治大国若烹小鮮 おがた林太郎ブログ

衆議院議員おがた林太郎(福岡9区)が、日々の思いを徒然なるままに書き綴ります。題は「大国を治むるは小鮮を烹るがごとし」と読みます。


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 先日、とある方とお話していたら、「野党議員だとなかなか物事の実現が難しいだろう。」とのご指摘を受けました。半分正しくて、半分は「必ずしもそうとも言えない」というのが正直な気持ちです。

 

 ということで、1月4日~6月1日までの通常国会の中で、それなりに成果が出たもの、その端緒となったものについて、時系列的に備忘録として挙げておきます。

 

1. 2月8日予算委員会第8分科会(映像

 北九州市での国土交通省関係の事業(3号線黒崎バイパス、折尾駅再開発)や、北九州市が国交省、厚労省等との関係で重要と思われる政策課題(無電柱化、水道事業、公共交通等)を取り上げ、それぞれ前向きな答弁を得ています。

 

 地元個別事業を国土交通大臣に答弁してもらうのは悪いなあという気もしたのですが、「読み上げでいいから」という事で事前にお願いしました。黒崎バイパス、折尾駅再開発を国会の議事録に乗せておく事はそれなりの意味があると思います。

 

2. 2月8日予算委員会第3分科会(映像(前半))

 福岡地裁小倉支部の地裁昇格運動について問題意識を提起しております。本件は適切な司法サービスの提供という観点から、地元自治体、財界、法曹界の関心が高いです。映像の前半15分くらいですが、概ねこれを見れば、論点はすべて明らかになっております。

 

 昇格したところであまり財政負担が増えないという事が判明しました。あとはタイミングを見て、「下級裁判所の設立に関する法律」第1条の改正を仕掛けられないかと思います。

 

 これは10年以上、陳情がなされていたので、国会で取り上げました。初めてだそうです。

 

3. 2月8日予算委員会第2分科会(映像)、3月9日地方創生特別委員会(映像)(参考として昨年のブログ

 県費負担教職員の給与の政令指定都市への移譲、というテーマを今国会、しつこく追いました。これは何かと言うと、これまで市立小中学校の教員給与というのは県が負担していました。給与を払うのは県、任命は市という歪な構図なのですが、これをH25第4次地方分権で給与の権限を政令指定都市に移すことが決まりました。

 

 ただ、その県から政令指定都市に移譲される給与の額が不十分なのではないか、それによって教員処遇の財源不足が出るのではないか、という問題意識を地元で伺いました。「これはいかん」という事で、国会で総務省、文部科学省に何度も聞きました。

 

 当初はつれない答弁だったのですが、最終的にはココまで押し返しました。そして、総務省は地方にこの内容で説明しています。満額回答とはなかなか言いにくいのですが、地方交付税措置ではきちんと面倒を見るという事で落ち着いています。

 

 本件はまた詳しくブログに書きますが、本件は全政令指定都市の教育委員会が頭を抱えている案件でして、私の質問に対して、北九州市でない他の政令都市教育委員会関係者からもエールを頂きました。出来るだけ多くの政令指定都市選出議員に関心をもってほしいと思うのですが、ここは苦労しています。

 

4. 3月9日内閣委員会(映像(後半))、3月11日内閣委員会(映像)、質問主意書(質問答弁

 これはTPPの国内法措置についてのものです。アメリカには通商協定を締結する際、他国の法制度を見て、他国が(アメリカの目から見て)きちんとやっていると判断しない限りやらないという「承認(certification)」という制度が盛り込まれます。逆から見ると、アメリカが日本の制度に不満な時は「●●法を改正しないとうちはTPPを発効させない」と言ってくるのではないかという懸念です。

 

 「こんなものは、日本の立法プロセスへの容喙であり絶対受け入れてはならない」という思いから、石原TPP担当相に幾度となく聞いています(特に3月11日の質疑はそれ一色です)。

 

 私が想像するに、石原大臣が当初渡された答弁書は「そういう事は想定していない」という言い方だったはずです。そこで引かずに「想定されるから聞いている」と食い下がっています。委員会質疑の後、私はダメ押しで質問主意書を出しました。そこで「アメリカからあれこれ言われても、(今国会に出ている)法律以上の立法措置は不要と認識」と答弁が返ってきました。かなり強い内容で答弁を確定させています。

 

5. 3月18日内閣委員会(映像ブログ

 閣法として提出されてきた子ども子育て支援法改正案の審議に際して、内閣委員会筆頭理事として、修正案を提出して成立させました。内容はブログを見ていただければと思いますが、子育て環境の改善(処遇改善、人材確保)について一歩踏み込んだ規定を法律に盛り込みました。

 

 政府、与党、野党関係者の大きな理解を得ながら、自分自身が手掛けた法律の修正として、子育て環境改善の取っ掛かりとなる内容を成立させたのは良かったと思っています。

 

6. 3月16日地方創生特別委員会(映像(16:05くらいから))

 これは成果とまでは言えないのですが、予算として1000億円計上されている地方創生推進交付金は公共(416億円:道路、港、汚水処理施設)、非公共(584億円:ソフト)と区分がされていて使い出が悪いのではないか、1000億円を一体として使い出の良さを追求すべきではないかと聞いています。

 

 先日、新聞を見ておりましたら、7月5日の全国知事会で地方創生に関する決議案が提示されていました。その中に、以下のような件がありました。
 
【決議案抜粋】
5 地方創生推進交付金等については、ソフト事業と一体となって特に十分な効果が見込まれる施設整備事業等に係る要件を大幅に緩和するなど、自由度を一層高めるとともに、その規模を拡充すること。
 
 やっぱり、知事側も「使い出の良さ」を求めているんだなと思いました。別に私の質問が何かの良い効果をもたらしたとは言いませんが、知事会と認識が一致していて良かったと思っています。
 
