2010-12-06 16:07:39

公取委から回答/電子書籍の再販問題と価格設定

テーマ:ほんのひとこと

9月30日、私たち流対協は、公正取引委員会と話し合い、いくつかの申し入れをした。その一つが電子書籍と再販の問題だった。席上、公取委は電子書籍を非再販商品と判断しているという見解が示されたので、その理由と根拠、また決定、文書等があるなら示してほしい旨、申し入れをおこなった。11月29日、公正取引委員会で、経済取引局取引部取引企画課長補佐・池田卓郎氏からその回答を聞いた。

9月30日の申し入れをふまえて、公取委ではホームページの「よくある質問コーナー」「独占禁止法関係」に、次のQ&Aを示したとのこと。

Q14 電子書籍は、著作物再販適用除外制度の対象となりますか。
A.著作物再販適用除外制度は、昭和28年の独占禁止法改正により導入された制度ですが、制度導入当時の書籍、雑誌、新聞及びレコード盤の定価販売の慣行を追認する趣旨で導入されたものです。そして、その後、音楽用テープ及び音楽用CDについては、レコード盤とその機能・効用が同一であることからレコード盤に準ずるものとして取り扱い、これら6品目に限定して著作物再販適用除外制度の対象とすることとしているところです。
また、著作物再販適用除外制度は、独占禁止法の規定上、「物」を対象としています。一方、ネットワークを通じて配信される電子書籍は、「物」ではなく、情報として流通します。
したがって、電子書籍は、著作物再販適用除外制度の対象とはなりません。
http://www.jftc.go.jp/dk/qa/index.html

まず、ネット上の書店で販売する電子書籍は「情報」であり、著作物再販摘要除外制度が対象とする「物」ではないので対象外(非再販商品)だという見解だ。

また、書店段階でプリントアウトして読者に販売するようなオンデマンド出版物については、読者にわたる著作物は「物」であるが、出版社→(取次店→)書店の間では「情報」として流通しており、「物」が再販売されておらず、著作物再販適用除外制度の対象外との見解だ。同じオンデマンド出版であっても、出版社段階でプリントアウトして出荷した書籍は、当然、著作物再販適用除外制度が摘用される。

形のある「物」と、そうでないサービスや情報を区分し、「物」でないものはそもそも著作物再販適用除外制度の対象外だという公取委の論の立て方はわかったが、“独占禁止法の規定上、「物」を対象としています”という時の「物」という概念のとらえ方については、法律の専門家に改めて聞いてみたい。

さらに「物」であっても、書籍と同じ内容をデータ化したCD-ROMなど記憶媒体も「書籍」ではない(非再販商品)と公取委は言う。音楽の場合、制度導入当初のレコード盤だけでなく、技術上の進化に伴って、音楽用テープ、音楽用CDが“機能・効用が同一であることからレコード盤に準ずるもの”として取り扱われるようになっている。しかし書籍とCD-ROMなど記憶媒体では“機能・効用が同一”ではないと公取委は言う。「本はそのものが読めますが、全く同じ内容であってもCD-ROMなどはパソコンなどの機器を介さなくては読めませんから」。うーん、これは納得しがたいなあ。

聞いていて感じるのは公取委の意志だ。Q&Aにもある通り、公取委はあくまで自由競争による公正な取り引きを守る立場、独占禁止法を守る立場であって、著作物再販適用除外制度はあくまで例外的に制度導入当時の「慣行を追認」しただけで、対象を「著作物(書籍、雑誌、新聞、音楽用CD、音楽テープ及びレコード盤の6品目)」から減らすことはあっても、増やすことなど許しがたいということだろう。公取委が文化的な著作物の保護を任務とする役所でなく、独占禁止法が文化保護の法律でない以上、論議はなかなかかみあわない。

書籍・著作物の再販の問題を、いつまでも公取委を舞台に「独占禁止法の適用除外」という枠で扱い続けるのではなく、文化政策として扱うような枠組みの変更を考えることはできないのだろうか。

再販の問題は継続して考えたいが、現状では、電子書籍であっても出版社が示した「価格」が割り引かれて販売されてはいない。紙の書籍より安い価格で販売されていても、それは出版社側が安い価格設定をしたのであって、出版社の値付けが崩れてはいない。

ネット社会の中で「情報は無料」の感覚が圧倒的に広まった。「紙代も、製本代もかからないから安くなるでしょ」という論議も当然のように出る。「電子書籍は紙の本より安くて当然」と考える版元も少なくない。

そう考える版元があってもいいが、それが「当然」ではないだろう。1000部~2000部の初版で、この本を必要とする読者にどう届けるかというような出版をしている私のところでは、仮に電子化した書籍を出したにしても、それで販売数が飛躍的に増えるなどとは思えない。したがって、紙媒体・電子媒体合わせた原価を両者に公平に負担していただくのがリアルだと思っている。

●水野久晩成書房 /流対協副会長)

『FAX新刊選』 2010年12月・202号より

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