよくよく考えてみると、破綻しそうな銀行にとってはとても都合のいいルールです.
「負債価値が下がる=利益」
「負債価値が上がる=損失」
という構造なので、信用が下がった銀行は損失を最小限に抑えられます.
収益性があがれば、株価もあがる.負債価値が上がって損失を出しても問題はない.
収益性が下がり、株価がさがる.社債の価値が下がり、利益をだすことができる.
大量の不良債権を抱える銀行にとっても都合のいいヘッジですが、銀行の健全性をアピールしたい政府と銀行の利害が完全に一致しますね.
★
依然として世界経済は崩壊の淵を彷徨っている。
トヨタの北米の販売台数は依然として40%減少のままで一向に回復の兆しが見えてこない。
第一四半期のGDP値はアメリカはマイナス6%超で、これは予測を大きく下回る最悪の数字であった。
株式市場はその中身で個人消費などが回復基調にあると言う点を重視し上げたが、注目すべきはそこで無かった気がおいらはする。
銀行に対して行われたストレステストの公表について今揉めている。
当初は全行問題無しで、さらに公表もしないと言うような記事が流れていたのだが、やはり批判が出たのだろう公表されることになった。
そして当初は全行問題無しだったのだが、いつの間にか、そして日々問題のあるとされる銀行として報道される数が増えている。
とにかく甘い数字ばかりが出てくるのだが、至るところで最悪を想定した数字を実際には超えてきている。
改めて言うが基本的に今回の問題は過去の不況などとは桁が違う。甘い期待と言うのは完全に捨てて、とにかく最悪の事態と予想していたものをさらに超えた最悪の事態が来るのが当然だとして行動すべきなのだ。
早ければ連休明け以降株式市場が再び崩れ出し、大手の銀行のどこかが完全に崩壊し、その根拠地である国も危機を迎えるなどして一気に金の流れが途絶えるだろう。
だが、一方で全世界規模で国家が財政出動に踏み切ったおかげで、先に一旦回復基調に乗ることもあるかも知れない。
この辺は何度も書いているが、世界から失われていく富に対して各政府が出す財政出動の額が上回れば、一時的には回復局面が先に来るだろう。下回ったり、時期が遅れたりすれば先に沈むだけだ。
日本の場合は既に輸出額が毎月3兆円以上縮小していて、銀行の損失なども合わさって、政府が出す財政出動規模では補い切れない。そのため今年度のGDP予測が3%~6%程度ものマイナスが予想されるのだ。
その点からすると日本のGDP成長率がマイナスに転じることはほぼ確定的で、これからますます悪化する。それで株価が上がるというのはとてもおかしなことだろう。
十分に注意したいところだ

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