girlmeetsboy 夫が失踪し、女で一つで小学生の息子を育てる主人公を描く。


主人公・美世は映画配給会社で働く。
一人息子・太朗は小学生になったばかり。
二年前に夫・田口が失踪して以来、無我夢中で太朗を育ててきた。
友人たちの支えもあり、なんとか小学生にまでなった太朗。
夏休みに入り、保育園のように年中預かって貰えなくなり戸惑ったり、夏の思い出にと遊園地に行きせつなさを感じたり、突然太朗が帰って子なかったり、波乱万丈である。
そんな或る日、太朗が失踪した田口と会っていたことを知る。
美世の元に田口から連絡が来て、二人は正式に離婚する。
これまでの日々を思い涙を流すが、太朗の顔を見れば未来を想う。
甲府の両親、昔からの友達・牧子、階下の友達・杏奈、太朗が知り合った父子家庭のみちる。
様々な人に支えられ美世と太朗は生きていく。


シングルマザーの苦悩はよく聞くそれだったが、現状に至った経緯は小説だけに劇的な要素があり物語を盛り上げていった。
30代のシングルマザーは仕事もやるし、子育てもやる。
二人だけでは無理で、友達や近所の人に支えられながら一歩ずつ進んでいる。
こんな風に協力してくれる友達や知人が居るのと居ないのでは全く違うだろう。
シングルマザーは悲惨でもなんでもない。
親子で楽しく暮らし、たまには泣いて、たまには怒って。
普通の家族なのだ。
そんな普通の毎日の中で巻き起こる出来事を、著者っぽく描ききっていた。
ラストが物足りないものの、この先の二人をいつか読めるのかなという期待を勝手に抱いてみた。


自分とはまだ縁の無い話だが、今後どうなるかも知れず。
この物語のことを頭の片隅に置いておきたいなと思った。
著者の新しい一面をこの作品でも見れた気がする。
既婚女性・子供の居る女性が読むと、私のように何か思うところがあるかもしれない作品。


<新潮社 2004年>


野中 柊
ガール ミーツ ボーイ

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家族趣味 / 乃南アサ

テーマ:

kazokusyumi 都会の日常の中で普通に生活する男女。
或る日訪れるわずかな歪みから、真っ当な道から逸脱していく様を描いた短編集。


『忘れ物』の主人公・美希は23歳。
短大卒業後、一般職として就職している。
理解があり尊敬できる上司・本橋課長の下でOLとして働いている。
細かな気配りといい、きちんとした仕事っぷりといい、美希は本橋課長に憧れていた。
来年は総合職の試験を受けて、結婚以外の道を考えてみようかと考える程だった。
或る日、美希の課に阪口が配属される。
阪口はニューヨーク支社に勤務していたエリートで、容姿も物腰もステキな男性だった。
美希はひと目で気に入り、阪口も美希に好意を抱きいつのまにか交際することになる。
しかし阪口は日々忙しく、二人で過ごす時にも本橋課長から電話が入ることも少なくなかった。
そんな中、二人の交際は順調に進み結婚の話も出始めたデートの後、阪口の部屋に寄ろうと思うとマンションの前に本橋課長が立っていた。
誰にも知られぬように努めていた二人だったが、見つかってしまってはしょうがないと翌日本橋課長に結婚を前提に交際していることを告げる。
美希にも本橋課長からその意思を確認する呼び出しがあった。
美希は総合職のことも考えてはいたが、阪口との人生を中心に考えて生きていきたいと本心を話す。
その後の会議で異変が起きた。
本橋課長は会議中に突然包丁を研ぎはじめたのだった。
美希と阪口を襲う恐怖の会議が始まった。
想像もしない結末と、本橋課長の本当の姿がわかるどんでん返しが待っている。


