伝言

ただいま、桜井は体調を崩し入院しております。

申し訳ありませんが年内いっぱい更新できません。

また、TBやメッセにも返信が出来ない状態です。

申し訳ありませんがご了承ください。

代理人より

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minoarimatdu 家族をテーマにした、エッセイなのか、フィクションなのか、自叙伝的な一面を見せる短編集。

『背中』は、就職したばかりで仕事に夢中な私が主人公。
忙しくしている毎日は充実感に満ち溢れ、働いても働いても働き足りない程だった。
弟は独立し、私は両親と暮らしているが顔を合わせることは殆ど無かった。
父は長年勤めた会社を退職し、事業を始めていた。
母はその手伝いと、慣れない経理を学ぶために夜は学校へ通っていた。
皆、それぞれ忙しくしていた。
そんな中、母は自転車に乗りたいと言い出した。
危ないからバスで通えばよいと言うと、バスは遠まわりになるし自転車のが早い。何よりパパと一緒に2人で会社に通いたいのだと言う。
幼い頃、父に支えながら私も自転車の練習をしたことを思い出す。
そして、自分のことで精一杯で両親の状況を知ろうともせず、2人に背中ばかり見せている自分に気付くのだった。


21の物語が収録されており、友人と結婚観について語る『結婚』も既婚者としては心に残る1編であった。
ヴァンテーヌに連載されたものをまとめているようで、読者層に合った20代で仕事を持つ女性の心に響く物語が多かった。
読者層に当たる年齢ではない私のような30代の人間でも感じるところがある1冊。


<新潮社 2000年>


光野 桃
実りを待つ季節 (文庫本)


光野 桃
実りを待つ季節 (単行本)

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minaiku 信じられるのは自分だけ。
何かが自分から消えていく、どこかへ行ってしまって残るのは自分独り。
そんな物語が12収録されている短編集。


『片恋症候群』の主人公・鹿島は独身女性。
彼女には気になる同僚が居る。
或る日、ただ彼の家が意外と近いと知り軽い気持ちで訪れたらゴミを捨てる彼に遭遇してしまった。
なぜか私はそのゴミ袋に手を伸ばし、持ち返ってしまった。
あれから3回、ゴミを盗んでいる。
ゴミ袋の中からはDMや領収書、使用済みの割り箸、購読してるらしい週刊誌などが出てきた。
もっと刺激的なもの---例えばラブレター的なものやコンドームなどがあるかとうっすら抱いていた期待はことごとく裏切られ、彼の素朴で優しい人柄のままのゴミが出てくるだけだった。
彼に恋したのは些細な出来事からで、何度か食事やデートのようなことをするところまで行ったものの、鹿島の告白を彼は受け入れることはなかった。
そんな中、思いつめてゴミを盗んでしまったのだ。
3回目のゴミに、とうとう決定的なモノを見つけてしまった鹿島。
それを機に鹿島は再び行動に出る。
そんなことをしても彼は手に入らない、更に逃げられるだけだとわかっているのに、自分を止めることが出来ない。


その他、恋愛と結婚は違うと考える既婚女性のセックスと家庭を描く『まくらともだち』等、心に小さな闇を抱え、個人の性を押さえきれない人々を描く痛々しい物語ばかりが収録されている。
共鳴していいものか、とても迷う作品ばかり。
ただ、誰にでもこんな思いは潜んでいると感じるし、紙一重で同じ行為に至るかもしれないという恐怖を感じた。
人間の深層心理を描く面白い短編集である。


<角川書店  1997年>


山本 文緒
みんないってしまう (文庫本)


山本 文緒
みんないってしまう (単行本)

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jidokisho

第105回芥川賞受賞作品。
人を起こすという変わったバイトに就く青年と眠りについて描く不思議な作品。


主人公・ぼくは、聡という植物に詳しい青年と一緒にバイトをしている。
そのバイトというのは、大手通信社内にある仮眠室で眠る社員を希望の時刻に起こすという「起こし屋」という特殊なアルバイトだった。
夜勤シフトなのはもちろん、寝起きがいい者ばかりではないので、決して楽なバイトとは言えない。

