ブログ・ザ・不易流行

自分のための言葉を見つける旅


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 ヘンなことを聞くようだが、元日に皆さんはお風呂に入っただろうか。私は子どもの頃正月は祖父母の家で過ごすことが多かったのだが、祖母から「元日はお風呂を沸かさないからね」といつも言われていた。私は「何でだろう、入りたいのにな」と不思議に思いながらも、それに従うしかなかった。大人になった今はそんなことは忘れてしまっていたし、周りに異を唱える者もいないので、元日からゆっくりと湯船につかっていたが、先日ふとそのことを思い出したのである。そういえば、他にも正月には日常とは違う風習がある。例えば、松の内(1月7日)までは洗わずに同じ箸を使う、というものである。ここで箸とは、両端が同じ形になっている正月用の「祝い箸」のことなのであるが、これなども何故なのか理由がはっきりしなかった。
 
 ここで問うてみたいのだが、そもそも正月はなぜめでたいのであろうか。暦の上で新しい年が始まり、改まった気持ちになるから、というだけでなはいのである。一言で言えば、正月は歳神様が家にやって来られるからおめでたいのだ。だから、来られた神様を流してしまってはいけないので、元日の風呂や水仕事は避けるべきなのである。また、両端が同じ形になっている祝い箸は、一方は神様が使うためにある。従って、箸を洗うのは失礼であるとされる。また、大掃除は年内中に終わらせなければならないのも、元日に掃除をすると、わざわざやってきた福の神を掃き出すことになってしまうためなのだ。歳神様とは、新年のはじめに訪れ、その家に幸福と五穀豊穣をもたらす神様のことである。その神様を迎える準備として、大掃除が行われるのである。正月に門松やしめ飾り、鏡餅を飾ったりするのも、すべて歳神様を心から歓迎するための準備である。
 
 今の若い人たちに、正月は正月の神様が家に来られているのだという意識で過ごしている人がいったいどれほどいるであろうか。いや、若い人たちだけではあるまい。自分も含めて多くの日本人が、そういったある意味で厳かな気持ちを失いかけているのではないだろうか。
そしてこういった傾向は、お正月だけではない。クリスマスがキリストの降誕を祝う祭であるということは知っていても、クリスチャンでもないのにそういったことに思いを馳せる日本人はあまりいないだろうし、ハロウィンの仮装騒ぎに至っては、なぜそのようなことをするのかほとんど理解せずに「トリック・オア・トリート」とか言って浮かれているだけのような気がする。
 
 もちろん私は、そうしたイベントで盛り上がることが良くないと言っているのではない。だが、もうちょっとそうした日のオリジンのようなものに思いを寄せて、少しだけでも敬虔な気持ちになったほうがいいような気がするのである。
 
 さて、少し言わずもがなのようなことを書いたが、やはり新しい年を迎えるということは、めでたく清々しい気持ちがするものである。だが一方で、年が改まったからといって、さほど昨年までと生活が変わるわけでもない。
 
 去年(こぞ)今年(ことし)貫く棒の如きもの(高浜虚子)
 
 大晦日を去年といい元旦を今年という、そんな時節目のようなの流れの中にあっても、それを貫いているものは変わらない、というのである。それはいわば棒のように変哲もなくまっすぐで、年が改まったからといってがらりと変わるようなものではない。個人の実生活のリアリティは、あくまでそうしたものである。もう一つ、リアリティという面で言えば、次のような歌も思い浮かぶ。   
 
 門(かど)松(まつ)は冥土の旅の一里塚めでたくもありめでたくもなし(一休宗純)
 
 「一休さん」として親しまれている一休禅師の狂歌であるが、彼の実像は、アニメ『一休さん』に見られるような、単なるとんちのきいた愉快な人物ではなかった。悟りを求めるあまり時に酒肆婬坊(しゅしいんぼう)の巷(ちまた)に遊び、あえて破戒の行に身を浸したアナーキストであり、激しい気性と求道心を備えたリアリストでもあった。この歌の意は、正月のめでたい門松も、それを立てるたびに年を重ねるのであるから、実は次第に死に近づく標示でもあるのだということである。ちょっとひねくれた歌だが、仏教者としての一休禅師らしい皮肉に富んでいる。彼は骸骨を竹の先に付け、みんなが「おめでとうございます」と挨拶を交わし合っている正月の巷を歩き回ったという。
 
 けれどもやはり私としては、この歌で本文を締めくくりたい。
 
 新(あらた)しき年の初めの初春の今日降る雪のいや重(し)け吉事(よごと)(大伴家持)   
  (新しい年の初めの新春の今日降る雪が積もり重なるように、ますます積もり重なれ、良い事が。)
 
  この歌は『万葉集』の最後を飾る有名な歌で、新春を寿ぐ気持ちと、新しい年が良い年でありますようにとの祈りが込められている。何度も声に出して詠んでみて欲しい。新しい年を迎えた喜びがなんとなく湧き上がって来ないだろうか。当時は新年に降る雪は縁起の良いものとされていた。先日のセンター入試の日の朝に少しの雪がちらついていたように、受験生諸君の上にも栄冠が積もることを願っている。
 
 
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