7. 4月18日地方創生特別委員会(映像(28:23くらいから)、ブログ
 詳細はブログを見ていただければと思いますが、北九州市が特区として「特別養護老人ホームにおけるロボットの活用」という提案をして撥ねられていました。今の人員配置基準が「1人の職員で利用者3名」となっていたのを、北九州市は「1+ロボットで利用者4名」という基準の見直しが出来ないかと提案していました。
 
 私が質問した時も当初、厚生労働省は冷たかったのですが、最終的には「基準の見直しも念頭に置いて、前向きに検討したい」という答弁まで持ってきました。その後、本件は進んでいっているようです。しつこく追って良かったなと思います。北九州市出身の山本幸三地方創生特別委員長は、私の顔を見る度に「良い指摘だった」と言ってくれます。
 
8. 4月22日内閣委員会(映像(中根一幸議員発言部分))
 特定研究開発法人(例:理化学研究所等)特別措置法の修正です。研究開発をする方の処遇や若手研究者の育成等について追加的な修正をしました。若い方の研究環境を出来るだけ整える取っ掛かりを作っておきたいという思いからです。我々側から対案を提起したものでして、それを与党と協議して纏めたものです。後藤祐一理事の知見に依拠しながら、かなり激しいやり取りをしました。
 
 実を言うと、この時期、私は途中から40度近い熱を出してぶっ倒れておりましたので、与野党協議の最終局面では後藤理事に一任して成立したものです。残念ながら、私は修正が通った委員会を欠席しております。
 
9. 5月18日法務委員会(映像ブログ
 成年後見制度は、認知症の方が増える中、活用が進むべきだと思いますが、残念ながら司法書士の方による横領事案が出てきています。司法書士会もこれで良いとは思っておらず、公益法人リーガル・サポートという組織を立ち上げて、各成年後見業務に対するチェック機能を果たそうとしています。
 
 しかし、特に個人情報保護との関係で、お預かりした通帳の原本をリーガル・サポートがチェックすることに疑義を提起される司法書士の先生がおられて、なかなかチェック機能の強化が進まないとのご指摘を受けました。内容はブログを見ていただければと思いますが、リーガル・サポートによる成年後見制度のチェックは個人情報保護との関係でも問題はない、との答弁を取り付けました。
 
 目立たない案件なのですが、数名の司法書士の先生からお礼のメールを頂きました。こういうチェック機能を通じて、使いやすい成年後見制度が推進され、認知症の方等の財産管理が遺漏なく行われてほしいと思います。
 
10. その他
 まだ、成果には繋がっていないものですが、4月27日内閣委員会で質疑した「日展改革」(映像ブログ)については、芸術界、特に書壇に強いインパクトを与えたらしく、その後、私の所に多くの情報提供がなされています。「このカネの飛び交う芸術界を何とかしてくれ」という叫びにも似た声です。臨時国会でも取り上げて、その是正に貢献したいと思います。
 
 あと、これも成果ではありませんが、通常国会最後の質問だった5月17日安全保障委員会(映像(15:25くらいから))で、沖縄の殺害・死体遺棄事件を受けて、「軍属」の定義が広すぎるのではないかと指摘しています。その時点での答弁は何も言っていませんが、その後の日米間の動きは殆ど私の質疑のラインと同じです。
 
11. 最後に
 なお、一番記憶に残っているのは、やはりこの質疑です。どうも地元でもこの印象がとても強いみたいで、私を「怖い人キャラ」だと思っておられる方がかなりおられます。
 
 あえて、長々と纏めてみると実際には色々やったよな、と思います。「案件が小さい」、「まだまだ不十分」、ご指摘はあるでしょうが、また、次の国会でもコツコツと課題を少しでも前に進めるような質疑に努めたいと思います。
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 何故、フィリピンと中国との仲裁裁判所が成立したのか、については、少し前のエントリーで書きました。外務省からも話を聞きましたが、ちょっと論立てが違いますが、まあ、外しているわけではありません。

 

 中国が「本件は国連海洋法条約の紛争手続きの対象外。何故なら、中国が除外している主権事項や境界画定に関するものだから。」と主張したことに対して、このプレス・リリースの6ページ目に、今回フィリピンが提起した案件は主権事項でも無いし、境界画定でもないから、中国の理屈は当たらないとしてあります。やはり、その辺りを外して仲裁裁判所に持ち込んだのが良かったという、私の見立ては正しいようです。

 

 ただ、中国は結構、広範なものを除外しています。以下のすべてで国連海洋法条約の紛争解決手続きを除外しています(備忘録的ですので特に条文を読んでいただく必要はないです。単に「広範な除外がある」ことだけ分かっていただければOKです。)。

 

【第二百九十八条 第二節の規定の適用からの選択的除外】
1 第一節の規定に従って生ずる義務に影響を及ぼすことなく、いずれの国も、この条約に署名し、これを批准し若しくはこれに加入する時に又はその後いつでも、次の種類の紛争のうち一又は二以上の紛争について、第二節に定める手続のうち一又は二以上の手続を受け入れないことを書面によって宣言することができる。
(a)
(i) 海洋の境界画定に関する第十五条、第七十四条及び第八十三条の規定の解釈若しくは適用に関する紛争又は歴史的湾若しくは歴史的権原に関する紛争。ただし、宣言を行った国は、このような紛争がこの条約の効力発生の後に生じ、かつ、紛争当事者間の交渉によって合理的な期間内に合意が得られない場合には、いずれかの紛争当事者の要請により、この問題を附属書V第二節に定める調停に付することを受け入れる。もっとも、大陸又は島の領土に対する主権その他の権利に関する未解決の紛争についての検討が必要となる紛争については、当該調停に付さない。
(ii) 調停委員会が報告(その基礎となる理由を付したもの)を提出した後、紛争当事者は、当該報告に基づき合意の達成のために交渉する。交渉によって合意に達しない場合には、紛争当事者は、別段の合意をしない限り、この問題を第二節に定める手続のうちいずれかの手続に相互の同意によって付する。
(iii) この(a)の規定は、海洋の境界に係る紛争であって、紛争当事者間の取決めによって最終的に解決されているもの又は紛争当事者を拘束する二国間若しくは多数国間の協定によって解決することとされているものについては、適用しない。
(b) 軍事的活動(非商業的役務に従事する政府の船舶及び航空機による軍事的活動を含む。)に関する紛争並びに法の執行活動であって前条の2及び3の規定により裁判所の管轄権の範囲から除外される主権的権利又は管轄権の行使に係るものに関する紛争
(c) 国際連合安全保障理事会が国際連合憲章によって与えられた任務を紛争について遂行している場合の当該紛争。ただし、同理事会が、当該紛争をその審議事項としないことを決定する場合又は紛争当事者に対し当該紛争をこの条約に定める手段によって解決するよう要請する場合は、この限りでない。
 
