kuneru 30歳を迎え、不倫の恋に終止符を打ち新しい土建屋の仕事に燃える女。
45歳で離婚・突然の社長就任・一人娘の大学卒業とてんてこまいの毎日をやり過ごす女。
この二人が見つける未来を描く連作のような長編作品。


主人公は2名。
小さな出版社で編集者として勤める梨央・30歳と、実父の代から続く建設会社の社長だった夫と離婚して止む無く社長に就任した姫こと郷子・45歳。
梨央は同じ部署の上司・五郎と長く不倫関係にある。
誕生日を一緒に祝おうと言ったのは五郎だったのに、子供が熱を出したとキャンセルされひとりぼっちでバースデーを過ごすことになる。
たまらなく虚しい梨央は、立ち飲み屋で小さな出会いはないかと期待するものの、夢と終わる。
目に飛び込む自販機全てで酒を買い、飲みながら歩きまわった。
行き着いたのは建設現場。
入り口が開いていたので軽い気持ちで中に入り空を見上げて上に上がって行ったが最後、降りれなくなる。
助けてくれたのは現場で働く徹男だった。
ひとめ惚れした梨央は徹男を探し、お礼をし、なんとか恋のきかっけを・・・と模索する。
その中で、自分の毎日や人生を見直し、リセットしたいと望むようになる。
姫こと郷子は、夫の浮気を原因に離婚。
一人娘を抱えて父親から夫が受け継いだ建設会社の社長に就任する。
さっさと畳んで家賃収入で呑気に暮らそうと目論んでいたものの、実際はそうもいかず自転車操業でも会社を経営し続けていく。
リストラ、公共事業からの脱却など様々な困難が目の前に立ちはだかる。
早く逃げたい、辞めたい、誰かに助けて欲しいともがくものの、いつも誰の手も伸びてこない。
そんな二人が偶然繋がり、人生が交差していく。
建物を作ることに携わる女二人の波乱万丈の人生を描く。


女性向けの作品で、かなり読みやすい。
さっくりと2日ほどで読めた。

年頃の女性が人生をリセットしたいと思う点など、共感するところもある。
唐突な物語設定や、知らない業界ということで途中読み飛ばしもあったものの、楽しめた。
通勤の電車の中で、ランチタイムで、負担になることなく読めるであろう1冊。

今日はドラマも放送されるので読み比べもできちゃいますよ!!!


<文藝春秋 2005年>


平 安寿子
くうねるところすむところ

AD

nekobaba 第102回芥川賞受賞作品。
アメリカ在住の少女が突然日本に行かされ、実の親よりも深い関係を築いた叔母たちとの関係を描く表題作と2編が入った中編集。


『ネコババのいる町で』の主人公・恵里子はアメリカで暮らしていたが、実母の意向で日本に居る祖母と母の妹である叔母の元へ行かされる。
一人飛行機に乗って日本にやってきた恵里子を迎えたのは二十歳の叔母だった。
3歳で日本語を一切離せない恵里子を預かり困惑したのは言うまでもない。
それは祖母も同じで引き取ったものの、扱いに困っていた。
やがて生活にも慣れ日本語が達者になり英語を忘れかけた或る日、実母は恵里子をアメリカへ呼んだ。
2年もの間日本で暮らした恵里子はアメリカの実母たち家族とは全く馴染めず、英語での会話にも苦労するようになっており、実母の再婚相手や義妹とのコミュニケーションも難しく、再び日本の祖母と叔母の元へやってくる。
恵里子は再来日してから言葉を話さないまま数年を過ごした。
もちろん日本語はわかっていたが、口を開かず大人たちの会話を聞いて理解するだけで意思の疎通は図らなかった。
祖母の家の隣にはネコババと呼ばれる老夫婦が住んでおり、猫を飼っていたり野良猫の世話をしていた。
ネコババは不在の時に世話を頼むネコバンの若い女を雇っていた。
その家に入り浸り、猫と戯れたりネコバンやネコババ夫婦の会話を耳にしたりしながら心をほぐしていくのだった。
或る日恵里子は野良猫が死んでいることを告げるために口をきき、それから会話をするようになった。
祖母と叔母との暮らし、実父との再会、叔母の男運、ネコババ達の日常。
恵里子はその中で成長し結婚し家庭を築いた或る日、祖母と叔母は亡くなる。
二人の人生はなんだったのか・・・実の親よりも深い絆で結ばれていたであろう二人のことを想う恵里子であった。

