※こちらは小説版の

『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の感想です。

映画版の感想はこちら

→【ネタバレ注意】映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の伏線解説と考察。

 

 

今売れてる本。
本屋に並んでいて、
「泣ける」と話題の本があります。

『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』  
七月隆文(2014年)

 


タイトルから想像できるのは、
おそらく主人公がタイムスリップして
過去に戻って恋人とやり直す系の
SFラブストーリーなのかな?
という感じで読んでみましたが、
これがなかなか良い物語で、
「泣ける」というのも納得でした。


あらすじ

美大生のぼく、
南山高寿(みなみやまたかとし)
電車で一瞬目があった
可愛い女の子にひと目ぼれした。

何か運命的なものを感じて、
彼女が降りた後を追い、
いきなり告白したぼくを
戸惑いながらも
受け入れてくれた彼女。

彼女の名前は
福寿愛美(ふくじゅえみ)という。
急に泣きだす涙もろいところがあり、
また会えるよ、と言ってその日は別れた。

翌日、
美大の授業で動物園に来たら、
そこに福寿さんがいて、
ぼくをさがしてくれたらしい。
実は連絡先がわからなくて困っていた。

福寿さんは携帯を持ってないらしく、
デートの約束をするのにも一苦労。
土曜日に初デートの約束をした。

少し気になることがある。
ぼくが動物園で描いたキリンの絵が
教室に張り出してあったが、
福寿さんは昨日キリンの絵を見た時、
教室に貼られるやつだと言った。
確かにそうなったが、
なぜそれがわかったのだろう?

初デートは
下見しておいた甲斐もあって
すんなり店を回って
おいしいものも食べて大満足。
日が暮れて
良い雰囲気になったところで
改めて告白する。
「ぼくと付き合ってください」
「はい」と涙ぐむ福寿さん。


5歳の時、
ぼくは震災で死にかけたことがあった。
その時に知らないおばさんが
ぼくを助けてくれた。
10歳の時にそのおばさんと再会した。
その時に、
茶色い箱を受け取った。
中には大事なものが入っているから
失くさないでねと言われた。
その箱は今も大事にとってある。


ぼくは恋人ができて
好きな人と両想いでいられる幸せに浸っていた。
涙もろくて世話焼きな彼女。
「高寿くん」「愛美ちゃん」と
呼び合う仲になっていく。
程なくして
ぼくは丹波橋のアパートで一人暮らしを始めた。

再び違和感を覚えたのは
ぼくが誰にも見せてない自作小説の
ヒロインの名前を
彼女が知っているらしいと
気づいたことだった。
予知能力でもあるの?と聞くと、
変な誤魔化し方をする愛美。
あなたの未来がわかるって言ったら、
 どうする?


彼女の涙と
その言葉の意味するものは?

愛美の置き忘れた
メモ帳が語る真実とは?

彼女にはぼくが想像もできなかった
大きな秘密が隠されていた・・・


解説

運命的な一目惚れをした主人公が
やがて明かされる彼女の秘密を知り、
奇跡のような時間を過ごす
悲しくも美しいSFラブストーリー。

物語中盤で
彼女の秘密が明らかになるが、
それまでが初々しくて
甘い学生生活だっただけに、
後半はページが少なくなるにつれて
切なくなり、
「読み終えたくない」気持ちが沸いてくる。
とくに電車内で読むと、
物語とリンクして感動は倍増する。

SF設定のアイデアは
既視感を感じずにはいられないが、
うまく恋愛物語に融合させてあり、
まさに二度読み必至の作品。

欠点としては・・・

●タイトルですでにネタバレしてる。

●話が複雑で理解するまでが苦労する。
図で説明があると良かったのに。

●SF設定が甘い。
調整やルールなど説明不足。

●いくら一目惚れしたからって、
突然告白するのはただの危ない奴だ。

●愛美が高寿を好きになる動機が
やや説得力に欠ける。
普通は恋愛感情までいかない。
運命的なものだというなら、
逆の状況で高寿も愛美を
好きになっていないとおかしいが、
そのような描写はなかった。

●愛美(えみ)を(まなみ)と
何度も読み間違ってしまうので勘弁してほしい。

●記述にミスがある。
217ページではメモ帳を見た日を
4月29日と書いているが、
172ページではその日は
4月28日になっている。
それと4月13日から5月23日までは
当日を含めると
40日間ではなく41日間である。
(第10刷で217ページの日付けは
 28日に訂正されたようです)


