特許翻訳 A to Z

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特許専門用語集-Bとの関連です。

現代であれば、わざわざ用語集に加えることなどしないであろう、明細書の項目見出し。
用語集に対するコメントでも言及したように、必要になれば簡単に調べることができます。

ここに具体例を示すとともに、Google TranslateGoogle Patent、サイト指定検索を組み合わせたGoogle活用法を取り上げます。
説明をわかりやすくするためにドイツ語を例にしますが、他言語でも基本は同じです。

1. Google Translateに、brief description of the drawings と入力します。
 ※ソース言語に日本語ではなく英語を使ったことには理由がありますが、これについては後述します。
 
2. ターゲット言語にドイツ語を設定し、翻訳します。
   「kurze Beschreibung der Zeichnungen」という訳語が出力されます。

訳語にマウスポインタを合わせてみると、「ひとまとまり」として水色に表示されます。
これは、個々の単語が独立に翻訳されたのではなく、フレーズとして翻訳されたことを示しています。




3.次に、Google Patent にアクセスします。

4.Translate で取得した「kurze Beschreibung der Zeichnungen」をダブルコーテーションで括ってフレーズ扱いにして、検索します。
 この検索で、該当する文字列を含む公報が多数ヒットします。

中身を確認すれば、「図面の簡単な説明」の見出しとして使われていることが確認できます。
このように、明細書中での使用頻度が高いと思われる用語やフレーズであれば、Google Translate と Google Patent を組み合わせることで、かなり容易に調べることが可能です。

ところが上の検索で、Google が 「kurzBeschreibung der Zeichnungen」 ではないか?と聞いてきています。
(私は検索の言語設定を英語にしているのでメッセージも英語ですが、日本語設定の場合は「もしかして○○?」と聞かれると思います。)

 

そこで試しにGoogleに打診されたとおりの表現で検索すると、「kurze Beschreibung der Zeichnungen」より数は減りましたが、そこそこヒットしました。

どちらも実際に相当数で使われていることは、おそらく間違いないでしょう。
ただ、特許庁が公式に出している表現というものが、あるはずです。

そこで、それぞれの表現を特許庁のサイト指定で検索してみます。

まずは欧州特許庁(epo.org)。
ドイツ特許庁ではなく欧州特許庁を選んだ理由は、ドイツ特許庁ならドイツ語主体の可能性が高いのに対し、欧州特許庁なら(出願可能な言語からして)英語とドイツ語が混在している可能性が高いと考えたことによります。

特許庁のURLを、翻訳に活用する」で説明したように、site:epo.org で限定します。
以下、「kurze Beschreibung der Zeichnungen」を使う場合を①、「kurzBeschreibung der Zeichnungen」を使う場合を②とします。

①は実数163件で、一番上に、「EPO - Gemeinsames Anmeldungsformat」という特許庁の公式資料らしきものが出てきました。
Google Translate で意味を英訳してみると、「EPO - Common application format」だそうです。
 
かたや②は実数89件で、審決文や明細書そのものなどがヒットしています。

この結果を表面上でとらえただけでも①のほうが正式ではないかと思えますが、念のため①の一番上にヒットした資料の中を確認します。

-Description [Beschreibung]
  -Title of Invention or Title [Bezeichnung der Erfindung]
  -Technical Field or Field [Gebiet der Technik]
  -Background Art or Background [Stand der Technik]
(以下略)

このように、見出しが英独対訳で出てきました。
図面の簡単な説明は、「kurzBeschreibung」という複合語ではなく「kurze Beschreibung」から始まっています。
これで、こちらが庁の公式表記だと確認できますね。

同じことをドイツ特許庁(dpma.de)で試したところ、①が5件、②が3件で、資料になりませんでした。

なお、最初に Google Translate を使うときに、「図面の簡単な説明」という日本語をドイツ語訳するのではなく英語を使った理由は、日本語を介在させる機械翻訳は「訳が出ない」か「出ても不適切」になることが多い」のを、知っていたためです。

実際、日独でやってみると、明細書の見出しという固定されたものであるにもかかわらず、訳は出ませんでした。
日英ですら、出力結果は「図面 の <unk> 」という、意味不明な文字列になります。

ただ、日英なら訳語を取得できることもありますので、そういうときは、上に示した Google Translate + Patent + サイト指定検索での訳語確認を応用できると思います。

特許公報を辞書代わりにする、ということや「Google Translateの誤訳リスク」で触れた点には十分に注意しつつ、文明の利器をありがたく活用させてもらいたいものですね。

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