教科書に載っていたような、懐かしい感じの文体で久しぶりにこういった文章を読んだと感慨深かった。
残酷なシーン、過剰な性描写などもなく、本当に国語の教科書を読んでいるかのような気分で読み終えた。
ホラーやミステリーも好きだし、大人の恋愛小説も好きだが、どんな年代でも読めて一緒にその本の感想を言い合える世代を選ばないような小説もいいなと改めて思った。
何の気なしに父の書棚にあったものを手にして読んでみたのだが、他にも掘り出し物があるかもしれないと期待してしまった。
懐かしい気持ちになれる1冊。


<文藝春秋 1990年>


滝沢 美恵子
ネコババのいる町で (文庫本)


滝沢 美恵子
ネコババのいる町で (単行本)

AD

水晶婚 / 玉岡かおる

テーマ:

suisho 恋、結婚、仕事、親。
30代後半ともなれば様々な事柄が具体的に迫ってくる。
そんな女たちが悩み苦しみながら揺れ動く姿を描く短編集。


『パラダイスを探して』の主人公・万由子は省庁に勤める親自慢の娘である。
出張ついでに神戸の実家に立ち寄り、思う存分眠り目覚めるところから物語がはじまる。
三年前に死んだ父、見栄っ張りな母、都市銀行の行員の義兄と専業主婦で娘を育てる姉。
穏やかそうに暮らす実家の風景の中で、万由子は浮いていた。
30代半ばを過ぎて、やつれた感を拭えない疲れきった顔。
美容院にも行かず、エステにも行かず、ただ老いていくのを感じる毎日。
「忙しくて自分に構えないの」と家族に嘘をつく度に胸が痛む。
万由子の夫・樹彦は5歳年下で司法試験を受け続けている。
今年こそは、今年こそはと思って5年経過した。
有名私大を卒業し、将来有望と思われた樹彦は飛んだお坊ちゃまだったのだ。
普段は勉強もそこそこに競馬やゲームに勤しみ、収入は当然ゼロ。
万由子の稼ぎで養われている。
樹彦の親からはとっくに見離され、今住むマンションを与えられただけだった。
省庁勤めだけでは保てない贅沢な暮らしの為に、夜も働く日々に心底疲れきった万由子。
しかし、実母たちにはそんなことは口が裂けても言えなず、一人苦しんでいた。
嘘で塗り固めた夫婦生活に嫌気がさし、出張ついでに神戸に逃げてきた。
偶然遭う同級生のきらびやかで若々しい姿に落ち込む万由子。

そして豪華な手土産を持って実家に突然やってきた樹彦に、万由子はブチ切れてしまった。
微妙なバランスでなんとか保っていた夫婦関係に大きな亀裂が走り、万由子は新しい人生を歩むことになる。


他にも、ずっと心に残っている同級生と友達以上になれない大人の女が迎える悲しみを描く『ヘップバーンにはもうなれない』、浮気する夫・気の強い義母との生活の中で自分の人生を開拓していく『水晶婚』など、大人の女性が主人公の恋愛・結婚にまつわる物語ばかりだ。
どれもなかなか面白く、大人の女性向けでいい短編集だと思ったが、各物語の題名が古臭い。
垢抜けた印象は皆無。
同世代の女性であれば感じる日常の悩み、小耳に挟む愚痴などをテーマとしているので読みやすく共感しやすい1冊。


