群ようこの著作ばかり紹介しているような気がするが、ちょっとブルーになったりするとつい手に取ってしまうのだ。
心が温かくなる、面白おかしい時間を必ず提供してくれるからだ。

この『無印結婚物語』もそんな1冊である。
無印シリーズは全部で7シリーズ程出ていると思う。
追々、全て紹介したいが最初はこの『無印結婚物語』を。

『こんなはずじゃなかった』は、五歳年上で細身、おとなしそうな感じも気に入り見合いをした男と結婚した〝私〟の後悔を綴っている。
結婚してみたら、6時に帰宅し、帰宅早々に食事とかお風呂を求める夫に戸惑う〝私〟。気を抜いている時に限って1駅先の実家からやってくる夫の母親。のんびり穏やかな結婚生活を夢見ていたが、実際はそうでもなく・・・
夫の求める嫁像と、嫁が求める夫像の相違。よくあることである。それをリアルに短く読みやすくまとめている。

結婚生活に伴う面白おかしい出来事、本当は笑えるようなことじゃないのに群ようこ流のプロットでおかしくしてしまう力技の作品がたっぷり詰まった短編集。
夢と希望を膨らませ結婚してみたものの「こんなものかよ」と思う女の心理を鋭く突いているリアルでドラマチックで爆笑できる本だ。

<角川文庫 1992年>

著者: 群 ようこ
タイトル: 無印結婚物語
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言わずと知れた第130回芥川賞受賞。

主人公は高校に入学したばかりの蜷川とハツ。
クラスでは余り者同士で、アイドルオタクの蜷川をハツが気にし始め二人の不思議な友情関係が成り立っていく。そんな姿が描かれている。
二人の会話、ハツが蜷川を観察し思う色々な感想、余り者でも強い意志があり負けたくないと思ったり頑張ったりする姿・・・逞しいというのか、なんと言うべきか。
全てにおいて、どう表現したらいいのかわからない、という感想しか浮かばないのだ。

思春期の女の子の日常、感受性豊な主人公という点はこの作家の特徴なのかもしれないが、その表現の仕方がいまいちピンとこず、私の心には読み終えても何も残らない。主人公の内面をきっちり描いているようで、何か物足りなさが残ってしまう。
イマドキの若者を理解しきれない私の度量の問題かもしれないが。
とにかく淡々と続くハツの毎日、いじめられているんでもないがなんだか浮いてしまっている感じは伝わってくるが、私にはあまり迫ってくるものがなかった。

ストーリーどうのこうのより、このような文章力で芥川賞を受賞出来るのか。という感想のが先に来てしまった。
個人的に、この作家が苦手だということを認識するのみとなってしまった。

題名のインパクトは素晴らしい。
題名って大切だ。
が、なんだか消化不良だった。

<河出書房新社 2003年>

著者: 綿矢 りさ
タイトル: 蹴りたい背中
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幼なじみの4人が30歳になった時、それぞれに転機が訪れる。
ときめき、自分らしさを探して前に進もうと行動する4人の姿を描く同年代女性向けの作品。

主人公は4人の30歳女性。
岩代みえ→主婦、病院で受付のパートをしている。一見穏やかで幸せそうに見えるこの暮らしに少し不満を感じはじめた。
山城楓→宝石店に勤務していたが、自分のやりたいことを!とパン職人見習へ転身したものの・・・
周防薫→高級エステ店の企画・営業アシスタントをバリバリこなすOLとして日々颯爽と暮らす。
讃岐ミチル→フリーランスで鞄のデザイン・製作をする職人として生活。不安定ながらも自分のやりたいことが出来ている毎日に満足している。が、変化もほしい。
そんな誰かに自分が当てはまる、どれかに共鳴できそうな主人公達のオムニバス。

誰しもが自分の今に満足しきってはいない。
何か変化が欲しいと思っている。
30歳は大きな節目。そのことを、漫画からも訴えられるほど、30歳って何か違ってくるものなのだ。きっと・・・

絵は少女漫画独特のそれながら、内容は結構真に迫ってくる部分もあり、夢の部分もあり、ちょうどいい匙加減で夢と現実を描いていると思う。

<講談社KC 2001年>

著者: 海野 つなみ
タイトル: デイジー・ラック 1 (1)
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Hanako 10/27 No.808

