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不定期ですが銀魂・薄桜鬼・ときメモGSシリーズの夢小説を書いてます


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「おい、小波。」

昼休憩、昼食を中庭で取り終え読書をしていた私の前に隣のクラスの志波勝己くんが現れた。

「あれ、志波くん。どうしたの?」

「ああ、ちょっといいか?少しでいいんだ、付き合ってくれ。」

何だろうと思いつつ、私は志波くんの後をついて行った。

何を話すでもなく二人は歩いている。

彼は口数が多いほうではなかったし、身長が高く目つきもあまり良いとは言えなかったので周りからはよく誤解されていた。いつも学校には来ているが、授業に出ないで他校の生徒とケンカばかりしているとか、そんな根も葉もない噂が彼の周りからは絶えなかった。

私自身、初めて志波くんと出会った時は怖くなかったといえば嘘になるけど、自分が気づかずに落としてしまった生徒手帳を拾ってくれたり、体育の授業の後ハードルを一人で片付けているのに手間取っていたときにさりげなく手伝ってくれたりと、優しい一面があるのを知ってからは、彼には何の疑問を持つことなく接するようになっていった。

まぁ、ハードルの時はちょっとした事故があったわけで。

私が無理にハードルを運ぼうとしたせいで彼とぶつかってしまって、その時に・・・キス・・・しちゃったんだよね。あれは今思い出しただけでも恥ずかしい。志波くんは事故だから早く忘れろって言ってたけど、本当の所はどうなんだろう。まさか、今、付き合えって言ったのもその話の事とかかなぁ?

「どうしたんだ?小波。なんだかお前、さっきからおかしいぞ。」

志波くんの言った理由をあれこれ考えていたら、急に立ち止まって話しかけてきた。それにまた私がビックリして彼にぶつかってしまった。

「あ、ごっ、ごめんなさい!私、ちょっと考え事・・・してたから・・・。」

「なんだ、お前の事だからまた妙な事でも考えてたんだろう?」

そう言うと志波くんはククッと笑って私を見る。

「なによそれ。ひどいなぁ、志波くんは。」

「はは、冗談だ。それにしてもお前はいつも俺を避けたりしないな。・・・怖くないのか?」

「何で?みんながそう言ってるから、私もそうだと思ったの?だけど、志波くんは志波くんでしょ?・・・まぁ確かに初めて会った時はほんの少しだけ怖いかな~って思ったりした。でもね、今は違うよ。志波くんは親友だもの。」

「・・・親友、か。」

本当はね、嘘。親友なんかじゃないよ。私、自分の本当の気持ちに気づいてる。だけどね、今それを志波くんに伝える勇気がないだけ。だから親友なんて言って誤魔化そうとしている。私って最低だ。

「俺はいつその『親友』を越えられるんだろうな・・・。」

「・・・え?今、なんて・・・。」

ぼそっと話す言葉が上手く聞き取れない。なんだか少し寂しそうに見えるのは気のせいなんだろうか。

「小波!」

志波くんが急に何かを投げてきた。

私は、慌ててそれを受け取る。

「ボール・・・。」

野球部が練習に使っているグラウンドに置き忘れられたボールだった。

「俺がお前に合わせるから、少しキャッチボールに付き合え。それぐらいできるだろう?」

キャッチボールなら私にだって出来る。隣に住んでいる小学生の遊くんと休日によく公園で遊びがてらやっているから。

「じゃあ、いくよ!・・・それっ!!」

きれいな弧を描いて志波くんのもとへ飛んで行く。

「へぇ、なかなか上手いじゃないか。」

「でしょ?」

えへへと笑って答えた。彼はスポーツなら何でも出来る人だから、私も少しぐらい何か一つでも出来ないと格好悪いよね。

「・・・俺・・・ずっとお前に話してない事があるんだ。」

ボールを投げながらポツリと話を始めた。

「志波くん・・・?」

私はなんだか辛そうな彼を見て、ボールを投げるのをやめてしまった。

「俺、中学の時に対戦相手のピッチャーを殴った事があるんだ。もう少しで優勝できるってところまで行ってたのに・・・俺が、それを、全部ぶち壊しちまった。」

そうか、それで志波くんの周りにはいろんな噂が絶えないんだ。

「野球部のみんなは、俺をなじったり悪く言う奴なんて一人もいなかった・・・だけど、それが俺にとっては苦痛でしかなかった。だから俺は部員の奴らから逃げて、野球部を、辞めたんだ・・・。」

私は彼の途切れ途切れに話す言葉に耐え切れなくなって、思わず側に駆け寄り、胸の中へ飛び込んだ。

「こ、小波・・・?」

「私、知らなかった。中学の時の話だけど、でも、そんな事があってから、志波くんが、ずっと、苦しんでいたなんて・・・ちっとも、知らなくて・・・私、志波くんの事、全然、わかってなかった・・・。」

いつの間にか、止めどなく涙があふれてくるのを抑えきれずに泣いてしまった。けれどそれを突き放すでもなく志波くんはやさしくそっと私を抱きしめてくれた。

「ありがとう、俺の思ったとおりお前はやさしいやつだよ。」

「志波くん・・・。」

「俺は、甲子園に行くのが夢なんだ。お前は、俺が今からそれを追いかけて行ってもいいと思うか?」

「うん。志波くんならきっと出来るよ。」

「そうか・・・お前のその言葉が俺の後押しをしてくれる。きっとやり遂げてみせるよ。」

私はいつも彼の側にいて、応援し続けていこう。彼の夢が私の夢になる。そうしていつしか二人の夢へと繋がっていくんだと私は信じている。



~完~



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