構造から洗剤の刺激を予想する方法について(超・マニア向け)   | かずのすけの化粧品評論と美容化学についてのぼやき

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化学をよく知っている人はわかるかもしれませんが

有機化合物の名称には「命名法」があり、

ある程度勉強してきた化学屋さんなら

その有機化合物の「名前」を見ればその構造を同定することができます。


例えば

ラウリル硫酸Na


であれば、

ラウリルエーテルの骨格(C12個の炭素鎖)に硫酸基(-SO
3-)がくっついて、

ナトリウム(Na)がイオン結合しているのか・・・

と言う風に。


つまり有機化合物の「名称」とは「構造」であり、

その性質はその構造特性に由来するものであることから

名称さえ分かれば、賢い人はその特性すら予想出来ます。



かずのすけは「有機化学」が専門ですので

このような化粧品成分知識を身につけるに至った最も大きな理由は

この能力だというわけです。



・・・というのは前置きで


今日はその構造から洗剤の刺激をある程度予測する方法をレクチャーします。

この方法は現在どんな界面活性剤の専門書にも載っていない

と思われます。(少なくとも日本語の本では)



つまり非常に専門性が高いです。


興味のある&超マニアの方だけお読みください。



◎刺激が強い構造とは


界面活性剤の刺激とイオン性の関係は既にお話しましたね。

アニオン界面活性剤やカチオン界面活性剤などの

イオン性の界面活性剤は刺激があります。

しかしイオン性を持たないノニオン界面活性剤などは刺激が非常に弱いです。


そしてそれは同じアニオン界面活性剤(洗剤)でも同様であり、

イオン性が強い構造ほどその洗剤の刺激は強いことになります。



有機化合物の構造から「イオン性が強い」というのはどう判断すればよいのか。


一般にその分子のイオン性・・・つまり電離のしやすさは、

「電離度」などのような言葉で表されていますね。


酸で言えば

pHが小さい塩酸や硫酸は電離度が大きく、

pHが大きい酢酸や炭酸は電離度が小さいです。


実はpH1の塩酸とpH3の酢酸なんかは、

およそ100倍はイオン性が異なることになります。



というのは酸というのはこのように、

水に溶けた時に電離すると水素イオンを発生するのですが、

塩酸はその電離のしやすさが大きい為、ほとんどの塩酸が電離できますが、

酢酸は電離度が小さいので塩酸ほど水素イオンを発生しないのです。


つまり酸で言えば

強力な酸ほど強力なイオン性を持っている、

ということになるのです。


界面活性剤の刺激性は、

炭素骨格(親油基)に結合している酸構造(親水基)のイオン性に由来します。




界面活性剤はこの部分が電離(イオン化)する物質で、

そのイオン性はこの部分がどれだけ電離しやすいか、、で判断できます。


じゃあ上の話で考えれば、界面活性剤についても

酸性が強い・・・つまりpHが小さい程刺激が強いということになるのでしょうか。



しかし実際にはこれは違います。

アニオン界面活性剤は酸と塩基を中和して作られた塩なので、

水中で電離しても水素イオンを放出しないからです。
(代わりにナトリウムイオンを放出しています)

ですので普通の洗剤はおよそ中性のpHになるわけです。
(水素イオン濃度はあまり変わらないから)


実際にこれらの電離度を厳密に計測するには、

電離したナトリウムイオン濃度から算出するpKNaなんかを測定する必要がありますが、

電離のしやすさはそもそも構造から判断できるものですので、

適当にどの程度が電離するかなというのは

数字で表す必要が無ければ構造で判断ができてしまいます。



結局はこの親水基がどれだけイオンになりやすいか、

というのは元々の酸の性質から考慮すれば良い話であって、

難しいpKNaとかを求めに行く必用は無いです。


結論だけ言ってしまえば、

「強力な酸の構造を持った親水基は、強力なイオン性を持つ」


ということに事実上なるわけです。



で、一般に「硫酸系」と言われる

ラウリル硫酸ラウレス硫酸なんかが刺激性が強い・・・

というのは実際に「硫酸」という強力な酸の構造を持っているから


ということで説明が出来てしまうわけなのです。




実は通常のアニオン界面活性剤の酸構造の元になる酸は、

ある一定の構造特性を持っています。


それが「オキソ酸」、つまり「酸素原子」を含む酸であるということですね。


硫酸、リン酸、ベンゼンスルホン酸、カルボン酸、アミノ酸など

全ての酸は構造上に酸素を持っています。


酸は絶対酸素を持っているんじゃ?

