第2回 『かすみがうらから世界へ!国際盲人マラソン大会!』vol.2
~かすみがうらマラソン(T-11)の部優勝!米岡聡選手に突撃インタビュー ~
今年のかすみがうらマラソン(T-11)の部で2時間50分39秒の自己ベストをマークして初優勝を飾り、いま勢いのあるブラインドアスリート・米岡聡選手に突撃インタビュー!
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マラソンを始めたきっかけ
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M高史(以下、M): さっそく、今年のかすみがうらマラソン(T-11)優勝者、米岡聡選手にお話を伺いたいと思います!よろしくお願いします。
米岡(以下米): よろしくお願いします
M: さっそくですが、米岡さんがマラソンを始めたきっかけについて教えてください。
米: はい。9年前、それまでぜんぜん走っていなかったのですが、高校卒業して2年くらいたって「そろそろ体を動かしたいなぁ」と思っていた頃、新宿駅でたまたま帰り道の方向が一緒だった親切な方がいまして、途中までお話しながら一緒にかぇったのですが、たまたまその方が盲人ランナーの伴走をしている方で、そのときに「今度、一緒に走りませんか?」とお誘いを受けまして、悩みはしたのですが「じゃぁ、やってみます」と。
M: へぇー!もしその人に会ってなかったらマラソンやっていなかったかもしれないですか?
米: そうですね(笑)
M: すごい出会いですね!ご縁というか運命の出会いですね!その方とは今でも連絡をとっているんですか?
米: はい、時々とっています。
M: 初めて走り始めたとき、どうでしたか?
米: スポーツボランティアの団体を主催している運営側の方に紹介していただいて走るイベントに参加したのですが、「最初、5kmのレースやってみない?」 と誘われて 「5kmだったらなんとかなるかなぁ」と行ってみたら・・・・10kmしかなくて(笑) 7kmくらいでへろへろになり、たんとか完走しました
M: えぇー!! いきなり10kmはキツイですね!! フィニッシュ後はどう思いましたか?
米: あぁ、しんどかったなぁと(笑) 歩いたことすらなかった距離ですからね。
M: それから徐々に距離を伸ばしていったんですね?
米: そうですね。そこから代々木公園で開催している伴走クラブを紹介していただいて、そこにちょこちょこ顔をだして、だんだん走る頻度が増えていった感じです。
そこから約3か月後、かすみがうらマラソンの10マイルの部に出場しました!(第16回大会)
M: おぉ!初めてのかすみがうらはどうでした?
米: 10マイルとはいえ未知の距離だったので、しんどかったです。最初は周りを楽しめる余裕があったのですが(笑)ラスト3kmはヘロヘロになりました。
でも、良い大会だなぁと。盲人の部があるレースも珍しかったですし。
M: そこからさらにトレーニングを増やしていったのですか?
米: 当初は”健康のため”という感じで、週に1度くらいしか走っていませんでした。
M: そうなんですね~。いつ頃から競技志向に変化していったのですか?
米: 4年くらい前、まず1つ良い伴走者との出会いがあったり、ちょうどその頃、自宅の近所にスポーツジムができ、毎日トレーニングできる環境ができました。
M: たしかに、環境の変化って大きいですよね!
米: あとは、震災があって 生きてる時間って有限だなと感じました。あまり時間を無駄にしない、今できることをやろうと。
ちょうどその前くらいから周りからも”競技志向でやってみては?”と勧められていた時期で、そのタイミングで区切りがつきました!
M: ちなみに、初マラソンはいつですか?
米: 4年前の11月で、そのときは3時間15分でした。
M: 初フルで3時間15分! そこからさらにグイグイと実力をつけたんですね!
米: そうですね、なんとか1年後にはサブスリーも達成できました!
M: 1年でサブスリー! すごいですね!
米: 良かったり悪かったりもありましたが、ぼちぼちです。
M: そして、今回のかすみがうらで 2時間50分39秒! 自己新で優勝です!
