絵本-た | 小学校での読み聞かせ活動記録

絵本-た

松居 直, 赤羽 末吉
だいくとおにろく

28P//20×27/福音館-こどものとも傑作集/1967/読み聞かせにかかる時間-4分前後/季節-川の水が増える時期だから梅雨かな。


これは、日本昔話で、松居直の再話に、赤場末吉が挿絵を描いたものなのだけど、初版が1967年なのですよ。今が2006年だから、もうすぐ40歳になる絵本ということです。


実は、読み聞かせや朗読・素話では、昔話は「よほどのことがない限り、失敗しない」と言われていて、「困ったときの昔話」ともてはやされているのです。長い時間を経て、余計な部分はそぎ落とされ、単純にして明快、勧善懲悪で人情味豊か、規範意識や善悪の判断を培う道徳性など、子ども達が生理的に好む要素のみで構成されているので、当然の帰結なのでしょうね。


これが、素話や朗読あたりだと、その通りと単純かつ、素直にうなずいてお仕舞いにできるのですが、絵本となると少々厄介な批判が出てきております。あまりに、有名であり子ども達に好まれるので、多くの出版社がこの昔話に目をつけ、雨後の筍のように昔話絵本が濫発されるようになってしまったのです。商業最優先社会の弊害です。


試しに、近所の図書館で検索をしてみて下さい。私のよく通う図書館のHPで『だいくとおにろく』を検索をすると5つの出版社の絵本が見つかりました。『いっすんぼうし』では6つの出版社、『かちかちやま』に至っては、10以上の出版社から出しているものを蔵書しています。ここには、アニメ絵本などの安価で現代風にアレンジした作品は入っていません。


こんなにたくさんある昔話ですが、どれもほんの少しずつ違っています。どの作品が優れているか、子ども向けというより商業主義に走った作品なのかを見極めるためには、たくさんの資料を読み、実際にその本を手にとって読んでみたり、皆で読み合いをして意見を交わす事が必要だと思います。


本当のところを言えば、昔話には、選りすぐられた要素がたくさんあるので、わざわざ絵本にする必要はないのではないかと言う人もいます。絵本は、情緒を育み、美的感覚を養い、想像力を広げてくれる大切な媒体ですが、時として逆に、想像力をそこで押し留めてしまうこともあることに気をつけなければなりません。


「昔、昔あるところに美しいお姫様がいました。」と言葉で聞けば、どんな美しいお姫様でも自在に自分の心の中で描くことが出来ます。これを絵本で見てしまうとが、美しいお姫様は、挿絵のお姫様でしかなくなってしまうのです。怖いトロルも、自分の想像するトロルは、挿絵のトロルとは絶対に違う筈なのです。


そういう中で、赤羽末吉さんの挿絵は、高い評価を得ているようです。日本的なイメージを損なわず、具体的過ぎず、抽象的過ぎず、丁度良いインパクトを持っているということでしょうか。ぎりぎり絵本になっていても許せる昔話絵本らしいのです。実は、私も今は試行錯誤のまっ只中。自分自身では、良品判断はできません。手当たり次第に絵本を読んでいる段階です。


ともかく、「困ったときの昔話」は、学べば学ぶほど深みにはまってしまうという、困った現象を引き起こすことがあることにご注意を!



だいこん だんめん れんこん ざんねん-かがくのとも/加古里子/27P/26cm/福音館/1984/読み聞かせにかかる時間-7分程度/季節-何故か鯉のぼりの断面図があるので、個人的にはこどもの日の前かな。


最初は、お母さんが台所にある野菜や果物を切って断面図の説明です。次は、金属や陶器を切ることができたとしたら、おなべやどんぶりの中身が判るのにと説明します。そして、断面図には色々な方向からのアプローチが出来ることや断面図の利用方法などを易しく、詳しく書いてある作品です。