その他、宝飾品だけに興味を持ち、その為に何もかもを投げ捨てて生活する借金まみれの女の病んだ心理を描く『魅惑の輝き』、恋人の一言で奮起し身体を鍛え始めることで目覚めた身体作りが不幸を招く『彫刻する人』、理想の家族像を築き自分らしく毎日を送っていることに自信を持つ女の生活に待っていた恐怖を描く表題作『家族趣味』と、身近にありそうな事柄をテーマにしている短編ばかりで恐ろしかった。
また、中学三年生という難しい年齢の2人の少年の対極っぷりを現代の若者独特な不可解さを含めて描いた『デジ・ボウイ』は読み終える時に悲しくてたまらなかった。
なぜか、涙が出そうになったのだ。
人として真っ当に生きるというのはどういうことか。
どう生きるのが正しいのか、楽しいのか。
十人十色の答えがあるけれど、この物語の中に出てくる人々の生き様は正解だったのか。
ミステリー短編集なのに考えさせられてしまう内容ばかりだった。
1話の長さが微妙に心地よく、起承転結きっちりまとまっていて読み応えのある短編集。
夢中になって読みたい方におすすめの1冊。


<新潮社文庫 1997年>


乃南 アサ
家族趣味

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参加型猫 / 野中柊

テーマ:

sankagataneko 穏やかでハッピーな夫婦と、その飼い猫・チビコとの生活を描く。


主人公・勘吉と沙可奈夫婦はかわいい猫・チビコと暮らしている。
夫婦の出会いは「猫」だった。
とんかつを食べたくて歩いていた勘吉はダンボールを持った謎の女性・沙可奈と出会う。
持っていたダンボールから飛び出したのは5匹の子猫。
その猫が飛び出したことから二人は言葉を交わし、食事をすることに。
交際を経て結婚し、二人は素敵なデザイナーズマンションで暮らし始めた。
そして新しい家族・チビコも加わり楽しい結婚生活がスタートする。
しかし沙可奈がひき逃げにあいリハビリ生活を送るうちに会社を退職。
勘吉一人の収入ではデザイナーズマンションに住むことは難しくなり、階段無しの6階へ引っ越すことになる。
パリのアパルトマンを思い出すその趣を、沙可奈は気に入り上機嫌。
勘吉も徐々にこのマンションに愛着を持ち始める。
日常の細々した風景。
例えば外食、例えば引越し。
そんな猫に縁のある二人の穏やかな夫婦生活、日常、二人の気持ちが詰まった作品。


私は猫が得意ではないし、ペットにもいまいち興味が無い。
しかしこの夫婦の関係を見て憧れた。
二人の絆+猫という存在がさらに二人を強く結び付けているような気がした。
夫婦には+αが必要なのか?
そんなことを考えさせられた作品だった。
その+αは子供だったり、ペットだったり、形を変えて世の中の夫婦の間に存在するのだろう。
大きなテーマが無く、穏やかな夫婦の恋心を描いた作品である。
そのテーマの無い感じがなかなか心地よく読めた。
近頃読む著者の作品は一味違うものが多く、本作もその1つである。
夫婦や恋人との存在の形・絆についての恋愛小説を読みたいと思っている方におすすめの1冊。


<マガジンハウス 2003年>


野中 柊
参加型猫

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anatanosobadenonaka 甘い想い、苦い想い、子供の恋、大人の恋。
恋にはつきものの様々なかたちや思いを描く恋物語が6つ収まった連作短編集。


『運命のひと』の主人公・恭子は結婚生活9年目。
インテリアデザイナーとして、夫で建築家の俊と仕事もプライベートもパートナーとして支えあっている。
慣れ親しんだ夫との暮らしを心地よく思いながらも、家具店のオーナー吉田と恋人関係にある。
そして、俊はというと事務所でアルバイトとして雇っている大学生・椿と関係している。
恭子はその事実を知りながらもそ知らぬ顔で過ごし、椿とランチに行ったり3人で食事をしたりする。
嫉妬で狂いそうになる瞬間もあるが、吉田という恋人との関係が大切でそちらにばかり気を取られることもある。
俊への想い、吉田への愛着、椿の微妙な態度など、恭子は様々な想いの下で夫との結婚生活を続けていく。


