タキシードサム | …

i am so disapointed.

「Negicco House」というのに登録している。これは新潟発のアイドルユニット、Negiccoの公式モバイルファンクラブということである。

先日、こちらでNHKホール公演の先行予約が行われたため、そのタイミングで登録したのであった。

現状、Negiccoのホールコンサートのチケットは特に予約などしなくても買える状況のようだ。しかし、なんだかいち早く予約してほしかったのと、何らかのファンであることの証のようなものが月額数百円で心理的に手に入ると思うと、なかなか魅力的だと思えたのだ。

もちろん会員ならではの特典というのもある。オリジナルコンテンツにアクセスできたりするのだが、その他に「Negiccoから君へ」というメールが忘れた頃に着信する。

先月はかえぽことKaedeがオートミールのことを謎の食べ物などと表現した、かなりじわじわくるタイプのメールが着信していた。

まったくの余談だが、私は最近、仕事が大変忙しい。かなり無理めな起案を提出したところ、あっさり受理されてしまったことがきっかけなので、原因は私にある。

とりあえず最も厳しめな部分は乗り越えることができた。多数の方々にご協力いただき、また、想定外のトラブルもなんとか切り抜け、いまのところは何とかかたちになった状態である。しかし、本当に大変なのはこれからであり、かなり気合を入れていかなければならない。

このような時には、わりと何かに依存しがちである。

深夜から明けて終日ぐらいかけなければ終わらなそうな仕事があったので、昼間のうちに寝ておこうと思っていた。しかし、何だか頭が興奮状態になり、どこかドキがムネムネしている感じもあり、ほとんど眠ることができなかった。

しつっこいように言っているが、ドキがムネムネというのはタワーレコード錦糸町店での「ティー・フォー・スリー」リリースイベントにおいて、新曲の「RELISH」を初披露にあたって、Negiccoのリーダー、Nao☆ちゃんが発した一言である。なお、アルバム「Melody Palette」収録の「イミシン☆かもだけど」においては、ちゃんと「訳わかんない 胸がドキドキしてるし」とちゃんと歌っていて、「ドキがムネムネ」とは歌っていない。

完全な余談だが、私にとってのレジェンドアイドルである元モーニング娘。の道重さゆみは、かつて同様のシチュエーションにおいて、「ハツがドキドキする」ときわめてオリジナリティー溢れる発言をしている。なんで部位なんだよ。

モーニング娘。は1997年にデビューしたアイドルグループだが、1990年代後半から2000年代初めにかけて数々の大ヒット曲をリリースし、国民的アイドルなどと呼ばれていた。

中学生、高校生時代にはアイドルがわりと好きだったものの、大人になってからはほとんど興味を持っていなかった私は、モーニング娘。にもまったく反応しなかった。世間一般的な人気のピークが過ぎ、かなり落ち着きかけていた2006年、仕事の休憩時間にたまたま観た「ハロー!モーニング」がきっかけで、あくまでネタ消費的にウォッチするようになった。

2007年2月にリリースされた「笑顔YESヌード」がアシッドジャズ風味のカッコいい曲だったので、初めてCDを買った。その後、道重さゆみのラジオ「今夜もうさちゃんピース」でのトーク内容をインターネット掲示板というか、モ娘(狼)板という魑魅魍魎の吹き溜まりにて知り、急速に興味を持った。

それは、小学生の頃は地味でさえなく、友達はダンゴムシしかいなかったとか、そういう内容のものであった。後にバラエティー番組出演によって広く知られることになる、いわゆるブリッコナルシストキャラは当時からやっていて、私は当時のメンバーの中ではわりと苦手なタイプだなと思っていた。しかし、このトーク内容を知ってから、急に興味がわいてきた。

そして、かわいい髪飾りを集めるのが趣味だとも言っていたのだが、番組ホームページの「うさピー写真館」にてその一部の写真を公開しているということだったので、さっそく見てみた。それは小学生の女の子が大切に集めているようなタイプのかわいいやつで、本当にこういうものが好きだというところに、ただのキャラづくりなどではなく、本気なのだと感動した。

当時、仕事が泥のように忙しく、かといって健全な精神状態でいられたわけでもないので、いろいろと弱っていたはずである。私はこの「うさピー写真館」の髪飾りの写真を見た時に、何だかはるか昔に忘れてしまった瑞々しい心を思い出した気分になり、なぜだか泣けてきたのであった。それから、想定外のいろいろなファン活動に傾倒していくことになった。

