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テーマ:懐かしい本 桜餅
2005年09月21日

ロッタちゃんのひっこし

ロッタちゃんのひっこし
ある日ロッタは、ヨナスとマリヤがバムセ(ぬいぐるみ)をいじめている夢をみて朝から機嫌がわるくて、ロッタのママにきなさいと言われたセーターをずたずたにはさみできってしまいます。
 その日ロッタはおとなりのベルイおばさんの物置にひっこします。ロッタの引っ越しは1日もたたなかったのですが満足したみたいです。
 ちいさいときによんだらロッタってわがままだなとおもったけど、今よんでみるとかわいい。
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2005年09月13日

遺失物管理所

ジークフリート・レンツ, 松永 美穂
新潮クレスト・ブックス 遺失物管理所
新潮社 2005.

 生きている鳥の入った鳥かご、婚約指輪、大道芸人のナイフ、現金の縫い込まれた人形・・・人はどうしてこんなものを忘れたりできるのだろう。

 鉄道会社の遺失物管理所に配置換えになった青年のお話。
 鉄道会社の花形の仕事はやはり列車の運行だから、遺失物管理所は少々うらぶれた職場だと思われている。同僚たちも、会社の上層部に伯父のいるヘンリーがずっと続けるにふさわしい職場だとは思っていなかった。ヘンリーの家族もこの配置換えを歓迎しているとは言い難い。お給料も減ったようだ。

 でも、ヘンリーはこの職場が楽しくて仕方ないのだった。
 まず、自分が人の役に立っていると思うことができる。車掌をしていたときには、自分には文句を言う権利があると思い込んでいるお客たちを相手にしなければならなかった。ここでは、意気消沈してやってきた落とし主になくし物を引き合わせてあげられたとき、彼らの顔が輝くのを見ることができる。
 それに、同僚も気持ちのよい人間ばかりだ。(欲のないヘンリーも同僚たちも、遺失物が縁でできた友達も、描かれている主要な人たちはみな善良で、今の世の中、この人たちそのものが遺失物のよう。)
 そして、いろいろな遺失物はまるで人生の珍品陳列棚のようだ。ヘンリーは落とし主であることを証明してもらうため、大道芸人にその場でナイフ投げをさせたり、稽古中の台本を落とした女優に台詞を言わせたり・・・。大事なものをなくして困る人がいる一方、物と一緒に辛い思い出を忘れてしまおうとする人もいる。身なりのいい男がスーツケースをホームに置き去りにし、手渡されても受け取ろうとしない。中には「危険、きつい、汚い」を思わせる、ぼろぼろの作業服が入っていた。

 と書くと、時代から取り残されたような遺失物管理所の中だけの話のように聞こえるけれど、そうじゃない。悪意の代表みたいに、ヘンリーのアパートのあたりを徘徊する暴走族も登場し、ヘンリーや住民たちの反応の変化がパワフルに描かれている。
 最初は何もしなかった。ヘンリー以外のホッケーチームの仲間がたびたび武力で対抗しているらしく、ヘンリーは自分が襲われても警察にも届けなかった。そのうち、「彼らを理解しなくては」と言っていた純粋な外国人の友達が彼らに襲われ、ショックを受けて国に帰ってしまった。ある日、郵便配達夫が襲われ、身を呈して郵便を守っている姿を見たヘンリーはホッケースティックを手に加勢したのだが多勢に無勢。そのとき、いろいろな方向からたくさんの男たちが、まるで何かに駆り立てられているように続々と集まってきた・・。

 最後に、会社で昇進を持ちかけられても人を管理するより今の仕事が好きだから、と断ってしまうあたりがまた欲がないヘンリー。お姉さんからの借金もあるようだし、家族をもってもこのままというわけにはいかないかもしれない。でも、自分に満足して楽しく生きられるんだから、こんな人は生涯仕合せだ。
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2005年08月22日

時の旅人



アリソン アトリー, Alison Uttley, 松野 正子

時の旅人


あらすじ

 病気療養のため、母方の古い農場に預けられたペネロピーは、ふとしたことから16世紀の荘園に迷い込んでしまった。そこには、思いやりの深い領主の一族と彼らを慕う情の厚い人びとの素朴な暮らしがあった。自由自在にはいかないものの二つの時代を行き来するペネロピーは、やがて、過去の荘園の人びともろとも、ある政治的な計略に巻き込まれていく・・・。



