成年後見制度と「本人の意思決定」支援制度 | ペーパー社会福祉士のうたかた日記

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社会福祉士資格をとるまでと、とったあと+α。浮世のつれづれ、吹く風まかせの日々。

2015年に日本弁護士連合会が主体で、
成年後見制度を"意思決定支援制度"へ
移行しようというシンポジウム開催。
305ページにわたる資料を読了した。

この中にあったアンケート調査で、
次のような問題文があったのだけど、
語弊を恐れずにいってしまえば、
とてもおもしろく考えつつ読んだ。

アンケートは、
成年後見業務にあたっている専門職、
弁護士、司法書士、社会福祉士に、
「本人の意思の尊重」について
どのように考えてあたっているかを、
事細かく聞いているんだけど、

3つの専門職、というか、正しくは、
2つの司法系資格と社会福祉士とで、
考え方もアプローチも違ってくる。

あ、これ、
職業、資格特有のモノのとらえ方、
その資格を選択する人物の性向が
こんなに違うんだ、ってことなんで、
どっちがいいとか悪いとかではない。

アンケートにあった問がそのまま、
国家試験の事例問題にもなりそう。
内容は変更なく、試験問題として
改変と選択肢を加えたのがこちら。
------------------
問 事例を読んで,成年後見人の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。

(事例)A社会福祉士は,知的障害のあるBさん(45歳)の後見人に選任されている。Bさんの知的能力は6歳程度、母親と2人暮らしで,父親の遺産が2千万円ほどの預金があり,さらにアパートの家賃収入があるため月々の収支は10万円程度の黒字になっている。先日A社会福祉士は、Bさんから「60万円の羽毛布団セットを買いたい」と言われた。Bさんが現在使用している布団は,多少古くなっているもののまだまだ使える状態である。A社会福祉士、Bさん、Bさんの母親と話し合ったところ、母親が不在のときに訪問販売員がBさんに購入を勧めたことが分かった。Bさんは、「販売員さんとまた会いたいから羽毛布団セットを買いたい」と言っている。

1 本人の意思どおり,羽毛布団を買うことに賛成する。
2 特に必要ないから,やめるよう本人を説得する。
3 本人の意向は相当ではないから,後見人として買わないと決定する。
4 販売員とまた会いたいという本人の動機について,理由を本人と話し合い,他の方法があれば羽毛布団を買うという決定が変わるのかを確認する。
5 後見人は判断せず、家庭裁判所の判断を仰ぐ。
-----------------
もちろん、実際のケースでは、
正しい誤りは簡単に判断できないが、
わしらの国家試験問題としてみたら、
正解は4以外にはほぼ考え付かない。

が、

弁護士の回答と社会福祉士では、
それぞれの割合がこんなに違う。



わしら社会福祉士は4。紫のトコね。
他の選択肢はほとんどダンゴ状態。

一方の弁護士は、4の割合が半数強、
ちょっと驚いてしまうのが、
「必要ないから買わないよう説得」
「後見人として買わないと決定」が
社会福祉士の3倍~4倍を占めている。

わしらの試験で一発除外するのを
多くの弁護士が選ぶっていうのが…

ここで明確になるのは、
社会福祉士のモノの考え方とは、
アヤシイ(かどうかわからないが)
羽毛布団の訪問販売員であっても、
Bさんが会いたいには理由がある。

その理由をよく話を聞いてみて、
じゃあフトン要らないってなるか、
やっぱりフトンも買いたいとなるか、
まずは確認してみないと、と考えて、
「Bさんは何をしたいのか」に、
どんどん近づいていこうとする。

一方、

知的障害がある自分の被後見人に、
しかも母親不在時を狙って、
訪問販売って形式で近づいてきて、
高額商品を売りつける手法を否定し、
拒否して遠ざけようとする弁護士。

実際のアンケートの5は自由回答で、
その中には少なからず、
後見人自らが販売員と会ったり、
後見人が就任していることを告げる、
など、販売員と直接交渉するものや、

もし買っちゃったあとだったら、
取消のうえ、Bさんと話すとか、
頑として買わせない!回答が多数。

買っちゃった→取消→話ってのは、
実質的には、Bさんに折れさせたり、
あきらめさせることが目的だから、
最初から買わせないのと大差ない。

印象としては、なんていうんだろう、
身上監護=教育指導っていうのか、

必要じゃないものは買わないの!
イッコで足りてるものは要らない!
そうだろ!わかるな!いい子だ!
という指導教官臭がしなくもない。

この他でも、
社会福祉士と弁護士の違いは顕著で、
たとえばこの円グラフ見てください。



弁護士では、青:橙:緑が3割ずつ。
それが社会福祉士では大幅変動、
青が多くて緑がほとんど最下位近辺。

これ、
本人の意思が確認できない場合に、
「最も重視するものは何」の回答。
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青:本人のこれまでの生活歴や経緯
橙:後見人が客観的に判断した本人の利益
緑:本人に関わっている親族

赤:本人に日常的に関わっている福祉職の意見
水:ケア会議での意見
紫:推定相続人の意見
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弁護士が、
「被後見人の生活歴や経緯と同等に
自分の客観的判断をおいて、
かつ福祉職よりも親族を優先する」、

社会福祉士が、
「被後見人の生活歴や経緯をもとに、
自分の客観的判断をまじえつつ、
関わりを持つ福祉職やケア会議での
意見を重要視して決定する」。

福祉系は、
親族に話を聞くよりまずは専門職!
遠くの親族より近くのケアマネ!
と、こういうことになってるわけで、
福祉系の底力が垣間見えてきます。

2つの違いばかり紹介して、
だからなんだって話なんだけど、

司法福祉、権利擁護、更生保護だと
いうエリアに立ち入ったばっかりに、
弁護士にはかなわないと刷り込まれ、

実際、当たり前だけど、
弁護士の法律の知識って凄まじくて、
会うと正直、負けた感がハンパない。

ここで対抗するもんじゃないなんて
わかっちゃいるけど無力感波状攻撃。
弁護士でソーシャルワーカーって、
この世の最強じゃないかと思うよw

けど、こういう違いを見るにつけ、
交換できることたくさんあるなーと。
不死鳥のようによみがえるわけです。
違いは違いで、あっていい!と。

たとえば、

経済的に、現在も、ほぼ将来的にも、
何の心配もない境遇の被後見人が、
高価な買い物をしたがったとき、
(しかも詐欺とか宗教でもない場合)
即座に、買わせない、止めよう、
そう考えついて制止してしまうけど、

ここではたと気づいて、
どうして止めるのが当たり前なのか、
買っちゃいけない理由でもあるのか?
と、立ち止まってしまうのが福祉系。

「本人の意思決定」に、
客観性や合理性を持ち込まないで、
推測や想像で補うって技能、才能が
社会福祉士の専門性じゃないかと。

成年後見制度にかわる、
意思決定尊重の制度については、
噛み砕いてまた改めて書きます。

ではまた近日ちうにも。


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社会福祉士、「自己決定」の尊重。
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