テーマ:
Hanakoのバックナンバー紹介となってしまった。
諸事情により1週間更新しないうちに、新刊が出てしまった。

この「お疲れOLの常識本 カラダが変!?と思ったら」という特集号は大変興味深いものだった。
この頃Hanakoを連続で購入しているが、実際こんなに連続で買ったことなど滅多とない。
お得意のグルメや旅行特集を買わないのが私の特徴である。

さて、この特集の内容であるが。
女性なら誰しもが気になりつつ、足が遠のく婦人科関連の特集ページや、女医のいる病院・女性専門外来について、いざというときに頼りになると銘打たれた医者リスト、女性の病気克服記など読み応え充分である。

婦人科系の病のみでなく、誰しも病院という場所にはギリギリの段階にならないと行かないものであるが、それがどれだけ危険なことか、早めにかかることがどれだけ良いことかわかる特集で、今の生活を戒める効果アリ。

<マガジンハウス 2004年>
江戸、吉原遊郭を舞台とした花魁漫画。

主人公「きよ葉」は吉原遊郭・玉菊屋の座敷持。
幼い頃、禿(かむろ)として玉菊屋に入ってきてから、おいらん「粧ひ」に世話になりながら「とめき」という名で過ごす。やがて年頃になった時、「きよ葉」として新造出しをしてもらい、いっぱしの花魁としてデビューする。
その成長過程、吉原遊郭で起きる色恋沙汰、花魁界の慣わしなどがストーリーに盛り込まれ興味深い1作になっている。

もしかしたら、まだ続きがあるのかもしれない。
最後は【第一部 完】となっているので、第二部が存在するんだろうか?
だとしたらこれは興味がある。

花魁用語が全くわからないので、注釈がついていればなお良かったが、とても興味深い作品だった。
漫画なのに、きちんと歴史を描いているように印象付けられるからだ。実際はわからないが、そう思わせるだけで1つのエンターテイメントとして立派に成り立っていると言える。
安野モヨコの絵や漫画自体、あまり興味は無かったのだがこのインパクトのある表紙と色合いに惹かれて購入したが決して後悔することのないものとなった。

<講談社イブニングKCD 2003年>

著者: 安野 モヨコ
タイトル: さくらん
読み終えた後の爽快感や笑いは群ようこならでは。
元気のでる7つの物語。

思わず「あるある!」とか「そうそう!」なんて思ってしまうのが4話目の『友だちの子供』。
高校時代の友人セッちゃんと偶然デパートで遭遇した私。
セッちゃんとご子息タカシくんの不思議な親子っぷり、タカシくんの破天荒っぷりが面白おかしく描かれている。
子供の居ない独身女が同級生の子供をカワイイわねーと思うのもほんのわずかな時間で、手ごわいガキが相手となれば一瞬で気持ちは覚めるもの。
そういったことや、子供を産んだからといって誰しもが幸せでかわいいかわいいと子育てに集中している訳ではない母親の側面も見える物語。

88歳元気モリモリの大場カメヨの痛快な日々を描いた『おかめ日記』、社風も満員電車も性に合わず退職した私の就職活動や予想外の展開の毎日を綴る『満員電車に乗る日』など、心が洗われる面白小説集。

失業中、なんだか仕事がうまくいってない、テンションが下がってるという女性にお薦めの充電できる本。

<新潮文庫 1994年>

著者: 群 ようこ
タイトル: びんぼう草
随分と昔に、題名に惹かれて購入した1冊。
『忘れないで』とは、かなり重い言葉だ。が、誰しもが忘れて欲しいなんて思う訳はない。
友達にも恋人にも、自分を過去の遺物として忘れ去られて喜ぶ人間は少ないだろう。
なんだかとてつもなくせつないモノを感じて読みはじめた。

主人公サイはシロちゃんが大好きだ。
背が高くて八重歯のシロちゃん。
洋菓子店チュイルリーを舞台に、サイの想いを描く。
サイはどうしたらシロちゃんの心に残る人間になれるのか試行錯誤を繰り返す。普通の恋愛感情とは違う感じだが、サイは一生懸命その方法を模索する。
遺書のような長い手紙を書いてみたり、好きでもない男と関係を持ってみたり・・・
サイの行動全て、心で繰り広げられるシロちゃんへの執着心は、ストーカーに近いものがあることは確かだが、純粋に「彼の心に残りたい」という一心なのだ。
それがこの小説をミステリーではなく恋愛小説にしている。

