修羅場@仙台CLUB JUNKBOX(2015.10.23) | 安眠妨害水族館

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オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

「じんましーんの仙台ディスティネーションキャンペーン」と銘打って開催された、3daysライブの初日、「『修羅場』~帰ってきた伝説のイベント~」に行ってきました。

3日間、それぞれ趣向が異なる形態で、過去を振り返るライブを行うという企画。
その初日は、唯一のイベントライブ形式で行われ、かつて仙台を拠点に開催されていたライブイベント、「修羅場」を復活させようという試みでした。
本来であれば、仙台HOOKでやりたかったとのことだけれど、日程の都合上、仙台CLUB JUNKBOXになったとのこと。
どちらにせよ、思い入れの強いライブハウスではあるようで、テンションは高めだった気がします。


Sider【蘇る死の楽団サイダー】

数年ぶりに表舞台に立ったらしい殺女黒十字まこ様。
「修羅場」というイベントで、この人が出ないということはありえない。
むしろ、この人が出るからこその「修羅場」なのである。

総勢10人がステージに上がる視覚的な迫力。
設定上は別人ということになっているようですが、EL-felia-のKATAGILYさんや、Jin-Machineのあっつさん、水月さんもメンバーとして参加しています。
とにかく、インパクトは大きかったですな。

その中でも、際立って目立つのは、やはりフロントマンである殺女さん。
やりたい放題っぷりは相変わらずで、オーディエンスをステージに上げると、Sider内での人気投票でトップだったリリカルさん(あっつtheデストロイ)の表彰式に。
リリカルさんの望みを実現するという名目で、ステージ上のオーディエンスに頭を振らせるという無茶ぶりをぶっ込んでいました。
結局、ステージ上も、ステージ下も、きちんと要求に付き合っていたので、よく訓練されている感は半端なく。
Sider動員がそこまで多かったとは思えないので、仙台のバンギャルって優しいなぁ、と思いながら横から傍観していましたとさ。

終盤では、メンバーに逆ダイの布団役をやらせたり、自らがフロアに下りて逆ダイの見本を見せたりと、最後まで自由奔放。
ブランクを感じさせない滅茶苦茶っぷりで、結論としては楽しかったです。


EL-felia-

衣装や楽曲の系統としては、耽美系バンドになるのかな。
世界観を持たせた歌詞に、メロディアスな楽曲。
そのあたり、古き良き仙台バンドの色を残していると言えるでしょうか。

ただし、フリだったり、ノリだったりはキラキラ系から持ってきているような。
結果として、楽曲の世界観が置いてきぼりになってしまっている気がしました。
どちらが良い、悪いという話ではないし、従来通りのセオリーだけでは戦えないというのも理解するのだけれど、耽美な歌詞を歌いながら、「手をパンパン!」とか解説するの、なんとも言えないシュールさがあると思うのですよ。

ボーカルが指揮しなくてもオーディエンスがフリをするようなレベルまで持っていければ気にならなくなると思うし、現時点では種を蒔く過程ということで、気長に見ていくしかないかなぁ。
この手のバンドは仙台シーンに必要であるのは間違いないので、頑張って欲しいところです。


ATRUS

ハロウィン仕様ということで、全員が女装で登場。
ドラムがサポートで普通のお兄さんだったので、凄くギャップがありました。
それがコスプレってわけじゃないだろうけど。

ライブはノリやすく、曲もなかなか良かったですね。
最後の曲で演奏がモタモタして、コンビネーションの未熟さを露呈してしまった部分はもったいないですが、それ以外では無難にこなせていたかと。
新体制になるということで、またここから作り直す部分も出てくるのでしょうが、頑張って欲しいです。

あとは、まぁ、初見のバンドがハロウィン仕様だと、本質がわからないってのはありますね。
この日のステージングで面白いと思っても、普段からそうしているのかが判別できないというか。
普段見慣れているファンにはスペシャル感があるってのは理解しているものの、あくまで個人的な意見として、初見ファンが相応に多いと思われるライブなので、ATRUSにとっての王道ど真ん中のライブに徹しても良かったとは思いました。