俺の感想は・・・

タイトルからして、
タイムスリップ系のSF恋愛ものだと思ったが、
ここまで壮大だとは・・・

正直、
最初はこの彼女のこと、
妙にしつこいしすぐ泣くしで、
怖いストーカー女という印象だった。
一読後、
その印象は見事に覆された。

そしてエピローグとプロローグが
つながっていることに感心した。
端と端を結んだ輪になって、
円環の構図になっている素晴らしい終わり方。
この物語はこの終わり方をしているからこそ、
「美しい」のだと思う。

これは是非とも映像化してほしい作品。

★★★★☆ 物語の面白さ
★★★★☆ 伏線の巧妙さ
★★☆☆☆ どんでん返し

笑える度 -
ホラー度 -
エッチ度 △
泣ける度 ◎

総合評価
 8点

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※追記

こちらのブログで
『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の
舞台となった場所を
写真付きで載せていらっしゃいます。

>「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」の舞台をご案内。✴︎聖地巡礼、私的ガイドブック✴︎

とても詳しく紹介されてますので、
この作品が気に入ったなら
是非ご覧になってください。

聖地巡礼に行きたくなりますね。





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※ここからネタバレあり。
未読の方はお帰りください






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愛美の正体は?  

主人公の高寿の住む「高寿の世界
その世界にとてもよく似た隣の世界がある。
仮に「愛美の世界」としておく。

そのパラレルワールドの
愛美の世界」は時間の流れが逆転している。
こちらでは年をとると老いていくが、
あちらの世界の住人は若くなっていく。
実際に若くなるわけではなく、
こちら側からそう見える。
例えるなら
上りと下りの電車。
上りの電車に乗っていると
下りの電車は逆に進んでいる。
2つの世界はそれと同じ関係。

この世界間の旅行にはルールがあって
愛美の世界からしか行けない。
しかも深く干渉しないように、
40日間しか滞在できず、
5年ごとに区切られている。
または一度旅行すると、
5年後まで旅行できないか、
あるいは
2つの世界は5年周期で
最も近づくから
その時しか行き来できない
という設定かもしれない。

福寿愛美はその隣の世界の住人で、
5歳の時に家族と「高寿の世界」に旅行に来た。
そこで高寿に命を助けられ、
彼を慕うようになった。

2人の時間軸はこうなる。

(時間の流れ)→→→→→→→→→

高寿- 5歳-10歳-20歳-25歳-30歳-35歳 

愛美-35歳-30歳-20歳-15歳-10歳- 5歳


(時間の流れ)←←←←←←←←←

最大40年の時間差があって、
20歳の時に
2人の時間が交差している。
それが2010年のこと。
この話の舞台である。

本編では描かれていないが、
愛美が10歳の時(高寿30歳)または
15歳の時(高寿25歳)に
この運命の関係を
高寿自身から説明を受けていると思われる。

その時の内容を台本にして、
愛美は20歳の初日を迎える。
5月23日から4月13日までの40日間。
お互いが恋人同士になれる
待ちに待った時間が・・・

ここを再読した時に
愛美視点で読むと泣ける。

彼女にとっては
最初からクライマックスだった。
「愛美にとっての最初」は
「高寿にとっての最後」だったから。

その時に盛大な別れを経験した愛美が
翌日(5月22日)に高寿に会った時に
“会うなり、愛美が泣きそうな顔をした”
(249ページ)
のも今ではよくわかる。

一番つらい状況にいるのは愛美だ。
何も知らない高寿は
デートを重ねて
最後は愛し合って別れたが、
愛美は恋人から
他人に戻っていく過程を
経験しないといけないという残酷さ。

それでいて彼女は
高寿に何ひとつ文句を言わず
ひたすら彼のために尽くした。

愛美にとっての最後の日。
それは高寿にとっての最初の日。
高寿はこれから始まる幸せに
期待を膨らませながら別れる。
その時精一杯の笑顔で
また明日ねっ!
と答える愛美の胸中を考えると
切なくて泣けてくる。
愛美にとっての明日はないから・・・


「もう・・・やってられないんだよ!」
と言った高寿の気持ち


一読目はもちろん高寿視点で読んだので、
愛美の奇妙な行動がわからなかった。

全て知っていて演技していた愛美に対して
高寿が嫌う場面がある。
鞍馬でのことだ。
愛美にとっての前日に未来の高寿から
「君にひどい態度をとってしまう」
ことを聞いた愛美が
テンションを上げて乗り切ろうとしていた。

「もう・・・やってられないんだよ!」
真相に気づいた今、
昨日の思い出すら共有できないこんな状況が
本当に恋人と言えるのかと
葛藤があったのだろう。

さらに初めてのエッチも
高寿にとっては初めてでも
彼女は初めてじゃない。
あんな演技しやがってと
怒るのもわかる気がする。

そこで別れたままだったら
この物語はどうなっていたのか?