 では、これだけ除外したのに、今回の仲裁裁判所は何に管轄権を設定したかというと、このプレスリリースの5ページのテーマの大半です。私のかなりいい加減な訳でご容赦ください。
 
【今回、仲裁裁判所が管轄権を設定したテーマ】
1. 中国、フィリピンの南シナ海での権原は国連海洋法条約で認められたものを超えてはならない。
2. 中国の歴史的権原(九段線)については、国連海洋法条約に反する。
3. スカボロー礁はEEZ、大陸棚の基点となる権原を有しない。
4. ミスチーフ礁、セカンド・トーマス礁、スビ礁は低潮高地であって、領海、EEZ、大陸棚の対象ではなく、占領の対象とならない。
5. ミスチーフ礁、セカンド・トーマス礁はフィリピンのEEZ、大陸棚の一部である。
6. ガヴェン礁、ケナン礁は低潮高地であり、領海、EEZ、大陸棚の対象ではないが、その低潮線は(ベトナムが実効支配する)ナムイット島、シンコウェ島からの基線を構成する(注:低潮高地が領海内にある時は基線となるとの国連海洋法条約第13条との関係)。
7. ジョンソン礁、クアルテロン礁、ファイアリー・クロス礁はEEZ、大陸棚の基点となる権原を有しない。
8. 中国は、自国船がフィリピンのEEZにおける生物、非生物資源についての主権的権利の行使に不法に介入している。
9. 中国は、自国の船がフィリピンのEEZにおける生物資源採取をしている事を、不法に防いでいない。
10. 中国は、スカボロー礁での伝統的漁業に介入することで、フィリピンの漁民が生計を立てようとしているのを妨げている。
11. 中国は、スカボロー礁、セカンド・トーマス礁、クアルテロン礁、ファイアリー・クロス礁、ガヴェン礁、ジョンソン礁、ヒューズ礁、スビ礁における海洋環境の保護、保全に関する国連海洋法条約の規定に違反している。
12. 中国のミスチーフ礁における占領、建設活動
(a) 人工建造物に関する協定違反
(b) 海洋環境の保全、保護に関する協定違反
(c) 協定違反の収用行為
13. 中国は、危険な手法で法執行船舶を運用し、スカボロー礁周辺を航行するフィリピン船に重大なリスクを生じさせ、協定違反を犯している。
14. 中国は、仲裁手続きが開始された後も不法に事態を悪化させている。
((a)-(c)については、中国が国連海洋法条約上、手続除外を宣言したテーマのため、管轄権を認めず)
(d) ミスチーフ礁、クアルテロン礁、ファイアリー・クロス礁、ガヴェン礁、ヒューズ礁、スビ礁において浚渫、人工建造物、建築活動を行っている。
(15.については、すでに判断済みということでそれ以上の扱いをせず。)
 
 これだけのものが「主権事項でもないし、境界画定事項でもないから、どんなに中国が除外手続きを取ろうとも、仲裁裁判所は管轄権を設定し得る。」と判断されたわけです。私の常識観からすると、相当に踏み込んだという印象があります。
 
 さて、先のエントリーでも「竹島」についての提訴の可能性について書きました。現在の国会での答弁はこれです。竹島の問題は領有権の問題だから、提訴は想定されないというものです。ただ、上記の仲裁裁の管轄権の設定を見ていると、相当ギリギリのものでも可能ですので、緻密な論点整理さえすれば竹島でもやれるでしょう。
 
 ただ、ここからが難しいのが、それをやると「沖ノ鳥島」でカウンターが飛んでくるかなという懸念はあります。その辺りをどう判断するのか、本件の帰結としてよく考えなくてはならない所です。
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 先のエントリーで若干強気な事を書きましたが、沖ノ鳥島についての懸念は勿論あります。それは何かと言うと、南シナ海で台湾が領有している「太平島(Itu Aba)」についての判決との関係です。ここは元々日本軍が領有していた場所です。
 
 仲裁裁判所の判決をザッと読んでみました。太平島についての記述はとても多いです。ザクッと言うとこんな感じでした。

● 「淡水が出る」→大した量ではない。
● 「植生もある」→不十分。
● 「農業も可能」→不十分。
● 「人がいる」→居住目的とは言えないし、極めて限られる。
● 「商業活動」→純粋な経済活動はない。
 
 なので、太平島はUNCLOS121条3でいう「人間の居住又は独自の経済的生活を維持する」事が出来ないと判断されています。しかし、この画像を見てください。人工建造物が勿論ありますが、それでもこの規模、植生です。これで「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩」扱いです。
 
 しかも、判決には「中国は沖ノ鳥島は岩だと言っているではないか。」という中国の主張が何度も取り上げらています。結論には出て来ませんが、仲裁裁判所としては「中国だって沖ノ鳥島の『(国連海洋法条約上の)島』としての性格を否定しているではないか。(南シナ海で)どの口で主張しているのだ。」という含意があるように思えます。
 
 沖ノ鳥島について懸念を持たれる方は正しいです。それに抗していこうとすると、私が先のエントリーに書いたような論立てしかないでしょう。
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 南シナ海をめぐる仲裁裁判所が何故成立したかについては、先のエントリーで書きました。

 

