第8536回「S.キング初期中短編 その12、猿とシンバル ストーリー、ネタバレ」 | 新稀少堂日記

第8536回「S.キング初期中短編 その12、猿とシンバル ストーリー、ネタバレ」




 第8536回は、「S.キング初期中短編 その12、猿とシンバル ストーリー、ネタバレ」です。後の「IT」を連想させる70ページほどの秀作です。


 過去と現在が交錯します。キーとなるのは、猿のおもちゃ、シンバルをかき鳴らします。シンバルの間が30センチほどありますので、かなり大きな人形です。毛がふささしており、にたにた笑いを浮かべているアジア製のおもちゃです・・・・(写真はイメージとして楽天市場から引用しました)。


「その12、猿とシンバル」

 伯母が亡くなったので、ハル・シェルバンは家族を連れて、育てられた伯母の家に行きます。遺品整理のためです。そこで見つけたのが、井戸の底に捨てたはずの猿のおもちゃでした。ハルは子どもの頃を思い出す、忌まわしい思い出を・・・・。


 壊れているはずの猿のおもちゃがシンバルを叩くと、誰かが死んだのです。最初はベビーシッターの未成年、銃撃事件に巻き込まれなくなっています。2度目は、兄が学校から帰る途中、飲酒運転の自動車にはねられ、一緒にいた同級生が死亡しています。兄は幸い避けることができました・・・・。


 3度目はハル本人がねじを巻きました、亡くなったのは母親でした、突然死でした。その間、何度も猿を捨てようとしましたが、戻ってきます。まるでおもちゃに意志があるかのごとく・・・・。航海士だった父親は失踪していたため、伯母の夫婦に兄弟は引き取られました。


 そこで亡くなったのが、愛犬でした。そして、ハルは井戸の底に猿を沈めます・・・・。ところで、妻との間には、12歳のデニスと10歳のビーティという名の息子に恵まれました(年齢は推定)。しかし、思春期を迎えたデニスはドラッグなどにも興味を示し、ハルも声を荒げることが少なくありませんでした。


 一方、ビーティは素直な少年に育っていました。猿のおもちゃに興味を示したのが、ビーティでした。ハルは説明らしい説明をせずに取り上げます。しかし、猿は自由自在にビーティの前に現れます。どうも、無意識のうちに、ハル自身が隠していた猿を取り出していたようです。


 ビーティも次第に猿に不気味さを感じ始めます。そして、妻とデニスが不在の間に、ハルとビーティは、湖の最深部に沈めることを決意します。その池は、伯父とハルとのの思い出の場所でした・・・・。以下、結末まで書きますので、ネタバレになります。


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 猿のおもちゃを航海先で買ってきたのは父親でした。父親は家族を見捨てて失踪したのではなく、猿のために殺されたのではないか、ハルにはそう思えます。「ビーティは岸に残っていろ。おれ一人で猿を捨てに行く」、伯父が作った手製の頑丈なボートで湖の中心部に向かいます。


 何か違和感を感じましたが、猿を沈める作業を進めます。バッグの中に多数の石を入れ沈めようとしたのです。ところが、沈める直前に、シンバルが鳴り始めたのです。水中からもシンバルの音が聞こえてくるように思えました。


 その瞬間でした、頑丈なはずのボートが分解し始めたのです、さらに大きな波も・・・・。必死でハルは泳ぎます、ビーティは父親を助けるために池の中に入ってきます。ハルは助かりました。「これで永久に猿を始末できたろう」、そう信じたい、それがハルの正直な想いでした・・・・。


 数日後、その湖に大量の魚が浮かび上がったことが報じられました。なお、魚類学者は「原因はまったくわからない」とコメントしています。


(追記) スティーヴン・キングの初期中短編につきましては、随時ブログに取り上げていく予定です。興味がありましたらお手数ですが、ブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に、"キング中短編"と御入力ください。