1940年の日本といえば、すでに日中戦争も始まり、太平洋戦争に突入する直線の重苦しい時代というイメージを我々は持っているが、本書によると、世間はモダンで明るい時代だったとしている。
その一瞬の明るい時代の象徴として、1940年に予定されていた「テレビ放送計画」「弾丸列車」「東京万博」の3つの計画を紹介している。

こういうのを読むと、なぜあのような戦争をしてしまったのかと、なんとも残念な気持ちを強くする。

戦争経済によって景気が向上したりするケースもあるのだろう(実際、第一次世界大戦や朝鮮戦争が日本に好景気をもたらしたことは異論の無いところだろう)が、何の見通しも無いままに泥縄式で開戦してしまった愚かな戦争は、どのような説明を以ってしても正当化することはできまい。

それにしても、著者が何者かと思ったら、ホイチョイ関連の人なんですね。
言われてみれば、物事に対するアプローチの仕方がホイチョイっぽいなーと。


幻の1940年計画―太平洋戦争の前夜、“奇跡の都市”が誕生した/指南役
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保阪正康『後藤田正晴』

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昔々、リクルート事件の国会質疑で、なぜか「一杯のかけそば」という寓話が朗読されたことがある。
今の若い人はあまり知らないかもしれないが、この「一杯のかけそば」というお話は、この国会で朗読が引き金となって全国的にブレイクし、その後、作者が寸借詐欺を働いたとか、よく分からないスキャンダルとセットで、当時の我々になんともいえない記憶を刻みつけた。

で、そのブレイクの引き金となった国会での朗読の際、当時議場にいた国会議員の先生方もそのお話に心を打たれたという報道があった。
当時僕はあまり政治に明るくなかったが、コワモテで知られる後藤田正晴も涙したという報道(?)だけは妙に印象に残った。
警察官僚あがりのコワモテ政治家が大してヒネリもない物語で泣くというのは、僕にとって非常に意外なことであり、それ以来後藤田正晴という政治家が気になる存在であった。

とはいえ、その後も後藤田正晴について具体的に何かを調べたり学んだりしたわけではない。
つまり、今こうして40歳近くになるまで、僕にとっての後藤田正晴は
「警察官僚出身のコワモテ政治家だけど、意外と涙もろい」
というだけの存在であった。

本書は、たまたま書店で見かけて、上記のような記憶がよみがえってきたために読んでみた。
つまり、もうちょっとちゃんと後藤田正晴という人を知っても良いのではないかという、ただそれだけの動機である。

読んだ結果、とりあえず「意外と涙もろい」というのは本書でもたびたび登場するので、やっぱり「一杯のかけそば」でも泣いたんだろうなーということを再確認した。(「一杯のかけそば」の件は、本書には登場しないが。)


ちなみに、ご子息の正純氏は現役の衆議院議員で、女優の水野真紀のダンナでもある。
本書が執筆された当時は、政治家を志していなかった(少なくとも本書にはそのように書いてある)ようである。
ふーん。


新編 後藤田正晴―異色官僚政治家の軌跡 (中公文庫)/保阪 正康
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最近、仕事で完全に自分がボトルネックになっているのような気がして、かといって後継者をなかなか簡単には育てられないような業務だったりするので、せめて自分の業務処理能力を最大限にしたいと思って本書を購入した。

昔はよくこの手の、仕事のノウハウみたいなことを書いた本を読んだものだが、最近はあまりそういう本を読まなくなった(大したことが書いてあるわけではないので、いつまでも読み続けるようなジャンルじゃないと思う)ので、ホントに久しぶりにこういう本を手にした感じだ。

本書は、渋滞学というのを数学的観点から研究しておられる著者が、仕事の渋滞解消にも、車の渋滞解消と同じ方法論が応用できるんじゃないだろうかという仮説から出発しており、実際に著者が業務改善系プロジェクトをいくつもやっていくうちに検証された成果について、ばっくりと書かれたものである。
理論書ではなく、ノウハウ書というべきだろう。

個人的な感想としては、「言いたいことは分かるけど、ちょっとそのまま自分の仕事にはあてはめられないなー」というところである。理屈としては面白いんだけれど。
どっちかというと、著者の、車の渋滞に関する論文を読んでみたいと思った。


シゴトの渋滞、解消します! 結果がついてくる絶対法則/西成 活裕
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『ウェブはバカと暇人のもの』と論点は同じものである。

氏の持論は、「すくなくとも日本のwebに集合知などというものは無い!」ということである。

ネット業界で、いわゆるCGMに10年以上携わってきた者として、留保条件はあるにせよ氏の意見には同意である。
特に本書で指摘されているツイッター絡みの件は、まさに僕も普段からモヤモヤとしていた点である。

逆に、氏が本書で指摘しているような内容に、なぜみんな気付かないんだろうか。
それとも、気付いていながら黙殺しているのだろうか。

とはいえ、やっぱりネットの登場によって社会の在り方に変革が訪れたことは確かだと思うので、バカや暇人の力までプラスの方向に使えるような仕組みはできないものか。
これはやっぱり今のインターネットの大きな課題だろうなぁ。


ウェブを炎上させるイタい人たち-面妖なネット原理主義者の「いなし方」 (宝島社新書 307)/中川 淳一郎
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本書は「日本タイトルだけ大賞2009」の大賞に選ばれたんだそうだ。

