恋ひらり / 島村洋子

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koihirari 昨年放送されたドラマ、「今夜ひとりのベッドで」から生まれた装幀の本を単行本化した企画もの。
永遠の怖さと、悲恋を描く長編恋愛小説。



主人公・山口珠輝がレンタルビデオ店で知り合った年下の青年・文也と交際しはじめるところから物語りは始まる。
この時の珠輝は29歳。文也は3つ年下の27歳だった。
珠輝は事情があり、だいたい1年ごとに職場を変えている。
まじめに仕事をこなし、周囲とつかず離れずうまくやる珠輝を本採用したいと言ってくれる職場も少なくなかったが、珠輝は常に職場を転々として生きている。
引越しも多い。
珠輝はある治験に参加したことから、1年に200万の報酬が常にあるのでアルバイト程度の仕事をこなしていれば、それなりの暮らしを送ることができた。
誰とも深く関わることをせず、職場と家の往復が基本の珠輝の暮らしに文也との出会いが生じた。
珠輝はその時、いくつか持つ名前の1つである有美を名乗った。
文也との関係が深くなるにつれ、不安は大きくなるが、それでも珠輝はほんの一時の幸せを感じるくらい構わないではないか、と思っていた。
そんな時、絹子から連絡がある。
絹子は同じ治験を経験している女性で、治験によって起こる様々な症状や他の治験体験者の情報を教えてくれる人で、珠輝が唯一常に連絡を取っている女性だった。
大恋愛の末に相手の親に反対され辞めてしまった結婚、その元恋人との再会。
文也との関係。
自分の身体の異変。
そして、珠輝に哀しい最後が訪れる。


不思議な物語りである。
有り得ない設定ながら、なんだか夢中になり読んでしまうストーリー展開はさすがである。
主人公、その恋人、父、祖母、友人など様々な視点から描かれており物語のテンポが小気味良い。
久々に一気に読んでしまった。
普通の恋愛小説に飽きてしまった方にオススメの1冊。

<光文社 2005年>


島村 洋子
恋ひらり

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カタブツ / 沢村凛

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katabutsu 真面目な人間を主人公にした、意表を突かれるどんでん返しの結末が待つ切なく深い短編集。


『とっさの場合』の主人公・私は幼稚園に通う息子と夫の3人暮らしだ。
時々息子が死ぬ夢を見ることが悩みである。
友人・留奈は「メディア・コンプレックスだ」と指摘した。
その後も息子が死ぬかもしれない、とっさの時に何も出来ないかもしれないという強迫観念にかられる私。
留奈は「訓練をしてとっさに対応できる人間になればいいのだ」と言い、私に様々なイメージトレーニングを課す。
私は過去に“強迫神経症”だったことがあり、再発かもしれなかった。
しばらくして職場の異動があり、何が理由かわからないままおさまったのだった。
しかし再び私を心配事が襲っていた。
留奈に指示されるままイメージトレーニングを続ける。
留奈の存在を夫に指摘され動揺する私だったが、或る日その「とっさ」の瞬間が訪れたけれど、その時に目にした光景と抱いた想いは私と家族たちの今後を分ける大きな出来事になった。


この作品だけではなく、不思議な心理を突いたストーリーが多い。

誰しもが抱いているかもしれない心の奥底に潜む何かをこっそり扱っているようなイメージを受けた。
真面目過ぎる故に起こる事件や悲しみ、真っ直ぐ過ぎるからこそわかってしまったり見つけてしまう真実。
それを一気に読ませる面白い短編ばかりだった。
あとがきに著者がこの作品に対してどう挑んだかとか、作品に関する思惑などが記されていて全て読む前に読んだので気になってしょうがない部分があった。
ミステリーと言えばミステリーにも該当するし、面白い本だと思う。
後味のいい作品ばかりではないが、嫌な気持ちも広がることなくその顛末を見守れるのもいい。
読み終えた後、「カタブツ」とはうまいネーミングだと思った。


<講談社 2004年>


沢村 凛
カタブツ

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narata 大学二年になって高校の頃想っていた先生から連絡があり、あの頃へ引き戻される女学生と先生の切なくて儚い恋の物語。


