ばかやろう!早く帰ってやれ・・・・・
以前勤めていた保険会社で、若い頃勤労部門にいた時のことです。
上司の部長は、とても仕事に厳しい方でした。
部下の私も毎晩遅くまで残業し、時には持ち帰って夜中に仕事をしました。
「頑張っている」事だけでは、決して評価せず、必ず結果を求められました。
人事制度の企画部門でもあったことから、良い企画ができないと
部長は、決して許そうとしてくれません。
みんなの前で、徹底的に私のプランも叩き潰される事がしばしばありました。
部長がいると、部内はいつも緊張感に包まれ、私語や冗談など、
もってのほか、という雰囲気でした。
・・・・・・
ある日のこと、妊娠中の家内から、会社に電話で緊急連絡が入りました。
最初の子供の切迫流産です。
初めての子供で、大変楽しみにしていましたので、とてもショックでした。
しかしながら、時期はちょうど春闘の真っ最中。
数年前は、労働強化に組合側がストライキを敢行するなど、
その後も、とても厳しい交渉が続いていました。
その日も、私の担当する制度改正の提案日にあたり、
労使交渉も控えていて、とても、早退するなどと言い出せる状況ではありませんでした。
資料を揃えて、交渉会場に向かおうとした時です。部長から、大声で怒鳴られました。
「ばかやろう!
何してるんだ!
奥さんが大変なんだろう?
早く帰って、そばにいてやれ。
人の気持ちの判らんやつに、組合交渉なんか任せられるか!」
日頃、プライべ-ト優先など、決して許してくれなかった部長が
直ぐに帰れと叱ってくれたのです。
・・・・・
部長は数年後、身体を壊され、若くしてお亡くなりになりました。
「仕事の鬼」と呼ばれ、会社の中枢部門を切り盛りされた
ご実績は、今も会社にたくさん残っています。
しかし、私の心の中に、一番鮮明に残っているのは
「奥さんの所に、早く帰ってやれ!」
と、叱っていただいた、部長のお心遣いでした・・・
良い仕事を完成させるには、「人間としての優しさ」が欠かせません。。。。。
井崎