 韓国との関係では、竹島でも同様のアプローチが取れるような気がします。国連海洋法条約及びそれに伴う韓国の宣言を踏まえれば、「竹島」の領有権とか領海等の境界画定で仲裁裁判所を立ち上げることは出来ません。民主党政権時代にも一度、提起していますが、韓国側から拒否されています(ココ)。今回の一連の裁判手続きを踏まえ、それらの主権関係のテーマを丁寧に外しつつ、間接的に竹島の領有権の判断なしには判決が出せないような論点を探してみる事は知的にとても興味深いと思います。国会審議で提案してみようと思います。

 

 さて、仲裁裁判所の判決を受けて、「沖ノ鳥島は大丈夫か」という問題意識があります。正に正当な問題意識です。今回、南シナ海の浅瀬や岩礁は、一部は低潮高地(潮が低くなると陸の部分が出てくるだけの場所)としてそもそも領土としての権限すら否定され、一部は国連海洋法条約上の「岩」に過ぎないとなっています。

 

 ここで重要なのは、「国連海洋法条約上の『岩』」という事です。国連海洋法条約には以下のような規定があります。

 

【第八部 島の制度 第百二十一条 島の制度】
1 島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものをいう。
(略)
3 人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。

 

 ポイントは3でして、南シナ海の幾つかの岩礁はここで言う「岩」だと認定されています。なので、排他的経済水域又は大陸棚を有しません。これとの関係で、沖ノ鳥島のステータスがどうなのかということになります。

 

 沖ノ鳥島が「領土」であることを否定する論者は世界中のどこにもいません。なので、12カイリの領海は有しています。しかし、そこから先の排他的経済水域、大陸棚が否定されるという事になると、日本にとってはとんでもない損失になります。そして、中韓は沖ノ鳥島は国連海洋法条約における所の「岩」に過ぎず、排他的経済水域も、大陸棚も有しないと主張しています。

 

 ここで押さえておかなくてはならないのは、2012年の国連大陸棚限界委員会の勧告です。国連海洋法条約では、大陸棚は200カイリまで認められますが、一定の要件を具備すれば200カイリ以上に延伸する事が出来るとなっています。その延伸部分をどう画定するかという作業が国連で進んでおり、日本は色々と頑張った結果、200カイリ以上の部分でかなりの大陸棚を確保しています。取れた部分、保留になった部分の図はココで参照ください。

 

 その際、外務省はこういう報道官発表をしています。明確に「四国海盆海域について,沖ノ鳥島を基点とする我が国の大陸棚延長が認められている」と書いてあります。四国海盆というのは、この図で言うと四国の南にある薄紫の部分です。ここは四方を日本の大陸棚に囲まれているのですが、200カイリ以上の部分ですので、2012年の延伸で明確に日本の大陸棚だと画定した部分です。

 

 ここからが少し難しくなりますが、この四国海盆は何処を基点として延伸した大陸棚だと認められているかという事です。再度、この図を見ていただければ分かりますが、東の小笠原諸島、西の沖大東島あたりから延伸したものだと見る事も出来るわけですが、外務省は「沖ノ鳥島を基点とする」と発表しています。

 

 沖ノ鳥島は大陸棚を有するとするのであれば、上記の国連海洋法条約第121条3における岩ではないということになります。「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。」の対偶を取ると、「排他的経済水域又は大陸棚を有するのであれば、人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩ではない。」となります。対偶は常に真です。

 

 なので、私は今年の国会の質問主意書で、「何故、外務省はそこまで自信をもって、沖ノ鳥島を基点とする我が国の大陸棚延長が認められていると言っているのか。」について聞いています。あまり注目されませんでしたが、それなりに良い質問ではないかと思います。質問答弁、それぞれご覧になってください。ポイントは問二です。

 

 答弁は逃げていますが、実は私は答えを知っています。それはこの4年前のブログ(是非参照ください)に書いています。大陸棚限界委員会からの勧告で、沖ノ鳥島を基点として四国海盆への大陸棚延伸が認められているのです。

 

 勧告(全文はココ)のパラ158に以下のようなくだりがあります。

 

2. Submerged prolongation of the land mass and entitlement to the continental shelf beyond 200 M
158  The submerged prolongation of the land mass of Japan in this region extends from the land territories on the Izu-Ogasawara Arc to the east and the Daito Ridge and the Kyushu-Palau Ridge in the west. In this regard, Japan refers explicitly to the following land territories: islands on the Shichito-Io To Ridge, such as Tori-Shima Island in the Eastern SKB region; and in the Western SKB region, Kita-Daito Shima and, Minami-Daito Shima Islands on the Daito Ridge, Oki-Daito Shima Island on the Oki-Daito Ridge and Oki-no-Tori Shima Island on the Kyushu-Palau Ridge (Figure 21).

 

 ここに何と書いてあるかというと(太字部分)、四国海盆への延伸は九州・パラオ海嶺にある陸から広がっているという趣旨の事が書いてあります。そして、九州・パラオ海嶺上にある陸(land territory)というのは沖ノ鳥島しかないのです。多分、中韓は大陸棚限界委員会の審査の段階で、上記のパラ158の微妙な表現振りを見落としたのではないかと思います。野田政権の日本外交の大得点だと思います。ここは素直に評価してください。

 

 ここまで長かったですが、何が言いたいかというと、沖ノ鳥島は大陸棚を持てると国連の大陸棚限界委員会が言っている、ということは、沖ノ鳥島は「岩」ではない、という理屈が導き出せるのではないかということです。楽観的な事を言うつもりはありませんが、日本外交はそれなりに手は打ってきています。

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 南シナ海の案件でフィリピンが何故、仲裁裁判所での管轄権を認めさせる事が出来たのか(つまり、何故中国が拒否しているのに裁判が成立したのか)については、疑問に思われる方が多いようです。「片方がノーと言えば裁判にはならないんじゃないの?」、そう思っておられる方からお問い合わせがありました。
 