実際僕も、タイトルだけで買った。
タイトルだけ見ると利殖系の話しかなぁと思うのだが、あまり投資がどうこうというより、もっと広く浅くお金の話を寓話的に記した本だった。

特に内容的には自分にとって目新しいものではなかったが、寓話的なアプローチが読み物としての面白さを添えており、損した気分にはならなかった。

30分ぐらいで、パラパラと読むのには非常に優れた本だと思うし、取っ付き易いタッチなので普段本を読まない人にもお勧めできる本だ。


ヘッテルとフエーテル 本当に残酷なマネー版グリム童話/マネー・ヘッタ・チャン
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読売新聞社会部『死刑』

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本書は、死刑の是非を議論するような短絡的な本ではない。

被害者、死刑囚、死刑に立ち会う人、さまざまな観点からの取材を重ね、それぞれの立場の人が何を思うのか、それを克明に描こうとしている。

僕個人は死刑が唯一の解決手段ではないと思っているが、すくなくとも、今の死刑に相当するような犯罪を犯した人が社会復帰をしてまともに社会に溶け込めるのか、ということには懐疑的である。
なので、死刑の代わりに終身刑を設けるならば死刑を廃止しても良いと思っているものの、終身刑はお金がかかるので、果たして現実的な選択なのかどうか疑問に思っている。

本書では、「終身刑」についても考えさせられる部分があった。
無期懲役囚が監獄に10年以上服役していると、シャバに出られるという希望がだんだん潰えてきて、精神状態をおかしくするというのだ。また、服役囚のことばとして、「こんなところに一生いるぐらいなら、いっそ殺してくれと思う」(正確な引用ではないです)という言葉を載せている。やはり死刑は合理的なんじゃないだろうか。

また、死刑囚が「生きて償いたい」と言っているケースも繰り返し登場する。
「生きて償いたい」と言っている彼らは、実際にどのような償いをしようとしているのだろうか。
言葉だけなら非常に真摯な態度に見えるが、人を1人ないし複数人殺したことの重大さを理解していれば、償いきれるなんて思いも及ばないのではないか。
こんな考え方をする自分は、冷酷な人間なんだろうか。

非常に気が重くなる本である。


死刑/読売新聞社会部
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オンザエッジの役員だった著者が、今度はベーシックインカムに興味を持ったようだ。
ベーシックインカムなんて、社会主義者が考えることかと思っていたが、資本主義のど真ん中にいた著者が、まさかベーシックインカムを論ずるなんて思いもしなかったので、ちょっと読んでみた。

読んでみて、やっぱり奇異な人だが、頭がよいのは間違いないなーと思った。
僕は完全に専門外なので、この中で語られているロジックに破綻がないのかどうかは全く分からないのだが、少なくとも僕には破綻した部分を見つけることができなかった。ロジックとしては。

ただ、著者がいうように、人はちゃんと合理的な選択をできる生き物なのだろうか、という疑問がまとわりつく。
やっぱりそこが、ベーシックインカムに懐疑的な人々の出発点なんだろうなと思う。


ところで、本書のユニークなところは、後半がまるまる、スリランカの小乗仏教のえらい人と著者との対談だけというところである。
あんまりベーシックインカム関係ないじゃん、と。

でも、この小乗仏教のえらい人は本も書いているようなので、ちょっと読んでみようかと思う。


働かざるもの、飢えるべからず。/小飼 弾
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舛添要一『舛添メモ』

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舛添氏自身による、厚労大臣在職期間における厚労省改革を綴った本である。

舛添氏は、厚労大臣になって、良い意味で顔が変わったなぁと思っていたが、こんだけ現場で苦労すれば、それは変わるだろうなーというのが一番の印象である。
TVタックルや朝まで生テレビに出ていたときの机上の議論ばかりをしていた頃に比べ、腹が据わっているというか、清濁併せ呑むというか、そういう円熟感がでてきたように感じる。
総理にしたい人ナンバー1に選ばれるのもむべなるかな。

ただ、まだどうも、なんとなく、根拠も無く、どことなく、信用できないような気がして仕方がない。
これはもう完全な、僕自身の感覚的な問題で、根本的に僕は人間不信な方なのでご勘弁いただきたい。


舛添メモ 厚労官僚との闘い752日/舛添 要一
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自衛隊が強いのか弱いのか、そもそも自衛隊は必要なのか、などなど、議論の尽きない日本の防衛ですが、本書は軍事アナリストとして高名な著者による、著者の持論をすっきりまとめた本である。

氏の論理展開はいつも非常にスムーズで無理が無く、少なくともスジが通っているように思える。

田島陽子がこのあいだテレビで、防衛に関してむちゃくちゃな持論を展開していたが、著者の爪の垢をありがたく賜るべきではないかと思う。


14歳からのリアル防衛論/小川 和久
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図で考えよう!というテーマの本はたくさんあるし、たくさん読んできたけど、この本は非常にコンパクトにまとまっていて、良書であると思う。

書いてあることは非常に基本的なことばかりなのだが、結局、いろんな道具を持っていても使いこなせなければ意味無いわけで、特に、日々の業務の整理をするだけなら、そんなにテクニカルなことも要らないわけである。
テクニカルな図解は、コンサルタントや広告代理店がクライアントを煙に巻くときに使えば良いのだ。

そんなわけで、20代半ばから後半の、「そろそろオレも仕事のやり方を覚えてきたかな?」などと自惚れているケツの青い若造に読んでほしいと思う。


図で考えるとすべてまとまる/村井 瑞枝
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