民法改正16〔賃貸借契約〕

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 賃貸借契約につきましては,実務上重要な改正を多く含んでいます。とはいえ,判例ルールを明文化したものが多いのもまた事実です。概略について述べておくことにします。


①成立要件

 冒頭規定に返還義務を明確化しました。要件事実の示し方が変わってくるのかな。


②存続期間

 長期間の存続期間を定める必要が出てきました。そこで,存続期間の上限が50年ということになります。


③対抗力,賃貸人たる地位の移転

 従前から判例法理により説明されていた事項を明文化することになりました。特に賃貸人たる地位の移転の話については,旧所有者へ留保する旨の特約も定められ,判例法が完全に明文化されることになりました。


④妨害排除請求権の明文化

 妨害排除請求権についても解釈で認められていたのですが,それが明文化されることになりました。


⑤敷金の明文化

 従前,敷金関係に関するルールにつきましては,解釈に委ねられていました。敷金関係で無用な紛争を避けるため判例法理が明文化されることになりました。


⑥賃貸物の修繕

 賃貸人の修繕義務について,賃借人に帰責事由が存する場合にはない旨の規定が新設されました。また,賃借人に修繕権限を付与することになりました。


⑦賃料の減額規定の新設

 特に重要なのが賃借物の一部滅失のケースで従前は当然に賃料が減額されるわけではなかったのですが,改正法で賃料の当然減額が認められることになりました。この点の改正については賃貸業への影響が大きいように感じます。契約の改訂などが必要になってくるでしょう。


⑧転貸の規定整備

 賃貸人と転借人の関係が曖昧であったことから明文化されることになりました。特に解除された場合の転借人の地位について判例法理を明文化することになりました。


⑨危険負担の規定

 従前,賃借人の帰責事由により賃借目的物が滅失した場合,解釈により賃料支払義務が消滅するとされていましたが,これを明文化することにしました。


⑩終了後の収去義務等

 従前,賃借人に収去権を認める規程が存しましたが,収去義務を定めていませんでした。そこで,解釈により賃借人に収去義務を課することにしました。それと並行して原状回復義務についても明文化されることになりました。


 賃貸借契約については重要な改正が目白押しです。不動産関係の仕事に従事されておられる皆さんは御注意下さい。



            弁護士 西口 竜司



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