しかし、ぼくはそれなりに楽しんで勤務していた。
同僚の聡の不思議な魅力にも惹かれていた。
ブラックリストに載せてやりたい程、起こす度に腹立たしい気持ちになる社員も複数居る。
しかし、聡はそんなムカツクやつさえ上手に起こしてしまうテクニックの持ち主だった。
仮眠室に居るのに眠れないままで過ごし、起こしに行くと起きている謎の社員も居る。
そんな不思議なバイトの中で、眠りについての不思議さや面白さや恐怖を複数体験していく。
或る日「自動起床装置」が導入されることになり、「起こし屋」廃業かと焦ったが、そうはならなかった。
「自動起床装置」をテスト導入することが決まった時、聡はそんなのはおかしいと怒っていた。
聡はぼくとは違う意味で、このバイトを続けているんだろうと感じた。
そんな中事件が起き、ぼくはバイトを辞めてしまう。


非常に不思議な作品。
昔放送局で働いていた時に、こういった仮眠室があり利用したことがある。
起こしてくれる人間は居ないので、各自携帯をバイブにしたりして目覚まし代わりに使ったり同僚に起こしに来てもらっていたことを思い出す。
特殊な環境を舞台に、人間の眠りへのこだわりや不思議さ、眠りの深さを垣間見れる作品。
ただ何を言いたいのかとか具体的にドンと胸に迫るものは感じられず、消化不良のまま読み終えた感じで正直なところ感想が書き難い。
親の本棚から適当に読んだのだが、当たりばかりではないようだ。


<文藝春秋文庫 1994年>


辺見 庸
自動起床装置


辺見 庸
自動起床装置


辺見 庸
自動起床装置

二人の彼 / 群ようこ

テーマ:

futarikare 平凡な毎日に待つ想定外の展開、ありがちだけれど自分の上には落ちてきて欲しくないトラブル等を描く短編集。


『やりたい放題』の主人公はジュンコ。
普通のOLである。
或る日は母・マサヨは「好きな人がいるから離婚する!」と父に一方的に通告し家を出て行ってしまう。
かれこれ1年の付き合いになる好きな人がいるとかで、母は離婚を決めたようだった。
離婚届をポンと置き出て行った母の思惑通り、父は印を押して離婚が成立する。
憔悴した父と二人で暮らすジュンコ。
父も怒りや悲しみを日ごと変化させながら消化しているようだった。
或る日ジュンコは結婚することになり、連絡も途絶えていた母・マサヨに電話をし結婚式に参列してもらった。
父と母の事情を飲み込んでくれた夫一家に感謝するジュンコだった。
新婚生活半年後、突然母・マサヨが訪れ恋仲だった男が浮気をしたので出てきたから暫く置いてくれという。
なんて身勝手な!と怒るジュンコをたしなめる夫。
しょうがなくマサヨを泊めたのだったが、翌日マサヨは姿を消す。
マサヨが次に訪れたのは、懐かしいあの人のところと知り、ジュンコは放心する。


短編でクスッとさせてくれるのはやっぱり群ようこかもしれない。
日常生活をテーマにし、その中で見つけるドジな行為、イライラする発言などをうまくまとめて読ませる。
そういうことってあるよね、と思わされる。
真面目に相手をするのが馬鹿みたいだと思っても、つい一生懸命になってしまう。
そして案の定バカをみる。
そんな展開が楽しくて、疲れた心に笑いをもたらしてくれた。
日常生活に有り得そうな物語ばかりで違和感なくさっくり読めて、頭を使わないでラクに読書が出来るのも著者の作品の利点だ。
小難しいことは抜きにして、お気軽に楽しい物語を求める方におすすめの1冊。
何かを得ようと思うと、拍子抜けで楽しめなくなるのでご注意を。


<角川文庫 2003年>


群 ようこ
二人の彼 (文庫本)


群 ようこ
二人の彼 (単行本)

nekobaba 第102回芥川賞受賞作品。
アメリカ在住の少女が突然日本に行かされ、実の親よりも深い関係を築いた叔母たちとの関係を描く表題作と2編が入った中編集。


