毎日新聞社説より:労働審判制度 「市民感覚」さらに生かせ
青年交流集会「アクト・イン・サマーin北志賀」の疲れも癒えましたので、今日からブログも通常運営に戻したいと思います。
さて、今日は毎日新聞の社説で労働審判制度について書かれていたので取り上げたいと思うのですが、その中にちょっとカチンとくる間違いが……
それについては後で述べるとして、まずはその社説を引用してご紹介します。引用部分は青で表記します。
労働審判制度 「市民感覚」さらに生かせ
毎日新聞 2010年8月31日(社説)
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20100831k0000m070087000c.html
解雇や賃金未払いなどの労働紛争の解決に、一般人の審判員2人と裁判官1人の計3人が当たる労働審判制度の利用者が急増している。
司法制度改革の一環で06年にスタートした。同年877件だった申立件数が、昨年は3468件と約4倍になり、訴訟件数の3125件を超えた。今年も増加傾向で、将来、さらに伸びるとみられている。
全国約1200人の審判員は、実社会で労働問題に携わってきた人から選ばれる。日本経団連と連合が半数ずつを推薦し、最高裁が任命する。任期は2年で、会社役員や人事部長、労組役員などの経験者が就くことが多いようだ。
労働審判は、個別の労働紛争が対象になる。申し立てを受け、各地の地裁に当事者を呼び審理する。審理は原則3回以内で終了し、調停の成立を図る。不成立の場合、審判で解決案を示す。それに対し、異議申し立てがあれば、通常の訴訟手続きに移行する流れだ。
調停が成立するか、審判への異議申し立てがなく事件が終結する割合は8割を超える。申し立てから結論が出るまでは2カ月強で、訴訟よりもはるかに早い。
最初から訴訟を起こせば、時間や費用がかさむ。各地の労働局のあっせんでは、法的拘束力がない。そんな人にとって便利な制度だ。
日本弁護士連合会のアンケートによれば、手続きの進行などについて約6割の利用者が満足感を示しており、一定の評価も得ている。
昨年スタートした裁判員制度が、市民の社会常識を、刑事裁判の審理に生かす試みなのに対し、労働審判制度は、市民の専門性を紛争の解決手段とするものだ。
司法への市民参加の意義をより実感するためにも、裁判員制度の先輩格として、さらなる制度の充実が望まれる。
申立件数の増加を受け、政府は、来年、審判員の増員を図る方針だ。だが、十分な人員を確保できるか不安視する見方もある。再任のケースもあるが、広く市民に参加してもらうためには、新たな人材確保に万全を期してもらいたい。
利用しやすい環境作りも急務だ。申し立ての3分の1近くを東京が占めるように、大都市圏に利用が偏っている。地裁支部の受け付けが、一部にとどまっているのも一因である。市民のアクセス向上を図るべきだ。
申し立ての際の弁護士費用の立て替えなど法律扶助の取り組みも地域によって差がある。弁護士会を中心に、さらに工夫してほしい。
労働審判や裁判員裁判が着実に運用されれば、司法のさらに広い分野で、国民参加の道が開けるだろう。
……どこに私がカチンときた間違いがあったのか、お気づきの方はいらっしゃいますでしょうか?
正解(?)は、「日本経団連と連合が半数ずつを推薦し」という部分です。
以前、「労働審判制度の概要と埼玉県の特徴 」というエントリーでご紹介しましたが、労働審判員は労使双方の労働関係に関する専門的な知識、経験を有する者の中から任命されることになっており、全国規模で労働関係に関する専門的な知識、経験を有する人材の情報を持っている労使団体から適任者を推薦してもらい、それに基づいて最高裁判所が任命するのです。「日本経団連と連合が半数ずつ推薦」するなどとは決まっていませんし、実際全国規模で労働関係に関する専門的経験、知識を有する人材の情報を持っている団体である全労連の推薦に基づいた労働審判員も存在します。ちなみに埼玉県では、2009年度までは連合系の労働組合の推薦が9名、全労連系の労働組合の推薦が4名という構成です。半数以下の構成率ではありますが、無視されるほど少なくはないと思います!