<講談社 2001年>


玉岡 かおる
水晶婚

AD

yorunodenwano 30代の女を主人公にした、恋人との別れをテーマにした作品集。
男を失い、自分も失ってしまいそうになる女たちを描く。


『男のいない男の部屋で』の主人公・早知子は31歳。
これまで、就職したことは無い。
人間関係が煩わしく、短期のバイトを繰り返して生活してきた。
親は心配するけれど、早知子はそうやって暮らしてきた。
そんな中で知り合った医師・北宮とは4年の付き合いになるが、結婚は予定に無い。
北宮の魅力は医師であることと、北宮が住む部屋であった。
合鍵を貰っている早知子は、北宮が不在の時に部屋で窓からの景色を見るのが好きだった。
それ以外に興味は無いが結婚相手としては文句無い肩書きを持つので、キープとして早知子は交際を続けてきた。
北宮との関係以外にも、気まぐれに男と関わったりもしてきたが直ぐに飽きてしまう。
過去に一緒に住もうと言われたこともあったが、その気になれず今に至っている。
北宮との関係以外にも、気まぐれに男と関わったりもしてきたが直ぐに飽きてしまう。
現在は週に1日会えばよく、それ以外は仕事に費やしていた。
前の仕事から離れた時、偶然声を掛けられライターのような仕事をしている。
自宅で原稿を書けばよく、時々事務所に打ち合わせに行き次の業務の指示を受ける。その繰り返しだ。
同僚のミチルからの独立話、携わっていたPR誌を一任したいというクライアントからの誘い。
フリーターとして暮らしてきた早知子の生活に少しずつ変化の波が押し寄せた時、北宮との関係に答えが出る。
早知子は大きな一歩を、踏み出すしかなかった。


その他、ふられた腹いせにその男の同僚を誘惑し復讐しようと企む悲しい女を描いた表題作『夜の電話のあなたの声は』他、合計3篇を収録している。
男の居ない夜、空虚な心を埋める為に酒を頼ったり、いたずら電話をしてみたり、仕事に没頭してみたり。
女達は様々な手段で穴埋めをする。
失恋した時のたまらない気持ちを思い出してしまった。
悲しくて寂しくて切なくて虚しくて、たまらないあの気持ちを現実離れした設定で描いている。
ただ、これまでの著者の作品を読んできた私としてはいまひとつ満足しきれない。
『男の始末』もそうだったが、どうも著者は路線変更しているようで、新・藤堂志津子に変化しているのかもしれないが、私個人としては過去の作品のようなもう少し爽やかで普通の女性をテーマにした作品を読みたいところである。
ちょうどいい長さの物語3作品なので、読みやすいところはいい。
女性向けの1冊。


<文藝春秋 2004年>


藤堂 志津子
夜の電話のあなたの声は

harutako 大阪ならではの味、食べ方を垣間見れるおいしい食べ物をテーマにせつない中年の恋愛を描く短編集。


『慕情きつねうどん』は、毎昼食にきつねうどんを食べる浦井が主人公。
浦井はバツイチの中年男で、禿げる前に再婚しろと前妻・咲子や実姉からせっつかれていた。
そんな時、いつも通っているうどん屋で同じくらいきつねうどんを好きな女・民江と相席になる。
民江は浦井が思っていたとおりの女性で、質素で好きな食べ物も似ていた。
自分が美味しいと思うものを一緒に味わってくれる民江に一気に惹かれていった。
やっといい女と巡り合ったと思った浦井は民江との結婚を決めたが、一緒に暮らしてみると交際中の頃とは全く違う顔を見せる民江に困惑していくのだった。
前妻・咲子の勤める店でちびちびお酒を飲むのが楽しみになってしまった浦井は好きだったきつねうどんを思い浮かべ、ひとりごちるのだった。