だからその後、
愛美の涙の意味に気づいて
ちゃんと電話をかけるところは
すごくかっこよかったし
ウルッときた。

なぜ台本通りに行動しないといけないのか?  

高寿に愛美が全てを打ち明けた日から、
別れの日までの間、
2人はできるだけメモ帳の行動
つまり未来の自分の行動に従って
大きく脱線しないようにしている。

その理由は
タイムパラドックスのような
未来を変えてしまうことを恐れた為だろう。
20歳の今を含めて
その先の出会いすら変わってしまう
可能性もあるから。

それで愛美はいいのか、
という問いにこう答えている。

“「一緒にいるだけで嬉しいし、何があるかわかっていても、楽しいものは楽しいよ」”(267ページ)


完全に愛美側が損な役回り。
もし高寿15歳の時に、
愛美25歳がやって来て
逆パターンで5年後のことを
教えてやればどうなるのか?

それはそれで面白そうだが、
後述する愛美の将来の
職業が「芸能人」だとすると、
忙しくて会えなかった可能性が出てくる。

とすれば愛美からは
未来の話が出来ずに
この形になったとも考えられる。


ぼくが「発症」した病気について

冒頭で気になる文章がある。

“ぼくはドアのわきに寄って、窓越しに見えるトンネルの暗さをぼんやり眺める。そのときだった。ぼくは---「発症」した。まさしくそう言うのがふさわしい。潜伏期間を経てから熱が出てくるように、ぼくの中でさっきまで見ていた彼女の印象が浮かんできて、離れなくなった。(6ページ)”


この文章を最初に読んだ時、
主人公は何かの病気持ちなのかと思った。
しかしよく読むと
初めて会った人に
「一目惚れしてしまうこと」だとわかる。
それも叶わぬ恋に。

言い換えると
高寿は前に一度この「叶わぬ恋」を
味わったということを意味している。

高寿の記憶の中では
20歳まで愛美に会っていない。
5歳も10歳も本当は出会っているが
別人だとこの時点では思っている。

ここでふと思い当たるのが、
高寿15歳の時、
もしかして
愛美に会っていたのではないか? 
そしてその初恋の相手が
25歳の愛美だったのでは?という仮説。

上の考察に芸能人だったら
忙しくて会えないと書いたが
愛美だったら
それでも会いに来るはず。

会ったとしても
この運命の関係を彼女からは
教えることができないので、
ただ高寿の前を通りすぎて
あるいは同じ電車に乗りあわせて
様子を見ていたのかもしれない。

そこで15歳の高寿は
25歳の愛美お姉さんに
恋をして叶わぬ想いに
苦悩したのだろう。

だとしたら
20歳で会った時に
運命を感じて声をかけたのも
逆に説得力が出てくる。
だって同じ人なんだから。


『ガラスの仮面』問題

一気読みした漫画で
二人の共通の話題になった
『ガラスの仮面』

愛美の世界にはドラえもんが存在しない。
当然ガラスの仮面も存在しないだろう。
高寿の方から持ち込まれたものとなる。

ここで二つの説に分かれる。

ひとつは
「高寿が渡した説」

高寿は20歳の時に
共通の話題が『ガラスの仮面』と知り、
運命通りにするため、
25歳になったら渡そうと考えるだろう。

愛美は高校生の時に
という言い方をしている。
つまり15歳。
この時に高寿から
どっさりと愛美に渡した可能性がある。

もうひとつは
「愛美が買った説」

その場合
先に高寿から『ガラスの仮面』のことを
教えてもらわないと成立しない。
それから一緒に買いに行ったと思われる。
こちらも愛美15歳の時だ。

どちらが正しいかはわからないが、
お金の問題もあるし、
15歳の愛美が買うより
高寿がお金を出したと
考えた方がありえると思う。

と、買った前提で話をしてるが
漫画喫茶などで読破した可能性もある。


ぼくは明日、「一昨日」のきみとデートする?  

