2007-06-15

「ハイドラ」金原ひとみ

テーマ:読書のタシナミ

自分の体を傷めつけるのだって

結局は

嫌になるくらいの

自己顕示欲からだ。

病的にやせること。

いつも、「笑うな」という

人気カメラマンの新藤が

壊れていく自分を求めているから。

なんて。

それが本当の理由ではない。

読者モデルあがりの

替えのきく

その他大勢だった早希は

ずっと特別な存在になりたかった。

だから

彼女は彼の望む被写体になった。

タトエ ミニククテモ。

自己否定と自己顕示。

自分は特別だ、と

感じさせてくれる

ひとつの道具としての

彼であり彼の愛なのだ。

一方では

ちっぽけな自分を感じるための

彼との関係なのだ。

そして

彼女はそれを自覚している。

人気バンドのヴォーカルである松木は

読者モデル時代からの早希のファンで

ストレートに愛を告げてくる。

変わってしまった彼女を

救いたい、と言うのだ。

早希が新藤の裏切りを知り

心乱れて電話をしたときに

何も聞かず駆けつけてくれる松木。

優しい言葉が

電話越しにかけられる。

こんな場面で泣いてしまう私は

早希と同じように

複雑にねじれた心を

持っているのかもしれない。

素直に誰かに守られたいと思う心と

自分は守られるのに値しないと思う心と。

追いつめられて

拒否されることを覚悟して

不安な気持ちに押しつぶされそうにならないと

誰かを求めることはできないから

こたえてくれる

ただまっすぐな

あたたかい気持ちが心にしみる。

それなのに

ひるんでしまうのは

なぜだろう。

もうながいこと

癖になった自己否定が

いつまでも

中毒のように甘くしつこく

彼女にも私にも

まとわりついている。

   ― 金原ひとみ「ハイドラ」(新潮社)

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2005-02-26

「囚われ人のジレンマ」 山本文緒

テーマ:読書のタシナミ
  幸せというオリに囚われた 
    主婦にとって  
  読書は違う自分を生きる     
    どこでもドア  
恋愛を中心に書いていきたいと思います。


「囚われ人のジレンマ」山本文緒

この小説は直木賞を受賞した「プラナリア」(文芸春秋 1333円)
の5編の短編のひとつです。恋愛のことを書きながら実は恋愛小説を
あまり読んでいない私。久しぶりに読んだ恋愛本です。

この短編集の共通するコンセプトは「働くコトと働かないコト」。

24歳で乳がんが発覚し手術したものの、つい自暴自棄な態度で周囲
にあたってしまう女性(「プラナリア」)や、有能で働くことが好き
であるが故に、一緒に雑貨店を経営していた夫との離婚から立ち直れ
ず、働かずに日々をおくる女性(「ネイキッド」)や、夫がリストラ
されパートに出たものの、お母さんみたいな生き方はイヤだと娘に拒
否される主婦(「どこかではないここ」)など、普通に自分の周りに
いるような女性達の渇いた心が、現実感を伴って伝わってきます。

私がこの5編の中で特に面白いと思ったのは「囚われ人のジレンマ」
です。

主人公と彼は大学の心理学課の同級生でした。1年生から付き合いだし
た2人も25才になり、大学院の修士から博士課程へと進んだまだ学生
の彼と、大手通信機器メーカーのユーザーインターフェイス部門で、エ
ンジニアとデザイナーの調整におわれる彼女。この小説で働いているの
は女性の方ですが、実家で生活し父親(男性)に縛られる彼女もまた、
仕送りとバイトで生活する彼同様に完全な自立はしていません。主人公
は7年目の誕生日にプロポーズする彼の言葉を聞いても嬉しくない自分
に気がつきます。彼女に自立や結婚をためらわせるものは…。

この小説で語られているのは、ジェンダーについてでした。どんなに大
学で学んでも、すり込まれた社会的な性差意識を拭い去るのは難しいこ
とです。少しづつ世間の意識は変わってきたとはいえ今でも男性には社
会的に強くあることや庇護する立場であることが求められます。結婚と
いう社会的行為。強者と弱者のどちらになることも選べる時、男は、そ
して女は強者と弱者のどちらを選ぶのが得なのでしょうか。自分が貧乏
くじを引かないこと(損得)だけを考えていると、「囚人のジレンマ」
に陥ってしまいます。囚人のジレンマについては小説を読んでみて下さ
い。2人が肉体関係を持たないことでも2人のジェンダーレスな関係を
暗示しているように思います。
短い小説なのに、男と女のジレンマがよく伝わってきました。

私は専業主婦です。被扶養者です。家事は社会的に認められたり評価
されることが少ない仕事ですが、私は好きです。損得で選んだわけで
はありません。ご主人を扶養している友人もいますし、あたりまえに
多様な価値観が認められることが1番良いなぁ、と思います。



<おまけ>
もうひとつ収録されている5番目の小説「あいあるあした」の主人公は
居酒屋店主の男性でふらりと生活に舞い込んできた恋人や娘、バイト、
常連客などとのつながりを描いた暖かい話です。話として一番「好き」
なのは、この最後の小説です。
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2004-11-22

「イージー・ゴーイング」山川健一

テーマ:読書のタシナミ
「イージー・ゴーイング」山川健一

疲れて見える人に
「疲れているんじゃない?」と声をかけるには、
意外と勇気が必要です。
相手の様子が痛々しければ痛々しいほど、
相手のココロに触れて、
逆に壊してしまうのが怖くなってしまうこと、ありませんか?