『ネコババのいる町で』の主人公・恵里子はアメリカで暮らしていたが、実母の意向で日本に居る祖母と母の妹である叔母の元へ行かされる。
一人飛行機に乗って日本にやってきた恵里子を迎えたのは二十歳の叔母だった。
3歳で日本語を一切離せない恵里子を預かり困惑したのは言うまでもない。
それは祖母も同じで引き取ったものの、扱いに困っていた。
やがて生活にも慣れ日本語が達者になり英語を忘れかけた或る日、実母は恵里子をアメリカへ呼んだ。
2年もの間日本で暮らした恵里子はアメリカの実母たち家族とは全く馴染めず、英語での会話にも苦労するようになっており、実母の再婚相手や義妹とのコミュニケーションも難しく、再び日本の祖母と叔母の元へやってくる。
恵里子は再来日してから言葉を話さないまま数年を過ごした。
もちろん日本語はわかっていたが、口を開かず大人たちの会話を聞いて理解するだけで意思の疎通は図らなかった。
祖母の家の隣にはネコババと呼ばれる老夫婦が住んでおり、猫を飼っていたり野良猫の世話をしていた。
ネコババは不在の時に世話を頼むネコバンの若い女を雇っていた。
その家に入り浸り、猫と戯れたりネコバンやネコババ夫婦の会話を耳にしたりしながら心をほぐしていくのだった。
或る日恵里子は野良猫が死んでいることを告げるために口をきき、それから会話をするようになった。
祖母と叔母との暮らし、実父との再会、叔母の男運、ネコババ達の日常。
恵里子はその中で成長し結婚し家庭を築いた或る日、祖母と叔母は亡くなる。
二人の人生はなんだったのか・・・実の親よりも深い絆で結ばれていたであろう二人のことを想う恵里子であった。

教科書に載っていたような、懐かしい感じの文体で久しぶりにこういった文章を読んだと感慨深かった。
残酷なシーン、過剰な性描写などもなく、本当に国語の教科書を読んでいるかのような気分で読み終えた。
ホラーやミステリーも好きだし、大人の恋愛小説も好きだが、どんな年代でも読めて一緒にその本の感想を言い合える世代を選ばないような小説もいいなと改めて思った。
何の気なしに父の書棚にあったものを手にして読んでみたのだが、他にも掘り出し物があるかもしれないと期待してしまった。
懐かしい気持ちになれる1冊。


<文藝春秋 1990年>


滝沢 美恵子
ネコババのいる町で (文庫本)


滝沢 美恵子
ネコババのいる町で (単行本)

siwon BoiledEggsOnline で連載されているエッセイをまとめたもの。
作家・三浦しをんのオタクでハードな日常をのぞける。


『ぶらりにっぽん大阪の旅』は著者が大阪までふらりと行った時のこと。
本人はふらりのつもりは無く、大好きなバンドのライブを見る為に意気揚々と(?)行ったのだが、はたから見ればふらりと行ったようにしか見えない軽装だったらしい。
その気軽さ、表題の通りの「ぶらり」感覚は大事だと思う私は至極共感した。

好きなアーティストが居ておっかけ行為をする、旅先でも大好きな漫画を探して古本屋を巡る、お金に困りPHSが止まるなど著者の作品からは感じられない「素」の感じがたまらなくおかしい。
もちろん文才は充分な作家なので日記のようなエッセイでも笑えるツボや読ませる箇所をきちんとこしらえている。
飽くことなく最後まで読めてしまうのは言うまでもない。
久々にエッセイを一気に読んだが、自分のプライベートと合致する箇所や年齢が近いことで親近感を覚え、著者のファンになりそうだ。
楽しくって日記のような感覚で読めるエッセイを探している方におすすめの1冊。


<新潮社 2002年>


三浦 しをん
しをんのしおり (文庫本)


三浦 しをん
しをんのしおり (単行本)

xmas あたたかい恋も、せつない恋も、別れも、全てはクリスマスに繋がっている。
人気作家6名がクリスマスをテーマに様々な物語を紡ぐアンソロジー。


『セブンティーン』は奥田英朗の作品。
主人公は17歳の娘と中学生の息子を持つ母親。
クリスマス間近の或る日、娘が「イブは愛ちゃんの家に泊まるから」と母に告げる。
母は女の勘でピンときたのだ。
娘は処女を捨てる気だと。
娘のボーイフレンドの顔も知らず、不安が募る母。
どうやって阻止しようか思案するが、友人から自分が娘と同い年だった時にどうだったかと諭されまた考え込む。
高校生の時に好きだった男の子のこと、ファーストキス。
母は色々思い出し、娘の気持ちもわかるような気がしてくる。
そんな時、娘が泊まるはずの愛ちゃんの母親から電話があり、娘の考えが明確になる。
そして母は決断するのだった。