<芋ようかん>

 古のサッカーズの農場は、ペネロピーの見た夢のように受け取ることもできるように書いてあるのですが、この話は、ただの夢だったといって読者をがっかりさせません。ペネロピーはその夢や空想の中で真剣に生き、成長してきたわけですし、この後も、一生胸の痛くなるような大切な記憶として抱えていくに違いないのですから。



 ペネロピーののぞいたエリザベス一世治世下のイギリスの片田舎の生活は素朴で美しいものでした。せっかちな現代人には耐えられそうにないけれど、屋敷の人びとは薬草を摘み、パン種を膨らませる間に薪でオーブンを暖め、四季折々の行事をゆっくりと準備しています。若い領主は幽閉されたメアリ・スチュアートの身を案じ、その領主を奥方が気遣い、従姉妹は裏切り者がいないかと探りを入れペネロピーを呪い殺そうとし、愛情も嫉妬も奥深く激しいものがあります。夜は真っ暗になる暮らしの中では、人は想いを深くし、混乱していれば迷信に走るのかもしれません。

 ペネロピーが過去へと旅する入口のサッカーズ農場は、昔ながらの暮らしを残している美しい自然に囲まれたところです。旅の仕方は、ペネロピーが過去へと一息に移動するのではなく、この農場のどちらの時代の人がいてもおかしくない情景の中で、霧のような過去の人物が通り過ぎたり、声が聞こえたりして、だんだんはっきり見えるようになり、現在はとけるようになくなっていくような穏やかなものです。古い建物ならではですね。



 そして、桜餅より少しだけ大きいペネロピーのいろいろな気持ちに、ああ、女の子だなあ、と思ったり。お姉さんに空想家といわれるとムキになるところはよくわかるし、「世界中の誰とも恋したりしない」と宣言しながら切ない思いを噛み締めているところなんて、痛々しい。おばさんの「だれでもみんな、そういうよ」っていう反応もいい。



 伏せていることが多くてうまくまとまりませんが、読んでよかったです♪



 歴史などの予備知識がなくても注がついているので話はわかりますが、知識があったほうがより楽しめると思います。
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2005年08月19日

短い書評 そらいろのたね おおきなかぶ

そらいろのたね
ゆうじがきつねと、そらいろのたねと飛行機を交換してそらいろのたねからうちが生えてくる話。そのあとたくさんの動物たちがはいってくるが、最後にきつねがきて、ゆうじの飛行機と交換して、きつねがおおいばりでみんなをおいだし、自分一人で家の中にいたら家がおおきくなって、お日様にぶつかる!とおもったら、家はきえてしまった。
おおきなかぶ
おじいさんがかぶを植えて、とてもおおきなかぶになって、みんなでぬく話。おじいさん、おばあさん、まご、いぬ、ねこ、ねずみでやっとぬけた。
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2005年08月14日

ジーヴズの事件簿

P.G.ウッドハウス, 岩永 正勝, 小山 太一
ジーヴズの事件簿 P・G・ウッドハウス選集1
P.G. Wodehouse(1881-1975)

<芋ようかん>
 これは本当におもしろい本でした。登場人物たちのイメージが本から活き活きと立ち上がり、途中で子どもが割り込んでこようが、蒸し暑かろうが、壊されることはありませんでした。今はもういそうもない人たちを描いているのに、くすくす笑ってばかりでした。
 総領の甚六というか気のいい粗忽者の若主人バーティと、機略と手際をモットーとする天才執事ジーヴズのコンビを描いた短編集です。(この本は、ウッドハウス氏の書いたこのコンビの短編のうち22篇を、明らかに続き物となっているものは一つの話の章としてまとめ、13の話として並べてあります。でも、全体としては話はつながっているので長編小説のようでもありました。)

 ジーヴズの解決する「事件」とは、主人バーティの抱える親せきの問題だったり、お馬鹿で愛すべき幼なじみの恋愛事件だったりと、当事者にとっては大問題、だけど読者は高みの見物。