という風に素人の方は思いますが、

実際には塩酸や臭素酸のように酸素を含まない酸もたくさんあります。


そしてこのオキソ酸は、

酸素の配位数が多ければ多いほど強力な酸になる

という性質があります。
(厳密にはこれだけでは計れませんよ)


硫酸は「H
2SO4」つまり酸素が4つです。

リン酸「H3PO4」も酸素が4つです。

スルホン酸は「-HSO3なので酸素が3つです。

カルボン酸は「-COOH」なので酸素が2つです。

アミノ酸は「H
2N-CH(R)-COOH」なのでこれも酸素が2つです。



という風に考えていくと、


例えば低刺激と言われる

「アミノ酸系洗剤」や「ラウレスカルボン酸(酸性セッケン)」




高刺激と言われる

「硫酸系洗剤」「スルホン酸系洗剤」・・・などなど


その序列化ができてきた気がしませんか?



◎強力な酸を使った洗剤は高刺激、弱い酸を使った洗剤は低刺激


結局のところはこういうことです。

手が腐食されるような強力な酸(硫酸やリン酸のような)を使った洗剤は

その分刺激が強いです。



これはこのように酸素を多く持つオキソ酸系洗剤の親水基は

酸素の電子吸引性を受けて中心原子の負電荷が強力に酸素側に引き寄せられています。

これにより、中心原子が相対的に正電荷を帯びた形になり(σ+状態)、

親水基の構造中に酸素が多ければ多いほど

イオン結合している配位子(Na+など)を放出しやすくなると考えられます。


つまりこういう構造を持った洗剤ほど水中で電離しやすく、

界面活性剤としても優れた洗浄力を発揮しますが

その分マイナスの電荷も大きく(酸素が大きな負電荷蓄えています)、

刺激が強くなるということなのです。



ということでこれらの洗剤の一般的な刺激性を、

親水基別分類で順位を付けると以下のような序列になります。


1位:硫酸型洗剤 ex.アルキル硫酸Na(R-O-SO3Na)

2位:リン酸型洗剤 ex.アルキルリン酸Na(R-O-PO3Na2) ※

3位:スルホン酸型 ex.アルキルベンゼンスルホン酸Na(R-SO3Na)

4位:カルボン酸型 ex.ラウレスカルボン酸Na(R-(OCH2CH2)n-CH2-COONa)

5位:アミノ酸型 exラウロイルメチルアラニンNa(構造式略)



リン酸型は環境汚染になる為現在は使用されていません。


しかしこれらの序列にはまらない特殊な奴が一人だけいます。


それが「セッケン」ですね。

セッケンがなぜ普通のアニオン界面活性剤の中でも特別扱いされるかというと、

こう言う点で明らかに普通の洗剤と比べて性質が異なるからです。

セッケンは上で言う「カルボン酸型」の一つですが、

刺激性や洗浄力は硫酸型に匹敵します。


これはセッケンは中性では無くアルカリ性なので電離の法則が少々異なっており、

アルカリによる平衡の移動で親水基が電離しやすい状態になっています。

その為カルボン酸系にもかかわらず強力なイオン性を持つ為

セッケンは強力な刺激性があるわけなのです。




ということで名称を知り、その構造を知れば、

洗剤の刺激性はある程度予測ができます。


この方法で考えると、

某サイトがオレフィンスルホン酸Naなんかにものすごい敏感に反応するのは

少し過剰反応であることが伺えるのではないかと思います。

実際には硫酸系洗剤と比較すれば大分刺激に違いがありますからね。



まぁこの辺りが構造からアプローチをかけられる化学屋と

丸覚えの似非専門家の違い、ということでしょうね。





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