そんな少し疲れて見える人々に、
山川健一さんが昔からの友達のように気軽に声をかけていく。
「無理はしないでね」と、軽く肩でも叩く調子で。
それが著書「イージー・ゴーイング」です。

私は励まされる側よりも励ます側になることが多いのですが、
ヒトを元気にするのってむずかしい。
そんな視点から「イージー・ゴーイング」を読み始めました。

まず気づくのは山川さんのスタンスです。
どんなに言葉で「力を抜いて」と言っても、
そう簡単に「力を抜く」ことはできませんよね。

そこで山川さんは言うんです。
「僕はこんなに弱くて、こんなに怠惰だけど、
でも人生をこんなに楽しめる。
自分を知っているし自分を愛しているから。」と。
シンプルに。

それにしても、
自分で自分自身を元気づけるキャラクターに
「にゃんちゃん」なんて名前をつけるのは、
作家としてはどうなんでしょう?
…と思いながらも、つい笑ってしまいます。

こんなふうにしてさりげなく
ヒトの「力を抜かせてしまう」のが
山川さん流なのかもしれません。
文章も暖かく語りかけてくるような雰囲気です。

ただ夢に出てきた有名人にイロイロ語らせたりする章は、
個人的には、ちょっとフェアじゃない気がします。
たとえ本当の夢でも。

それでも基本的に「イージー・ゴーイング」には、
イイカゲンな自分を割と愛している私の
共感する部分が、たくさんありました。
きっと「僕は全然気を使ってないよ」というカタチの気使いで、
山川さんは誰かを今日も元気づけているのでしょう。


<おまけ>私は間違いなくトラ型です。
     トラは決して雄ライオンに憧れたりしません。
     


今日は月曜日。
子供たちは学芸会の振替で休校日です。
だから、久しぶりに
ディズニーランドへ行ってきます!!

今日は一日つぶれてしまうので
早めに更新しますね。
書評もちょっと恋愛ではありませんが
作家ブログの山川健一さんの本を読んだので
書いてみました。

昨日、DVDで映画「ドッグヴィル」を見ました。
スゴイです!面白いです!深いです!
人間が嫌いなヒトにはオススメできませんが。
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2004-11-15

旅猫・横森理香

テーマ:読書のタシナミ
  幸せというオリに囚われた
     主婦にとって  
  読書は違う自分を生きる     
     どこでもドア  
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 「旅猫 横森理香」


この話は恋愛短編集
「LOVERS」祥伝社文庫 550円
に入っています。

この「LOVERS」という本は
9人の作家の恋の話が読める本。

こういう本がすきなのは
あまり手にとらなかった、
つまり食わず嫌いだった作家の小説が
気軽に読めるところです。

・ほんものの白い鳩(江国香織)
・横倒し厳禁(川上弘美)
・キャメルのコートを私に(谷村志穂)
・ウェイト・オア・ノット(安達千夏)
・七夕の春(島村洋子)
・聖セバスティアヌスの掌(下川香苗)
・水の匣(倉本由布)
・旅猫(横森理香)
・プラチナ・リング(唯川恵)

この中で「キャメルのコートをあなたに」と
「聖セバスティアヌスの掌」はドラマにもなったそうです。

で、私がこの本で気に入ったのが
この「旅猫」。
丘サーファーばかりのナンパ島で出会ったキミオは
ギターを抱えたビーチの「流し」です。

はっきり言って、この流しという設定がうけました。
でも、もっと笑いを取れるのに、と思いました。
別にウケを狙う必要はないんですけどね。

そして不思議な魅力を持つキミオは
ふらりと主人公の家に転がり込んでくるのです。

いいな、この旅人。

キミオを天使というところは
ちょっと…という感じですが、
雰囲気で終わってしまうおわりの方がスキです。

キミオに惹かれるなんて
たぶん、
私も束縛されるのが嫌いなんだと思います。
できれば、キミオみたいに
「流し」になりたいニャー、なんて。


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2004-10-25

太陽と毒ぐも・角田光代

テーマ:読書のタシナミ
  幸せというオリに囚われた
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  読書は違う自分を生きる     
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 「太陽と毒ぐも 角田光代」マガジンハウス

