2009-03-30 02:20:08

「チョコラ!」を観た

テーマ:アフリカ
2月に、映画の試写会に行ってきました。「チョコラ!」という映画です。
一言でいうと、これまで出会ったことがない、すばらしい作品でした。
5月9日渋谷ユーロスペースにてロードショーです。

小林茂監督の「チョコラ!」はケニアの首都ナイロビから車で
約一時間ほど北東にあるティカで撮影された。

ストリートで暮らす子どもたちが、はかなくも力強く生きていく姿を丁寧に、
そして寄り添うように映し出している。

鉄クズやプラスチックを拾い、物乞いなどをして生きる子どもたちは、
嘲笑を込めて、「チョコラ」と呼ばれている。
「チョコラ」はスワヒリ語で「拾う」を意味する。

私たちが事業を行っている地域から最も近い都市、キスムでも
たくさんのチョコラが生きている。

彼らはシンナーがはいったプラスチックのボトルを片手に、
裸足で街をうろついている。
「give me 10」と追いかけてくる子どもも少なくない。

彼らは、はじめ、南北格差の犠牲者である、かわいそうな子どもとして、
私の眼に映っていた。

けれども、その印象は次第に、したたかに生きている、
いや生き抜いている、力強い者として、私の中で存在感をはなち、
いつしか町の当り前の風景となった。


この映画を観て、これまで出会ったストリートチルドレンや
たくさんの子どもたちの姿が改めて鮮明に思い出された。

実は、こんなことは、これまで観たアフリカを舞台にした映画にはなかった。
最近ではアフリカを舞台にした映画が多数あるが、
いずれもちょっとした違和感を感じざるを得ないものであった。

南北格差、グローバリゼーション、貧困、エイズ、紛争、政治腐敗・・・を
連想させるようなものは、ネガティブすぎるそのステレオタイプに
正直うんざりしたし、
「瞳がきらきらした純粋で、力強く生きる貧しい子どもたち」を映し出した映画は、
いささか子どもたちを美化しているようで、不満だった。

しかしこの作品は違う。

小林監督は、できる限りステレオタイプを排除し、
子どもたちとの信頼関係の上に、あるがままの子どもたちを受け入れ、
その姿を映し出している。

子どもたちはカメラの前でシンナーも吸うし、煙草も吸う。
喧嘩も日常茶飯事だ。

無邪気な笑顔から、子どもから青年へと成長する過程での葛藤、
家族との確執を前に凍りついたような瞳まで、さまざまな表情を映す。

最初はカメラに靴を投げていたストリートの子どもたちが、徐々に打ち解け、
いつしか、よくもまぁ、こんな映像を撮らせたものだ、
という映像の連続となった。


カメラは、ストリートに出てきた子どもたちのそれぞれの事情を追っていく。


モヨチルドレンセンターの松下照美さんが一人一人の子どもたちを
実家へ戻し、家族と話し合いを持つ。

親たちは、
「子どもが何を考えているかわからない」
「もううんざり」
といった具合で、子どもたちを突き放す。

子どもは宙を見て、まるで彼だけ時間が止まったかのようだ。

何人もの子どもたちが、そのような表情をそれぞれ垣間見せている。
切なくなるような、胸が締め付けられるような思いを感じさせられるのは、
そこに映し出される子どもたちの疎外感やさみしい思いが痛いほど伝わってくるからだ。

次に、HIVに感染した母親とその子どもたちをカメラは追う。

家族3人は寄り添うようにスラムで暮らしている。

一つのベッドに3人で布団をかぶって眠る時間には、とても温かな空気が流れていた。

いつか母親がエイズを発症し、働けなくなったとき、
子どもたちはストリートに出ていくかもしれない。

そして、ストリートの子どもたちそれぞれに、きっとこんな暖かな家庭の時間が、
幼いころにあったのだろう。
そう願うような気持ちで画面を観ていた。


3人の家族が眠りに就く夜更け、町ではチョコラ達の「おまつり」が始まっていた。
この映画の最も力強いシーンである。

仲間と協力して焚火でピラウを作った子どもたちは、
「こんなうまい料理はホテルでも食べられない」と、
おいしそうにほおばる。

いつしか「カンカンカン」というお手製のドラムの音が街に鳴り響く。
子どもたちが歌い踊りだしたのだ。

「それぞれの事情」を吹き飛ばすような、子どもたちのステップと歌声は力強い。

子どもたちの尊厳と、可能性を感じさせるこのシーンは、
未だ自分の中で消化できない複雑な子どもたちの問題やその背景を、
一度まっさらに洗い流してくれる。

そこにあるのは「問題」ではなく、「彼ら」なのだ、と。


このシーンに象徴される、抽象的な議論ではなく、
歴然とした「彼ら」の存在感と個性を際立たせる姿勢が、
この映画の最大の魅力であろう。

彼らが抱える数多くの問題は、複雑な社会構造のゆがみに端を発しているのは、
まぎれもない事実である。

しかし、この映画ではそのような抽象的な議論は一切登場しないし、
丁寧な問題の背後にある説明はおろか、
何が問題であるのか、というようなドキュメンタリーにありがちなメッセージもない。


だからこそ、観る者に、感じて考える機会を与え、自身の先入観や無知を気づかせるのである。
ある意味、観る者に対して、大変厳しい作品なのではないかと思う。

子どもたちの心の揺れ動きを丁寧に映し出したこの作品は、
思春期を駆け抜ける子どもたちへの共感を誘い、
ありのままのアフリカのストリートと、そこで生きる子どもたちを前に、

こう問うてくる。

あなたは何を思うのか。
私たちは、どんな世界に生きたいのか、
そして何ができるのか。

答えは出るだろうか。

私はまだ、答えられずにいる。

この重く深い葛藤が、自分を突き動かすのだ。
そして、いつまでも問い続ける。

なんだか今でも彼らの歌声が耳に残っている。
口ずさむと元気が出てくる。

私も彼らに負けてはいられない。
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コメント

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2 ■Re:無題

>小林茂さん
コメントありがとうございます!大変光栄です!
「チョコラ!」盛り上げていけるよう、少しでも貢献できればと思っています。
たくさんの方に見ていただきたいです。

1 ■無題

「チョコラ!」の監督小林茂です。門田さんの鋭くもやわらかい核心をつく映画評。すごい。映画試写会がはじまってからは、私も観客の一人です。門田さんの評から、教えられることしきりです。これからもよろしくお願いします。

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