ブログ・ザ・不易流行

自分のための言葉を見つける旅


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 先日久しぶりに伊勢神宮に参詣した。江戸時代などには、一生に一度はお伊勢参りすることが庶民の憧れであったというが、これだけ交通網が発達して簡単に行ける時代になっても、やはり神宮に詣でる前には少し身構える気持ちが起こる。思いおこせば、小学校の修学旅行の行き先は伊勢であった。伊勢神宮や二見ヶ浦の夫婦岩を回った後、ミキモトパールアイランドなどにも行ったと記憶している。今でも神戸市の小学校の修学旅行の行き先は伊勢志摩が主流なのだろうか。やはり日本人として、伊勢神宮に詣でることは、大げさに言えばひとつの必修科目のようなものと見なされているのかもしれない。
 
 先日はまず外宮に詣でてから内宮に参詣した。この順序が正しいものとされている。外宮付近と内宮界隈の混み具合がかなり違ったので、内宮のみの参詣者も多いのであろう。けれども、時間に余裕があれば、やはり外宮からお参りしたほうがいいと思う。今回自分が二つともお参りできたから自慢するのではないが、正式のルートをきちんと踏まえることでわかってくることもある。
 
 さて、平成25年に「式年遷宮」を終えた伊勢神宮であるが、私は、ここにみられる「常若(とこわか)の思想」というものが、非常に深い意味を持っているのではないかという気がしている。神宮司庁広報室長の河合真如氏が、『常若の思想―伊勢神宮と日本人』という本で、ギリシアのパルテノン神殿と比較して述べておられるが、石造りで耐久性があるはずのパルテノン神殿が廃墟となり、木でできた神宮がそうでないのは、もちろん20年に一度神殿を新造するという式年遷宮による。伝統的な形体を維持しながらも常に新しく若々しい姿にリニューアルされていくというあり方、言い換えれば「古くて新しい」という逆説(パラドックス)を孕みながら永遠性を獲得していくという哲学、それが常若の思想である。
 
 こういった思想は、このブログのネーミングにも使っているが、俳聖松尾芭蕉の唱えた「不易流行」という考え方にもつながる。芭蕉によれば、いつまでも変化しない普遍的なもの(不易)の中に、その時々に応じて絶えず変化していくもの(流行)を取り入れていくことこそが、蕉風俳諧の目指す理念であるという。ここで気をつけなければならないのは、「不易流行」というのは、「不易」も「流行」もどちらも大事だ、といったような単純な教えではないということである。むしろ両者は本質的に対立するものではなく、真に「流行」を得ればおのずから「不易」を生じるはずだし、また真に「不易」に徹するところには、そのまま「流行」を生ずるものだと考えられているのである。つまり「不易=流行」なわけで、両者が止揚(アウフヘーベン)しつつ結合するところに、真の意味での創造性がある。そしてこれは、何も俳諧だけでなくて、諸事一般にも通じるものであろう。
 
 ここで、「不易」という言葉を「常住」、「流行」という言葉を「無常」と言い換えてもいい。「無常」の中に「常住」を見ようとしたのが、あるいは法華経をはじめとする大乗仏教思想であるといってもよいだろう。法華経の如来寿量品第十六において釈迦は、自分は35歳で悟りを開き、80歳で入滅した歴史的存在なのではなく、実は永遠の過去から仏(悟りを開いた者)となっていたところの存在、「久遠実成(くおんじつじょう)」の仏であったのだと宣告した。釈迦として誕生して悟りを開くという一連の姿を敢えて示したのは、衆生に仏の教えに触れることはいつでもできると慢心させずに、自ら仏道を求める心を起こさせるためであったのだと。無常と見えるのは仮の相であって、永遠の相こそが如来の本来の姿なのであるという意味だ。すなわち「無常=常住」というパラドクシカルな思想がここにも見られるのである。
 
 われわれが無常を永遠にするのは、いつまでも風化しないものを夢見て、堅牢な大理石の建造物を打ち立てることによってではない。そのようなバベルの塔は幻想でしかない。そうではなくて、「無常」を積み重ね繰り返すこと、風化の早い木造の神殿をもって20年ごとに「式年遷宮」すること、同じ様式(同じ精神と言い換えてもよい)をひたすら反復することによってしかありえない。あるいはキルケゴールの言うところの「反復」、ニーチェの唱えた「永劫回帰」なども、そのような消息と通底する思想だったのではなかろうか。
 
  周知のごとく人間の体は、一日で多くの細胞が死んで、また多くの細胞が生まれている。分子生物学者によると、6ヶ月で完全にすべての細胞が入れ替わってしまうという。そのように考えれば、我々はそのモード(様式)は継続させつつも、6ヶ月前の自分とはまったくの別物ということだ。したがって「常若の思想」は、珍しくも何ともない、実は我々にとって本質的なあり方であったのだ。私たちはそういった自分の本来的なあり方をもう一度確認し、絶えずリニューアルすることを恐れないことが大事であるということであろう。

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