日曜日たち / 吉田修一

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芥川賞、山本周五郎賞を受賞し、最近では原作とは全く違う内容になってしまったがドラマ化された『東京湾景』の作者の〝日曜日〟をテーマにした短編集である。

東京で暮らす人間の様々な〝日曜日〟が5つ収録されている。
表題作の『日曜日たち』は、親に反対されながらも上京した乃里子が主人公だ。
仕事を転々としながら15年東京に居る乃里子の引越から物語りははじまる。
10年余り住んだそのアパートを去るには、理由があった。
それは、昨今珍しがられなくなったDVである。

普通に出逢って恋をして、どうして関係が歪んでいくのか。歪んだ関係はそう簡単には戻らない。
戻らないとわかっていても離れられない。それが恋人というものかもしれない。
様々な感情と葛藤し、プライドとも闘っていた乃里子は、或る日なんとなく聴いていたラジオで自分に起きている類のトラブルを扱うNPO団体を知り、団体施設の門を叩く。
その施設で出会った幼い兄弟との偶然の再会を通して、自分が東京で過ごしてきた長い月日を感じる。
そして、新しく自分がこれから生きていく道を導きだす迄が淡々とした文体できれいにまとまっている。
感動と焦燥感をうまく混ぜ、現代社会の情景を描いているこの短編を含めた全5作。
のんびりとした日曜に、ちょっとせつない日曜にお薦めの1冊。

<講談社 2003年>

著者: 吉田 修一
タイトル: 日曜日たち
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