 静かな生活を好むバーティのような昔の上流階級の青年の悩みって、どんなものだろうと思って読んでいると、世話好きで強引なアガサ叔母さんがすすめてくる縁談や就職話だったり、叔母さんに押し付けられた、短期間、親族の一人がショービジネスの世界に首を突っ込まないよう監督する役目。それに、女と見れば夢中になるお馬鹿で愛すべき親友を助け、彼のおじさんと交渉し、不幸な結婚に飛び込まないよう妨害し・・。縁談はともかく、就職話に困るなんて、時代の差を感じます。

 バーティは善良で優しいのですが、収入があるので仕事するわけじゃなし、アカデミックな道を進むわけでもなし、怠惰な生活を送っています。人に迷惑はかけないけれど、今でいうニートですね。朝は11時少し前に朝食やジーヴズ特製の二日酔い快復薬をベッドまで運んでもらう毎日。クラブ(この時代だからきっと男性専用)に籠ったり夜中までダンスに興じたり、暇つぶしに賭け事くらいはするけれど、女の子のお尻を追いかけ回すようなエネルギーを消耗することはしないし、どうも覇気がない。静かな生活を壊されたくないので結婚もしたくない。今の若い女性たちが熱を上げてくれそうな男性とはいいがたいと他の人も言っていましたが同感です。
 まあ、色恋の話題では親友のビンゴがいるので退屈しませんが。
 でもバーティは自分をよく把握しているし、そのためにジーヴズの価値を素直に認めて敬意を持って接しています。彼は起業するタイプではないけれど、有能な部下に信頼して仕事を任せることができる人だから、やれば成功する人なのかも。

 有能な執事であるジーヴズは慇懃な態度でスマートにバーティの悩みを解決しています。自分を自慢したくなるような時でもその場の態度は控えめです。というと、まじめで大変な忠義ものに聞こえますが、特別に活躍したときにはその報酬ででもあるかのように、主人の悪趣味な服(バーティはときどき奇抜なものを着たがる)を勝手に誰彼にやってしまうという一面も持っています。でも、自分の能力を高く買ってくれるバーティをいろいろな面で好ましく思っていて、快適な独身男二人の共同生活を壊すような真似はしません。バーティが単に変化を求めて子どもの3人いる姉の一家を引き取って暮らすことなど考えると、こっそり工作して、気を変えさせます。これはバーティのためというより自分のためかな。
 ジーヴズの、「紳士に仕える紳士」である自分がバーティを望ましい主人に仕立てようと糸を引いている様子が、服装の件のみならず、ことばの端々にのぞいていて、にやりとさせられました。
 ジーヴズはどうしてこんなに何でも知っているのかと思いましたが、経験を重ねているし、1日の仕事が終わると「この時間にはいつもなにかためになる本を読むことにしております」というし、いろいろな家の召使いとの情報網を持っている様子。
 有能だけれどくだけた様子など見せないから女っけなしかと思うと、ちゃんと恋人がいるし、うん、これでもてないはずがない。男女を問わず、こんな風になれたらいいなと思うようなタイプ。

 この二人の掛け合いが、表向きは主従の体裁をとりながら、でもときどき主導権が移っているように思われ、絶妙なバランスを保っています。すきだなあ。日本語訳の言葉遣いがまた、気持ちよくて。二人の訳者が相談しながら訳されたということで、ほんとうに丹念に仕上げられていて嬉しいかぎり。仕事中、楽しかったに違いない!

 ウッドハウスの他のシリーズも追って発行されるとのこと、楽しみに待っています。
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2005年08月06日

大どろぼうホッツェンプロッツふたたびあらわる

プロイスラー, トリップ, 中村 浩三
大どろぼうホッツェンプロッツふたたびあらわる
 この本は、ホッツェンプロッツが牢獄につかまって、釈放され、ふたたび、泥棒稼業をはじめるはなしです。
 ディンペルモーザー氏(警察)もはじめは、ホッツェンプロッツが、牢獄を脱走してきたのとおもいますが、ホッツェンプロッツには、釈放の許可証があったのです。(本物) くやし~
 それで、また泥棒稼業をやりますが、けっきょくつかまってしまいます。
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2005年08月04日

しずかに流れるみどりの川

ユベール・マンガレリ, 田久保 麻理
しずかに流れるみどりの川
白水社 2005.