時間の流れがよくわからない!
という方のために図解。

右向きに進むのが「高寿の世界
左向きに進むのが「愛美の世界」とします。
1

愛美が「高寿の世界」に5月23日に来ました。
2

時間の流れが逆であれば、
高寿の世界の人は逆再生のように
逆の動きをしていなくてはいけませんが、
この作品では同じ動き、
つまり愛美も
この世界に来たら右方向に
時間が進むということになります。
3

0時から
23時59分まで同じ流れですが
23日から24日に変わった時に、
高寿はそのまま24日へ行き、
愛美は22日の0時に「ジャンプ」します。
4

おそらくそのままだと
若返ったりするのかも?
そういった不具合を調整するために
強制的に次の日にジャンプさせられるようです。

ここで疑問。

この作品のタイトル、
『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』
実は違うんじゃないか?

これを検証します。

まず22日に
デートするとします。
5

2人の動きを一日巻き戻してみます。
6

高寿は21日にいます。
愛美は23日にいます。
22日にデートした相手は
今日から2日先の愛美ということになる。

高寿からは明後日になり、
愛美からは一昨日になる。

ぼくは明日、
一昨日」のきみとデートする。


別の言い方をすると
ぼくは「今日」、昨日のきみとデートする。


・・・・えええええ!?

と、まあ考え方によっては
おかしなことになるけど、
実際のところ
高寿の「明日」は
愛美の「昨日」なので
余計なこと考えなくて
それでいいんじゃないでしょうか。


高寿が5歳の時にあった震災

言うまでも無く「阪神・淡路大震災」
1995年だから高寿5歳。愛美35歳。
この物語が15年後の
2010年なので時間は合います。

1995年(平成7年)1月17日5時46分52秒と
時間までわかっているので、
高寿の家の前(実家の場所は知っている)で
愛美は待っていたのだろう。

一方、
愛美が5歳の時に
35歳の高寿に助けられる屋台の爆発事故は
2025年のこと。
この事故は
「2013年福知山花火大会露店爆発事故」
をモデルにしているのではないかと思われる。
この事故は京都で発生していて、
気化したガソリンが引火したもので、
作中にも「ガソリン?」という声があるため。


類似した作品について

一部でパクリではないかと
疑惑があるくらい設定が似ているのは、
梶尾真治(伏せ字)『時尼に関する覚え書』(ここまで)
渡来ななみ(伏せ字)『天体少年。』(ここまで)
◆LOVE/GbXFM(伏せ字)やる夫スレ『月曜日の人殺したち』(ここまで)
この3点については作者が
どこまで知っていたか不明だが
このSFアイディア自体は既出。

恋愛している2人の時間が
逆行していくので有名なのは
スコット・フィッツジェラルド(伏せ字)
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(ここまで)
市川拓司(伏せ字)『Separation―きみが還る場所』(ここまで)
を思わせる。


彼女の方にSF的な秘密があり、
主人公の未来を知っていて
ずっと想っていたのは
ロバー・F・ヤング(伏せ字)『たんぽぽ娘』(ここまで)
その変形で
越谷オサム(伏せ字)『ひだまりの彼女』(ここまで)
を連想する人も多いだろう。


エピローグからプロローグへ

解説でも触れたが
エピローグで2人が最初に出会った
電車内に戻って終わっている。

作中の印象的なセリフ。

“「ぼくたちはすれ違ってない。端と端を結んだ輪になって、ひとつにつながってるんだ」(277ページ)”


個人的にはハッピーエンドを期待していた。
それでもこのエンディングでいくなら
これしかないという見事なもので、
納得できたし上手い演出だと思う。

いろんな人の感想を見ていると、
「もうひと捻り足りない」とか
「幸せになってほしかった」
という意見が多い。

でもこの設定では難しい。
どちらかがルール違反をして
相手の世界に転がり込んでくるしかないが、
「時間がくると強制的に戻される」
という縛りがあるので、
替え玉や逃げることもできない。

もし仮にルール違反をして
愛美が「高寿の世界」に永住したら
一体どうなるのだろうか?
それはまた別の問題がある。

愛美は高寿の世界では
どうしても逆に時間が進むために
(それはこの40日間が証明している)
まず時間の流れを
逆にする何かを発明しないと
高寿と同じように年をとれない。

40日滞在の縛りを無くすとか
強制的に戻されないような
ルール違反を可能にする
方法があると想像の幅も広がったかも?


略称は何? 

『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』
タイトルが長いので、
略すとしたら何だろうか?

