jisatu 分類に困る作品。
日本が自殺を承認し、お手伝いまでしてしまうという法案が出来てからの混乱や人々の変化、そして衰退までを描く長編の衝撃てきな作品。


20XX年の或る日、日本で「自殺自由法」施行された。
「日本国民は満十五歳以上になれば何人も自由意志によって、国が定めたところの施設に於いて適切な方法により自殺することを許される。但し、服役者、裁判継続中の者、判断能力のない者は除外される。」
それが、「自殺自由法」だった。
秘密裏に自殺を幇助する、公共自殺施設「自逝センター」の広告が街に溢れる。
自ら人生を閉じようと、センターへ向かう者。
センター行きの白いバスに並ぶ者。
自殺したいと迷い自殺の名所へ行って、センターの事を知る者。
自殺を望む者には素晴らしい施設、と思われセンターには長蛇の列が出来る。センターはいつも人で溢れかえる。
疲れたから死ぬ、未来が無いから死ぬ、ダルいから死ぬ・・・
センターに向かう者の理由は、いじめや借金苦等といった理由では無くなっていた。
しかし、自らが自殺を望まない者もセンターへ招致されるようになる。
前科を持つ者や生活保護を受ける者はセンターへ斡旋されたり、センターから勧誘が来たりする。
洗脳のようにセンターへの勧誘を受け、気付いたらセンター行きのバスに乗ってしまう。

センターへ向かう者や自殺を望む者についてのショートストーリーが次々出てくる。
若者から老人まで、会社員からフリーターや無職、タレントまで登場する。
突然現れた「自逝センター」の存在により、国民の人生が揺れていく様を描く。
そして、センターが閉館された後の日本までを描き、物語は終わる。

ブラックユーモア作品でもあり、近未来モノでもあり、バトルロワイヤルのような感じの作品でもある。
途中のエグい表現や、人が人を殺したり死ぬことに対しての軽さが恐ろしくなる。
死ぬ自由ってなんだろう?
自逝ってなんだろう?
最初は軽い気持ちで読み進められるが、次々新しい人々がこの法案に関して考えたり悩んだり死んでいったり迷ったり泣いたりしているのを読んでいると混乱してくる。
そして、鬱々とした気分になる。
でもページを進めてしまうし、読み終えたいと思わせる何かがこの作品にはあった。
自殺というキーワードに以前から興味を抱くタイプの私は、鬱々としながらも興味津々に読み進めた。
あとがきで著者は書き終えてから数日鬱状態だったとあるが、それは当然だと思う。
精神状態が良い時でも多少ダメージを受けると思うので、参ってる方にはおすすめできない。


<中央公論新社 2004年>


戸梶 圭太
自殺自由法