<芋ようかん>
 貧乏で空想好きな父子の生活をユーモラスに描いた、簡素でしずかな作品です。繊細でユーモアがあって少し悲しいお話の好きな方にお薦めです。

 「ぼく」は失業中の父さんと二人暮らし。料金を払えなかったため、払うまでの間電気を止められてしまう。ぼくは、庭にツルバラらしい植物が生えていたのを売り物にして生活の足しにしようと、かき集めてきた空き瓶を植木鉢がわりに、熱心に世話をしていた。だが、それはツルバラではないのだと知人に教えられ、でも、父さんにはいえずにいた。そんなある日、父さんは貯金箱にしていたコーヒーの缶を持って「ぼく」を外食に連れ出した。まだ電気代を払っていないのに気前よくおごろうとする父を心配するぼくだったが・・。

 貧乏生活の中でも、少年の、初夏の草むらに分け入って道やトンネルを作ることに喜びを感じている無邪気で繊細な人柄が胸を軽くさせてくれました。自分で造ったトンネルを自分のものと思える感覚は、誰も足跡をつけていない雪に初めて自分が足を踏み入れるよろこびに似ています。
 子どもが、外食してもお金を食べているような気分で、父親の上機嫌にハラハラさせられる様子が気の毒で、でもおもしろく読めてしまうんです。
 わたしははじめのうち、この父親が頼りなくて嫌でしたので、この人の楽しい釣りの空想でさえ、息子のそれとは違ってただの現実逃避にしか思えませんでした。でも、お金に困っているときに浪費して気を引き立てずにはいられない弱さに悲しくなり、最後にろうそくをちょうだいした教会にお布施も置いてくるあたりで、なんだか憎めなくなってきました。「貧すれば鈍する」状態だけれど、できる範囲で償おうとする気持ちが軽妙に表され、楽しいような悲しいような。
 なんなんでしょう。ふがいない父親に腹が立つのは、自分が不幸になりたくないため人の不幸を見たくないからなのでしょうか。
 作者の、弱者への同情といたわりを感じます。
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2005年07月20日

邪魔をしないで

「邪魔をしないで」
ミュリエル・スパーク著 深町真理子訳 早川書房 1981.

<芋ようかん>
 タイトルの「邪魔をしないで」の上に、原題、NOT TO DISTURBと書いてあります。ホテルの部屋の廊下側のドアノブにかけておく札と同じ文句ですよね。わざわざ邪魔をしないでくれと言わなければならないということは、よほど邪魔が入って辟易させられるのかと思ったら、その逆で、いかなる邪魔をも排除していました。
 ブラック・ユーモアの小説です。桜餅は、たとえ漢字が読めても、もう少し大きくなるまで待ってください。
 
 スイスの湖畔に建つ男爵の邸で、男爵夫妻とその共通の愛人である青年が部屋にこもり、使用人たちに「邪魔をするな」と命令していた。このやしきの切れ者の執事リスターをはじめ使用人たちは、主人の厳命に服従しているように見えて、実は、予想される惨劇が止められることのないよう、邪魔を排しているのだった・・。

 灰汁の強い使用人たちが、密室の中の出来事を先読みし、やしき乗っ取り計画を進めていく様子が簡潔できびきびとした文体で描かれており、この意地悪っぷりがおもしろかったです。「邪魔をするな」という命令の厳守は徹底しており、来訪者はもちろん、読者でさえ、部屋に入れてはもらえません。
 いったい、なにが排除されるのかまではしゃべり過ぎなので控えますが、そのときの執事の手際の良さや、密室での事件後の演出プランまで練ってある用意周到さには舌を巻きました。
 終盤で男爵の末弟の邸に電話した執事が、先方から、主人に邪魔するなと厳命されているからと取り次ぎを断られるところがまた、もしかして電話の向こうでも・・と思わせて怖いです。ふふ。
 道徳的に考えるとひどい話ですが、主たちが退廃的で使用人から尊敬されもしない人物なので、同情することもなく話を楽しんでしまいました。
 さて、この計画がいったん成功した後、この人たちはどうするつもりなのでしょう・・。すっかりめでたしと思えないところが、この作家らしくていいですね。
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2005年07月16日

大尉のいのしし狩り

デイヴィッド・イーリイ, 深町 真理子, 白須 清美
大尉のいのしし狩り
晶文社 2005.