「ぼくきみ」
「きのあす」
「ぼくあす」

ちなみに作者の七月隆文氏が
Twitterでこんな発言をされています。



「ぼく明日」(ぼくあす)が
一応略称の最有力候補か?

>七月隆文氏のTwitterはこちら


Mr.Childrenの「しるし」との親和性

読書メーターの感想に
「Mr.Childrenのしるしと
歌詞がリンクしている」との意見があり、
実際に聞いてみるとまさに同感。

Mr.Children「しるし」Music Video


「最初からこうなることが 
 決まっていたみたいに
 違うテンポで刻む鼓動を互いが聞いてる
 どんな言葉を選んでも
 どこか嘘っぽいんだ」

「半信半疑=傷つかない為の予防線を
 今、微妙なニュアンスで
 君は示そうとしている」

「ダーリンダーリン
 いろんな顔を持つ君を知ってるよ
 何をして過ごしていたって
 思い出して苦しくなるんだ
 カレンダーに記入した
 いくつもの記念日より
 小刻みに 鮮明に
 僕の記憶を埋めつくす」
 


「泣いたり笑ったり
 不安定な想いだけど
 それが君と僕のしるし」

「ダーリンダーリン
 いろんな角度から君を見てきた
 共に生きれない日が来たって
 どうせ愛してしまうと思うんだ」
 


この曲は
ドラマ「14才の母」の主題歌でしたが
『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』が
もし映画化する際には
これを主題歌にするのもアリかもしれない。

※追記
あとで映画化について書いていますが、
back numberの「ハッピーエンド」が主題歌に決定!
女性視点で別れをテーマにした歌詞なのに
ハッピーエンドなのはなぜか?
タイトルにも「嘘」をついているという
作品とシンクロした良曲です。



その後の2人はどうなったか?  

最後この2人の未来が
どうなったかについて考察して締めよう。

南山高寿は「作家」になったと思われる。
その理由は愛美の感想文。

“※ひとつだけ気づいたこと。地の文で「~ような」っていうのを連続で使うと、文章がぼやけてわかりづらくなるって聞いたことがあります。そういうのがあったなぁっていうのは気がつきました。でもどうなんだろうね。(156ページ)”


あきらかに愛美が誰かの受け売りを書いている。
地の文だとかこういう文法に関するこだわりは
作家が強く意識することです。
作家になった高寿が
幼い愛美に教えたんだと思われる。
 

もうひとつ。

“「あなたは必ずなれるよ。ものを創る人に
彼女の声には高寿がこれまで感じたことのない質感があった。何かはわからないけれど、奥で響いた。(97ページ)”


ここの言い方でも作家らしい気がします。

一方で
福寿愛美は自分でも言ってますが
芸能人」になったと思う。
おそらく女優。

“「おばさんは何してる人?」
「なんだと思う?」
「・・・芸能人?」
「正解」
えっ!びっくりして、テンションが上がる。
「何に出てるの?」
「高寿くんの知らないテレビ」(98ページ)”


高寿と最初に会った日に
(高寿には最後の日)
演技に興味が沸いてきたとも言っているので、
女優の可能性が高い。
その演技力は高寿も認めるところだ。

2人は他の誰かと結婚しただろうか?
いや結婚しなかったと思うし
他の人と結婚してほしくない気持ちが
読者として少なからずある。

“このさき彼女との関係がどうなっても、ぼくはこんな心境があることを教えてくれた彼女に感謝するだろう。そう思った。(65ページ)”
“「ずっと恋してたあなたから、こんなにもわたしを愛してるって心が伝わってくる。わたし絶対、いま人生で一番しあわせだよ。潤ってるよ」(277ページ)”


どれだけ距離が離れていても
2人の心は触れ合っている。
それだけ強い愛のかたちを
この2人は見せてくれたと思う。



蛇足ながら・・・

もしこの作品が、
映画化やアニメ化または漫画化など
映像化されるなら、
少しアレンジしてほしいと思う。

とくにラスト、
仕方ないとはいえ
この終わり方はあまりにも
ストレートで切ないので、
俺だったら最後に
どんでん返しを入れたいし、
少し改変してハッピーエンドにしたい。

といっても、
ルールを破って
相手の世界に行くとかじゃなく、
プロローグとエピローグが繋がっている
この円環の形をそのまま利用して
何とかできないか考えてみた。

ここからは蛇足ながら、
俺の提案です。

俺が考えたのは、、
2010年の20歳の40日間を
もっと幸せにすること。
愛美だけ台本通りの芝居を
しなくていいように
してあげられないものか?

