死後認知はできるか | 川崎市宮前区の相続・遺言・家族信託・終活の相談室 雪渕行政書士事務所

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介護離職を経験して復活した終活サポーター・行政書士の雪渕です

相続人と相続分

Q
 私は妻子ある男性と愛人関係になり、子供を産みました。その後、子供を認知してもらう間もなく彼は病気で亡くなり、遺言にも認知はありませんでした。この場合、認知してもらうにはどのようにすればよいのでしょうか。

A

 摘出でない子の認知は、父親が死亡した後でも、認知の訴えを提起して親子関係を裁判所で強制的に確定することができます。ただし、父親の死亡後3年を経過すると訴えが提起できなくなりますので、注意してください。

認知とは

 婚姻関係にない男女間に生まれた子(嫡出でない子)の場合、父との親子関係は父の認知がなければ生じません。
 いったん認知されると、この嫡出でない子は出生のときに遡って父との親子関係が発生しますから、生まれたときからの扶養義務の履行を求めることができるようになります。

強制認知

 父親が自ら進んで認知をしてくれれば良いのですが(これを任意認知といいます)、仮に父親が自ら進んで認知をしない場合でも、法は、認知の訴えを提起して強制的に認知を求める方法を認めています。これを強制認知といいます。
 この訴えは、父が死亡した後でも3年を経過するまでは提起することができますので、ご質問の場合は、この方法で認知を求めればよいのです。

認知の訴えの当事者と管轄裁判所

 認知の訴えを提起できるのは、法は「子、その直系卑属(子、孫など)、またはこれらの者の法定代理人」と定めています。
 子は、未成年者であっても意思能力があれば独自に訴えを提起できます。この意思能力としては、ご質問の場合、自分の父親との間の親子関係を求めることが理解できる能力があれば良いのです。
 判例にも、14歳の未成年が法定代理人の同意もなく、独自に認知無効の訴えを提起しうることを認めたものがあり、一般的には14~15歳が目安となるでしょう。
 また、母も、子の法定代理人として認知の訴えを提起できます。そして、判例では子に意思能力があるときにも母は子の代理人たる資格で別個に訴えを提起できるものとしています。
 訴えの相手方つまり被告となるべき者は、本来は父ですが、父の死亡後は検察官が被告となります。
 次に従来、認知の訴えは地方裁判所に管轄権がありました。しかし、平成15年に人事訴訟法が制定され、同法は平成16年4月1日から施行されました。そして、同法により、今後は、家庭裁判所が認知の訴えについて専属管轄権をもつとされました。通常は訴えを提起する者(原告)の住所地を管轄する家庭裁判所、または被告の事情を考慮して被告の住所地を管轄する
家庭裁判所となります。

訴えを提起できる期間

 この訴えは、父の生存中ならば出生後何年たってからでも提起できるのですが、父が死亡した後は、父の死亡の日から3年を経過すると訴えの定期ができなくなります。
 このように訴えを提起できる期間を制限したのは、父の死後長い年月がたってからの訴えを認めますと証拠の上からも親子関係の存否が不明確になりますし、身分関係も長期間不安定な状態におかれることになって不都合が大きいからなのです。
 したがって、この期間を経過してしまうと、死亡した父との親子関係を確定することはできなくなってしまいます。

原告の死亡とその特例

 人事訴訟法の係属中に原告が死亡したときは、その人事訴訟は、当然に終了するのが一般です。しかし、認知の訴えについては、特例が認められています。すなわち、子が認知の訴えを提起した後に死亡した場合には、その直系卑属またはその法定代理人は、父または母の死亡の日から3年を経過した後、子の死亡の日から6月以内に訴訟手続を受け継ぐことができるとしています。もっとも、直系卑属またはその法定代理人は訴訟手続を受け継ぐ義務を負うものではないので、訴訟手続を受け継がないとすることも可能です。受け継がなかったときは、訴訟は終了し、死亡した父との親子関係は成立しないという結果となります。

死後認知と相続

 認知が認められますと、出生のときから父の子であったことが確定しますので、子は死亡した父の遺産を相続人として相続できるようになります。
 ただし、このように死後認知がされない間に、すでに他の共同相続人によって遺産分割やその他の遺産の処分がなされてしまっているときに、これらの行為を全て無効にし、くつがえしてしまいますと、財産の取り戻し等複雑な問題が生じてしまいます。
 そこで、民法では、死後認知がなされる前に他の共同相続人がすでに遺産分割その他の処分をしたときは、認知を受けた者には価額による支払請求権のみを認めることにしています。


本テーマ次回記事

 「夫の死後、冷凍精子を体外受精して生まれた子は死後認知されるか」です。