<芋ようかん>
 5人の翻訳家が訳した15篇の短編集です。この方の作品は私は初めてなのですが、おしなべて怖いお話ばかりでした。何が怖いって、登場人物たちが、当人が気づいているかどうかは問わず、内面からしみ出してくる恐怖、憎悪、孤独、嫉妬、支配欲、自己顕示欲などの醜い感情にひきずられて身を滅ぼしていくんです。最後の一遍なんかは、なかなか楽しげに自給自足の生活を送っていたちゃんとした若者たちが、基本的には悪気のない普通の人たちのやや傍若無人な振る舞いに生活を壊され、破滅させられてしまいます。中には「十人のインディアン」のうたのパロディかいなと思うような害のないものもありましたけれど、ほとんどの作品で、誰の胸にも潜んでいそうな、眠らせていたい、目をそらしていたい感情が描かれ、不安を誘います。そして起きるドキドキの出来事はお読みになって確かめてください。
 ブラックユーモアのお好きな方におすすめします。
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2005年07月13日

回転する世界の静止点

パトリシア・ハイスミス, 宮脇 孝雄
回転する世界の静止点──初期短篇集1938-1949
河出書房新社

<芋ようかん>
 この本と対になっていた「目には見えない何か」が気に入って読んでみました。両方を読んだ方が揃ってこちらの方を高く評価されるのもうなづけました。読みやすく、引きつけられます。うーん、うまいなあ。むこうは、作者がより追いつめられていた頃に書いていたはずなので、それで苦しいのかな。
 いずれにしても、ハイスミスの優れた心理描写には舌を巻きました。登場人物の感情を表現すると同時に、こんなに浮かれて大丈夫かしら、だの、この人精神的になにか変・・という具合に読者を不安がらせるのもお手の物です。
 元気はつらつになる物語ではないけれど、どの作品もラストに緊張が解けて「あ~、よかった」「あ~、怖かった~」あるいは「次はうまくいくといいよね」と思えます。そのへんの作者のさじ加減が好きなんですよ。


「素晴らしい朝」
 一人の男が喧しいニューヨークを離れ、新しい生活をはじめようと期待に胸を膨らませて田舎町へやってきた。見るもの聞くもの、皆新鮮だ。新しいコミュニティにとけ込もうと、会う人ごとに挨拶をし、部屋を借り、友達を作るのだが・・。

 男の期待感が無責任にどんどん膨れていくので、今に落とし穴に落っこちるに違いないと心配しながら読み進めました。期待しすぎたわけだけれど、この失望感もわかるなあ。

「不確かな宝物」
 地下鉄のホームにあるお菓子の自動販売機のそばに置き去りにされたカーキ色の鞄。足の悪い男が慎重に近づいて持ち出そうとすると、他の男に取り上げられた。鞄をもった男と足の悪い男の追いかけっこが始まった・・。

 何が入っているのかわからない、他にも欲しがっている男がいる、だからこそ鞄に執着する気持ちがわかるし、おもしろい。

「魔法の窓」
 財産はあるが退屈な生活を送っている男が、特徴のある扉をもつ酒場で謎めいた女に出会う。これこそ運命の出会いだと色めき立つ男だったが・・。

「ミス・ジャストと緑の体操服を着た少女たち」
 ミス・ジャストは軍隊のようにきびしくヒステリックな体操教師。校長と来客の前でダンスを披露する日が迫っており、当日服を洗濯してアイロンをかけていない人は成績はDにすると叱責していた・・。

「ドアの鍵が開いていて、いつもあなたを歓迎してくれる場所」
 都会のアパートに一人暮らしの忙しい女性が、田舎から出てくる姉を泊めるために食事を用意し、部屋を整え、万全の仕度をしていた。姉は几帳面な専業主婦で、落ち度があっては何を言われるかわからない・・。