 今、外務省に問い合わせていますが、私なりの解釈を書いておきます。国際法研究者の方が読んで「間違っている」と思われたらご指摘ください。なお、分かりやすく書くつもりですが、それでも難しい事は確実です。筆力のなさについては予めお詫びしておきます。
 
 まず、国連海洋法条約で第十五章「紛争の解決」の第二節「拘束力を有する決定を伴う義務的手続」に以下のような規定があります。
 
【第二百八十七条 手続の選択】
1 いずれの国も、この条約に署名し、これを批准し若しくはこれに加入する時に又はその後いつでも、書面による宣言を行うことにより、この条約の解釈又は適用に関する紛争の解決のための次の手段のうち又は二以上の手段を自由に選択することができる。
(a) 附属書VIによって設立される国際海洋法裁判所
(b) 国際司法裁判所
(c) 附属書VIIによって組織される仲裁裁判所
(d) 附属書VIIIに規定する一又は二以上の種類の紛争のために同附属書によって組織される特別仲裁裁判所
 
 中国はこの選択を全くしていません。ただ、他にもやっていない国はたくさんありますので、別に選択をしていないことが悪いわけではありません。
 
 更に国連海洋法条約には、具体的なテーマについて、この義務的手続きからの除外を宣言できる規定があります。
 
【第二百九十八条 第二節の規定の適用からの選択的除外】
1 第一節の規定に従って生ずる義務に影響を及ぼすことなく、いずれの国も、この条約に署名し、これを批准し若しくはこれに加入する時に又はその後いつでも、次の種類の紛争のうち一又は二以上の紛争について、第二節に定める手続のうち一又は二以上の手続を受け入れないことを書面によって宣言することができる。
(a)
(i) 海洋の境界画定に関する第十五条(注:領海の境界画定)、第七十四条(注:EEZの境界画定)及び第八十三条(注:大陸棚の境界画定)の規定の解釈若しくは適用に関する紛争又は歴史的湾若しくは歴史的権原に関する紛争。
(略)
 
 つまり、主権や主権的権利に関することについては、国連海洋法条約の紛争解決を受け入れないと宣言する事が出来るという規定です。そして、これを受けて、中国は以下のような宣言をしています。
 
【2006年8月25日宣言】
The Government of the People's Republic of China does not accept any of the procedures provided for in Section 2 of Part XV of the Convention with respect to all the categories of disputes referred to in paragraph 1 (a) (b) and (c) of Article 298 of the Convention.
 
 全部受け入れません、という事です。これもそれ程珍しい事ではありません。結構多くの国がこういう宣言をしています。
 
 ここまで丁寧に除外をして念押しをしているのに、何故、今回仲裁裁判所が管轄権を持ったのか、という事になります。ここはフィリピンがなかなか巧みでして、「領海の境界画定」という切り口でなく訴訟を起こしたという事です。「●●環礁の領有権」という切り口ですと完全に跳ねつけられるのですが、例えば、「●●環礁は低潮高地か?」という切り口で訴訟を提起したのです。
 
 そうすると、国連海洋法条約には次のような規定が出て来ます。
 
【第二百八十七条 手続の選択】
3 締約国は、その時において効力を有する宣言の対象とならない紛争の当事者である場合には、附属書VIIに定める仲裁手続を受け入れているものとみなされる。
 
 フィリピンが(中国が除外している)「領海の境界画定」というテーマを外して、国連海洋法条約の解釈又は適用に関する紛争として訴訟を提起すれば、その紛争は「その時において効力を有する宣言の対象とならない紛争」となり得ます。こういう理屈で仲裁裁判所を立ち上げさせたのだと思います。
 
 勿論、中国は抵抗しますが、一旦裁判所が立ち上がると、以下のような規定があります。
 
【第二百八十八条 管轄権】
1 前条に規定する裁判所は、この集約の解釈又は適用に関する紛争であってこの部の規定に従って付託されるものについて管轄権を有する。
(略)
4 裁判所が管轄権を有するか否かについて争いがある場合には、当該裁判所の裁判で決定する。
 
 最終的にここで仲裁裁判所は、「管轄権あり」を認定しています。そして、その判決の効果としては以下のような規定があります。「最終的なものとして従え」ということです。
 
【第二百九十六条 裁判が最終的なものであること及び裁判の拘策力】
1 この節の規定に基づいて管轄権を有する裁判所が行う裁判は、最終的なものとし、すべての紛争当事者は、これに従う。
 
 かつ、裁判手続きを定めた国連海洋法条約附属書七には以下のような規定があります。
 
【国連海洋法条約附属書七第9条】
If one of the parties to the dispute does not appear before the arbitral tribunal or fails to defend its case, the other party may request the tribunal to continue the proceedings and to make its award. Absence of a party or failure of a party to defend its case shall not constitute a bar to the proceedings. Before making its award, the arbitral tribunal must satisfy itself not only that it has jurisdiction over the dispute but also that the claim is well founded in fact and law.
 
 当事者が出てこないからって、それは裁判手続きの障害にはしませんよ、ということです。
 
 多分、こういう事です。ポイントは「領海の境界画定」を争わないというところを強く主張し、それを仲裁裁判所が認めたというところでしょう。法的な戦いにフィリピンは勝ったという事です。
 
 普通ならここでエントリーを終えるところですが、2点自慢話めいたものを。
 
 まず、この南シナ海の法的ステータスについては、昨年の平和安全特別委員会で私が質問しています(詳細はココ)。国会で聞いたのは私が初めてだと思います。大体私の認識が今回の判決で裏付けられています。今、見直しても結構良い質問してるんだよなあと思います。あの地域に、国連海洋法条約上の「島」が無い事は1年前から分かっていたことなのです。岸田外務大臣の答弁がちょっと切ないです。
 
 もう一つ、こちらはとても重要な事なのですが、同じアプローチを竹島にやれないのかなと思うのです。これについても、(落選前の)4年前(!)にブログを書いています(ココ)。ちょっと論が荒いですが、境界画定というテーマと切り離して、国際的な紛争解決の俎上に乗せられないかという考え方自体はこの時から変わっていません。これは丁寧に「境界画定」というテーマを外して、法的な論点を詰めていけば可能だと思います。
 