『運命のひと』、『片恋』に関して言えば、まるで江國香織が書いたのかと思うようなストーリー展開で意外だった。
その他の物語はいつもの著者らしい作品で出ていて私は好きだった。
16歳のおさな妻を描いた『オニオングラタンスープ』などは特に著者の色が出ていた。
その他、高校生の少年が女教師と恋愛関係にある『光』、バーを営む女の奔放な様と妹の死を描く『イノセンス』など、以前の著者とは違う作風も見受けられ新鮮で楽しめた。
連作だが、途中までそれに気付かないくらいだった。
次の物語の登場人物のあらわれ方がさり気なかったのだ。
読み返して気付いた。
集中力が無いだけだったのかもしれないが。


装丁が松尾たいこ氏のイラストレーションでその点も気に入った。
最近松尾氏は角田光代、江國香織とのコラボレーションなどと幅広く活躍している。
以前から好きなイラストレーターだったので注目しているので、装丁も本書のポイントの1つだった。


純粋な恋愛小説で新作を探している方におすすめの1冊。


<文藝春秋 2005年>


野中 柊
あなたのそばで

sayonarakotatu 若いカップル、独身女性、老人、同性愛カップルとその父親・・・
マンション、アパート、一軒家など、みんなどこかの家に暮らしている。
私が好んで読む小冊子「ウフ.」で連載されていた作品をまとめたもので、様々な居住環境の中で起こる日常の出来事を綴る短編集。


『ダイエットクィーン』は取り壊しが予定される築35年の古びたアパートが舞台。
郁美は泰司とそのアパートで同棲している。
アパートの住民はパキスタン出身のアジズ達や、隣の谷口家などだった。
或る日、郁美が泰司と喧嘩をしていた時のこと。
隣の谷口家の子供・マナが「居場所がないからここに来ていいか」と聞いてきた。
喧嘩の真っ最中に、マナはそう言って部屋にするりと入ってきた。
郁美が「なにかあったのか」と聞くと、「お母さんのところに男の人が来てるから」とさらりと答えた。
隣の家は夫婦ものだとばかり思っていたが、その夫婦に見える男女が本当に夫婦かどうかなど知らなかったので驚いた。
思い出してみると、週に二度程大きな声を上げている事があったので同情し、マナの来訪を受け入れた。
マナはそれから時々やってきては時間を潰していった。
郁美はバイトとダンスの練習で忙しく殆ど家に居ないが、泰司は何もしないでゴロゴロしているのである。
泰司一人が居る家に、マナは訪れ泰司と話をしたりラーメンを食べたりしていた。
とうとうアパートが取り壊されることが決まり、アジズがカレーを振舞ってくれることになった。
そこには当然マナも居たが、なぜかマナの母親もやってきたのだ。
アパートの住人が沢山集いカレーを食べる。
そしてその後、数日の間にみんなこのアパートを去りバラバラと散っていくのだ。
小学生のマナと関わり始めた数ヶ月の間、マナはどんどん成長していった。
郁美はマナの引っ越していく姿を見送る時、訳のわからない胸騒ぎに襲われたけれど、マナを黙って見送った。


他にも、レズビアンのカップルがいつものように帰宅すると父親が居て驚く『ハッピー・アニバーサリー』、独身女性が久々の恋愛で舞い上がる様を描く『さようなら、コタツ』など淡々とした日常の中に見え隠れするせつなさや悲しさ、喜びなどを描いた7作品が詰まっている。
物語の前にあるまえがきが面白く、著者がこの短編集を作るに至った経緯や思いがわかる。
読みやすく、インパクトは無いが心に広がる不思議なふんわりとした感覚が心地よい1冊。


<マガジンハウス 2005年>


中島 京子
さようなら、コタツ

spilarage 40歳を目の前にして、不倫の恋に清算をした女。その同級生で年下の若い男を殺した女。更に不倫相手の妻。
或る日突然3人の人生が絡み合う時、3人は1つの罪を共有し、なぜか助け合う。
40代の女3人の、女としての生き方と生々しい苦痛の日々を描く長編サスペンス。