主人公・工藤泉は大学生。
両親はドイツへ赴任中で、ひとり暮らしをしていた。
或る日、社会科の教師で泉が所属していた演劇部の顧問だった葉山から電話がかかってきた。
泉も所属していた演劇部の部員が減ってしまい公演が難しいので協力して欲しいと言う。
「本当にそれが理由か」と尋ねる泉に、葉山は「ゆっくり話したいと思った」と答える。
高校三年の時に赴任してきた葉山は、泉が対面していた他の生徒との問題を察し優しくしてくれた教師だった。
そして、泉の好きな人だった。
葉山は心に深く傷を負っていることを知っている泉に、時々救いを求める。
泉は一方通行でも構わないから、そんな葉山の側に居たいと考える。
週末を使って母校へ通い、現役演劇部員とOBを交えた公演の練習がスタートする。
週に一度は葉山に会うことになり、少しずつあの頃のように会話を交わしていく二人。
泉は凍っていた思いが溶け出すのを感じながらせつない日々を過ごす。
OBだけでは足りないメンバーに、OBの大学の友人・小野が加わる。
小野は泉に恋をし、想いを告げる。
泉は葉山を想い一度は断るものの、葉山との微妙な空気や手に出来ないんだと実感する現実に耐えられず優しい小野を受け入れることを決める。
小野との交際は普通の大学生の恋愛で、楽しく日々は流れた。
しかし、ある晩かかってきた葉山からの電話で再び泉の心に亀裂が走る。
現役演劇部員の死、葉山が更に傷つく出来事、小野の別れなど、様々なことが泉を襲う。
葉山への思いを断ち切れない泉と、泉を想いながらも捨てられないものがある葉山を描く長編。


最後の、泉が社会人になってからの数ページでなんだか堪らなくなり泣いてしまった。
久々に恋愛小説を読んで泣いてしまった。
こういった類の恋愛小説に感情移入することは少ないのだが、気付いたらごっそり心を持って行かれていた。
主人公たちの危うさや歯がゆさに襲われ、ページをめくる指が焦った。
一気に読んで、読み終えてから凄い疲労に襲われた。
誰かを想い、愛することはこんなに深かったんだなと思い、自分はそんな恋をしたことがあったろうかと考えた。
私はこんな恋愛をしたくはないと結論を出した。
『ナラタージュ』という名のとおり、今→過去→今という全体の構成が素晴らしく生きている。
最初の今を読んで途中「ああ、こういうことか」と思ったのは全く間違いで最後の今には凄く現実的な結末と理想的な結末が待っていた。
ある程度、恋愛の経験をした人間の方が心にずしんとくる小説だと思う。
期待を裏切られることなく、読み終えられた1冊。


<角川書店 2005年>


島本 理生
ナラタージュ

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shortcut 遠距離恋愛をする男女が出会い、心の隙間を埋めたり、本音を話したりする時間を淡々と描く短編集。


『やさしさ』は彼氏が遠くににいる矢野が主人公。
友人が経営するカフェの一周年記念パーティーの帰り道をちょっと気になる片野くんと歩いている。
片野くんは自転車に乗ってきていたが、矢野が歩くと言ったら一緒に途中まで歩いてくれると言う。
片野くんは映画を作りたい男で、矢野は映画部だった女だ。
映画についての熱い思いや、なんてことない会話が延々と夜の大通りで続く。
片野くんと付き合いたいとか好かれたいとか思っているんでもないが、片野くんともっと話したいと思っていた矢野はこの時間を楽しみ愛しいと思っていた。
途中、東京に居る恋人から1日1回の電話があった。
今日のこと、今のことをさらっと話電話を切る矢野。
恋人のことが頭を過ぎり、この先どうするのかを思い巡らせる。
その横で片野は東京に住む恋人の話をしたりする。
そんな夜の翌日、矢野は移動の電車の中で仕事が終わったら恋人に電話して思っていることを話そうと決めた。


以前読んだ『フルタイムライフ』と同じ様に、主人公の日常が淡々と綴られる。
主人公が居る場所や背景がくっきり浮かぶ。
主人公のせつない想いや小さな触れ合いや交流がすっと心に入ってくる。
若者らしい台詞やシチュエーションに忘れていた気持ちを思い出すようなところがある。
面白いとか最高だとかはっきりした感想は抱かないものの、読みやすく心に広がる何かがある本だ。
関西訛りがいい味を出している。
20代向けの1冊かもしれない。