 フィリピンが仲裁裁判所を結審まで根気強くやり切ったことは称賛に価すると思います。法的論点に関する議論を詰め切ったその手法、日本も学ぶところは多いように思います。
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 先日、日本農業新聞の山田編集委員の著書「亡国の密約」を読みました。テーマは多岐に亘りますが、中心的なものは「1994年にウルグアイ・ラウンド合意をした際、日本はアメリカから一定(50%弱)のコメを買う事を、ミニマム・アクセス米の枠内で約束したのではないか。」というコメの密約です。

 

 この本、私が出て来ます。昨年の予算委員会で本件を取り上げた部分が出て来ます。国会でこういう事を聞く議員は多くありませんので目立ったのでしょう。当時は注目されませんでしたし、あまり評判もよくありませんでした。

 

 その時、私の「何故、アメリカ産のコメのシェアが一定なのか。おかしくはないか。」と質問したのに対して、当時の林農水相から以下のような答弁がありました。

 

【平成27年3月5日衆議院予算委員会(議事録抜粋)】

○林国務大臣 (略)米国産の輸入が多く、かつ安定しているということでございますが、まず、米国からは中粒種というのを大宗、輸入しております。これが、我が国の国産の加工用米の品質に近くて、国内の実需者から一定の実需が、需要があるということと、それから、ほかの国のお米と違いまして、安定的な生産量と輸出余力を有しているということ、それから、もちろん安全性の面でも問題が少ない、こういうことがあって、こういう数量で推移しているものと考えております。

 

 その後、本件は放ったらかしにしていましたが、山田編集委員の著書で取り上げられたこともあり、もう一度調べてみることにしました。農林水産省から「ミニマム・アクセスを一般輸入する際の仕様書を過去3年度分」、要求しました。そして、それを入札の結果と照らし合わせながら私なりに以下の通りまとめてみました(仕様書の方は見てもつまらないので、まとめだけ見ていただければOKです。)。

 

・ 平成25年度(仕様書まとめ

・ 平成26年度(仕様書まとめ

・ 平成27年度(仕様書まとめ

 

 「まとめ」を3年分見ていただければ分かりますが、アメリカ産が30万トン前後で収まるように上手く調整されています。年度途中から年度末に掛けて、しっかりと数が調整されるようになっています。平成27年度は、最後の入札で強引にアメリカ産44000トンを押し込んで、年間輸入数量を30万トンに合わせています。完全に「神の手」が働いています。

 

 鍵となるのは「国を指定した入札」です。最初から「アメリカ産を買います。」という前提で入札する部分がアメリカ産の輸入ではとても多いです。この手法がまかり通る限りは、「神の手」を働かせる事は容易です。平成25年度などは、アメリカ産指定の入札が不調であっても、その後の入札でその不調分を補って数字合わせをしています。

 

 こういうふうに指摘すると、上記の林大臣のような答弁が返ってきます。しかし、もう一度よく「まとめ」を見ていただくと分かるのですが、国を指定しないかたちでの入札「グローバル・テンダー」ではアメリカ産は人気がないのです。タイ米の方が人気なのです。きちんと需要を勘案するならば、すべてグローバル・テンダーでやればいいのです。そうせずに、入札の時点で国指定をする事自体、アメリカ産を優遇しようという意図が働いていることを伺わせます。

 

 もうここまで来ると無理の無理押しの域に入っており、「ミニマム・アクセス米でアメリカ特別枠などない」、「ミニマム・アクセス米は国際ルール(GATT17条)に従って、商業的考慮のみに基づいて輸入されている」、そんな理屈はすべて崩壊しています。

 

 TPPでは更にアメリカ産米を7万トン輸入することを約束しています。かつ、「プラスα」での輸入も裏約束(undocumented commitment)しているようです。こういう事を隠して、TPPの国会審議をするのはとても変な事だと思います。今年の秋の課題にしておきます。

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【以下はFBに書いたエントリーを加筆、修正したものです。】

 

 「農林水産物」の輸出が伸びている事、これ自体はとても良いことだと思います。これはこのエントリーの大前提です。

 

 ただし、色々な方と話をしていると、ちょっと誤解があるようなのでそこは説明しておく必要があります。「農林水産物」というと生鮮食料品を思い出す方が多いでしょうが、ここでいう農林水産物はもっと、もっと範囲が広いです。

 

 このリンク(輸出量・輸出額国別輸出額・輸出品目)を見ていただけるとわかります。昨年は7451億円が輸出されていますが、その内、加工食品が2258億円、水産物が2757億円です。コメ201億円、青果物235億円と比すると桁が一つ違います。あと、所管官庁が違うので農林水産省の資料には出て来ませんが「たばこ」がトップクラスの輸出品目です。

 

 それぞれ細かく見ていくと、加工食品のトップは清涼飲料水で、ポカリスエット、オロナミンCといった商品がメジャーです。日本のソース混合調味料は世界で親しまれています。

 

(余談ですが、お好み焼きソースの甘味はオマーン等から輸入するナツメヤシによるものです。外務省時代、オマーンの有力者が訪日した際、その話をしながらお好み焼きを紹介したのですがピンと来なかったのか、全然反応がありませんでした。)。

 

 水産物ではホタテ貝が大人気でして、コメと青果物を足したよりも多いです。ぶりも人気ですね。漁業関係者の品質管理、改善のご苦労が成果を結んでいます。

 

 勿論、青果物も頑張っています。りんごがとても人気が高いです。あと、昨年私が行った帯広かわにし農協で見た長いもは素晴らしいものでしたし、長年の苦労による海外進出の話も聞かせていただきました。これから伸びていってほしいと思います。

 

 これらをすべて纏めてみると、以下のようになります。

 

① たしかに(広義の)農林水産物の輸出は増えている。

② ただし、(想像に上りがちな)「日本の農家の方が田畑で生産して、加工したものが輸出されているもの」はそれ程多くない。逆に漁業従事者は外国市場からの恩恵が相対的に大きい。

