ビオ・ワイン考8 二酸化硫黄 | ろくでなしチャンのブログ

ビオ・ワイン考8 二酸化硫黄

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                  理解を深めるための 二酸化硫黄

 

 

二酸化硫黄添加

 二酸化硫黄は水に溶けると亜硫酸となるようで、ワイン本では二酸化硫黄又は亜硫酸の表記がなされているようです。この亜硫酸は種々の目的で添加されます。

 

さくらんぼ 酸化防止等の働き

 

 ワインの場合、酸化の対象は果汁段階でフェノール類、ワインになった段階ではアルコールが主な対象とされます。

 

 フェノール類(アントシアニン、カテキン、タンニン等)の中には酸化することで固体となり沈殿物となったり、他の物質と結合して性質を変えることが知られており、酸化は香りや色に影響を与えます。

 アルコールの酸化も同様に香りや色、味に変化(劣化)を与えてしまいます。 

 

 亜硫酸は還元性があるとされます。簡単に言うと亜硫酸は酸化されやすい物質なので、自身が酸化することによってワイン自体の酸化を抑える役目を果たすと言うことのようです。

 亜硫酸が酸素と積極的に結合する結果、微生物等は発育・増殖の為の酸素を奪われ、増殖できなくなります。

 また、果汁中の色素の安定化の働きもあるとされます。

 専門的には、酸化とは1つの分子から別の分子へ電子が移動する化学反応のことを指し、多くの場合酸素が電子受容体となる。

 亜硫酸は葡萄の果皮に含まれる酸化酵素ポリフェノールオキシダーゼの酵素反応を阻害の働きをする。

 ポリフェノールオキシダーゼの酵素反応はワインより果汁に対して強く反応するとされ、果汁は酸化されやすい物質となります。

 

 タンニンが非酵素的に酸化すると、過酸化水素が生成される。その後、過酸化水素はアルコール(エタノール)と反応して、ワインの芳香を消し去る酸化異臭の主成分アセトアルデヒドが生成される。

 シェリー酒に似た特徴的な異臭の発生およびワインが褐色に変色する現象の化学反応は、酸素とワインに含まれるタンニン化合物が結合することによって起こる。

 

 アセトアルデヒドは酢酸菌の酸化発酵により酢酸や酢酸エチルが生成され、酢の匂いや除光液の匂いを伴う酸味の強すぎるワインになる。

 亜硫酸はアセトアルデヒドと結合して無臭化し、以降の酢酸の生成を阻害するとか。

 タンニン+過酸化水素=アセトアルデヒド+酢酸菌=酢酸=腐敗

 

 単純化すると概ねこんな感じでは?化学的に合っているのか不明ですが雰囲気はこんなもんでしょう。負のスパイラルとでも言うのかどんどん悪いほうに進んでいくようです。

 

 ともあれ、葡萄破砕時に亜硫酸が添加されます。

 

 単純な疑問として亜硫酸には殺菌作用がありますので、肝心な発酵酵母は死滅しないのでしょうか?

 亜硫酸は酵母よりも細菌に対して活発に働くという特性とワイン酵母にある程度の亜硫酸耐性があるので大丈夫のようです。勿論、亜硫酸添加量が多すぎると酵母自体も死滅します。

 

補 足

 発酵酵母は菌株によって多少の差がありますが、亜硫酸を分泌します。ですから、亜硫酸無添加ワインから若干亜硫酸が検出されても不思議ではありません。 亜硫酸無添加=亜硫酸含有率0%とはならないようです。

 ビール醸造では、ビール酵母が作る亜硫酸が酸化防止の作用をしているそうです。

 

さくらんぼ 発酵酵母
 

 個別の葡萄畑には葡萄に付着した自然酵母(野性酵母とも)と呼ばれる酵母が存在し、年月とともに変種が生まれ個々の葡萄畑に固有の酵母が存在するようです。これら異なった自然酵母によりワインに付与される風味が異なると言われます。
 

 自然酵母の説明では殆どが畑の葡萄に付着するとされているのですが、日本酒や味噌蔵のように「家付き酵母」の存在もあるように思います。

 

