「10分間ほど、皆さんで食事をしていてください」

 47カ国の首脳らが一堂に会した核安全保障サミットの夕食会冒頭、オバマ米大統領はこう言って鳩山由紀夫首相と向き合った。

 多忙を理由に公式会談を断った米政府が、首相に大統領の隣席を用意したのは「同盟国への処遇としてバランスをとるため」(日米関係筋)だとされる。普天間問題で首脳間に決定的な亀裂が生じることは米側も望んではいないからだ。

 だが、昨年11月の「プリーズ・トラスト・ミー」発言以来、大統領は首相に強い不信を抱き、その後は「敬して遠ざける」を徹底してきた。周りで他国首脳がざわめき合う夕食会で深いやりとりは難しい。首相は「オバマ大統領が隣り合わせにしてくださった」と米側の“温情”に謝意を表明したが、大統領の冒頭発言は「10分間だけだぞ!」と首相にクギを刺したといえなくもない。

 「沖縄の負担を軽減することが日米同盟を持続的に発展させていくためには必要なんです」

 首相は日米同盟の重要性を説き、普天間問題の解決に向け懸命に努力していることを切々と訴えた。だが、普天間問題で意見を交わしたのはわずか数分。首相の移設先の「腹案」を具体的に説明する時間もなかったとみられる。

 「恐縮ですけど、大統領がどのような話をしたか、私の方から言うべきではありません。感触も申し上げられません」

 夕食会後、首相は宿泊先のホテルで記者団の取材に応じたが、大統領の発言内容は一切明かさなかった。気分が高揚すると聞かれてもいないことまでペラペラと話してきた首相としては異例の対応といえ、大統領から色よい返事がなかったことの証左ともいえる。

 今回の外遊には幸(みゆき)夫人を初めて同行させなかった。恒例の同行記者団との内政懇もなし。普天間問題をめぐり、自らの軽はずみな言動が招いた混乱の大きさに首相もやっと気付いたようだ。

 だが、大統領との非公式会談が単なる協力要請で終わったことにより、5月末までの決着は絶望的になった。もはや自公政権が決めた日米合意には戻れない。とはいえ、鹿児島県・徳之島への移設、沖縄・ホワイトビーチ沖の人工島建設-など政府が検討した代替案が、「海兵隊の沖縄駐留が政治面でも部隊運用面でも持続可能」(ゲーツ国防長官)という米政府の条件を満たすことは難しい。米政府は早々と普天間飛行場の継続使用を前提とする方向にかじを切ってしまった。

 ロビン国防副次官は「明確な行き先が決まるまで海兵隊は普天間にとどまる」と明言し、普天間飛行場では1月から滑走路補修工事を始め、12日に完了させてしまった。

 首相は「5月までの決着」をなお繰り返したが、その結論が「現状維持」では誰からも納得は得られないだろう。(ワシントン 佐々木類、酒井充)

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