そのためには、
2010年4月13日の段階で
高寿が「この関係」と
「福寿愛美」のことを
知っている必要がある。

どうやって教えるか?
それは・・・
ぼくは明日、昨日のきみとデートする
という本を使うしかない。

高寿は作家になり、
「七月隆文」というペンネームで
2014年に小説を書く。
自分の体験談を綴った内容で
『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』
つまりこの本だ。
4年で作家になれるかは疑問だが、
才能があればなんとかなる(はず

2015年、25歳の高寿は
この本を15歳の愛美に渡し、
この運命の関係を詳しく教える。

ここからは、
愛美の視点で見てみよう。

小説を受け取った15歳の愛美は、
自分の世界に本を持ち帰る。
両者間の世界に
どこまでの物を持ちこめるかは不明。
しかし小説くらいなら
チェックをすり抜けることはできそう。
これが後に運命を変えることになる。

20歳の愛美は台本通りに
高寿と過ごし、
小説通りの別れ方をする。
これが今まで俺たちが見て来た物語。

それから5年後。
25歳の愛美が勝負に出る。
芸能人になった愛美は
忙しい合間をぬって
高寿の世界に行く。

その最初の日、
電車でも駅でも構わない。
15歳の高寿の目の前に現れて、
彼の気を惹くようにする。
後に「一目惚れの病気」を
発症させるくらいの
強烈なインパクトを与えなければいけない。

その去り際に
『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』
という本を残しておく。
これを高寿が拾わないと
全てが終わりだが・・・

再び高寿の視点に戻そう。

高寿がこの本を読んだら
そこに自分の名前が出てきて驚く。
そして全てとはいかなくても
愛美との関係を知ることになるだろう。

5年後。
2010年。
4月13日。

電車を降りた愛美を追いかけて、
高寿はこう言うだろう。
福寿愛美さんですね?
 ぼくは南山高寿です


そうすると愛美は
泣きそうになりながら
にっこりとほほ笑むはずだ。
「はい」

そしてエンディングへ----。


2人のすれ違う流れは
変わっていませんが
この先の40日間は、
前回とは違って、
幸せに満ちている期待がある。

大きく原作を崩すでもなく、
よりハッピーエンドに近い終わり方。
こんなアイディアどうでしょう?

この案は
俺の勝手な妄想なので、
もちろん
原作のままでもいいとも思う。
でももし、
こうなったら、
俺は大満足ですね。

 ※追記(1月14日) 

『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』が実写映画化決定!
2016年12月、全国公開予定。

主人公を福士蒼汰さんが、ヒロインを小松菜奈さんが演じる。監督・脚本は、「ホットロード」や「アオハライド」などを手がけた三木孝浩監督と吉田智子コンビがタッグを組む。京都を舞台に、20歳のかけがえのない一瞬一瞬をみずみずしく映し出す。

福士蒼汰さんコメント

「最初は普通のラブストーリーとして読んでいましたが、途中からボロボロ泣いていました。家で読んで正解でした。原作の舞台でもある京都の今と昔が混在している情景が、この作品を良い雰囲気に包んでくれると思います。小松菜奈さんは『ぼく明日』のヒロインにぴったりだと思いました。彼女の存在感が作品を引き立ててくれると信じています。初共演ですが、2人で良い空気感を出せたらいいなと思います。三木監督は愛のある監督だと思います。撮影が始まる前に、イメージの音楽をくださったり、お手紙を書いて頂いたり、作品・キャストへの愛を感じました。僕もそれ以上の愛を高寿を通して返していけたらと思います」

小松菜奈さんコメント

「最初原作を読ませていただいた時は、ちょっと複雑なストーリーでもあって頭の中で整理しつつ気づくと号泣してしまいました。2人の空気感だったり、何気ない会話・日常、何よりも2人の共有している時間を大切に一つ一つのシーンを愛おしく思いながら、監督・スタッフ・共演者の方々と日々楽しんで撮影出来たらいいなと思います。福士さんとは初共演なので力を合わせて頑張りたいと思います! また違う難しさのある役ですが皆さんの記憶に残る福寿愛美を演じたいです」


ついに映画化ですか!
おめでとうございます。

俺の中では
イメージにぴったりのキャストなので
12月の公開を
期待して待ちたいですね。

>映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』公式サイト


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>今まで読んだ推理小説まとめ。