前島美樹は中野の分譲マンションを購入した独身OL。
薬剤師の資格を活かし、外資系企業で医療機器の薬事申請業務に携わっている。
ローン返済に追われながらも充実した日々を送っている。
3年に及んだ不倫の恋を清算し、空虚さは残っていた。
そんな或る日、駅のホームで高校時代の同級生・岩井雪乃に会う。
懐かしいニックネームで呼ばれたからか、人恋しかったからか、その気も無いのに自宅住所や連絡先を印刷した名刺を雪乃に渡してしまう美樹。
そこから全てがズレはじめ、狂い始める。
雪乃は年下の若い男を殺した後、美樹の部屋を訪れる。
美樹の部屋にいる金魚を見る為だ。
その金魚は雪乃の死んだ弟が釣った金魚だったのだ。
そこからなぜか同居してしまう二人。
犯罪者と、それをかくまう普通の会社員。
二人の共通点は金魚と同い年の同級生ということだけ。
雪乃をかくまう日々だけでも大変なのに、今度は不倫相手沢口の妻・暁子が登場する。
暁子は人気ファッション誌の読者モデルをしている美しい女で、ふとしたことから知った夫の不倫をを問いただそうとマンションを訪れる。
しかし、暁子が遭遇したのは雪乃だった。
そこから3人の人生は絡み合い、思いもしない結末へと進んでいく。
美樹の母、険悪な仲が続くバツイチの実の姉、その娘。
暁子の姑、小姑、思春期の息子、気の利かない夫。
外野との絡みや主人公たちの心理描写がうまく描かれ、女達の不思議な仲間意識や守りあう気持ちへと繋がっていく。


結婚しそびれた女2人と結婚し子供を産み幸せに暮らしている女。
3人は昨日までは全く関係の無い3人だった。
ところが或る日、急速に距離を縮めて何かを共有し何かを守り何かを育てていこうとする。
3人3様の複雑な心を持ち、皆が悩み苦しむ。
穏やかな毎日とは疎遠の日々の中でとんでもないことを受け入れ、とんでもないことに首を突っ込んでいく様は興味深い。
なぜそんな選択をするのか?なぜそんな風に結論を出すのか?
同じ女でも、よくわからない部分もあるが、理由は説明できないが共鳴できてしまう部分もある。
一気に読めてしまうサスペンスだ。
結局、軸となる雪乃が殺した相手に対しての怨念や何故殺したのかについて書かれていない部分がこの物語を面白くしているのかもしれない。
殺したことがテーマではなく、殺した後の日々がテーマなのだ。
また、独身女性の生き方と孤独、悩みも切実だったり、既婚女性の辛さと虚しさの描写もリアルでそちらの部分でも読み応えがあったと言える。
今までに読んだことのない感じの物語で楽しめた。
お盆休みに入る方もいるかと思うが、お休みを利用してサスペンスをと思われている方におすすめの1冊。


<講談社 2005年>


新津 きよみ
スパイラル・エイジ

binetu ジャンルは一応ミステリーに該当するようだが、読んだ感想はミステリーというより美容界でのサクセスストーリーという感じだ。
それにプラスして恋愛要素もあるが、女性同士の厄介な嫉妬や妬みが軸となっている。
エステサロンを舞台にした女性向けの長編。

 

