千秋が日本を発ち1週間が過ぎたある日、


彼女からエアメールが届きました。




とりあえず、英会話スクールに通っていること、



お姉さんに私の話をしたこと、



食べ物が不味いこと、



等々。



とりとめのない話ばかり。



いや、待てよ。




お姉さんに私の話をした(・・?)



そう、私と同い年の次女です。



いったい何を話したのだろう。


ありのままなら、かなりヤバイです。


とても胸を張って言える関係ではありません。




私は居ても立ってもいられず、


彼女に電話しました。




すると、




そのお姉さんが出ました。


「あら、さとちゃん」

(恥ずかしいのですが、ふたりきりの時、千秋は私をそう呼んでいました)




そういうことまで……。




私がドギマギしていると、彼女は笑いながらこう言いました。



「千秋ねぇ、今シャワーしてるから、どうする?」



どうするって(・・?)



「後で電話するか、それとも出て来るまで、私とちょっとの間だけおしゃべりするか……。もうすぐ出ると思うんだけどね」




お姉さん、それって私と話をしたいのでしょ?


ミエミエです(^^ゞ



私はお姉さんとお話することにしました。




たぶん、全部知っています。いきなりの“さとちゃん”で感づきました。




私は言葉を選びながら、当たり障りのない会話をしました。



お姉さんが習っている学問についてです。 



「そうね、日本語でいえば女性学」




現在はあの法政大学教授、田嶋陽子先生のお陰で有名ですが、当時は日本にそんな学問はなく、私も初めて聞きました。




「簡単に言えばセクハラの学問。千秋もそれを学ぶために来たんじゃない。聞いてないの?」



知りません、そんなこと。

留学って聞いたから、英文学かと勝手に思っていたのです。
(千秋は某一流私大英文科卒業)




そうこうしているうちに、千秋がバスルームから出て来て電話を替わりました。



相変わらず、元気そうです。


私は安心しました。




ひととおり話をして電話を切りましたが、


なぜ“セクハラ”の学問を勉強しに行ったか不思議でした。




その後、3ヵ月くらい電話や手紙のやり取りが続きました。




と、クリスマスを1ヵ月前にしたある日、彼女がこう言ったのです。




「クリスマス休み、お姉さんも日本に帰っちゃうし、私ひとりぼっちなんだ……」



私とのことを、全部話すくらい仲の良い姉妹です。



淋しかったに違いありません。



「ねぇ、来ない?」




えっ?




「こっちに遊びにおいでよ。お姉さんいないから、羽根伸ばしたいし……」



どう解釈すれば良いのだろうか迷いました。



だって“別れた”はずです。




真意がわかりません。



私は当時、プライベートでも仕事でも



一度も海外へ行った経験はありませんでした。




「行くよ」



つい、言ってしまいました。



「あぁ。案内しろよな、俺初めてなんだから」



千秋は子供のようにはしゃいでいました。







それは彼女と出会った日、


初めて夜を明かした時と、同じようなはしゃぎ方でした。















<つづく>
AD

コメント(6)