<河出書房新社 2004年>


柴崎 友香
ショートカット

百年の恋 / 篠田節子

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100love 年収200万のSF小説の翻訳とライターを生業とする男と、その4倍の年収のエリート銀行員の女がひょんなことから知り合い結婚するが、その結婚生活は決して穏やかな幸せに包まれてはいなかった。
フリーライターで収入は低いがきちんと家事をこなし身の回りを整えて暮らす男。
仕事をバリバリやり豪華なマンションに暮らし流行のスーツを着こなすが仕事以外のことは出来ない女。
NHKでドラマ化もされた、一見不釣合いな二人の山あり谷ありな結婚・出産・子育て生活を男性の視点で描く長編小説。


主人公・真一はしがないフリーライターだ。
好きなSF小説の翻訳で生計を立てたいが、それだけでは食っていけないのでビジネス関連誌でライターのようなこともしている。
或る日請け負った仕事は信託銀行でバリバリ働く女性のインタビューというものだった。
気乗りしないまま向かったそこで出会った梨香子は、ちょっと年上の才色兼備を兼ね揃えた女性だった。
飛行機の話で盛り上がってしまい、とんとん拍子でセスナデートをし、結婚に至る。
決してカッコいいとは言えないルックスで周りの女性ライター達から「三低」と呼ばれている真一が、なぜこんな美人でキャリアウーマンな梨香子と結婚したのか、真一自信もあまりのスピード婚に驚いていた。
一緒に暮らし始めて知ったのは、梨香子に家事能力が一切ないことだった。
掃除・洗濯・料理など、普通ならば女性が結婚したらするであろう家事一切を放棄し、仕事に邁進している。
結局自宅で仕事をし、時間の余裕がある真一が家事をこなすことになってしまう。
何の労いもない上に、仕事で苛々すれば当たり散らされ、責めれば逆上し、残業だ出張だと落ち着かない梨香子にとうとう我慢の限界を感じた真一は離婚を申し出ようとする。
しかし、気付けば妊娠4ヶ月。
離婚どころではなく、落ち着かない日々が続く。
梨香子は結局臨月まで産休を取らずに仕事に没頭する。
自宅で2人過ごすものの、噛み合わない。
梨香子の周りには選ばれし男が揃い、真一は不安を覚える。
合間に仕事をこなしながら、自分を保ち家庭を守り夫婦関係を築く努力をする真一。
しかし、その努力空しく喧嘩、苛立ち、我慢、家事…
その連続に離婚を考えまくる真一だったが、生まれた子供は自分そっくりの赤ちゃんでまたしても気持ちに変化が生じる。

未婚ライターたちからの非難や嫉妬や叱責、既婚者の男だちの助言やアドバイスなどリアルで読んでいてウムウムと頷いてしまうことが沢山あった。
また、結婚してから知る相手の一面に辟易する瞬間や、男はやはり女が家事をして家庭を守るものだとどこかで思っていることやそれが望ましいのだと信じて止まないことなども生々しく、結婚生活を送る私には琴線に触れるものがあった。
真一が綴る結婚・出産にまつわるメルマガの下りは男性の本音を垣間見ることができ面白かった。
一人がいいと思えるのは、二人だからである。
一人より二人がいいよ、ということを改めて教えてくれる1冊


<朝日文庫 2003年>

篠田 節子
百年の恋 (文庫本)



篠田 節子
百年の恋 (単行本)

1000koi 時々読んでいた「ウフ」での連載などをまとめた短編連作小説集。
若い男女を著者らしい視点で描くほろ苦い恋の物語が綴られている。


『夏めく日』は女子高生の佐伯が主人公。
夏休みの少し前に学校に残り解けない数学を相手していた時の数時間の出来事。
石田先生に話し掛けられた。
今日中の宿題なのだと言うと少し手伝ってくれて無事解決した。
石田先生はもうすぐ結婚する。
地理の片倉先生と結婚する。
そして、異動する。
佐伯は石田先生が好きだった。
石田先生にあれこれお願いしてみたいけれどうまく表現できなくて、図書館の中で手をつないで歩くと言うことだけは受け入れて貰え歩いた。
ほんの少しのその時間が、佐伯の心に響く。
繋いだ手から染み渡る何か、もっと話したいことがあった、見ていたかった。
若さゆえの恋心がきれいにまとまっている。


同性の親友にほのかな恋心を抱く女に恋をする男、大好きな彼氏にふられたことを元彼に相談する女、同級生のかわいい女の突拍子もない動きに手を焼く太った男、軽い気持ちで付き合った女には深い傷があり困惑する男など、みんな誰かを好きで何かを大切にしているけれど、なかなかうまく届かない。
切ない気持ちになりつつも、最後には試みたされる答えが用意されているような、純粋な恋愛小説集。
ほろ苦い時間や日々を忘れかけていた気持ちを思い出せる心地よい1冊でよかった。
また、著者のセンスの良さが光っている短編とも言える気がする。
純粋な恋愛小説を求める方にはおすすめの1冊。