③ しかも、原材料を輸入して加工して輸出しているものがかなり含まれており、これらについては、日本における付加価値は加工過程のみとなることから、日本の農林水産「業」とは関係が薄い。

 

 なお、国名を見ていただければ分かりますが、現時点では必ずしもTPP加盟国が主たる輸出国の上位を占めていません。大口はアメリカですけども、同国への輸出は海産物か加工食品が大半です。TPPによる関税撤廃が役割を果たし、潜在的な市場が開いていく可能性を否定する意図はありませんが、現状ではTPP加盟国の市場が十分に開拓できているわけではないということです。

 

 もう一度強調しますが、(広義の)農林水産物の輸出が増えている事はとても良い事です。そして、今後、1兆円に到達することを望みます。しかし、その「成果」は現時点では「農家」の方に誇示するべきものではないものが相当に含まれていることはよく理解する必要があります。

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【以下はFBに書いたものを加筆、修正したものです。】
 
 スコットランドがEUに残ると言っています。
 
 まず、そのために、スコットランドは独立しなくてはならないかどうかという点からスタートしてみます。仮に独立せずに、脱退した(スコットランドを除く)連合王国と(EUに残る)スコットランドで連合国家を作る事を考えてみましょう。
 
 行政、経済の実務的には以下のようになります。
 
①スコットランドにはEU指令が適用される、離脱した連合王国にはされない。
②貿易の輸出についてはスコットランドから輸出すればEUで無税、離脱した連合王国から輸出すればEUが対外的に課している関税(輸入も同様)。
③スコットランドは非EU諸国との貿易でEU統一関税を適用、離脱した連合王国は独自の関税。
 
 こんな連合国家はあり得ないのではないかと思います。そもそも、国の基本的な部分である法規や徴税システムが違うのに、同じ連合国家の中に居ますというのは私の常識観では想像できません。
 
 また、条約上見ていても、EUのリスボン協定は、加盟する主体を「Member State」としています。ということで、現在のスコットランドが"state"かという議論になります。
 
 スコットランドが"nation"ではある事を否定することは出来ません。例えば、ラグビーの選手権で「Six Nations」と呼ばれる大会があります。私がフランスに住んでいた時、最初「6か国?何処だ?」と思いましたが、イングランド、フランス、イタリア、アイルランド、スコットランド、ウェールズです。
 
 ただ、日本語では一律に「国」と訳される"state"、"country"、"nation"ですが、含意は全然違います。非常に雑に言うと、"state"は政治機構、"nation"は帰属意識の対象を指します。現時点で、"nation"であるスコットランドを"state"とは呼べないでしょう。
 
 ここまでを纏めれば、行政、経済上も、条約上も、スコットランドが"state"たる独立国家にならないと、EU残留は難しいでしょう。
 
 では、独立国家としてどうやって残るかという事ですが、ここは少しバラエティがあり得ると思います。
 
(ア)独立国家として新規加盟
 この場合、今のEU基本法であるリスボン協定の加盟の手続きが適用されます。
 
Article 49
Any European State which respects the values referred to in Article 2 and is committed to promoting them may apply to become a member of the Union.
 
 独立国家としてであれば、ここは何の問題もなく適用可能です(独立国家でなければ、事実上、適用できない)。
 
(イ)連合王国の承継国家として残留
 連合王国が現在、EUで享受している様々な権利(+義務)を承継する国家として、スコットランドが独立するというイメージです。ちょっとトリッキーにも見えますが、決して無理だとは思いません。スコットランド側の問題というよりも、EU側が承継国家だと見なして、今の連合王国に適用する制度をすべてスコットランドとの関係で認めてあげる限り、何の問題も生じません。
 
 どちらにしても、独立して残留するのなら、EU側は可愛い、可愛いスコットランドに最大限の配慮をするでしょう。今以上に恩恵を出したりする事すら考えられます。
 
 私が見る限り、こんな感じです。ところで、今日はあまり細かく書きませんが、連合王国の核兵器(トライデント・ミサイル)を搭載可能なヴァンガード級原子力潜水艦の帰港であるクライド海軍基地はスコットランドにあります。核兵器はスコットランドが保有することになるのかな、いう疑問があります。
 
 その他にも、連合王国の大事な収入源である北海油田はすべて基線をスコットランドから引いた場所にあります。独立すれば全部スコットランドに行ってしまいます。
 
 最後の2点は、以前のスコットランド独立の住民投票の際も、大きな議論になった事です。深刻だと思いますね。 
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【以下はFBに書いたものを加筆、修正したものです。】

 

 Brexitの結果、貿易の分野で何が生じるかをかなり雑に考えてみます。簡単に言うと「TPP交渉の逆」をやると思っていただければいいです。

 

 まず、EUは貿易の世界では「関税同盟」と呼ばれます。関税その他の制限的通商規則を実質的にすべて撤廃する事、域外に対して共通の関税及び通商規則を適用する事の2つが「関税同盟(EUが該当)」 の要件です。

 

 我々が締結しているEPA、FTAは「自由貿易地域」と呼ばれ、上記の2つの内、前者だけが適用になります。大まかに纏めるとこうなります。

 

・ 関税同盟:「関税等の撤廃」+「域外共通関税」
・ 自由貿易地域:「関税等の撤廃」

 

 これを止めるということですから、イギリスは域外共通関税を止め、関税その他の制限的通商規則をEUと相互に回復することになります。この交渉をすることになるわけです。

 

 勿論、この交渉はギブ・アンド・テイクですから、イギリスがEU製品に対して関税を上げたら、EUは見返りを求めて、EUがイギリス製品に対する関税を上げます。

 

 さて、ここまでなら簡単なのですが、ここに「域外共通関税の廃止」が入ってきます。そうすると、残るのはGATT・WTOの共通ルールである「最恵国待遇」です。何かというと、「特別扱い」無しですべての国を平等に扱いましょうということです。関税同盟である内は域内国(EUメンバー)に対して優遇が可能ですが、それが出来なくなりますので、今後、イギリスがEU製品に適用する関税は、日本製品に対しても同じでなくてはなりません。