使用者団体の方については知識がありませんけど、日本経団連以外の団体から推薦された労働審判員の方がいらっしゃる可能性も低くはないと思います。
それはさておき。
実際に労働審判制度に関わった方からお話しを聴いた限りでは、少なくとも埼玉県内においては効果的に制度が運用されているとのことですので、この制度が今後も活用されることを願いますし、活用を促進する環境づくりをすることにも賛成です。
労働組合としても、制度を利用したいという方に専門的な知識を提供したり、付添をしたりして支援することは可能でしょうから、ローカルセンターを中心として関わっていくといいのではないかと思います。
ただし、「裁判員制度の先輩格」として持ち上げられるのには、以前労働審判制度について書いた時に、専門家の活用という意味で裁判員制度とは大きく異なるという趣旨のご意見をいただいたことがあるので、ちょっと違和感があります。
そのご意見をうかがって、確かに、確実に労働関係について専門性を獲得している人が参加する労働審判制度がうまくいっているからといって、まったく無作為に選ばれる裁判員制度も同じ「司法の市民参加」だからうまくいくと考えるのは危険ではないかと感じました。
国としては同じ「司法の市民参加」として推進するという考えを持って様々な発信をしてくるでしょうが、受け止める市民の側としては、労働審判制度と裁判員制度には専門性という点で大きな違いがあるということを意識して、それぞれの制度について自分なりの意見を表明するべきではないかと思います。
2010.9.1 追記
労働審判制度に詳しい方から訂正が入りました。
労働審判員は2010年4月から増員されているそうで、埼玉県の労働団体推薦の労働審判員は20名となっており、連合埼玉推薦が13名、埼労連推薦が7名という内訳になっているそうです。他の都道府県での内訳は情報がないのでわかりません。
続いて、「ユニオン」と「労働ニュース」アーカイブ様からの情報提供です。
http://mainichi.jp/area/mie/news/20100818ddlk24040157000c.html
労働相談会:非正規や外国人ら対象 9月毎週土曜 /三重
日時 9月の毎週土曜日(4、11、18、25日)、10~15時
場所 ▽松阪市上川町の市労働会館▽伊賀市ゆめが丘1のゆめぽりすセンター▽四日市市日永東1の市勤労者・市民交流センター東館、
弁護士と社会保険労務士各1人とポルトガル語とスペイン語の通訳が待機
事前申し込みが必要で、実行委員会事務局(059・225・2855)まで。
主催 「勤労者地域安心緊急サポート実行委員会」
2010年9月16日予定の判決日まで、こちらもご支援よろしくお願いします。
緊急報告「爪ケアを考える北九州の会」からのアピール
http://ameblo.jp/sai-mido/entry-10310539150.html
2009年12月18日、第2回公判が行なわれました。「ユニオン」と「労働ニュース」アーカイブ様から新聞記事をご紹介していただきました。
毎日新聞の記事
http://fukuokaunion.blog7.fc2.com/blog-entry-5054.html
朝日新聞の記事
http://fukuokaunion.blog7.fc2.com/blog-entry-5058.html
当ブログでは、2010年6月24日に結審した際のasahi.comの記事をご紹介しています。
福岡爪ケア事件控訴審、6月24日結審(asahi.comより)
http://ameblo.jp/sai-mido/entry-10572938282.html
事件の経過と裁判の意義についてまとめた下記エントリーも参考になさってください。
爪ケア事件を看護・介護労働者が考える意義
http://ameblo.jp/sai-mido/entry-10595936190.html







1 ■カチンと来た所は置いといて(笑)
おっしゃえる通り、労働審判制度と裁判員制度は全く別物ですよね。おかしなミスリードはやめてもらいたいですね。
意図的なミスリードなのか、記者の能力が低いのかわかりませんが・・・。いずれにしても問題のある記事です。