米: そうですね! ありがとうございます。
M: 僕も練習で伴走させていただいたことがあるのですが、2時間50分になるとほぼ1km4分ペース、このペースでスト伴走する方も大変だったりしますよね(笑)
米: 確かにみんながみんな、このペースで走ることができるというわけではないので、伴走者も限られますね。
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ふだんのトレーニング
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M: ふだんのトレーニングできをつけている点はありますか?
米: 僕の場合は、本的にオーソドックスな感じでメニューを組んでいまして、そのメニューを1人でやっているとどうしてもめげそうになるときもあるのですが、そこは気持ちを強くもって(笑)決めたことは必ずやるようにしています。
特にJogとかはそこまできつくしばられずにやっていますが、週に2回のポイント練習だけは必ずやるように心がけています!
M: メニューはご自身で作られているんですか?
米: はい、自分で作っています。
M: 何か参考にされたりしていますか?
米: いま、強化指定選手なので、強化合宿に行ったときに監督やコーチにお話を聞いたり、先輩の強化選手にへばりついて、マラソン理論をうかがったりしています(笑)
M: さすが、研究熱心ですね! トレーニングで苦労する点はありますか?
米: 苦労するのはポイント練習をする際に、相手(伴走者)がいなくて探す時が困りますね。
M: 逆に良かった点はありますか?
米: そうですね。マラソンって孤独な競技じゃないですか。健常者だと周りから応援があるとはいえ、走っているときは1人でペースなど見ながら1人で走らなきゃいけないです。 しかし、僕ら視覚障がい者は伴走がつくわけで、一緒に隣で頑張ってくれる人がいるのは心強いですし、良い点だなと思います!
M: なるほど~。
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かすみがうらマラソンについて
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M: かすみがうらマラソン全部で何回走られましたか?
米: 10マイルが3回、フルが4階です。
M: じゃ、もうコースは熟知している感じですか?
米: はい、もう覚えました!
M: おぉ(笑)すごい! どの辺がキツイとかはありますか?
米: フルマラソンのコース的にいうと、前半が上り下りがあってテクニカルなコースなんですけど、そこももちろんキツイ時はキツイのですが、変化がないコースがしんどかったりします。
M: なるほど、後半ですね!
米: はい。25kmからずーっと直線が続くところがあるんですけど、そこから37~38kmくらいのところまでがしんどいかな、と思います。逆に底の部分を乗り切れたら良い記録が出るんじゃないかな、と思います。
M: 乗り切る秘訣はありますか?
米: そうですね。自分の場合は周りの風景を見て走るとかは出来ないので、自分の頭の中というか、感覚の中で前に進んだのを実感するようにしています。
例えば、ひたすら歩数を数えて、だいたい800歩前後で1kmとか。 頭の中で数えて集中するようにしています。
M: すごい集中方法ですね!
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マラソンについて
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M: マラソンに出会って良かったなぁ と思うことを教えてください。
米: 競技として打ち込めるというのはもちろんそうですけど、日常的でもマラソンが活きてくると実感しています。 マラソンっていきなり速くなるわけではなくて、毎日の練習を地味にずーっと続けていくことで、結果が出るのですが、他のお仕事でも、勉強でもそうなんだと思います。
毎日毎日続けて、1年後とかに振り返ってみると全然違う世界が見え、自己成長を感じさせてくれますし、粘り強く続けることをマラソンから学びました。
M: 深いですね! 確かに日々の積み重ねが大切ですよね!
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今後の目標
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M: 今後の目標を教えてください!
米: 来年、パラリンピックが開催されるので、そこに向けてなんとか代表にすべりこめるように、これが1番の大目標ですね!
M: おおぉ!
米: そこに向けて12月と来年2月に選考レースがあるので、けっこう厳しいですけど2時間40分を切って、という風に目標を持っています。
M: すごい!実は僕の周りでも米岡選手のことを応援している人が増えてきているんですよ!
米: ありがたいですね!
M: いい戦いができるといいですね!
米: はい、日々の積み重ねですので!
M: 僕もまた伴走や伴泳でご一緒したいですね!
米: よろしくお願いします!
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国際盲人マラソンとして
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M: 国際盲人マラソンは、視覚障がい者のランナーさんにとって世界的な大会になっていると思いますが、今後このいう大会になってほしいという想いはありますか?