 

 例えば、EUにはこれまでの付き合いもあるから5%、日本には10%みたいな関税の課し方が出来なくなります。それは、逆も然りで、EUがイギリス製品に課す関税は日本製品にも同じでなくてはなりません。

 

 それを避ける方法がないわけではありません。例えば、ノルウェー、アイスランドがEUと単一市場を構成するために作っているEEA(欧州経済地域)のようなかたちであったり、(EEAに入らなかった)スイスとEUのように特別の協定を結ぶという手法もあります。

 

 ただ、EEAではノルウェーやアイスランドはEUにカネは払うし、単一市場に関するルールにも従わなくてはならない、だけど、単一市場のルール作りには関与できない、という事になっています。それが嫌だからBREXITだったわけですから、こんな条件でイギリスがEUと単一市場を作ろうとはしないでしょう。

 

 では、スイスのように特別協定の方式がありますし、多分解決方法はこの辺りかなという気もします。ただ、EU側からすれば「おみやげ」は出さないでしょう。ここでイギリスに甘い顔をしたら、今後、BREXITが伝播しそうな他国にも「あの程度でお目こぼししてもらえるなら、うちも出ていこうよ。」という議論になるでしょうから、そこは厳格だと思います。イギリスがEUに対して相当の対価を出さない限り、事実上、「最恵国待遇」の世界まで戻されてしまうような気がします。結果として、それはイギリスの貿易構造にかなりのデメリットを与えるでしょう。

 

 内情はもっともっと複雑ですが、ベースの考え方はこういうことです。さて、ここを見据えて、日本はどう動くかです。イギリスとも単独のEPA交渉を開始するかどうか、あまり先んじるとEUとの関係を害しますので、ここはよく見なくてはなりません。

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【以下はFBに書いたエントリーを大幅に加筆、修正したものです。】

 

 南シナ海をめぐる仲裁裁判所判決次第では、中国が国連海洋法条約を脱退する、との記事を見て、「中国がバカなことを言っている」と思う方は多いでしょう。私もそう思います。

 

 しかし、ここでどうしても忘れてはいけないことがあります。それは、アメリカは国連海洋法条約を批准しておらず、メンバーではないという事です。アメリカは何に反発しているかというと、深海底に関する規定でして、深海底資源を人類共有財産として、その活用が途上国寄りになっているという事です。

 

 そこを中国は狙ってきています。脱退を批判されたら「アメリカなんか、元々入ってない。何故、うちだけ批判されるのか?」、こういう答えが返ってくること必定です。なかなか答えにくい問いです。

 

 ただ、ここで重要な考え方は「国際慣習法」です。国際法の中には、(明文化されていないけども)慣習的に国際法として確立しているというものがあります。そして、こういう慣習法は国際紛争を解決する手段として認められています。というか、元々国際法は慣習法からスタートしたものでして、それを具体的な条約として確定していったというのが歴史的には正しいです。

 

【国際司法裁判所規程】

第三十八条

1.裁判所は、付託される紛争を国際法に従って裁判することを任務とし、次のものを適用する。

a. 一般又は特別の国際条約で係争国が明らかに認めた規則を確立しているもの

b. 法として認められた一般慣行の証拠としての国際慣習

(略)

 

 アメリカは、国連海洋法条約には入っていないものの、その多くの規定は国際慣習法化していると見なして、事実上従っています。非常にザクッとして言うと、町内会が管理しているグランドの使用については具体的な使用規定がある、町内会メンバーはそれに従ってグランド使用している、ただ、町内会に入っていない人もその規定は当然のものと思っているので、同じくそれに従ってグランドを使用している、そういう事です。

 

 国際慣習法とは、上記にある通り「法として認められた一般慣行の証拠としての国際慣習」です。要件は「法として認められた」と「一般慣行」です。ここで難しいのが、国連海洋法条約の規定は何処までが慣習法化しているか、という事です。慣習法化している部分はありますが(元々古くからの慣習法を条約として取り込んだ規定も多い)、そうでない部分もあるでしょう。

 

 もう少し簡単に言うと、国連海洋法条約の中で、同条約に入っていようが、入っていまいが当然にして従うべきものは何で、入っていない国が従わなくていいものは何かという事です。

 

 要件から考えると、「法として認めているか」、「(そういうルールに従うという)一般的な慣行が存在するか」、この2つで判断します。

 

 では、例えば、今回、日本との関係で話題になっている「国際海峡」制度は国際慣習法か、ということについて考えてみます。私は本件について昨年の質問主意書で聞いています。リンクの主意書の三と四です。私の気分的には「一般慣行」が存在していると思っているか、ということを聞いています。

 

 「一般慣行」という条約用語を使わずに、「各国の実行の集積」という(時折国際法の教科書に出てくる)言い方をしたせいなのですが、ろくな答弁が返ってきていません。その裏には、国際海峡制度が国際慣習法化しているかどうかを答えたくないという事もあるのでしょう。

 

 仮に中国が国連海洋法条約を脱退する場合、それでも中国が従うべきだと思われる同条約の規定は何か、つまり、国連海洋法条約の中で何が国際慣習法化しているのか、という判断はとても重要になると思うわけです。最近の日本領土、領海との関係で言えば、無害通航権(領海に適用)、通過通航権(国際海峡に適用)はそれぞれ、慣習法化しているか、国連海洋法条約に入っていようが、いまいが、中国はそれに従う義務があるか、という事を判断していかなくてはなりません。

 

 知的に難しい所です。まだ、中国が脱退したわけではありませんが、脱退したところで「好き勝手にはやらせないぞ」という事をきちんと論理的に詰めた上で、国際的に包囲網を作るための知的エクササイズはやっておくべきです。この議論は真摯にやるべきだと思います。政府も逃げてはならない所です。秋の臨時国会で取り上げていきます。

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