主人公は和倉麻美。
脱サラ(OL)してエステティシャンになった。
大手エステティックサロンで働いていたが、或る日突然カリスマサロンとして名を馳せている個人経営のエステティックサロンのオーナー・京子からヘッドハントされる。
迷うことなく移籍し、自分の腕に自信を持っていく麻美。
移籍したサロン『ヴィーナスの手』は、手だけを用いるアロママッサージをメインとした施術を行う。
肉体的な疲労は重なるものの、心は充実し、毎日を楽しく過ごしていた。
同僚の嫉妬、オーナーからの期待など様々な負担があるものの、麻美はエステティシャンとして自信を持ちいきいきしはじめていた。
その昔、『ヴィーナスの手』には神の手(ゴッドハンド)と呼ばれる手を持っているエステティシャン・サリが居たことを知る。
不慮の事故で亡くなったサリの後釜としてオーナーが自分を引き抜いたと知り、複雑な思いを抱く麻美だったが、サリのことを知れば知る程サリを目標とし、追い抜きたいという野望が渦巻くようになる。
麻美を後押しするように新しい顧客や雑誌の取材などが続き、麻美の施術を受けるには2ヶ月待ちになる。
サリを追い抜きたいという一心で頑張る麻美の前に、オーナーの夫や息子が登場する。
サリが生前使用していたアンチエイジングのクリームを元に、新しい美容液を作るオーナーの息子。
そして、それに魅せられる麻美。
麻美はその美容液を使って施術をはじめる。
エステ業界も流れが速く、今のままでは『ヴィーナスの手』はダメになると思い美容液での施術をウリにしていこうと提案する麻美。
迷うオーナーを説き伏せて、麻美は走り出す。
そんな中、『ヴィーナスの手』を中傷するワイドショーの放送があり、サロンは急に傾きはじめる。
美容液についてのクレームも出始める。
サロンの復活を願い、麻美は動き始める。
そして、サリの死には理由があったのだと察する。
それでも麻美は施術を続け、一流のエステティシャンになろう、サロンを盛り上げようと邁進するのだった。


 

林真理子の『コスメティック』と似たところがある。
唯川恵に似ている雰囲気がある。
そんな女性向の小説だ。

年頃の女性が仕事をルーチンと感じはじめる。
自分がしたいことは何か考えはじめた時、突然スカウトされ新しい職場に異動し開花する。
そのプロセスは仕事に疑問を持っていたり、頑張っていたりするワーキングウーマンには楽しく感じることだろう。

自分が上に上がるとなれば、確実に下に落ちていく人間は居る。
足の引っ張り合い、落とし込みなど女性が喜ぶ刺激がふんだんに用意されている。
一気に読めるし、読み終わった後「こんな話は無いな」と思っても不快感は無い。
エンターテイメントとして読み終えられる面白い1冊。


<小学館 2005年>


永井 するみ
ビネツ―美熱

lunch 三十歳を目前にし、今のままではダメだと焦りインテリア・コーディネーター募集の求人に惹かれ転職した主人公の仕事や恋愛、日常に起こる様々な事件を描く連作のミステリー短篇集。


主人公・知鶴は29歳。
鉄鋼会社で事務をしていたが、20代半ばから後半で結婚退職するものと相場が決まっていた。
知鶴は既にその年齢に該当しているが、結婚の予定は全くない。
暫く予定が無いだけではなく、この先は独りで生きることも視野に入れなければならないと思い、転職を決意する。
結婚退職を気取り会社を辞め、就職活動をし、現在勤めるドエル・コーポレーションにインテリア・コーディネーター見習として転職した。
しかし、現実は厳しいものだった。
入社後3ヶ月は研修を受けながら試用期間という扱いなのだが、実際は雑用ばかりでインテリア・コーディネイターに関する事など微塵も勉強できていない状態で、社員の弁当の管理やコピー、書類の整理ばかりを繰り返していた。
上司の水沢は取引先ではいい顔をするが、社内の人間には態度が違うといった嫌なタイプの上司で、知鶴はいつも悩まされていた。
その水沢は弁当を頼みもしないのに「今日の弁当は会議室に持ってきて」などと言い、知鶴を苛立たせる。
知鶴は弁当は注文を受けてないので無いと言えば倍以上の嫌味が返ってくると落ち込んで居た時、昨日の弁当の余りを見つけて黙って差し出してしまう。
その直後、水沢は原因不明の体調不良で倒れて救急車で運ばれてしまう。
知鶴は自分が昨日の弁当なんて渡したからだと頭を悩ませ混乱するが、医者は全く違う診断結果を出す。
一体誰が、水沢をこんな状態に追い込んだのか、知鶴は気付いてしまう。


