妖風焼菓子レスカル亭

妖怪クッキー シリーズ ブログ
絵本作家スギナカモモコ×日光霧降高原 ペンション レスカル コラボプロジェクト


画:スギナカモモコ
文:レスカル亭妖怪シェフ


テーマ:

<< 六ノ怪 魔女のくしゃみ>>


 

 ある嵐の晩のこと。


 妖怪の街・日光のハーブのお店『ゾゾッとぼーちぇ』でレスカル亭の妖怪シェフがお茶を飲んでいると、

 「もし、もし」

 と、かすかな声が聞こました。


 「こんな大雨の夜にだれかしら」


 『ゾゾッとぼーちぇ』の妖怪マダムがドアを開けると、そこには、真っ黒のとんがり帽に全身黒ずくめでずぶぬれの、人間の魔女が立っていました。


 「私はイタリ国の魔女です。明日、この魔法の街・日光で行われる魔法会議にやって来たのですが、嵐でほうきが壊れてしまい、近くの森に落ちてしまいました。空から灯りが見えたので、それを頼りにやってきたのです」

 よく見ると木の枝にでもひっかかったのか、帽子もマントもボロボロです。

 「会議のうわさは聞いているわ。大変だったわね、中にお入りなさい」

 妖怪マダムは寒さに震えている魔女を招き入れると、暖かい暖炉の前の椅子に座らせました。


 「寒かったでしょ、『バラ色ヤモリのしっぽティー』はいかが?」

 「ありがたいのですが、実は、途中で大事なかばんを落としてしまいました。中には、明日の会議で披露する魔法薬の材料が入っていたのです。」

 魔女はがっくりと肩を落としました。

 妖怪マダムが魔女にたずねました。

 「それは、困ったわね。いったいどんな材料を落としたの?」

 「コウモリの鳴き声ゼリーに蛇のねごと、大とかげの白髪とヒゲ、、、」

 「あら! それなら、この店にある物で何とかなるかもしれないわ」

 「えっ、本当ですか! でも、かばんには、弟子達へのお土産のお菓子も入っていたのです、、、」

 「お菓子なら私に任せなさい。私は焼菓子屋のシェフだからの」

 隣で話を聞いていた妖怪シェフが言うと、魔女の顔がパッと輝きました。

 マダムが笑って「良かったわねぇ」とお茶を入れてくれました。礼を言って魔女がお茶をごちそうになると、体が温まってきたからか、「くしゅん! くしゅん!」とくしゃみが出てきて止まりません。



 それを見た妖怪シェフが「ほうほう、これは良い」と言って、くしゃみをちりとりで集め始めました。

 不思議そうな魔女と妖怪マダムに、

 「今夜は休みで材料を持っておらんでの。魔女のくしゃみは使えるからの」


 すぐに、ちりとりは魔女のくしゃみでいっぱいになりました。でも何でしょう、ちりとりの上で、黒くて小さいものが飛び跳ねています。

 「気をつけて。それは、私のため息が変身したイタズラな『小悪魔』です。」

 妖怪シェフが黒い小悪魔を拾い上げようとすると、小悪魔たちはあかんべぇをして、キイキイと鳴きながらちりぢりにどこかに逃げて行ってしまいました。


 「マダム、ちとキッチン借りるの」

 さぁ、クッキー作りの始まりです。

 よく立てたメレンゲにオレンジとナッツ、仕上げに「魔女のくしゃみ」を加えてさっくり焼き上げました。 

 「いいにおい!」 

 「ほうほう、お土産の方は完成ぞい」

 「では、薬の材料も揃えましょう」

 妖怪マダムの見立てで、魔法薬の材料も無事に揃いました。

 ーと、そこへ、

 「お迎えに上がりやした!」

 マダムが頼んでおいた火車引きの親方が燃え盛る火車で迎えに来ました。


 「本当にありがとうございました。お優しい妖怪の皆さん

のおかげで、明日の会議で、私の魔法の薬を披露できます。

それに久しぶりに会う弟子達も、このお菓子で喜んでくれる

でしょう。本当になんとお礼を言えばよいやら、、、。」

 何度も何度もおじぎをする魔女に、妖怪シェフが笑って言いました。

 「お前さん達流に言うと、日光は魔法の街なんじゃよ」

 「そうそう。不思議なことが起こる街なのよ」

 『ゾゾッとぼーちぇ』のマダムも笑て言いました。

 「本当に、、、、本当に不思議な街ですね」

 魔女も、笑って答えました。

 

 まだ少々風は強いものの、雨はずいぶん小降りになったようです。

 「火車引きの親方、頼みましたぞ」

 「がってん、承知!」

 「ありがとう! さようなら!」

火車は雨雲にも負けず鮮やかに燃え上がりながら、みるみるうちに夜空に駆け上がると、いつまでも手を振り続ける魔女と共に、彼方の雲の中に消えて行きました。




 次の夜は昨夜の嵐と打って変わって、降り注ぐような満天の星空でした。




 妖怪マダムが『ゾゾッとぼーちぇ』の庭で星を眺めていると、どこからか魔女たちの歌声が聞こえてきました。


 「ヨーレイ! ヨーレイ!」

それは、年に一度の大イベントである魔法会議の成功を祝う歌声でした。



「ヨーレイ! ヨーレイ!」


力強いその歌声は星降る日光のすみずみにまで流れ、森の中のレスカル亭にも届きました。

レスカル亭の妖怪シェフは、クッキーを焼きながらそっと耳をすませました。



イタリ国から来た魔女は、魔法会議で「世界中のため息を微笑みに変える魔法薬」を発表し、たくさんの弟子たちが見守る中、会場中の魔女たちから拍手喝采を浴びたそうです。


そういえば、あのとき逃げ出した、イタズラ好きなため息「小悪魔くん」はどこへ行ったのでしょう?


気を付けて。もしかすると、どこかに紛れてイタズラのチャンスを狙っているかもしれませんよ。






 << 六ノ怪 魔女のくしゃみ  >>


 


 画:スギナカモモコ 

 文:レスカル亭妖怪シェフ






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