HERe:NE

当初の耽美的な雰囲気は薄れ、Vo.和鬼子さんのおかんキャラで押していくスタイルに。
まだ試行錯誤の途上といったところかなぁ。
楽曲やノリとしては、正当派のギャルバン的な雰囲気に近づいて、それにどうやって世界観やキャラを結び付けていくかにチャレンジしているという印象でした。

年に100本のライブを行い、その最終日として招待制のワンマンを、という計画だったようなのだけれど、このイベントが急遽決まったので、これが年間100本目のライブになったのだとか。
実際、Jin-Machineとの対バン、かつトリ前ということで、そりゃ気合いも入るわって感じのライブだったかと。
動きもキレていたし、地元ライブという相乗効果での盛り上がりも含まれて、しばらく見ないうちに成長したのだな、というのがわかりましたね。
ギャルバン路線が奏功してか、男ファンもそれなりに増えてきた様子。

あとは、プロデュサー的な立ち位置で戦略を考えられる人がいればって感じ。
本質的にお笑い系でやっていきたいわけでもないと思われ、どうしてもぎこちなさがあるのですよ。
ネタが練られているわけでもなく、話術に長けているわけでもなく、ひたすらキャラ頼みなので、一度滑るとリカバリーが厳しいな。
素材としては申し分ないだけに、ワンマンを成功させて、自信をつけてほしいですね。


Jin-Machine

1. ゴリラ
2. 宇宙忍者アメリカ
3. さよなら†黒歴史
4. さよならアキラメロン
5 .救声

MVがある曲縛りで、徐々に過去に遡っていくセットリスト。
現時点でのベスト的な"フェスセトリ"になっていて、このイベントに力を入れていることが伝わってきます。

アップテンポの楽曲を畳み掛けて、とにかく勢いで突っ走る。
流れを止めてのネタコーナーも、アクセントとしてのバラードやネタ曲も入れず、正々堂々と勝負してきた印象でした。
演奏のまとまりも、オーディエンスの乗せ方も、格の違いを見せ付けた形で、邪道な攻め方をしなくても持っていけるぞという地力を示す。
「救声」では、煽り部分を長く取らず、コンパクトにまとめた構成にしていましたが、それだけで十分に一体感を求められるレベルでしたね。

もっと長い時間やるのかな、と思ったけど、他のバンドと同じくらいの5曲で終了。
ちょっと潔すぎる気はしますが、このくらい衝動的にやりきってくれると気持ちが良い。
物足りないくらいが、2日目、3日目のワンマンがあることを考えればちょうど良いのかもしれません。

アンコールは、この日の出演者全員での「サライ」。
殺女さんが、マイクを向けられてもまったく歌わず、空気ぶち壊しのシャウトをしていたのが面白かったです。
最後の最後まで自由すぎでしょ。


なお、転換中のBGMは、DJ龍斗さんが担当。
ヴィジュアル系中心のセットリストで、Jin-Machineの直前に交流のあるバンドの楽曲を流すなど、盛り上がる構成になるように配慮はしているようでした。
えんそくの「最後のえんそく」が流れたところ、オーディエンスが盛り上がりすぎてしまったことで閣下の機嫌を損ねて喧嘩になるというプロレスも見られましたな。
個人的には、BORNの「RADICAL HYSTERIA」の破壊力を見せ付けられた形。

仙台バンドだけでのイベントを、仙台の地で行うという意味。
動員面ではJin-Machineの一人勝ちにはなってしまうのだけれど、コテコテバンドもネタバンドも巻き込んで、地元シーンの底上げを狙う意図があったのだろう。
その点で、アウェイの中で戦っている印象が強い彼らにも、"先輩バンド"としての風格が出てきたというか。
キャンペーンの封切りとしては、上々の滑り出しになったのではないでしょうかね。