労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。


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気が付くのが遅くなって大変申し訳ありませんでしたが、日本医療労働会館と国民医療研究所の主催で行なわれた「第24回看護・介護講座in熊本」で、北九州(福岡)爪ケア事件についての当事者の国選弁護人である弁護士さんの講演が行なわれたそうです。

その講演内容が「月刊国民医療」2010年7月1日号(No.274)で紹介されています。長文ですのですべてをご紹介することはできませんが、看護労働者、介護労働者がこの事件を考えるうえで重要な視点が提起されていますので、要点を絞ってご紹介したいと思います。

参考資料は上述の「月刊国民医療」2010年7月1日号(No.274)の2ページから7ページです。要約ではなく、資料から直接引用する場合は青で表記し、ページを示します。



1.事実の経過

爪ケア事件の事実経過について、詳しい説明がされました。傷害罪で起訴された当事者をUさんとし、その他の関係者は登場する順にアルファベットを割り振って示します。


・Uさんは事件当時は八幡東病院の東6階病棟の看護課長。

・平成19年6月11日午前10時15分、Uさんは患者Aさんの右親指の爪切りをし、わずかに血がにじんだ部分があったため応急処置としてアルコール綿をあてた。

・同年6月15日午前7時45分、Uさんは患者Bさんの右足中指の絆創膏をとったところ、爪も一緒に取れた。右足親指の爪も伸びていたので、爪切りをした。

・同日、患者Bさんの爪切り後の状態を見た看護師Cさんが、看護課長が爪をはいだと看護師Dさん、看護師Eさんに報告し、看護師Eさんが看護部長に報告。看護師Cさんは患者さんの家族にも携帯電話で連絡。

・Uさんは看護部長に危ないので浮いている爪を切ったと説明し、看護部長も患者さんの状態を見て問題がないと確認したが、病棟で騒ぎになっているので看護部長はUさんに自宅謹慎とした。

・病院内の誰かが新聞社に患者さんの足の写真やカルテなどを持ち込み、同年6月25日、新聞社が病院へ取材に来たので、病院が同日午後7時に記者会見を設定。

・記者会見の場で、病院役員(非医療従事者)が「虐待があったこととして対応する」と発言。(「」内は4ページからの引用)

・翌日から、マスコミが「虐待」、「爪はがし」、「ストレス抱えた看護師」などと報道。

・同年7月2日、福岡県警がUさんを逮捕し、102日間身柄を拘束。(「」内は4ページからの引用)

・平成20年10月から平成21年3月、一審。福岡地裁は「爪をはいだのではなく爪切りをした」と認定するが、「認知症で同意できない患者に」「出血や痛みに配慮せず」「自分の楽しみで爪切りをした」とし、傷害罪として懲役6カ月、執行猶予3年の判決(「」内は2ページからの引用)

・Uさんが控訴し、平成21年8月から二審(控訴審)開始。


2.二審(控訴審)の状況

一審では、少なくとも「爪をはいだのではなく爪切りをした」(2ページより引用)と認定されたので、二審ではUさんの行なった爪切りが「看護師のケアとして標準的な爪切りであったのか、法律上、看護師の正当な業務行為として認められるのか」(3ページより引用)が主な争点となっているそうです。

弁護側は、一審でも高齢者の肥厚した爪を放置しておくことは危険であり、爪を危険でない状態まで切除することは看護師の適切な処置であると主張し、看護の専門家の証言も得ています。足の爪のケアはフットケアと呼ばれ、現在では広く看護現場で知られているケアですが、フットケアに関する文献が出されたのはここ5~10年前からで、フットケア学会の設立は2006年、フットケアに関する関連団体がつくられたのも10年以内と歴史が浅いそうです。よって、参照できる文献が少ないため、二審では実際にフットケアを行なっている医療機関の医師から証言を得ています。

また、二審では裁判官の要請により、Uさんが詳細な説明をするとともに、彼女が別の患者さんの爪切りを行なっているビデオ映像を法廷で上映し、ケアを受けている患者さんが痛みを感じた様子もなく眠っている様子が映し出され、爪ケアが患者さんに苦痛を与える行為ではないことが示されたそうです。