 自然酵母と言っても多種あるようで、発酵には20種類から30種類の酵母が関与するとされ、自然酵母は発酵によって生成されたアセトアルデヒドと結合して不快な臭い残しやすいとも言われ、発酵する力も弱く発酵が停止することも考えられるようです。

 葡萄果皮の天然酵母を、煮沸した葡萄果汁(雑菌の除去)を除熱した後に添加して培養した酵母を添加する場合もあるようです。

 

 問題は理想的な自然酵母だけが主体的に活動してくれるかということです。 長年に渡る葡萄畑の管理を徹底させ、衛生環境を整えた上で、ワイナリー独自の力強い自然酵母を作り出したワイナリーだけが自然酵母中心の発酵を行うことが出来るのではないでしょうか。


 シャトーでは、リスク回避策として亜硫酸を添加し自然酵母や細菌の活動を抑えた上で、人工酵母(培養酵母~粉末化された酵母を培養する。)を使い安定したアルコール発酵を行うシャトーが多いようです。

 

 亜硫酸は醸造家にとっては「神が与えた添加物」にも等しいのです。ワインの品質を簡単に安定させられるのですから。
 亜硫酸無添加となると「神頼み」としか言いようがないとか。失敗すると1年の労働の対価が0どころか後始末にもお金がかかることとなります。

 

 因みに、発酵酵母は,果汁又は果醪(かもろみ)に添加された亜硫酸の大部分がアルデヒド等と結合し,抗菌作用を失った後に添加されます。

 

さくらんぼ 発酵の終了と滓

 

 発酵が順調に進むと亜硫酸やアルコール分の上昇によって耐性のない酵母は多くが死滅し、発酵の中心であった酵母も自ら造りだしたアルコール(アルコール度数4度で)によって多くは死滅します。

 
 アルコール発酵が終了した段階で、葡萄果汁の糖分は全てアルコールに変わり、発酵酵母やバクテリアは発酵により高温に晒されておりますので、全て死滅していても良さそうなものですが、そう単純ではないようです。

 

 一般的には糖分の95%程度がアルコールとなり、残りの5%の糖分が
ビルビン酸によりリンゴ酸が作られるようです。このリンゴ酸がマロラクテイック発酵に関わっていくのですが、肝心の乳酸菌の増殖のためにアルコール発酵後の死滅酵母が糖、ミネラル、ビタミンの供給源となるようです。

 又、死滅酵母はアミノ酸に変化して旨みが増すとも言われます。 

反面、なりを潜めていたバクテリアにとって死滅酵母は絶好の獲物となりますのでバクテリアの繁殖と言う悲劇を生み出すことも考えられます。

 

 一定のアルコール濃度に達し発酵は終了しますが、未発酵の酵母菌が残る場合があります。この未発酵酵母がそのまま瓶詰めされると瓶内でアルコール発酵をおこし炭酸ガスを生成しますので、抜栓により微発泡を起してしまう欠陥ワインを生み出す原因ともなります。 

 

 一般的にはアルコール発酵前の亜硫酸添加。更に瓶詰め時の亜硫酸添加

となるようですが、場合により瓶詰め前の育成期間にも添加されることがあるようです。育成中の赤ワインに亜硫酸を添加する意義は、亜硫酸で香りを酸
化から守ってやりながら、フェノール化合物の酸化的熟成を進めることに
あるとされます。

 

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  ワインの醗酵-2  こちらへ


 醸造行為に関する欧州委員会規則第606/2009年は,二酸化硫黄含有量につき,別表IB において各構成国の産地ごとの上限を規定しており、スティルワインに関し、150mg/l (赤)および200mg/l (ロゼ・白)が上限とされているようです。

 ただし,天候不良の年は,添加量制限を緩和し,一定の条件の下で,上限を40mg/l 又は50mg/l 引き上げることが認められています。

 

総 論

 

 葡萄を圧搾した後に亜硫酸を不要な酵母の活動とバクテリアの活動抑止剤として使用、そして、瓶詰め時にバクテリア抑止剤として使用するのが一般的なようです。

 

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