時々、著者を引っ張り出して読みたくなる。
新しい作家、なじみの作家と色々好きな作家は居るが、著者は私が好きな作家の中で一番年上の女性ではないだろうか。
読んでいるのは初版が1980年代の古いものから新しいものまである。
時代が変わっても、著者が描く大阪の男女、大阪の風情、関西ならではの料理、やんわりとした関西弁は心を柔らかくしてくれていつ読んでもホッとして楽しめてしまう。
今回も、1987年出版の作品だが、銅鍋で炊いたおでんや昔からあるお好み焼き屋、母の味のすき焼きといった関西風味付けのメニューの描写が食欲をそそり読んでいるはじから物語のテーマとなるメニューを食べたくなる。
著者の小説は流行のレストランやカッコいいメニューは出てこないが、本当に美味しいんだろうなと思える料理が出てくるのも好きな点だ。
また数ヵ月後、他の作品を読んでホッとする日が来るだろう。
中年男女のほんわかとした恋模様を求める方におすすめの1冊。


<講談社文庫 1990年>


田辺 聖子
春情蛸の足―田辺聖子ロマンス館〈2〉


田辺 聖子
春情蛸の足

bankholyday ロンドン在住で保険仲介業者のPAとして働く著者が描く、ロンドン金融街・シティを舞台にした、日本人女性の物語。
仕事に恋に終わりかけの結婚生活に奮闘する姿を描く痛快な恋愛小説。


主人公・エリコは31歳。
ロンドンの金融街・シティでコンサルに勤めている。
翻訳アシスタントとして雇われたが現在はPA(パーソナル・アシスタント)として勤務している。
3歳年下のイギリス人・ティモシーと電撃結婚して6年。
現在夫はフランクフルトに単身赴任中である。
結婚生活は破綻しており、明るい未来の無い別居と化している。
しかし離婚までの道は遠く、なかなか具体的な話に着手できないでいる。
もう一度女としての人生を歩みたいと、エリコは恋に走る。
シティで知り合う男性陣は皆ゴージャスで知性的な男ばかりである。
橋渡しを頼んだはずの恋多き同僚・クリス、妻との離婚を目前に動きの悪いジェイムス、同僚の女性から紹介されブラインドデートをした紳士・ローレンス、やり手で気難しいビジネスマン・スティーブ、公開ディスカッションで知り合ったチャールス・・・
魅力的な男性を前に、エリコは持ち前の美貌とトークでターゲットと接近していく。
勿論、思い通りに落ちない相手もいるが、そんなことは気にしない。
次の恋を見つけるだけだ。
仕事も恋も、中途半端は嫌というはっきりした意志を胸に、エリコは今日もシティを闊歩する。
そして、昔のフィアンセ・公一の登場でエリコとティモシーの結婚生活にもファイナルアンサーが出ようとしていた。


コメディ要素も多く、欧米で暮らす日本人女性の姿をうまく表現し面白い。
アメリカ男性とは違う、イギリス男性の魅力や物足りなさを上手く描き読んでいて飽きない。
アクティブ、ポジティブ、そんな言葉が似合う女性が主人公の物語は読んでいて気持ちがいい。
失恋しようとも、離婚問題が迫っていようとも、落ち込まないし無駄に悩まない。
仕事も恋もディナーもワインも、とことん楽しみ後悔はしない。
そんな潔い、サムライのような主人公が私は気に入ってしまった。
時折、会話の中に混じるジョークやウィットに飛んだ会話も小気味良い。
著者は本書が1冊目の出版のようなので、今後の作品も期待したい。
重く湿っぽい恋愛小説ではなく、楽しくポップな恋愛小説を求める方にはおすすめの1冊。


