27日のリサイタルの1曲、ポッパーの『レクイエム』の
リハーサルをした。
この曲は昔からとても好きでいつか弾きたい、と思っていた。
その思いを強くしたのは、やはりジュリアードでの師匠
ハーヴィ・シャピロ の1996年5月12日の東京・紀尾井ホールでの
来日公演を聴いてからだ。
幾多の優秀で著名なチェリストを弟子に持つ彼だが
この公演では毛利伯郎先生と上村昇先生を第2、第3チェロに従え
素ん晴らしいアンサンブルを聴かせてくれた。
曲の冒頭は第1&第2チェロだけの静かな旋律から始まるのだが
その第一音から鳥肌が立った。
題名からして物悲しいイメージがあるが、確かに静謐で沈痛な響きも
勿論あるのだが、一糸乱れぬアンサンブルは何だかとても堂々とした
響きだった。
人生において良かった事もそうでなかった事も全てを受け入れ
後悔を持たない人間が出せる音、のように感じられた。
短い曲なのだが、とてもパーソナルな感情だったり、昔を懐かしむような
情景だったり、またこれから先の明るさなんかも感じられる、
様々な場面が盛り込まれたドラマティックな曲想だ。
シャピロが来日した時の思い出と言えば、正にこのレクイエムの
合わせの際にリハーサル場所にはシャピロの愛弟子である
毛利先生と上村先生が早々と到着されていて、物凄い勢いで
さらっていた。
そして、ジュリアードの期末の実技試験を終えて里帰りがてら
シャピロの身の周りの世話係を仰せつかったバケーション気分全開の
呑気な私がそのリハーサル場所に現れると、お二人が
「シャピロの機嫌どう
」と勢い込んで聞いてこられ、
「やっぱ音外したら怒鳴られるのかなあ
」等と心配顔だったのが
可笑しくて仕方が無かった。
日本を代表する二大チェリストが若き日に受けた、シャピロからの
叱責の日々に苛まれてビビリながらさらっている姿なんてそうそう
見られるものでは無い。
そこへシャピロが登場し、合わせになったがリハーサルからして既に
完成された演奏だった。
素晴らしかった。
お二人の愛弟子との共演にシャピロは大層ご機嫌で、怒るなんて
とんでも無かった。
いつも『弟子が良いチェリストだ、と言う事はそいつの先生も良い
先生なんだ』と言う考えの人だったから尚更嬉しかったのだろう。
和やかにリハーサルは終了した。
二大チェリストは「シャピロも丸くなったか?」なんて話されていた
けれど、それはご自身たちの演奏によるものであって、私にとっては
まだまだこわ~い存在の先生だった。
シャピロに習い始めの頃はよく、
「Get your money back from Mori!!!!!」
(お前は毛利から何を習ってたんだ
レッスン代返して貰え
)と
実に彼らしい?物言いが定番の怒鳴り台詞になっていた。
私が良く弾けないばっかりに海の向こう側の先生まで怒られて
しまったようで、何だか二重に心苦しかった。。。
毛利先生その節は大変申し訳ありませんでしたm(__)m
そんな固い絆の3人の演奏を間近で聴く事が出来て『レクイエム』は
私にとっていつか弾いてみたい曲の筆頭となった。
でも独りでは演奏不可能だし、なかなかその機会は巡って来なかった。
シャピロが2年前に鬼籍に入り、その曲をこうして自分が彼へ
哀悼の意を込めて弾く事になろうとは不思議な気持ちだが、
同じ門下で大尊敬する先輩達と弾けると言うことは何と言う幸せだろうか。
荒庸子さんと柳瀬順平さんは私が公私共にお世話になりまくっている
方々だ。
本当に素晴らしいチェリストお2人と久々にチェロの響きを
重ねられるのは嬉しい限り。
物言わずとも、こういう風に弾いてくるだろうとかフレーズの終わり方は
こうかな、と分かるのが何だかとても嬉しい。
『シャピロ語』じゃないけれど、同じ話法で音楽を語っている感じが
心地好い。
色々と意見を下さりリハーサルは良い時間を過ごす事が出来た。
この曲が上手くいったら私のリサイタルは成功だ。
。。。いやいや、やっぱり他の曲もちゃんと弾かねばね![]()
全ての曲、全ての音が聴いてくださる方々の心に何かしら
跡を残せたら、そしてどこかで聴いているシャピロに届くように。。。
きっと彼はこう言うだろう、
”You can't get your money back from me!!!!!”
。。。。。