先日、おしゃれをした高校生のオンナノコが
自転車にのりながら、路上に唾を吐くのをみました。

ジェンダーフリーの時代ですよね。
女らしさとか流行らないのかもしれません。
でも…そこまでやってもいいの?
そのコは、メイクとかネイルとか
「オンナノコらしく」していたから、
よけいに驚いてしまったのです。

また、かなり前のことですが、
TVで「汚ギャル」と呼ばれるシュゾクが
キャーキャーいいながら
私、何日お風呂に入っていない、とか
このコーラいつ買ったんだっけ、とか
腐ったものが同居している部屋を
平気で見せていた時も絶句しました。

こんなオンナノコと付きあう、オトコノコはいるのか?
それが最大の謎でした。

角田光代『太陽と毒ぐも』には11編の短編小説が入っています。
書店ではあまり手に入らないマガジンハウスの雑誌「ウフ。」に
掲載されていたものがほとんど(10編)です。

その中で1番最初に入っている『サバイバル』は
汚ギャル「キタハラスマコ」とつきあう、
キョウちゃんのお話。

主人公のキョウちゃんは、
デートに行く時、いつもドキドキしています。
「キタハラスマコ」が今日は風呂に入って何日目か、
それが心配で、祈るような気持ちで
待ちあわせ場所に向かうのです。

それでも彼女と会うと話がはずんで楽しい。
いつか一緒に暮らすのもいいなと思えてしまう。
そんな2人の恋は…。

この本にでてくるカップルは
どれも変わったカップルばかりです。
変なものに、こだわっていたり
変なことに、とりつかれていたり

作者のあとがきにも、こうあります。
「書きながら、また読みながら、
ばっかじゃねえのこいつら、と私は思ったが
けれどページのそこここに、些細なことで
恋を失ったり愛をだだんと踏みつけた私自身の
ばっかみたいな影がはりついている」

だれでも多かれ少なかれ
これだけは許せない、これだけは許してよ
という性癖があるのかもしれませんね。

この短編集の中で特に私が面白いと思ったのは
『サバイバル』の他に
何でも人に話してしまう彼女と
何でも気持ちを短歌にしてまぎらす彼の『57577』
初めての海外旅行で2人の関係に亀裂をみせる『旅路』です。
『旅路』のラストは予想外で
ホントに面白かった、オススメです。
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2004-10-14

「熱帯魚・吉田修一」

テーマ:読書のタシナミ

  幸せというオリに囚われた
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 「熱帯魚・吉田修一」文春文庫

吉田修一さんの本を読むと
いつも心を強く揺すぶられます。

この文庫には
「熱帯魚」「グリンピース」「突風」の
3篇が入っています。

どの小説にも
感じ取れる人間と
感じ取れない人間がいます。

感じ取れない人間は
それだけで無邪気な善人に見え
感じ取れる人間は
傲慢な観察者だけれど
同時に憐れみのような優しさがあります。

感じ取れるものと
感じ取れないもの。

立場を変えてみれば
どちらも淋しくどちらも憐れで
どちらも優しい。

普通にいそうな恋人たち。
普通にいそうな夫婦。
普通にありそうな光景。

作者の視線の先に
無防備な自分自身がいるような
そんな気がしてしまう本でした。


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2004-10-07

「ドラジェ・江國香織」

テーマ:読書のタシナミ
  幸せというオリに囚われた
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「ドラジェ・江國香織」

恋愛の小説について思い出そうとしたら
まず短編集「ナナイロノコイ」が浮かびました。

「恋愛小説」という副題のついた
この本には7人の女性作家が書いた
7つの恋の物語があります。

江國香織・角田光代・井上荒野・谷村志保
藤野千代・ミーヨン・唯川 恵

つまり1冊で7つのテーストが味わえるのです。

そのなかで最初に載っているのが
江國香織さんのこの小説です。

主人公は、妻のいる恋人の哲夫から
友人の奈津夫を紹介されます。
奈津夫は恋愛不毛説の持ち主で
いきなり彼女の部屋に来て
哲夫と別れろと言うのです。
「彼はあなたをすきなんじゃなくて
あなたのような人がすきなわけだから」と。

このときから
奈津夫と彼女の腐れ縁が始まりました。
お互いに恋人には1度もならないまま
別々に恋を重ねていきます。
月日は流れ
20代後半だった彼女は
40代を過ぎていました。
そして今日は奈津夫の結婚式…。

私は主人公と違い結婚もし
子供もいます。
でも彼女の気持が心にしみてくるのです。

若いときの傲慢な自分。
自意識の強さ。
今は冷静にそれを見ることができます。

もう1度若い頃に戻りたいですか?
と聞かれたら、答えはノー!
でもそれは否定ではありません。

恥ずかしいほど若かった
あの頃の自分があるから
今の自分がここにあるのだから。

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