『からすのぱんやさん』や『だるまちゃん』などのシリーズを書いた加古さんは、この作品でも、色々なモノの断面図を優しい色調でたくさんたくさん書いています。かがくとのともの中から優れたものだけが、年に数冊、ハードカバーになります。幼稚園児をターゲットにした月刊誌ではありますが、小学校高学年にだって、十分通用する内容です。


こうや すすむ, なかじま むつこ
だいず えだまめ まめもやし

28P/26×23/福音館/1992/読み聞かせにかかる時間-5分程度/季節-春~秋


ある春の日、三人兄弟のいちろう、はなこ、じろうは、お隣のおじいさんから、大豆を10粒ずつ分けてもらいました。そして、畑にまいて育てました。たった30粒の大豆から、たくさんの大豆が収穫できました。翌年は、各々が大豆を蒔いて管理することにしました。


忘れんぼうのいちろうは、水に浸しただけで種を蒔くのを忘れていました。気づいたら、豆もやしができていました。まめもやしは、もやしラーメンにして皆でおいしく頂きました。


青々と実った実をみて、「枝豆そっくり」と思ったじろうは、種が熟す前に収穫してしまいました。確かに、青いうちに収穫して、塩茹でするとおいしい枝豆ができたのです。あっという間に、三人で食べ終わってしまいました。


しっかりもののはなこは、大豆を収穫しました。この大豆は煮豆にして食べました。残りの大豆は、三人で分けて、来年、蒔くことにしました。


動植物を育てる絵本は、読んだ直後にやってみたくなるから、ちょっぴり季節を先取りして読むのがいいと思っています。ただ、あまりにも季節にこだわりすぎると、「じゃあ、一年に一回しか読めないの?」っていうことになってしまいますよね。大体、私の一番の仕事は読み聞かせボランティア団体用のお当番表作成のための「選書」ですから、図書館からは、ともかく手当たりしだい、面白そうな絵本を借りてくる訳です。


長すぎて、朝読書の時間には読み終えそうもなかったり、面白い絵本だと思ったら、蔵書数が少なかったり、人気がありすぎて、貸し出し中だったり、季節はずれだったり・・・。なかなか読み聞かせに適した絵本に出会うことは少なかったりしています。


我が家の次女は、私が読み聞かせに使おうと思って手当たり次第に借りてきた絵本を手当たり次第に拾い読みをしていますから、子どもって案外、季節を問わず面白いと思った絵本を読んじゃったりするんですよね。そして、ちゃんと心の中に蓄積していて、必要な場面でしっかり思い出したりするんですよね。


『だいどころにもはるがきた』島津和子作



24P/22×21/福音館書店/1994年/読み聞かせにかかる時間-1~2分/季節-台所の野菜を放置しておくと芽が出る時期・・・春


年少版・こどものともの特製版なので、文章は極力控えめです。その分、絵に力があります。ジャガイモ・玉ねぎ・キャベツ・ブロッコリー・長ネギ・人参・大根。どの野菜も生きているのです。土から掘り出され、茎を切られても、芽を出し花を咲かせる生命力の強さに子供達の目は釘付けになること間違いなしです。


でもね・・・主婦としては、こうなる前に、使いきらなくちゃ。と日夜努力をしているのです。ですから、この絵本を見ると、主婦としては失格だ。とか、こんなにズボラな人はいない。と滅茶苦茶こきおろしたくなるのです。でも、屈指のダメ主婦振りを発揮している私でさえ、キャベツから花芽が出るまで放置した事はありません。どちらかというと、腐って溶けていることの方が多いです。汚くてごめんなさい。


ヴァーナ アーダマ, Verna Aardemu, Marcia Brown, まつおか きょうこ, マーシャ ブラウン
ダチョウのくびはなぜながい?―アフリカのむかしばなし

