2012年5月に読んだ本 | NORISの絵本箱

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つれづれなるままに、
季節にそって、いろいろなテーマにそって、
お気に入り絵本、おすすめの絵本をつづります。
いつもの読書、お気に入りのクインテットの記録なども。

今月は、娘に先んじられていた「獣の奏者」をよみはじめ、
最後はついに追い越しました。
それ以外はあまり読んでいませんが・・・

糸井重里『夜は、待っている。』ほぼ日ブックス
毎年恒例のアンソロジー。今回は、酒井駒子さんの装画、造本がとってもすてき。
「あの日までの日常ではない日常に、ぼくらは帰っていきます」

池貴巳子「ジミンちのおもち」(たくさんのふしぎ2012年6月号)福音館書店
隣に越してきた韓国人一家との交流を通して韓国のおもちのレシピいろいろ。
すぐとなりの国なのに、「おもち」のありようとレシピはぜんぜん違って、日本ではおもち
(つき餅)とだんごやまんじゅう(練り餅)は別物だけれど、韓国のおもちは両方を指すと理解。

なかのひろたか「なきむしおばけ」(こどものとも2012年6月号)福音館書店
今月の月刊絵本。子どもの耳元で「ないちゃえないちゃえ」とけしかけるなきむしおばけの
正体は? おもしろかった。
 
中村牧江 /林健造作 /福田隆義絵「ふしぎなナイフ」福音館書店(こどものとも絵本)
末っ子が園のブッククラブで借りてきた。リアルに描かれたナイフが、ぐにゃりと曲がったり、
バラバラに砕けたり、ビヨ~ンと伸びたり縮んだり。はじめはまだ可能性がありそうな変形から、
どんどん奇想天外に変形してみせ、最後には金属の質感さえあやしくなっていくナイフ。
ありえないはずなのに、たしかにそうなリそうだという気さえしてくる精緻な絵にたのしく
驚かされる作品。

上里隆史・冨山義則・一ノ関圭『琉球という国があった』
              「月刊たくさんのふしぎ」2012年5月号(福音館書店)
40年目の日に読了。美しい写真や挿絵たっぷり、沖縄(琉球)の歴史が小学生でも読めるように
書かれていて、初耳の興味深い事実多数。私が物知らずなだけかもしれないが。「琉球」という
国名を始めあれだけ中国文化の影響を強く受けていたのに、広く使われたのは「かな」で、
国王から出される正式な文書もかな書きだったというのがおもしろい。

谷川俊太郎『一時停止』(草思社文庫)
20代前半からつい最近までにさまざまなメディアのために書かれた文章を編んだ自選散文集。
20代には20代らしい気負いやとんがったところが感じられるし、今の自分と同年代の頃に
書かれた文章はすっと読める気も。ことばについての文章や考えはやはり興味深くおもしろい。

工藤ノリコ『ノラネコぐんだんパンこうじょう』 (白泉社『こどもMOE』第2号ふろくえほん)
案の定、工藤ノリコ好きなこどもたち(とりわけぼーず)みなすぐお気に入りに。
深夜のパン工場に侵入してパンを作るノラネコぐんだんの大失敗物語もたのしいが、
みんなが好きなのはやはりパン屋さんの店頭にずらっと並んだおいしそうなパンの数々。
他の絵本のキャラたちもパンを買いに来ていたりするのを発見するのもうれしい。

かこさとし『だるまちゃんとかみなりちゃん』
     『だるまちゃんとてんぐちゃん』(福音館書店)
一冊目、雲から落ちてきたかみなりちゃんの、木に引っかかってしまった浮き輪を とるために
だるまちゃんが頭をひねる場面が楽しい。おれいにつれてってもらった かみなりの国が
なんとも楽しげで子どもごころをくすぐる。
二冊目、これがだるまちゃんシリーズではやはり白眉。
友だちとのおそろいを無邪気に喜ぶ姿もかわいくていいが、そのためにだるまちゃんが創意工夫
をすること、そしてだるまちゃんのお父さんのこどもへの接し方がいい。 だるまちゃんの要望に
こたえるべく力を尽くし、間違ったときは率直にあやまって、 すばらしいうめあわせをして
くれて、影の主役はだるまどんだなぁと思う。

上橋菜穂子『獣の奏者1 闘蛇編 上』(青い鳥文庫)
壮大なエリンの物語の幕開け。平穏な日が長くは続かないのがファンタジーの世界とはいえ、10歳の少女にとってなんとむごい波乱の幕開け。でも、過酷で深いものを秘めつつ、牧歌的で平穏な暮らしぶり(食べ物がおいしそう、これ大事なポイント)や学問的な知識、そして知的好奇心にあふれて笑顔が明るくひたくきなエリンの魅力もあり、すぐに物語世界に引きこまれてわくわくしながら読める。まずは蜂の生態にちょっと詳しくなった。

上橋菜穂子『獣の奏者2 闘蛇編 下』(青い鳥文庫)
エリンの祖国と隣国の歴史的・政治的背景も少しずつ説明される一方で、エリンは蜂飼いの
ジョウンとの山暮らしの中でであった「王獣」の姿に魅せられ、14歳で王獣専門の獣医養成学校
へ進むことになる。よき友にも恵まれ、持ち前の探究心と熱意を発揮。ラストは「なんでここで
終わる。続きが気になるじゃないか!」ということで間髪入れずに『王獣編』に雪崩れ込む。

上橋菜穂子『獣の奏者3 王獣編 上』(青い鳥文庫)
心通うようになった王獣の成長を見守りつつ、学舎での勉強を終え、引き続き教導師として
王獣保護場で暮らすエリンだが、王獣を見るための真王行幸から思いがけず国内外の大きな
動きの矢面に。このままではすまぬだろうという思わせぶりな局面にて以下次号。

上橋菜穂子『獣の奏者4 王獣編 下』(青い鳥文庫)
闘蛇や王獣といった人間の手に負えない生き物たちとのつきあいかたや利用法は、さまざまな
問題のメタファーのように読める。正義や正解はひとつじゃないのだなあ、ということが実感
される。周囲の人物たちについては細部のかきこみが少なく「どうして?」とか「その後どう
なったの?」と気になるままの部分も少なくないが、いずれ巻が進むなかで再登場して存在感を
見せるか、それとも外伝として別のお話になるか、期待。ここまででエリン少女編は一段落。

上橋菜穂子『獣の奏者5 探求編 上』(青い鳥文庫)
少女編の最後から十余年を経て家庭ももったエリン、「探求編」の名のとおり、請われて闘蛇の
大量死の謎を探求しながら母の残した言葉や歴史の謎を紐解いていくと同時に国内外の問題に
巻き込まれていく。妻として、母としてのしがらみ。世界の広さ、無知の知。

上橋菜穂子『獣の奏者6 探求編 下』(青い鳥文庫)
エリンが国を揺るがす問題にまきこまれ追われ苦悩する一方で、エリンの大切な家族もまた
追われる立場に。こういうときにも立ち尽くしたり諦めたりすることなく、離れていても互いを
信頼して以心伝心できちんと前に進んでいけるエリンたちはすごい。少しずつ新たな気づきも
出てきて、1巻から改めてていねいに読み直す必要も感じる。