片想い中の女性には共鳴できる点があるかもしれないせつない恋愛小説。
ただ、私は主人公を恐ろしいなぁと思う気持ちの方が強く残ってしまった。
そこまでして全うしたい恋愛があり、それを受け入れる男性もいて、というのは不思議な関係だ。そして、恐ろしいと思った。

<幻冬舎文庫 2000年>

著者: 清水 志穂
タイトル: 忘れないで
題名の如く、孤独な夜にホッと心を暖めてくれる12話で構成された短編集。

1978年出版ということで、登場人物たちの仕事っぷりや時代背景は現代とズレがあるものの、恋愛をする女の心は2004年も1978年も変わらないことを教えてくれる。

『りちぎな恋人』の主人公カオリは、律儀だと自覚のある律儀な女。
元同僚に恋をし、彼の退職を機に恋愛関係に発展するが、なかなかそこから前に進まずひとりよがりの思いを抱きむずむずしている。
そんな心温まる、現代女性に少し欠けた控えめな男性への想いの寄せ方を思い出させてくれる。
『雨の降っていた残業の夜』の主人公じゅん子は、一人残業していた夜、同僚の女子社員が想いを寄せる千葉と二人きりになり、気にもしていなかった千葉の粋で歯切れのいい物言いに魅力を感じていく。
最後にじゅん子が感じる不安な予感。それは、誰しもが恋のスタート地点に立ったときに想うことだ。そして覚悟を決める瞬間に頭に過ぎる思いだ。
それでも人は恋をする。

田辺聖子独特のやわらかい関西弁と、ゆったりした時の流れがたっぷりつまっているので、秋の夜やこんな台風の夜の読書にはぴったり。
穏やかな気持ちにしてくれる恋愛が詰まった1冊。

<新潮文庫 1978年>

著者: 田辺 聖子
タイトル: 孤独な夜のココア
高校を卒業して7年。
ソフトボール部の仲間だった7人が、20代半ばに部活の同級生の死をきっかけに集まるその7人の色々なエピソードをまとめた連作短編集。
死んだ同級生の死についてが、物語が進むうちに少しずつ輪郭を明らかにしていく。7人の今現在の暮らしの中での物語を主軸に、そういった同級生の死に関するエピソードも織り交ぜ、先へ先へと食指を動かされる。

『雨上がりの藍の色』は、食品会社に勤める由美子が主人公。
由美子の業務は企業や病院の食堂の経営代行で、或る日ドケチな商社の社員食堂に出向になるところから物語が始まる。
出向先のワンマン経営ぶりや、古株のおばさんたちとの衝突、コスト削減の壁・・・現代社会で働く女性には他人事ではない小さなトラブルが続く。
由美子はその中で、揉まれながらも自分の道を作り上げていく様が格好よく、好感が持てる。

連作小説というのは、意外と少ない。が、私が好きな形態だ。
その中でも、この作品は読みやすく、20代半ばの女性には共感しやすいものではないだろうか?

<集英社 2003年>

著者: 加納 朋子
タイトル: レインレイン・ボウ

ジオラマ / 桐野夏生

テーマ:
先ほど紹介した1冊同様、平凡な毎日・日常生活の中に潜む恐怖を取り扱った1冊。

1話目の『デッドガール』は、ラブホテルで若い女性の死体が一週間放置され見つからなかった事件に基づいて作成されたストーリーだそうだ。著者があとがきでそう述べていた。

ラブホテルにある大きなベッドのマットレスと底板の間に置かれた女の死体。その上で、一週間に渡って様々な男女が情愛の時間を営む。そのマットレスの下に死体があるとは知らずに。
そんな女の一人~カズミ~が主人公。
男とセックスをしている時、腐敗臭が鼻を掠めた。カズミは臭いのせいでなかなかセックスに集中できず、男はヘソを曲げてしまう。
そんな嫌な空気が流れる中、男は行為を終え風呂に行く。その間一人で過ごすカズミの前に若い女が現れる。

実際には起こり得ない物語のように思うが、もしかしたら自分が知らないだけでこんな話は転がっているのかもしれないと思う。
現に、この作品のモデルとなったのは、ラブホテルに一週間も放置された女の死体だったのだから。

ゾクッとし、嫌悪感を軽く感じる作品集。
好き嫌いはあるかと思うが、手軽に桐野夏生を味わえるので桐野初心者にはお薦め。

<新潮文庫 2001年>

著者: 桐野 夏生
タイトル: ジオラマ