2016はたらく女性の埼玉集会 分科会 | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

まず、熊本、大分を中心とした地震の被害に遭われた皆さまにお見舞い申し上げます。

合わせて、避難不可能な状況下での原発災害を防ぐために、川内原発の運転停止を求める署名への賛同を呼び掛けます。


 

https://www.change.org/p/%E5%B7%9D%E5%86%85%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%82%92%E6%AD%A2%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84?source_location=discover_feed
 

 

そして、戦争法廃止に向けてたゆまず行動し、憲法に違反する政治を推し進めようとする策動を許さず、医療・介護を国の責任で充実させることを求め、最低生活基準を切り下げようとする動きに抵抗し、労働者のいのちと健康と働く権利を守り、東日本大震災の被災地の復旧・復興が住民の立場に立った形で1日も早く実現することを目指して、声を上げていくことを提起します。

 

 

11月23日に行なわれた「2016はたらく女性の埼玉集会」の報告の続きです。

午後は分科会が行なわれました。TPP、平和、働き方、保育・子育て、健康と、5つの分科会が行なわれました。私は健康の分科会に参加しましたので、その概要をお伝え致します。

 

健康の分科会は、「はたらく女性の健康-妊娠・出産・更年期まで」というテーマで、産婦人科医師の神谷稔先生に助言者をお願い致しました。

まず、神谷先生からテーマに沿った講義をしていただきました。

神谷先生は新しい病院の産婦人科を立ち上がる際、「参加型の産科」をつくろうと考えたそうです。それまでの産科は女性のみのものでしたが、江戸時代には男性もお産に参加していたそうです。戦国時代以降、男性が権力を持ち、少しずつ女性が差別されるようになり、子どものことは女性の責任となっていったそうです。世界的にも同じで、中世以降はお産は女性の責任になっていったそうです。そこで、男女平等のお産によって女性差別を打ち破ろうと考えたそうです。そこで、「うぶ声学校」という、男女ともに子育てについて学ぶ出産前学習の講座を設け、助産師、産科医だけでなく、薬剤師、検査技師、小児科医なども参加するようにしたそうです。「うぶ声学校」の目標は、孤独な出産のイメージを取り払い、医療行為は開かれた場所で行なうこと、夫婦共同の事業として分娩・育児を位置づけ、夫・家族も積極的に参加すること、出産・育児を通してコミュニティづくりを行なうこととしたそうです。これは、職場を変えるためにも重要な考え方だと指摘されました。日本では、法的にはかなり女性が守られているのですが、それが利用できていないことが問題なのだそうです。利用できるようにするには、職場を変えていく必要があります。

そして、「地域が産み、育てる」産科にしようという理念を掲げたそうです。「医療の主体者はあなた」であるという考え方が希薄な日本においても、そのことをはっきりさせようとしました。

また、スタッフの間の分かり合いも重要であり、看護師が医師に、検査技師が医師や看護師にクレームを言えるようにし、その上でディスカッションすることを重視しました。そのために、「Fish哲学」を取り入れたそうです。「Fish」とは、仕事を楽しむこと、人を喜ばせること、現にそこにある仕事に心を集中させること、辛い仕事も自分で決めてやりがいを持つことだそうです。個々人の気付きと提案を大事にし、みんなで検討・実践・実現していくようにしたということでした。