<集英社インターナショナル  2005年>


十貴川 洋子
バンク・ホリデイ

otokono 50代を前にし、寂しさから同居した男との生活を解消したい女。
その家族や街の人々の人間模様を織り交ぜて描く、ある1日の物語。


主人公・美衣子は生まれ育ったこの街で、母・桐と、同居人というか同棲相手というべきか微妙な男・青野と3人暮らしである。
桐は70を過ぎた今も達者で、自営していた理髪店とアパート3棟の経営者となり昼間は近くのカラオケ店「スワン」で過ごすきままな老後を送っている。
5年前、老後の寂しさを緩和したいと思い軽い気持ちから青野との同居を決め今に至っている。
美衣子はと言えば、2度の結婚に失敗し、その2人の夫との間に1男1女をもうけた。
娘・晴香は3度の結婚、3度の出産を経てまた再婚したいと言い出すし、息子・吉樹は12歳年上の未亡人・千代と生活しており、どちらも異性運がいいとは言えない。
もちろん、美衣子自身も例に漏れず男運が悪い。
青野のキャバクラ通いを同級生に聞いてから、青野との同居は軽率だったと後悔しはじめる。
カラオケ店「スワン」での出来事、初恋の人で障害者となった葉介の世話、娘たちの異性問題、母の老いへの心配など様々なことが頭を巡る中、最大の懸念事項は青野のことだった。
幾度か別れを切り出すものの、全く相手にされない。
家賃も食費も要らない今の生活を、青野がそう簡単に捨てる訳がない。
美衣子はどうやってこの男を始末するか、頭を捻る。
悩みに悩み、母・桐へ相談した。
母が出した解決策は、想像もしないやり方だった。


午前4時から午後10時までの6月のある1日を描いた作品。
中年男女の人間模様、恋愛模様かと思いきや、最後にとんでもない結論が出され驚く。
いやはや、おそろしい女の物語である。
表題「男の始末」の意味するところを最後に知り、呆然とした。
これまでの著作と同じテイストながら、物語の設定をある1日としたところが新しく、人間というのは1日で様々なことを考え、色々な場所へ出向き、怒ったり笑ったり落ち込んだりするもんだと改めて気付く。
そういう意味で斬新な作品だったが、ストーリー展開は陳腐な部分もあり、これまでの著者の作品のように楽しめた訳ではなかった。
最後に意外なオチがついたものの、とりたてて面白い作品だとは言い難い。
同年齢の女性が軽い気持ちで読む本を探していたら、おすすめする1冊。


<講談社 2004年>


藤堂 志津子
男の始末

mizumizumizu 埼玉県でスナックを経営する現役ママが語るオミズの悩み、笑い話、苦労など本音が詰まったエッセイ。


『そんなオミズの…クーデター』は、或る日突然女の子達が辞めてしまった時の話。
女優であるホステスは様々な嘘をうまく用いて経営者や客を納得させてしまう。
ホステスの口から紡ぎ出されるエピソードに頷き辞めることを受け入れると、後日目と鼻の先の店に出勤している…なんてことは日常茶飯事のようだ。
ホステスが居なければ店はまわらない。
各店、しのぎを削っているのかと驚く。
他にも22編のエピソードが収録されている。


偶然巡り合った著者から頂戴した本書。
エッセイをあまり読まない上に、水商売とは縁が無かったので楽しめるか不安を抱きながら読み始めた。
心配無用、楽しめた。
まず、自分が経験したことない職種や世界を垣間見るというのは当然面白いし興味深い。
偶然「FOXY(宇佐美游)」を読んだ後だったのでなるほどと思いながら読み進める部分も多かった。
仕事のことだけじゃなく経営者としての思い等も描かれており、深かった。
ちょっとホロリときてしまうエピソードもあった。
異業種を覗くのは楽しい。


<文芸社 2005年>


月谷 小夜子
女に酔わず酒に酔え―オミズ物語り

hitorigurasi 男にだらしない女、実家を飛び出す女、 昼夜働きながら家を買おうとする女、プロポーズに揺れる女。
4人の女の複雑な恋心とひとりで居ることを選ぶ様子を描く短編集。