米: 海外の強い選手が来て、”世界を感じること” があります。世界選手権が近い時期にあるので、難しいこともあるかもしれませんが、世界の選手が集って競えるような大会になれば、より魅力も注目度も上がってくるかなと思います。
国内でも日本はレベルが高いので、それだけでも刺激になりますが、世界を国内で感じられればさらに刺激になると思います。
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米岡選手よりメッセージ
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M: 最後にコラムをご覧いただいている方、参加ランナーさん、これから走り始めようと思っている方、地方の方へのメッセージをお願いします。
米: 何事も最初の一歩を踏み出すのは大変ですし、エネルギーの要ることだと思いますが、僕の座右の銘ではですけど 「八割くらいのことは人間だいたい何でもできる」 と思っているので、やりたいなと思ったら飛び込んでみる!
マラソンに限らずやりたいな、と思ったことがあったらチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
国際盲人マラソンとしてもそうですけど、市民マラソンの大会としても大規模な大会ですし、運営も細かい点まで行き届いた素晴らしい大会です。
コースも記録が出やすいですし、ぜひ積極的にチャレンジしてみてください!
また、地方の方からたくさん応援をいただいて、特に気がめげそうになる25km以降の直線だったり、天気が悪い時もありますが、たくさんの応援をいただいて本当にありがたくて感謝しています!
来年以降も出場すると思いますが、変わらぬ応援と視覚障がい者のランナーさんにも変わらぬ応援をよろしくお願いします!
M: 素晴らしいメッセージありがとうございます! 今回は今年のかすみがうらマラソン(T‐11)で初優勝を飾りました米岡聡選手にお話を伺いました。ありがとうございました!
米: ありがとうございました!
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インタビュー後記
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今回は、今年のかすみがうらマラソン(T-11)で初優勝を飾りました米岡聡選手にお話を伺いました。実は伴走や伴泳など練習でたびたびご一緒させていただいたことがあるのですが、普段からとても真面目で前向きで競技に対してとてもストイックな米岡選手。 それでいて、時々冗談を言ったりして空気を和ませてくれます。
インタビューの中にもありましたが、「マラソンっていきなり速くなるわけではなくて、毎日の練習を地味にずーっと続けていくことで、結果が出るのですが、他のお仕事でも、勉強でもそうなんだと思います。
毎日毎日続けて、1年後とかに振り返ってみると全然違う世界が見え、自己成長を感じさせてくれますし、粘り強く続けることをマラソンから学びました。」
このことはマラソンはもちろん、仕事も勉強もプライベートもすべてのことにつながる大切なことです、分かってはいてもなかなか続かない人も多い中、米岡選手は今やるべきことを地道にコツコツ1日1日続けていくということを特に強調してお話されていました。
「変わりたい」 「やってみたい」 「チャレンジしたい」 と日ごろ思ったらまずやってみる、トライしてみる。でなきゃ何も始まらない。
そして、地道に繰り返し続けていくことで、年月を経て振り返った時に、今までとは比べることができないくらいの新しい世界が待っている。これは本当にマラソンに限らず、たくさんの事に当てはまります。
米岡選手の座右の銘 「八割くらいのことは人間だいたい何でもできる」
たとえば・・・
・マラソンを完走したい、あるいは自己ベストを出し隊
・資格試験で合格したい
・楽器を弾けるようになりたい
・料理が上手になりたい
・英語が話せるようになりたい
など、自分自身が頑張ってチャレンジし、継続していけば達成できる可能性が高いものが多いですよね。
・〇〇さんと付き合いたい
とかですと、相手の気持ちもありますので、うまくいかないことがありますが(笑)
チャレンジしてみたい気持ちはあるけど、一歩が踏み出せないでいる方、あるいは踏み出したけどなかなか続かない方、1年後に今より別人のように変わった自分を想像してみることで、モチベーションの向上にもつながっていくと思います。
地道にコツコツ続けることで、マラソンもお仕事も勉強も日々精進していきましょう! きっと新しい世界が待っています!