 都会の安アパートの住宅事情の悪さや騒音のなかでけっこう幸せな生活をしていると言っても、静かで広い田舎から来た人にはなかなかわかってもらえない。いつの間にか急いで生活するように変わっているのに気づいて自分を笑うあたりもとてもよくわかる。次に寄ってもらう時は楽しんでもらえるようにと応援してしまいました。

「広場にて」
 子どもの時から際立ってかわいかったアレハンドロは、アメリカ人観光客を案内して黄金を稼ぐのが上手かった。やがて女性たちの特別の相手もするようになったが、ある日、伯爵夫人に誘われてアカプルコに滞在し、弟子になる・・・。

 この人どこまでいっちゃうのかとハラハラしました。お母さんがかわいそう。

「虚ろな神殿」
 ハンマーを握ってエマを殺そうとしている男がいた。エマが妊娠したので不義を犯した男を捜し出そうとみなが探しまわっているのだ。

 この話はじわじわと怖かった~。これは内緒ですねえ。

「カードの館」
 リュシアンは完全な贋作だけを求めるコレクターで、その審美眼を高く買われていた。ある日、偽物をつかまされたと噂の出たオークションのスポンサー、ガストンをからかってやろうと、問題の絵を競り落とし、本物だったら絵を返すと約束するのだが・・・。

 芸術は模倣から生まれる、という言葉を思いだしました。欠点のある本物よりもそれをカバーした完璧な偽物の方がよいとか、それが人を喜ばすのに役立つのなら偽物に大いに価値があるではないかという意見には動かされました。彼が贋作にこだわる理由には仰天しましたが。よき理解者を得て、よかった。

「自動車」
 アメリカで結婚し、ニッキーとメキシコへやってきたフローレンスは、メキシコののんびりとしたいい加減さにも、次第に周囲に同化していくニッキーにもいらだっていた。愛車をニッキーの友達に貸されてしまい、なかなか返してもらえないことでも不信感を募らせていた・・。

「回転する世界の静止点」
 幼い息子と母親の公園デビューの話。ミセス・ロバートスンは自宅から少し離れた公園に出かけた。近くの公園に比べるとかなり不潔な感じはしたが、目は届くし、静かだった。けれど、息子がそこで出会った友達と遊ぶのが不潔に思えて心配だった。翌日時間を変えてもやはりその子と一緒に遊んだ。その子の母親は子どもは眼中になく、そこで恋人に会い、彼らは仲良くそれぞれ空想に耽っているのだった・・。

 たしかに公園で恋人と夢にふけっている母親とは上手くつきあえないかもしれない・・。

「スタイナク家のピアノ」
 身体の弱いアグネスと母親の家へ、妹のマーガレットがピアノの弟子であるクレットを連れて帰ってきた。腫れ物に触るように大切にされていたアグネスがクレットに夢中になり・・。

 娘時代で成長が止まってしまっているようなアグネスも、彼女を愛しながら疎ましくも思っている家族もかわいそうだった。家族を介護している人たちを思ってしまいました。

「とってもいい人」
 かわいくて愛想のいいシャーロットと無愛想でつっけんどんなエミリー。ある日知らないおじさんがお菓子をくれて、シャーロットをドライブに誘った。

 もう~、さらわれちゃうんじゃないかとヒヤヒヤしたよ。

「静かな夜」
 ホテルで一緒に暮らしている二人の老女。一人が意地悪をしてもう片方の服を切ってしまってしらを切るんだけれど、もう片方はひとりぼっちになるのが怖くて別れることも仕返しすることもできずにうじうじしている。

 やるせない・・。だけど、もし仕返しする覚悟ができたのなら、その動機はいたずら目的とは段違いに強いから、かえって怖いかもしれない。

「ルイーザを呼ぶベル」
 同じ下宿に二人の孫娘と住んでいるミセス・ホルパートのところで3人が全員猩紅熱にかかり、上の孫娘と仲良しだった秘書のルイーザは仕事を休んで看護に当たる。

 この短編集の中で、一番晴れやかな気持ちになれた作品でした。こんな心優しく勇気ある女性には、幸せになってほしいものです。

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