次に、妊娠の過程での注意点について語られました。「妊娠カレンダー」という、月や週ごとで注意点がわかる表が紹介されました。

それによると、妊娠初期は胎盤が完成するまで流産に注意が必要であり、疲労をさけ、適度の休息と適度の運動をするなどの気配りが必要だということでした。4、5ヶ月で胎盤が完成し、比較的安定した時期に入るそうです。しかし、7、8ヶ月になると、静脈瘤がでやすい、こむらがえりが起こりやすい、肩がこる、首が痛いなど、循環がうまくいかないことを示す症状が現れるそうです。そこで、安定期のうちにやっておくべき妊娠中の運動の仕方について説明がされました。運動は強度と頻度が大切であり、短時間の場合は「ややきつい」以下の運動、長時間の場合が「やや楽」以下の運動をするとよいそうです。時間帯は子宮収縮の比較的少ない昼前後で、運動習慣のない妊婦さんは週2~3回以内、1回の時間は60分以内とするとよいそうです。ただし、心疾患がある人、早期の陣痛状態にある人、多胎、出血のある人、前置胎盤、頸管無力症などがある場合は運動してはいけないそうです。適さない運動は、競技性の高いもの、腹部に圧迫が加わるもの、瞬発性の高いもの、転倒の危険の高いもの、相手と接触するものだそうです。

妊婦にふさわしい運動として、まずウォーキングが挙げられました。最も安全でいつでもどこでもできる運動ですが、単調になりやすいのでメリハリをつける必要があるとのことでした。次に、エアロビクスが挙げられました。妊婦用のプログラムもあるそうです。次に、最もお勧めなものとしては、水泳が挙げられました。温水プールで歩くのが、膝や腰に負担がかからなくて済み、温水のため体温変化が起きにくいということも指摘されました。こうした運動を職場で一緒に取り組むことにより、妊婦を中心に職場の運動不足を解消できるということも指摘されました。

妊娠中は、妊娠のためのホルモンは出ているが、それ以外のホルモンが出なくなるため、更年期と同じような状態になるそうです。そのため、頭が重い、からだがだるい、肩がこる、足腰が冷えるなど、様々な愁訴が出るそうです。家庭と職場で大事なこととして、食事のとり方が指摘されました。食事バランスについては母子手帳に書いてあるそうです。妊娠中期には食欲が出てきてしまうので、妊婦さんが太ってしまうことが多いそうです。特に、くだものは「ビタミンがあるから」と摂り過ぎてしまうそうですが、高カロリーでもあるので、りんご1個でおにぎり2個分のカロリーになるそうです。ファミリーの中でそうした情報を共有すべきだと指摘されました。また、「ながら食い」、早飯食い、飲み込み食いは駄目だそうです。食事中に用事ができたら夫が動くべきであり、食事を中断するとうまく消化できなくなる恐れがあるし、咀嚼の回数が減るとよくないので、時間がないからと飲み込み食いをしては駄目だと指摘されました。

続いて、生理周期についての説明がありました。生理周期の表が示され、エストロゲンというホルモンが上がったり下がったりすることにより、体調が変化するそうです。そのため、月経前の週は、血圧が上がり、食欲がわき、胸がはり、イラつくそうです。生理が終わると元の体重に戻り、血圧も下がるそうです。月経前の絶不調期に起こるPSM、月経前症候群は、心の状態も身体の状態も様々な変化があり、行動も引きこもりがちになるそうです。PMSに対応するには、月経前の変化に注目し、自分の意志で行動変化すべきだということが指摘されました。そして、本人が休息することを決めた時に配慮できるよう、職場の中でもPMSについて知っておくべきだということも指摘されました。

次に、女性のライフサイクルについて説明がありました。女性ホルモンの変化によるもので、25歳くらいまで女性ホルモンの上昇期で、肌もきれいなのだそうです。そこから女性ホルモンが減少し始め、38~41歳はホルモンのレベルが上がったり下がったりするので、体調がいい時と悪い時があるそうです。50歳代で女性ホルモンが急激に減少して更年期となり、精神状態から変化するそうです。その時、同僚の女性が同意を示すことが大事なのだそうです。「~なさい」というのではなく、ティーチャーではなくコーチャーとして、選択肢を示すべきだということでした。

