ソフトウェア開発のリプレックス(東京都渋谷区)は10月29日、相手のメールアドレスやTwitterアカウントを知っていれば、住所や本名を知らなくても年賀状を送れるサービス「ウェブポ」をスタートした。

 日本郵政グループの郵便事業会社と連携し、Webブラウザ上の操作だけでお年玉付き年賀はがきを届けるサービス。「ミクシィ年賀状」と似たサービスだが、外部サービスと連携し、同社が個人情報に直接アクセスできない仕様にした。

●メアド分かればOK TwitterやGmailとAPI連携

 相手の住所が分かっていれば、直接入力して年賀状を届けることができ、分からなければ、メールやTwitterのダイレクトメッセージを通じ、相手に送り先住所を入力してもらうことになる。

 送信相手は、メールアドレスを直接入力したり、Outlookなど連携しているメーラーから取り込んで選ぶことが可能だ。GmailとはAPIで連携。ID、パスワードでログインすれば、アドレス帳データから送信相手を選べる。TwitterアカウントともAPI(OAuth)で連携。Twitterにログインし、お互いにフォローしている相手から、ダイレクトメッセージ送信先を選べる。

 選べるデザインテンプレートは110~120種類で、標準価格は128円。スポンサー広告の入った48円のテンプレート、東京タワーのキャラクター「のっぽん」や、「エグザムライ」をあしらったもの、180円のプレミアムテンプレートも用意した。

 テンプレートを選び、メッセージやレイアウト、写真などを添えて年賀状を完成させる。差出人の欄には住所、名前に加え、メールアドレス、Skypeアカウント、Twitterアカウントを入力可能。住所を非表示にすることも可能だ。

 受け取り手には「○○さんからの年賀状を預かっています」という内容の告知がメールやTwitterのダイレクトメールなどで届く。受け取りOKの場合は、告知に表示されたURLをクリックし、住所と氏名を入力すれば、その住所に年賀状が届く仕組み。住所入力などの受け取り作業は、携帯電話からも可能。入力した住所など個人情報は、送り手には伝わらない。

 印刷は、富士フイルムのオンデマンド印刷システムを活用。GMOペイメントゲートウェイのインフラで決済する。

●Amazon EC2活用 「日本で最初のクラウド上の大規模サービス」

 年賀状発送というプライベートに関わるサービスながら、住所や氏名など個人情報を運営者側が一切検索できないようにしたのが特徴。情報を二重に暗号化する同社独自のシステム「SecuTect」を活用した。

 SecuTectは、復号化のための鍵を2本用意した銀行の貸金庫のようなシステム。同社システム内でデータを暗号化した上で、データの送り先となる外部委託事業者でもデータを暗号化する。同社と外部委託事業者で暗号鍵を1本ずつ持つため、単体では複合化できない仕様だ。

 ウェブポの場合は外部委託はしていないため、暗号鍵の1本を同社が、もう1本を弁護士が持つ。年賀状印刷用の住所・氏名データを同社から富士フイルムに送信する時のみ、データを復号化する。

 APIを活用し、さまざなネットサービスと連携できるのもポイントだ。GmailやTwitterだけでなく、APIを公開しているSNSやメッセンジャーとの連携も可能で、「1社だけで運営しているmixi年賀状は少し違う」(直野社長)

 日本郵政の年賀状サイト「郵便年賀.jp」にリンクを張って集客する。データベースサーバには、Amazonのクラウドサービス「EC2」を活用。個人情報やデザインテンプレートのデータベースなどを管理している。

 「年賀状は一定の時期にピークが殺到する可能性がある。ピークに対応できるサーバを自分たちで用意することは難しい」ためで、「間違いなく日本で最初のクラウド上の大規模サービス」と話す。

 同社は、mixiのIDや複数の電子メールアドレス、携帯電話番号、携帯メールアドレスなどを管理できるソーシャルアドレス帳ツール「Ripplex」などを提供している。「いろんなサービスに散らばっている友人のアカウントなどをつなげ、まとめて管理したい」――そんな課題を解決するサービスを構築してきた同社にとって、“巨大なソーシャルグラフ”である年賀状サービス開発は、自然な発想だったという。