直木賞作家の著者の7つの物語が盛り込まれた短編集。


『愛ランド』は40代後半の同期の女性2人と、ひと回り離れた後輩1人の定期旅行を舞台にした物語である。

佳枝が鶴子を旅行に誘ったのは2年前だった。
大して親しくもなかったが、ちょっとした出来事から会話を交わすようになり旅に誘われたのだ。
最初は面食らったものの、同期も減ったことだしと軽い出来心から旅行を承諾した。
そこへ佳枝が親しくしている後輩・菜穂子が加わったのだ。
今年の旅行先は上海だった。
上海では菜穂子が予約しておいてくれたエステへ佳枝と鶴子が向かった。
聞いていたのとは全く違う、想像もつかない施しを受けた二人は驚く。
そのことを夕食の席で菜穂子に問い詰め、そこから端を発し告白大会がスタートする。
鶴子が告白した、ある島での出来事に面食らう二人。
まさか嘘だろうと言う二人に、真実の話だと真顔で答える鶴子。
「来年の旅行はその島にしないか」という鶴子の提案に、慄きながらも乗る二人なのだった。

女のエグさや深さを描かせたらピカイチだと思っている作家の1人の著者だが、本作ではその才能が秀でていた。
表題作『アンボス・ムンドス』も素晴らしい作品だった。
実際に有り得そうで、絶対無いだろうというギリギリのラインを辿る物語ばかりで頁がどんどん進む。
久しぶりの読書だったが刺激的な1冊だった。


<文藝春秋 2005年> 




桐野 夏生
アンボス・ムンドス

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