<マガジンハウス 2005年>


島本 理生
一千一秒の日々

umamori 女子大生の失恋の傷の深さと、再生への道を描く。
自虐的で繊細で危うい主人公の心と、彼女を取り巻く人々の姿が心にスッと入ってくる不思議な作品。


主人公・野田は大学生だ。
通っていた予備校の先生・サイトウに心惹かれ、サイトウと少しずつ親しくなっていく。
離婚したばかりのサイトウとの時間を積み重ねるうちに、野田は少しずつ壊れていく。
その恋を失った痛みから再生したくて、同級生が帰省する間だけ部屋を借り、独りになることにした。
野田の心の痛みはそれだけではなかった。
野田は中絶していた。
でもその父親はサイトウでは無かった。
両親とのギクシャクした空気も辛く、野田は独りになることを選んだ。
初めてのひとり暮らし。
高校の同級生・キクとその家族との触れ合い。
部屋を貸してくれたカヨの元恋人との時間。
漫画喫茶でのバイト。
野田は普通に毎日を過ごしながら、周りの人々に支えられながら、少しずつ再生していく姿を描く。


著者の作品は2作目だが、これまた淡々とした日常を切々と描くといった作品だった。
読みやすくあっという間に読み終わる。
そして、心に何かが残る。
はっきりと「好き」とか「嫌い」とか「つまらない」とかそういった言葉は浮かばない。
淡い何かが少しずつ心に残る。
年代モノのワインの澱のような感じで読み進めるうちに心に沈殿し、それが何かは今もわからない。
けれど、こころにスッと染み込み、なんとなく納得していく。
主人公の生き方や、この物語の設定などに共鳴はしないが、なんとなくわかるしそれに違和感を感じない。
この淡さが、著者の作品の魅力なんだろうか?
他の作品も是非読んでみたいと思った。


<講談社 2004年>


著者: 島本 理生
タイトル: 生まれる森

littlebylittle 高校生作家の作品が芥川賞候補作となり話題になった作品。
複雑な家族、穏やで淡々とした日常を描く。 主人公・ふみは高校を卒業しバイトをして暮らしていた。
進学するつもりが、親が離婚し学費を捻出出来なくなったので学費を貯めてから、ということになったのだ。
母親と異父姉妹のユウちゃんと3人で暮らしている。
家族は仲良くやっているし、バイトも嫌ではないし、ふみは特に不満なく毎日を過ごしていた。
或る日、母の勤める整骨院に「ふみちゃんが好きそうな男の子がやってきたわよ」と母が言う。
その言葉が気になってではないが、ふみは整骨院に行って治療を受ける。
そこで出会ったのが、キックボクシングをしている周だった。
いまどきの若者とは違い、真面目で一生懸命で穏やかな青年・周に惹かれるふみ。
二人は少しずつ距離を縮めていく。
恋、バイト、家族、その周りの人々。
ふみの日常が淡々と綴られる。

起承転結を求める作品ではない。
穏やかにはじまり、穏やかに終わっていく物語で、本当に普通の毎日がある秩序を持って描かれているような気がする。
それが著者のペースなのかもしれない。
著者の作品は初めてだったが、久々に読んだ後に○や×をつけにくい作品だったので余計に他の作品が気になってしまった。
つまらないとも言えない、面白いとも言えない、でも嫌いとも言えない、インパクトも無い。
なんとも透明で空気や水のような存在の作品で感想を述べ難い。
あとがきにある「ささやかな日常の中にたくさんの光を見つけ出すような小説をこれからも書きたい」というのがなんとなくわかる。
そうなのかもしれない。
この小説は、ささやかな日常に1日1度は差す光を掬い取って描いているのかもしれない。
でも途中途中に出てくる父親からの虐待的描写や、ペットの死についてのくだりは穏やかでは括れない。
実は奥が深かったんだ、と今思う。


