他社の取締役になってくれと頼まれたら注意すること | 労働基準法の解説ー休憩時間、労働時間、解雇、退職、残業など

他社の取締役になってくれと頼まれたら注意すること

 経営者の方の中には、取引先や関係会社から、「取締役になってくれ」と頼まれた経験のある方も多いと思います。


 こういった、会社の外部から招く取締役のことを「社外取締役」といいます。


 では、社外取締役になってくれと頼まれたときにどういう点に注意しなければならないでしょうか。


 注意しなければならないのは取締役は会社や一般消費者に対して損害賠償の責任を負担することがあるということです。


 そもそも取締役とは法律上、会社の社長(代表取締役)の仕事を監視するという役割があります。


 取締役になったのに、会社のことには無関心で、会社の代表取締役が会社や消費者、取引先に損害を与えているのを放置したというような場合は、社外取締役であっても損害賠償責任を負担します。


 たとえば、会社に資金繰りがいきづまっているのに、代表取締役が商品を取引先に発注し、納品されたとたんに会社を倒産させてしまったというような、取込詐欺の事例で、裁判所は社外取締役にも損害賠償責任を認めています。


 このように、他社の取締役になることは、仮に社外取締役であっても、予測することができないリスクをしょいこむことだということを認識しておく必要があります。


 たとえば、銀行に対し粉飾決算して融資を取り付けた場合や、問題のある商品を消費者向けに販売して会社のブランド価値を傷つけたような場合は、社外取締役も損害賠償責任を問われる可能性があります。


 どうしても、「取締役になってくれ」といわれて、断れない場合、いわゆる「責任限定契約」という契約をしておかれることをおすすめします。


 これは、社外取締役になる人がその会社との間で契約を結んで、自分が会社に対して負担するかもしれない損害賠償責任について、自身が受け取る役員報酬の2年分の範囲に限定することができる契約のことをいいます。


 ただし、この契約も社外取締役の会社に対する責任を限定するだけで、第三者に対しては有効ではありません。


 他社の取締役になることを頼まれた場合は、軽々しく引き受けてあとでとんでもない負担を負うことにならないように十分にリスク分析をしておく必要があるでしょう。

 

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