続いて、更年期についての説明がありました。更年期とは、閉経をはさんだ前後合わせて10年間を指し、女性ホルモンの分泌が急激に減少し、ほてりやのぼせ、イライラといった更年期障害が出るそうです。また、女性だけでなく、男性も男性ホルモンが一過性で減ることがあり、40代に入って態度変容が起こり、心筋梗塞、脳梗塞を起こしやすくなり、うつ病にもかかりやすくなるそうです。それをLOH症候群というそうですが、男性は気付いているはずだがなかなか言い出せないので、女性が気付くことが大事だと指摘されました。

次に、骨粗しょう症のチェックリストが紹介されました。21項目のうち、2つ以上当てはまっていれば「注意」、10項目になると危険、15項目を超えると骨粗しょう症だということでした。骨粗しょう症は、なってしまうと治ることはなく、かかる前に運動、食事、嚥下に注目するとよいそうです。サプリには頼らず、魚、貝類、青物野菜などを一緒に摂るといいそうです。日常の生活にそれらを取り入れるとよいということでした。

各年代で特殊なことをするのではなく、気を付けることは同じだと指摘されました。いざなってしまってからでは遅いので、なる前に対処すべきです。そこで、ウォーキングをするとしたら、ペア、隣近所などで一緒に歩くと、持続性が生まれ、地域のコミュニティを変えていく力になるということが指摘されました。

質疑応答については、個別的な症状についての相談になったので割愛致します。

 

講義を受けて、働き方と健康についての話し合いを行ないました。

食事の問題について、昼食時間が確保されているかということが問題提起されました。市役所勤務の方は、昼休みの時間は決まっているが、母を介護しているので一度家に帰って家のことをし、適当に昼食は終わらせてしまっていたと述べました。教員の方も、名目上は昼休憩があるが、ほとんどとれていないと述べました。

神谷先生からは、そうしたことを夫婦の分担や地域の支え合いによって改善していくとよいと指摘がされました。ゆっくり食事を摂る時間を持つべきであり、雰囲気、環境づくりが必要だということでした。自分だけで工夫するのではなく、地域のコミュニティの問題にしていきたいと述べました。

次に、生理休暇のことがテーマとなりました。製造業の方は、男性が上司なので生理休暇が取りにくいと述べました。教員の方も、上司に言えば取れることになっているが、生徒が帰ってからを休暇とするなど、ちゃんと取れていないと述べました。

神谷先生は、上司に生理休暇が言い出しにくい場合は職場で「聞き役さん」をつくり、その人が職場を把握し、生理休暇が取りたい場合はその人に言う仕組みとしたという例を紹介しました。生理休暇を取りたい人が言い続けることも大切だと指摘しました。そして、生理中の立ち仕事はよくないそうです。生理休暇を取るにあたって、診断書ではなく、覚書などの形で医師の休暇を取るようにという指導を出してもらうこともできるそうです。月経困難症で1日以上の休暇が必要な人もいるので、そこまでカルテに記入してくれるような医師に相談するとよいということでした。

また、更年期を体験し、これから老後となるが、夫が地域でどう位置づけられるかが課題だということが話題になりました。

神谷先生は、夫は地域での訓練を受けていないので、子ども、親、夫と、トリプルケアが必要になる場合があると指摘しました。夫は地域の中でお互いに理解し合うという経験をしてきていないので、一緒に行動することを先行させながらコミュニケーションしていくべきだと述べました。共同行動の中でしかつちかえないものがあるということが指摘されました。

まとめとして、神谷先生からは、親子間、男女間、祖父母とも、どう付き合うかということは、お互いが理解する関係をどうつくるか、共同の行動をするまでの関係をどうつくるかということであり、お互いを認め合いながら高め合うスタンスで関係をつくっていくことが提案されました。また、学校の中で生理教育、性教育が男女別々になっているが、男女がお互いを尊重する性教育ができないかと提起しているが、男性教師の抵抗があるということでした。男性のことも女性のことも、お互いが勉強することが必要だということが指摘されました。職場での問題も、共同行動の中で打開していくものであり、話し合い、行動につなげていくことで、一歩一歩打開していくことが呼び掛けられました。

 

以上で分科会の報告を終わります。