ミステリー要素や恋愛要素が詰まった連作で読みやすかった。

ミステリーだけではなく、女性の転職や恋愛、職場での悩みやお客とのイザコザなどが描かれており、女性は楽しめると思う。
軽い日常的ミステリーはあっという間に読み終わる軽さがいい。
通勤などにおすすめの1冊。
松尾たいこ氏の装画がステキ。



<集英社 1999年>


永井 するみ
ランチタイム・ブルー
永井 するみ
ランチタイム・ブルー

2930 ファイナンシャル・プランナー著者ならではの視点から、若い時からお金のことを考えようという提案本。


お金がなければ人生でやりたいことがやれるという話や、ごく普通の給与を退職までに1億円貯めるためのプランなどが掲載されている。
節約というよりは、マネープランをきちんと考えて人生を歩むべきなんだという進言が多い。
日常生活、結婚や出産といった人生で起こり得る出来事にまつわるお得な話、高収入というだけがウリの仕事よりも自分のやりたいことをやろうといった話まで内容は幅広い。
実践するのは難しいが、この本に書いてあることに間違いは1つもなく、そのとおりなのだ。
そして、それを忠実に自分の人生に組み込むことで貯蓄や節約などが自動的に出来るんだろうなと感じた。
が、しかし。
これを本当に実践し、1億円貯めることなんてできるんだろうか?
ちょっと非現実的な部分もあるが、お金に関する考えを戒める効果はあったので無駄ではないし、今後も何かの折に読み返すことで財布の紐をギュッとしめることが出来そうだ。

小さな節約も大切だが、長いスパンで人生を見つめてマネープランを練るということが本当に大切だということがわかった。
貯めるって行為はそう簡単ではない。
得意な人もいるだろうが、私のように苦手な人間もいるだろう。
後者であれば、何かのヒントになるので読んで損はない1冊。
独身者向けの内容に偏っているのが残念なところ。


<ダイヤモンド社 2004年>


著者: 中村 芳子

タイトル: 20代のいま、やっておくべきお金のこと

kanpo 第28回すばる文学賞受賞作で、漢方をテーマにした独身女性向けの長編小説。
題名ほど固くなく、恋愛や友情などを織り交ぜながら漢方で癒されていく主人公の姿が描かれている。


主人公・みのりは31歳。
独身で執筆業をしている。
未練のある元恋人が結婚することを聞いた後から体調を崩し、途方に暮れる。
複数の病院をまわるものの、なしのつぶて。
全く効果は無く、日に日に悪化していくのだ。
この原因不明の体調不良から抜け出したい一心で学生時代に通った漢方医を訪れることに。
どの医者もわかってくれなかったみのりの痛みを、漢方医は一発で理解し、痛みの場所を触診する。
驚き、治るかもしれないという希望が見えてくる。
漢方診療所での診察、処方、漢方のあれこれ、東洋医学についてなどみのりはそれらを知っていくことで癒され、少しずつ治っていくのを感じる。
飲み仲間たちの叱咤激励や親との会話など、30代独身女性の穏やかながら山あり谷ありの日常をユーモアたっぷりで描く。


ユーモアがたっぷりだけれど、独身女性の心理描写や漢方にまつわるエピソードはしっかりしており、読み応えがある。
恋愛と、それらに伴う体調不良は女性にはありがちな事で、なかなか人に打ち明けられない。
また、医者に通ったからといってよくなるものばかりではない。
西洋医学が一般的となっている昨今、注目の漢方という方法について少し知ることが出来るのもこの本の魅力である。
主人公と同年代の女性、漢方療法に興味のある方などにおすすめの1冊。



集英社 2004年>


著者: 中島 たい子
タイトル: 漢方小説