このように、人がアイドルのファンになるきっかけというのは、本当にそれぞれであり、他の人から見るとよく理解できないようなものも少なくはないだろう。

私は今年の3月3日の夜に、Amazon Musicできわめて軽い興味本位でNegiccoの音楽を初めて聴いたところ、そのクオリティーの高さに驚き、以来、その魅力にすっかりハマってしまったわけである。

最近はアルバム「ティー・フォー・スリー」の内容が素晴らしく、アイドルというよりは音楽アーティストとして、Negiccoのことをとらえている部分が大きい。

Nao☆、Megu、Kaedeの3人のメンバーはそれぞれ個性も声質もまったく異なっているが、それぞれにたまらなく魅力的である。しかし、だからといっていまさらアイドルにハマるはずもなく、特にグループの中で誰を推しているかというのも特にない。そういうのにはすっかり疲れてしまい、その挙句にたどり着いたのがNegiccoだったはずなのである。

とりあえず眠っておこうとはしたのだが眠れずに、iPhoneで受信メールをチェックしていた。夕方過ぎ、やはり忘れていた頃に「Negiccoから君へ」のメールを受信していた。もちろん開封して、読んでみた。それほど長い内容ではないので、すぐ読み終えることができる。

今回は「こんにちなおなお☆」ということで、リーダーのNao☆ちゃんからのメールであった。軽い気持ちで読んだのだが、最近読んだものの中で最もかわいい文章のように思え、何だかじーんと感動していたのであった。

たとえば他の状況の時に読んだとすればそれほどでもなかったのかもしれないが、ちょうどそのようなタイミングだったということである。

たとえば映画やコンサートの感想などは、その時の体調や虫歯の有無などによって、まったく異なるものであろう。

「Negiccoから君へ」は有料コンテンツであるため、内容を詳細に書くことはしないが、とにかく素敵だなと思ったのである。

それからいろいろ準備をしていて、手伝いの人たちが来てくれる前に、軽くツイッターのタイムラインを眺めていた。すると、Nao☆ちゃんが「タキシードサム可愛い」「はまりそう」などとツイートしていた。

タキシードサムとは、あの懐かしいサンリオのキャラクターのことだろうかと思っていたところ、待ち受けにしたというツイートがあり、画像を見ると間違いなくそれであった。

タキシードサムは1980年代の初めぐらいに人気があったキャラクターで、ペンギンがネクタイをしているようなものである。当時流行した、ファンシーな雰囲気のあるイラストである。

なぜよく知っているかというと、当時、妹がサンリオの「いちご新聞」というのをよく買って読んでいて、なぜか私もたまに見せてもらっていたからである。

この頃は、どういうわけかペンギンがかなり人気であった。松田聖子の「SWEET MEMORIES」が使われたサントリーCANビールのCMにも、ペンギンのキャラクターが登場していた。また、「ペンギンズバー」という名前の商品や居酒屋もあった。

売れっ子コピーライターとして、おもにサブカルチャー好きの若者に人気があった糸井重里には、「ペンギニストは眠らない」という著書があり、勢いにのってリリースしたレコードにも「ペンギニズム」というタイトルが付いていた。イラストレーターの湯村輝彦との共著「情熱のペンギンごはん」というのもあった。

すっかりその存在を忘れていたタキシードサムだが、昨年のサンリオキャラクター大賞においては18位であり、根強い人気があるようである。

1988年生れであるがゆえに「最後の昭和」を自称するNao☆だが、テレビ出演時やイベントやコンサートMCなどにおいては、ギャグやダジャレなどを連発し、自ら3枚目役を買って出るような場面が多いようである。しかも、そのセンスがどことなく懐かしさを感じさせもする。

そのよく分らない懐かしさのようなものが、ナイスでメロウないい大人である私などにとっては、価値観のコアをマイルドに肯定されているような気がして、ひじょうに心地よいのである。

これが一体どこから来ているものなのかについては、ファン歴があまりにも浅い私にはまったく分らない。

しかし、この「タキシードサム可愛い」というのは、とても良い。

「Negiccoから君へ」のメールは有料コンテンツなので、やはりその内容を明かすべきではない。しかし、内容が分らない程度に一言だけ引用するならば、「るんるん♪」と書かれている。

ここにもいわゆる昭和テイストを感じずにはいられないのだが、サブカルノリのネタ消費などではなく、これは本物だと感じさせる何かがある。「るんるん♪」と本気で言っている。素敵だ。



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