講談社 2003年


著者: 島本 理生
タイトル: リトル・バイ・リトル


himawari12 男性の視線から描く、切ない過去を持つ人々を描く作品集。


『淡水魚』の主人公・小柴は広告制作やマーケティングなどを行う中小企業の専務である。
妻の父親が経営する会社に入社して5年が経過していた。
義父の出版する書籍のゴーストライターなどをしながら忙しい日々を送っていた。
忙しいが、毎日が幸せであるとか、充実していて満たされているとか、そういうことは無く、疲れていた。
そんな或る日、親友の野本からファックスが届く。
真希の母親が死んだことを伝える内容だった。
忘れたくても忘れられない真希のことを思い出す。
そして、野本の寄越した文面から野本の怒りを感じ、小柴は真希の経営するスナックへ向かう。
真希は相変わらずきれいで元気だった。
壁の水槽にいる淡水魚を昔プレゼントしたこと、自分が辛い時に支えてくれたことなど、様々な過去の思い出が蘇る。
真希との関係は、今の妻との結婚を選んだことで終わった。
全て小柴の勝手だった。
しかし真希は嫌味を言うこともなく、時々こうして店を訪れれば客として笑顔で迎えてくれていた。
真希の母親へのお悔やみを伝えると、真希から「母から預かっていた」という手紙を渡される。
真希との交際中、一度も会うことがなかった真希の母親。
後ろめたい思いの中で小柴は手紙を読み、何かがストンと落ちるのを感じた。


男性作家のこういったタイプの本を読むのは久々で、読んでみたら新鮮でするすると読み進めることが出来た。
誰にでもある忘れたい過去や、処理できない思い出。
そういったことをテーマに死や裏切りなどを絡めた物語が5つあり、読んでいるとその世界にスッと入れて、私には合っていた。
女性作家の作品を選ぶ私だが、少し男性作家にも目を向けてみようと思えた。


<講談社 2004年>


著者: 白川 道
タイトル: 十二月のひまわり

aobadai2fun 早大自転車部初の女子選手として活躍し、その後は自転車関連雑誌の編集者・記者生活を経験した著者が、自分の大学生活~結婚生活~自転車店回転までを綴る壮絶な記録。


著者・18歳から本書はスタートする。
大学一年の著者は酒浸りだった。
下宿近くの赤提灯で夜な夜なひとり酒。
労働者や水商売の女たちと肩を並べ酒を楽しみ、日々泥酔していた。
あまりの堕落振りに下宿を追い出された著者は思い直し、埼玉の大学近くにアパートを借りて新生活をスタートさせる。
居酒屋の仕込みのバイトに精を出し手元に貯まった10万円で、神様の思し召しなのではと思うような運命の出会いをしたロードレーサーを購入したことで、自転車と出会う。
しかし、このロードレーサーは呆気なく盗まれてしまう。
盗難事件後、大学の体育の授業で「自転車」を選択出来ることをしり夏休みの短期合宿に参加した。
そこから女子選手としての生活へ繋がるとは、著者は思いもしなかった。
自転車に魅せられ自転車部に入部し、選手として活動、女子部員の増加とライバル登場、事故で呆気なく選手生活終了など大学生活の中で、既に著者の生活は波乱万丈である。
その後、大学入学の当初の目的であったカウンセラーへの道を志すものの二ヶ月で断念。
自転車部の師匠の紹介などでバイトをするものの満たされず、自分から自転車雑誌の編集者に応募し採用される。
編集のへの字も知らないところからのスタート、山あり谷ありの編集者としての日々、記者もどきとして著者ならではの記事を作り上げる苦労の日々。
その後身体を壊し退社。
闘病生活の後、フリーライターと結婚、夫の独立と落ち着かない日々が続く。
長い時間をかけて事業を始めるのだが、途中には妊娠やお金の問題なども出てくる。
穏やかとは縁遠い壮絶な自叙伝となっている。


10代後半の大学生活から30歳に突入するまでの波乱万丈な日々を力強く綴っていて一気に読めてしまう。
勢いのある文章に後押しされるように次へ次へと焦ってしまうくらいのスピード感がある文体は、気持ちよかった。
軽い気持ちで読み始めたが、気合の入った著者の人生にショックを受けた部分もある。
自分には無い力強さがここかしこに散らばっている。
一筋縄では行かない出来事ばかりだが、それらの様子が読み応えたっぷりでいいのだ。
とにかくエネルギッシュで挫折や失敗が沢山あるものの、自分の力や周りの援助などで次へつなげていく様は尊敬以外の言葉が浮かばない程だ。
エネルギーをチャージさせてくれる1冊だった。


小学館 2005年


著者: 鈴木 カオリ
タイトル: 青葉台駅チャリンコ2分