検察側は、血が一滴でも出れば傷害罪”(6ページより引用)と主張し、産業医科大学の医師を証人に立てたそうですが、その医師も「爪の切り方は問題ない」(6ページより引用)と証言し、認知症患者へのケアなので家族の同意と医師との連携、事後の説明が必要であったと述べているそうです。

争点は、本件が刑法上の傷害罪に該当するかどうかですが、学説によると障害は「人の身体の完全性を害すること」(6ページより引用)とする説と「人の生理的機能に障害を加えること」(6ページより引用)とする説があり、実際の判例では「折衷説」を採り、大きく外観を変えた場合も傷害罪に該当するとしているそうです。しかし、その場合であっても、その行為が看護師の行なうべき正当業務行為と認定されれば無罪となるそうです。

Uさんの爪切り行為は、爪の外観を大きく変えるものですが、放置して危険な状態にさらすよりも患者さんの状態は確実によくなっていることから、必要かつ適切な処置であり、正当業務行為であると弁護側は主張しています。同意の問題については、包括的なケアの承諾を前提として入院していることから、必要な行為を適切に行なった場合は推定的な承諾があると主張しています。


3.この裁判がなぜ重要なのか

講演では、この裁判の重要性が3つ挙げられています。

第一は、もちろんUさんの人権を守り、名誉を回復することです。誤ったマスコミ報道による認識をただし、個人に責任を押し付けた病院や行政の責任を問うことが必要です。

第二は、高齢者のフットケアを後退させないことです。(7ページより引用) この事件によって、高齢者のフットケアを行なうと逮捕されたり世間から批判を浴びることになるという認識が広がり、フットケアを行なう看護師や医療機関が減少してしまえば、不利益を被るのはフットケアを必要としている高齢者です。そうならないよう、裁判所には適切な判断を求める必要があります。

第三は、看護の専門性・主体性(7ページより引用)を守ることです。今回の事件について、医師の許可を得ていれば問題はなかったという意見がありますが、本来療養上の世話にあたる爪切りなどの行為は看護師が専門職として自らの判断で行なう範囲のものです。看護師が主体的に専門性を発揮する領域を狭めることなく、看護の専門性・主体性を守ることも、この裁判の重要な意義の一つです。



以上が講演の大まかな要約です。今回は私は実際に聴いていないので取捨選択に不適切な点があったかもしれませんが、これまでよりもはるかに詳細な情報が伝えられたのではないかと思います。

講演された弁護士さんも指摘されていたことなのですが、この事件は早くから専門家が関わっていればこのような事件になることなく、病院側が患者さんのご家族に十分な説明を行なうことで解決していた問題なのではないかという思いが強くなりました。

当組合の組合員で、フットケアに従事している看護師もこの事件に強い関心を寄せています。この裁判の重要性についての3点の指摘にありますように、高齢者看護、介護に関わる労働者にとっては他人事ではない問題であり、患者さん、利用者さんにとっても必要なケアが行なわれなくなるかどうかの問題になります。

ぜひ多くの方に関心を持っていただきたいと思います。




2010年9月16日予定の判決日まで、ご支援よろしくお願いします。


緊急報告「爪ケアを考える北九州の会」からのアピール

http://ameblo.jp/sai-mido/entry-10310539150.html


2009年12月18日、第2回公判が行なわれました。「ユニオン」と「労働ニュース」アーカイブ様から新聞記事をご紹介していただきました。



毎日新聞の記事

http://fukuokaunion.blog7.fc2.com/blog-entry-5054.html



朝日新聞の記事

http://fukuokaunion.blog7.fc2.com/blog-entry-5058.html



当ブログでは、2010年6月24日に結審した際のasahi.comの記事をご紹介しています。



福岡爪ケア事件控訴審、6月24日結審(asahi.comより)

http://ameblo.jp/sai-mido/entry-10572938282.html

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