31P/29cm/富山房/1996年/読み聞きかせにかかる時間-約9分/季節-なし。でも暑いジャングルの話だから、臨場感を持たせるために夏に読みたいなぁ。


昔々、ダチョウのくびは短かったのです。そんな昔のある日の事、一頭のワニが虫歯に悩まされていました。このワニの虫歯を引っこ抜いてあげようとダチョウはワニの口の中へ頭を突っ込みます。その時、ワニは朝ごはんを食べていない事を思い出し・・・。


このお話は、アフリカの昔話です。ワニが出てきたあたりから、結末が予想できる安心して見ることも聞くこともできる絵本です。『三びきのやぎのがらがらどん』『ぱんはころころ』などの挿絵を担当したマーシャ・ブラウンの絵にヴァーナ・アーダマの文を松岡享子が翻訳しています。昔話って、どこの国でも単純で楽しくって、飽きないですよね。


加古 里子, Richard McNamara, Peter Howlett, ピーター ハウレット, リチャード マクナマラ
だるまちゃんとうさぎちゃん 英語版
     ↑
  英語版ですので、表紙の参考資料です。
加古 里子
だるまちゃんとうさぎちゃん
     ↑
  実際に読んでみた絵本はこちらです。

28P/20×27/福音館書店/1972年初版/読み聞かせにかかる時間-7分程度/季節-雪だるまを作っているので冬。


今回のだるまちゃんの遊び相手は、妹のだるまこちゃんとうそぎちゃんとうさぎこちゃんです。雪だるまを作ったり、雪ウサギを作ったり色々なものを作って遊びます。おやつまで、色々なうさぎに変身してとってもたのしいひと時を過ごします。


手袋や新聞紙やナフキン、リンゴまでうさぎに変身するこの絵本を読むと、思わず真似をしてやってみたくなります。小さな頃、父や母と色々なモノを作った事を思い出しました。ほんの少し前の時代には、今みたいに高性能なおもちゃがなくとも、家族で楽しみながら簡単なおもちゃを作ったりして楽しんでいたんですよね。そんな楽しいひと時を思い出させてくれた絵本です。


だるまちゃんもシリーズです。(順不同)


だるまちゃんとだいこくちゃん

だるまちゃんとてんぐちゃん

だるまちゃんとかみなりちゃん

だるまちゃんとうさぎちゃん

だるまちゃんとてんじんちゃん

だるまちゃんとりんごちゃん


平山 和子
たんぽぽ
23P/26cm/福音館書店/1972年初版/読み聞かせにかかる時間-4分/季節-たんぽぽの咲く時期(春~秋なんですけどイメージ的にどうしても春!と言いたいですね)

この作品は「かがくのとも傑作集」ですから、科学絵本といえるでしょう。たんぽほについて、詳細で精密な絵と意外な事実を判り易く説明した絵本です。


最初にたんぽぽは、コンクリート間にさえも生えるという強い生命力を説明し、白いさんぽぽがあることも教えてくれます。冬の間の越冬方法も「ほぉ。そういえばそうだった」と思わせてくれます。圧巻なのは、土の中の様子です。たんぽぽの根は、太くて長くて生命力も抜群です。このような資格に訴える説明は、絵本でなければできないものでしょう。


また、ひとつの花だと思っていたものが小さな花の集まりで一かたまりの花は、百以上の小さな花の集まりだということを調べた記載もありました。都会でも身近に見られるたんぽぽについて書かれているので、子ども達は興味津々でこの絵本を眺めています。この絵本を読んでも笑い声は聞けませんが、「おぉ~!」という感嘆の言葉は難解も聞くことができます。せっかくなので、根っこの描写の部分は、コピーをして実物の大きさを実感してもらおうかしら。


ちなみに、同じ題で違う出版社・違う作者さんで絵本が色々出ていますね。代表作として、一つだけ下にピックアップしてみました。


甲斐 信枝
たんぽぽ

37P/27cm/金の星社/1984年初版/読み聞かせにかかる時間-不明/季節-やっぱり春ですよね。