かなり豪華なメンバーと言える本書には、紹介した母と娘の葛藤を描く『セブンティーン』や離婚までのゴタゴタを描く角田光代の『クラスメート』、中距離恋愛の思いを綴る島本理生の『雪の夜に帰る』、不倫の悲しさと喜びを描く盛田隆二の『ふたりのルール』他、計6作品が衆力されている。
アンソロジーの醍醐味である馴染みの無い作家を知るチャンスを得ることもできたし、当然クリスマス前のこの時期にクリスマスにまつわる物語ということで季節感もバッチリだった。
装丁も素敵で本好きの友達や恋人へのプレゼントにもおすすめの1冊。


<角川書店 2005年>


大崎 善生, 奥田 英朗, 角田 光代, 島本 理生, 蓮見 圭一, 盛田 隆二

クリスマス・ストーリーズ

nakazuri 1990年にJR東日本が行ったキャンペーンの一環で電車内に掲出された中吊りポスター小説と文庫化にあたり+11話を収録した短編集。


『別れの朝』は阿刀田高の作品。
主人公の男女は知り合って三ヶ月余り。

恋人と呼べる関係ではないが二人で過ごす時間が増えていた。
初めての遠出を迎えた朝、女が約束の時間より遅れて来たことから二人の間にズレが生じていく。
小さな言葉の行き違いがきっかけで心が急速に離れていく様を描く。


たった10ページ前後の短編で中吊りのイメージのままの印刷となっているので通常よりも文字数が少ない。
そんな中で、きちんと起承転結のある物語を読める。
表題どおり中吊りで連載された作品が半分を占めるので、ちょっとの時間でも読みきれるようになっているのだ。
その微妙な文字配分や物語の分けかたが良い。
老若男女が混在する電車内だからこそのラインナップで、作家陣と挿絵家が豪華だ。
吉本ばなな、泉麻人、椎名誠、森瑶子、赤川次郎、伊集院静など総勢19名の作家の力作が揃う。
エッセイ、恋愛小説、ファンタジーなど物語の種類も様々で飽きたら読み飛ばす贅沢もアリ。
当然、通勤にもってこいの1冊。


<新潮社文庫 1994年>


吉本 ばなな, 阿刀田 高, 椎名 誠, 村松 友視, 高橋 源一郎
中吊り小説

anokorotakara 仕事、家族、恋愛、友情など、毎日の生活の中で欠かせないものに対する忘れたくない気持ちを描く。
後に「ありがと。」 と改題し文庫化されているアンソロジー。


『光の毛布』は中山可穂の作品。
主人公・咲は28歳。
金融関係の会社で事務職に就いていたが一念発起で二級建築士の資格を得て建築業界へ転職した。
決して待遇の良い会社ではなかったが、毎日の充実感は今まで得たことがない程で咲は寝る間も惜しんで仕事に励んだ。
それをよしとしない人間が一人だけ居た。
彼氏の智彦だった。
最初は応援してくれ、愚痴を聞いたり励ましたりしてくれた智彦だったが、咲が多忙になり連絡も取れなくなったり現場の仕事なので時間が読めなくなり朝まで働く様子を見て反対をし始める。
しかし咲はこの仕事を天職だと感じており、続ける意向を変更しない。
二人の関係はうまくいかなくなり、別れてしまう。
智彦を失った途端に全てが色褪せて見えてきた咲は、仕事に疑問をもち始める。
どうするか悩む咲を説得する社長。
そして咲の頭の中にある光景が浮かび上がり、咲は仕事を続けるか否かを決めるのだった。


他にも、休日の銀座で出会った同級生との数時間を描く『ルージュ』(島村洋子)、愛犬の散歩にまつわる恋と出会いの物語『アメリカを連れて』(藤野千夜)、やっとの思いで実らせた愛が壊れるように自分も壊れていく『わたしたち』(前川麻子)など計12作品が収録されている。

狗飼恭子、島村洋子といった馴染みの作家から、先日大変楽しんだ近藤史恵やコバルト以来の久美沙織など12名の作家が奏でる短編集で読み応えあり。
胸がキュンとなるものからクスッと笑えるもの、ファンタジー的要素を含んだものからぞくっとくる恐ろしい結末を迎える作品まで幅広いジャンルの短編が揃っているのも楽しい。
女性向けな1冊。


<メディアファクトリー 2003年>


ダヴィンチ編集部
ありがと。―あのころの宝もの十二話 (文庫本)


狗飼 恭子, 久美 沙織, 近藤 史恵, 島村 洋子, 加納 朋子
あのころの宝もの―ほんのり心が温まる12のショートストーリー (単行本)