漆との出会いは
とあるゲストハウスのトイレである。
木に穴を彫っただけのカッコいい木製シンク。

(木ってこんなとこにも使えるのか!と感激。)

そのシンクがテッカテカに塗りつけられているものが漆だった。

(なに!漆スゴイ!!耐水性があるんや!と、さらに感動。)

それから、ずーっと気になっていたウルシ

そしてチャンスが訪れる。

昨年末、京都市立芸術大学の先生から問い合わせが入り訪問したことがきっかけ。
その先生は、漆工研究所に所属して漆を塗る器などの加工を担当していた。

漆工研究所の前にいつものごとく車を前付けして説明をしていたら
さすが大学 たくさんの人が通りかかるので
入れ替わり立ち代わりロシアンバーチを興味津々に見て行ってくれた。

そんなご縁で漆の先生ともお知り合いになることができ、
「漆を塗ってみたい!」と
厚かましくもお願いしてみた。
あっさり「いいですよ!」快諾をいただき・・

拭き漆を教えてもらえることに。



そして漆を教えてもらえる日が来た。
朝10:00

そもそもの問い合わせをして来ていただいた安井先生も来て、
漆の大矢先生と私と3人でサンプル作りがはじまった。

漆工研究所の作業場。あ~大学って感じ。懐かしい。ワクワク。


まずは霧吹きでダンボール箱を湿らせる。
(後ほど、漆をこの箱に入れて乾かす)
気温25度前後、湿度75%が、漆がとっても好きな環境で、乾きやすい。



塗装する基材はもちろんロシア白樺耐水合板。
グレードはベリョーザ(節あり、茶色い変色ありのワイルド系で、茶色との相性がよい)
下地の研磨180番。
漆は下地の状態が実直にでてしまうので、なるべく綺麗に整える。




漆を塗るためのスポンジ「てるてる坊主」をつくる。
布はあるもので。綿がよい。タオルやポリエステルはバツ



布とサランラップを重ねたもので包み込み

紐でくくって、てるてる坊主にする。



板を乾拭き

そして
いよいよ漆ちゃん登場。

これを先生のオススメでこちらを購入↓
摺用上生漆黒目(鹿田造喜漆店) 
これは200gだけど、50gから買える。
 



ガラス板の上にニョロっとチューブから出す。
漆をチューブから出すと、みるみる色が濃くなった。

私「わっ!色が変わった!」
先生「漆は生きてるんですよ~。漆の木から取れる樹液です。その中に酵素がいて、
新しいチューブのものは、酵素のいきがいいのでなおさらです。」

なるほど。そして、新しい漆は
ある程度寒くても湿度を与えたら乾くらしい。(元気なので)

湿度や温度によっては固まる速度も早くなるので
塗る直前に、少しずつ出すようにする。

固まってきたら少しだけ灯油で薄めてヘラで混ぜる。
混ぜすぎると固まりにくくなるので注意。

固まりやすい条件の中で塗る場合、かつ面積が広い場合は
ムラがでやすいので少しずつ塗るようにする。



ざくざくと塗る。一度目はたっぷり目に。




教授の大矢先生。ニコニコ
穏やかな人。塗りながら漆にまつわるお話をたくさんしてくれた。
以降、手順と共に漆ネタも同時に盛り込んで書いてみよう。。

先生「漆って1本の木から取れる量が200ccくらいで(さっきのチューブ1本分くらい?)、すごく少ないんですよ。」
私 「えー!」
木が育つのにそれなりに年数がかかって、手間かけて採取して、そんなちょっとの量しか取れないのに、
漆のチューブ200gあたり約3000円って安すぎない・・?大事に使おうと思った。




たっぷり塗ってから、多すぎる箇所はヘラでこそぎ落とす。

先生「漆は殺菌作用や防腐効果があるんですよ。漆のお弁当箱におかずを入れると腐りにくいです。」
私「へ~!」



さっきの「てるてる坊主」でクルクルまわしながら木目と垂直方向にぬる。

先生「漆って人間にとっての血小板みたいなもんです。
木が傷ついたときに傷を治そうとして出てくる樹液です。
だから、もっともモノが腐りやすい湿度と温度の時に酵素が活発になるんです。」

私「へ~!」



次に木目方向になぞる。

先生「漆を胃薬代わりに飲む人もいるみたいです。ボクは飲んだことありませんが」
私「ま、まじで・・!」




最後は、別の布でムラなく拭き取る。

光に向かって、ムラがないか確認できたらOK。

先生「自宅の床を、全部漆で塗った先生もいらっしゃいますよ。」
私 「へ~!」
やっぱり建材にも使われてるんや~。床板、テーブル天板、あと耐水性が必要な箇所で
どこに使われるかな?と私の頭の中でロシアンバーチ+漆塗装の活躍の場をぐるぐる妄想。。



塗装完了。なるべく触らないように布でこのように持つ

私「漆ってかぶれないですか?」
先生「直接触ったら私もかゆくなります。あと、触れなくてもかゆくなる人はいますが、
1度目からかゆくなる人もいれば、2度目以降、又はずっとあとになってにかゆくなる人もいるみたいです。」



はじめに霧吹きしておいたダンボールに入れて、ふたをする。
暖房の効いてる部屋に置いておくと1~2日くらいで乾く。

私「これって耐水性抜群だし、外でも使えますか?」
先生「紫外線と、あと熱に弱いやつなんですよ~色が薄く変わっちゃう。」
私「がくーん」

漆のついたガラス板やヘラは灯油で拭いて綺麗にする。
この時、万が一漆が残ったらサランラップに包んで保管もできるらしい。なるべく残らないように使うのがベスト。
*ただしサランラップ以外のラップは水を通すため、乾燥して固まってしまうらしいので注意。

これで一度塗り完了!



ちなみに大矢先生オススメの本。
漆の基本情報が満載。



用意するもの:

◎漆(摺用上生漆黒目)http://www.shikataurushi.com/products/detail432.html 
(冷蔵庫で保管する。上にものを置いたらチューブが変形して使いづらくなるため、固い箱にいれて保管する方が良い。)
◎ヘラ2枚
◎ガラス板(この上に漆を出す。ステンレストレーなどで代用可能)
◎てるてる坊主(ボロ布:タオル・ポリエステル除く、サランラップ、ヒモ)
◎灯油(ペットボトルで保管。)
◎ゴム手袋
◎プライヤー
(漆のチューブを開けるとき、固い時に使う。ペンチはチューブが破けてしまうことがあるのでダメ)
◎塗ったものが入るダンボール
◎霧吹き

--水研ぎ

◎耐水ペーパー
◎マスキングテープ




これは自分なりにサンプル作れるよう、とりあえずそろえた漆セット。
伝統的なものではないので徐々にちゃんとそろえようと思ってる。


今回は初心者の私でも拭き漆をできるよう簡単にアレンジして教えていただきました。

安井先生、大矢先生、ありがとうございました。

次回は2度塗り&水研ぎ!



営業 小寺