『家路』の主人公は日菜子。
専門学校卒業後、OLとして働いていたが「マイホームが欲しい」と思い夜のバイトを始めることにする。
いくつか面接を受けた結果、「ラルゴ」で働くことになった。
週に3日、カウンターの中でお客の相手やお酒を作ることが日菜子の仕事だった。
年齢不詳のママ、明らかに年をごまかしているやさぐれた冬子が「ラルゴ」のメンツだった。
少しずつ仕事に慣れ、日菜子びいきの客も出てきて順調に毎日が流れていった。
「マイホーム」の為に菓子パン・おにぎり・カップラーメンで食費を節約し、毎月数十万を貯金していった。
日菜子がどうして「マイホーム」に拘るか。
それには悲しい日菜子の生い立ちが関わっていた。
或る日自分が理想とする物件に巡りあい、日菜子は絶対にその家を買うんだと誓う。
あまりに深く強い思いで「マイホーム」を望むあまり、切羽詰った日菜子は「ラルゴ」の客にお金を借り始める。
思ったより簡単に客はお金を振り込んでくれた。
日菜子は思い上がり、次々と客に連絡をしお金を用立てて貰いはじめる。
そんなことがうまくいくはずもなく、ママの知れるところとなりクビになる。
その時はじめて、様々なことから日菜子は目覚めるのだった。


藤堂志津子らしい短編集で、大人の女の視点での「ひとり」を選択する女性の心理を描く。
平成11年に単行本として発売された作品集だが、6年経過した今も色褪せずに読める。
若い時に藤堂志津子を読んだ時はあまり共感もできず面白いとも感じなかったのだが、この2年くらいは読みまくっている。
年齢と共に、好きな作家や共感出来る物語に変化があるのだと改めて感じている。


<文芸春秋 2002年>


藤堂 志津子
ひとりぐらし (単行本)


藤堂 志津子
ひとりぐらし (文庫本)

jisatu 分類に困る作品。
日本が自殺を承認し、お手伝いまでしてしまうという法案が出来てからの混乱や人々の変化、そして衰退までを描く長編の衝撃てきな作品。


20XX年の或る日、日本で「自殺自由法」施行された。
「日本国民は満十五歳以上になれば何人も自由意志によって、国が定めたところの施設に於いて適切な方法により自殺することを許される。但し、服役者、裁判継続中の者、判断能力のない者は除外される。」
それが、「自殺自由法」だった。
秘密裏に自殺を幇助する、公共自殺施設「自逝センター」の広告が街に溢れる。
自ら人生を閉じようと、センターへ向かう者。
センター行きの白いバスに並ぶ者。
自殺したいと迷い自殺の名所へ行って、センターの事を知る者。
自殺を望む者には素晴らしい施設、と思われセンターには長蛇の列が出来る。センターはいつも人で溢れかえる。
疲れたから死ぬ、未来が無いから死ぬ、ダルいから死ぬ・・・
センターに向かう者の理由は、いじめや借金苦等といった理由では無くなっていた。
しかし、自らが自殺を望まない者もセンターへ招致されるようになる。
前科を持つ者や生活保護を受ける者はセンターへ斡旋されたり、センターから勧誘が来たりする。
洗脳のようにセンターへの勧誘を受け、気付いたらセンター行きのバスに乗ってしまう。

センターへ向かう者や自殺を望む者についてのショートストーリーが次々出てくる。
若者から老人まで、会社員からフリーターや無職、タレントまで登場する。
突然現れた「自逝センター」の存在により、国民の人生が揺れていく様を描く。
そして、センターが閉館された後の日本までを描き、物語は終わる。

ブラックユーモア作品でもあり、近未来モノでもあり、バトルロワイヤルのような感じの作品でもある。
途中のエグい表現や、人が人を殺したり死ぬことに対しての軽さが恐ろしくなる。
死ぬ自由ってなんだろう?
自逝ってなんだろう?
最初は軽い気持ちで読み進められるが、次々新しい人々がこの法案に関して考えたり悩んだり死んでいったり迷ったり泣いたりしているのを読んでいると混乱してくる。
そして、鬱々とした気分になる。
でもページを進めてしまうし、読み終えたいと思わせる何かがこの作品にはあった。
自殺というキーワードに以前から興味を抱くタイプの私は、鬱々としながらも興味津々に読み進めた。
あとがきで著者は書き終えてから数日鬱状態だったとあるが、それは当然だと思う。
精神状態が良い時でも多少ダメージを受けると思うので、参ってる方にはおすすめできない。


<中央公論新社 2004年>


戸梶 圭太
自殺自由法