~BLなお話です~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え…雅紀…今、何て言った?」

 

 

 

雅紀は涙をぽろぽろ零しながら首を横に振った。

 

 

 

「キスって…誰にされたんだ!?」

 

 

 

思わず雅紀の肩を掴み、強い口調で問い質してしまった。

 

 

 

「や…翔ちゃん…怖い…。」

 

 

 

雅紀は怯えた表情になる。

ハッとして、掴んでいた雅紀の肩を離した。

 

 

 

「…ごめん。雅紀…。」

 

 

 

雅紀が俺の胸に飛び込んで来た。

腕を背中に回してぎゅっとジャケットを掴んだ。

俺も雅紀の腰にそっと手を回した。

暫くそうしていた。

 

 

 

 

 

「…家、送ろうか?」

 

 

 

雅紀は胸の中で頭を振った。

 

 

 

「…じゃぁ、俺んち来るか?」

 

 

 

雅紀はこくんと小さく頷いた。

 

 

 

 

自転車の後ろに乗っている雅紀。

胸に手を回して俺の背中にぴったりと貼り付いている。

くすんくすんと鼻をすする音がする。

…泣いていた。

 

 

 

 

…誰にキスされたんだよ。

 

 

 

 

俺は雅紀を泣かせた奴にめちゃくちゃ腹が立った。

 

 

 

 

家に着く。

雅紀は目が腫れて、おまけに鼻の頭も真っ赤だった。

雅紀のこの顔を見れば明らかに何かありました、と

言っているようなものだ。

茂爺ややお手伝いさんもきっと心配をするだろう。

俺は裏口からそっと雅紀を家に入れた。

自分の部屋へとこっそり向かった。

 

 

 

部屋に入り、

雅紀をソファーに座らせて俺も横に座った。

項垂れている雅紀。

 

 

 

「紅茶、飲むか?」

 

 

 

小さく首を振る。

 

 

 

「じゃ、何かつまむ物…」

 

 

 

ソファーから立ち上がろうとした時、雅紀に腕を掴まれた。

 

 

 

「…昌宏…お兄ちゃんに…キス…されたの…。」

 

 

 

消え入るような小さな声だった。

俺を見つめる目に涙がいっぱい溜まっていた。

 

 

 

「…え…?昌宏さんって…さっきの!?」

 

 

 

 

 

雅紀の話では昌宏さんは家も近所で

ずっと家族ぐるみの付き合いをしていて

小さい頃から遊んでもらったり、勉強を教えてもらったり…

とても可愛がってくれたそうだ。

雅紀も昌宏さんを慕って懐いていた。

 

 

 

「…僕ね、昌宏お兄ちゃん…好きだよ。

いつも優しくて…

抱き付いたり…抱っこしてもらったり…

お兄ちゃん、だ~い好き…何て言ったりしてたけど…

…こんなのイヤ…だって…大好きが違うもん…。」

 

 

 

雅紀は涙をぽろぽろ零しながら言った。

 

 

 

俺は雅紀の昌宏さんに対する今までの

一連の行動、話し方、接し方を想像して

大きな溜息を吐いた。

 

 

 

 

そりゃ、誤解するよ…。

こんなキラキラの瞳で『だ~い好き』…だぞ?!

 

 

 

 

雅紀にキスをした昌宏さんは許せない。

 

 

 

…でも、キスしたい気持ちは十分にわかる。

 

 

 

…って言うか、俺も昌宏さんと同じだし…。

雅紀にキスしちゃったし…。

 

 

 

 

雅紀はあの時…俺がキスした事、嫌じゃないって

言ってくれたけど…。

本当は後でこんな風に泣いたり…したのか?

 

 

 

俺はめちゃくちゃ心配になって胸が痛んだ。

 

 

 

 

 

…こんな事、聞くべきじゃない。

そんな事わかっている。

デリカシーがなさ過ぎる。

 

 

 

…でも確かめたい。

じゃないと心配で…。

 

 

 

いや、心配ももちろんだが…

これは完璧なる嫉妬だった。

俺は意を決して雅紀に聞いた。

 

 

 

 

「雅紀…。そのキスって…舌…入れられた?…わっ!!」

 

 

 

雅紀がソファーに置いてあったクッションで

俺の頭を思いっ切り叩(はた)いた。

 

 

 

「バカ!バカ!翔ちゃんのバカ!!

何でそんな事、聞くの!?」

 

 

 

なおも俺の頭を叩き続ける。

 

 

 

「わ、わ、わ、ごめん!ごめん!!」

 

 

 

雅紀は持っていたクッションに顔を埋めた。

 

 

 

「…翔ちゃんみたいのだった…。」

 

 

 

小さな声で呟くように言った。

 

 

 

俺みたいなの…。

俺はあの時、雅紀に思わずしてしまったキスを思い出した。

あのキスは…ほんのちょっと、雅紀に触れただけのキスだった。

 

…ちょっとは安心した。

 

 

 

「翔ちゃん…歯磨きしたい。」

 

「ん?」

 

「まだね…ここにね、昌宏お兄ちゃんが…いるみたいなの…。」

 

 

 

雅紀は自分の唇を押さえながら言った。

 

 

 

「…!!」

 

 

 

それはいけない!

非常にマズイ!

 

 

 

俺は雅紀の手を取って急いで洗面所に連れて行った。

そこの引き出しに入っている予備の歯ブラシを雅紀に渡した。

 

 

 

雅紀が「翔ちゃん、見てちゃヤダ。」と、言ったので

自分の部屋で雅紀が歯磨きを終えるのを待った。

 

 

 

その間にこっそりとキッチンへと向かい

紅茶とクッキーを用意した。

 

 

 

暫くして雅紀が部屋に戻って来た。

雅紀の顔は何だか冴えない。

 

 

 

「…翔ちゃん。まだね…ここんところに昌宏お兄ちゃんが

いるみたいなの。」

 

 

 

唇を押さえた雅紀は半べそ状態だった。

 

 

 

「ここはずっと翔ちゃんがいたのに…。

もう…翔ちゃんじゃなくなっちゃった…。」

 

 

 

俺はドキッとした。

そして雅紀は更に更に更に…俺をドキッとさせる事を言った。

 

 

 

 

「…翔ちゃん…キス…して。」

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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