2012-07-14

ひらたいスプーンのかたち

テーマ:喪失

テーブルの同じすみに


いつも


あなたは書置きをおいた。




それは薄い茶色の紙で


僕に


剥がれ落ちた皮膚を思わせる。




端はちぎられて毛羽立ち


ゆるく反って乾き




行き先と


帰宅時間が




句点も読点もなく


簡潔に記してあった。




窓は開いている。




だから


部屋には


風が吹いている。




重石はいつも


銀色の平たい


デザートスプーンで




僕は無造作にそれを手に取り


重さをなくした伝言は


部屋のどこかへ飛ばされていく。




冷蔵庫にはバニラアイス。




何かを確実に慰める甘さ。




平らなかたちのせいで


アイスが


口の中で溶けた後でも




スプーンだけは


舌の上に長く休んでいる。




あなたの最後の旅立ちのとき




行き先も帰宅時間もない


書置きの前で




ずっと言えなかった


ひとつのことばが




銀のスプーンのように


かたく


舌の上に残った。






先週、諏訪敦さんのお話を聞きに


恵比寿へ行きました。





小さな部屋の中


スライドで諏訪さんの


製作過程など観ながら


お話を聞くのは思っていたとおり


濃くすばらしい時間でした。





心に残ったのは


諏訪さんがお父様の死の傍らで


遺体をスケッチした話。





わたしは自分の両親の死の傍らに


いたときのことを思い出していました。





母は十代のとき父は三年前。


二人とも事故でなくなったために


病院に駆けつけたときには


死にいく状況で……。





肉死の死を目の前にしてわたしは


とても静かな気持ちでした。





そこに両親のかたちはあっても


もうそこに彼らがいないこと


もうもどってこないことがわかったのです。





死というもの。彼らの不在。





それを受け入れようとする、のではなく


それを一瞬に受け入れてしまった自分。





ただ目の前にあるのは


見たことのない


現実の「かたち」なのです。





わたしには死に対する憧憬も畏怖もありません。





死は人として自然なもの、圧倒的事実だ、という


静かな気持ち、静かな自分自身の視線があるだけです。




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2011-11-03

発車べル

テーマ:喪失

雨上がりの街を駅へ向かった。


ゴールテープを切るときみたいに

前のめりになって

冷たい空気を顔で分けて駆けた。


向かい風。

足元に無数の水たまり。


はねを上げながら

自分のスピードに酔えば

おろしたてのストッキングが

どんなに汚れても気にもならない。


湿気をすった髪が

醜く広がる。

お気に入りのヘッドフォンで

頭を押さえる。


涙をすった想いが

頭からあふれても

厚みのある音で

鼓膜を麻痺させた。


  ごめんね


このスピードのわたしを

追いかけながら


  悪気はなかった


謝ってばかりいるあなたを

改札に残して

電車の中に飛びこんだ。


はやく。


はやく。


電車がホームを離れても

あなたを見ない。


雲が切れて

光が差して


見慣れた電車の窓を

明るく照らしたから

急にこわくなって


あなたが大好きだった

虹を見ないように

目を閉じる。


つり革に

ぶらさがって

旋律をなぞり

ただ前後に頭をゆらす。


誰かにうなずくみたいに。






ちょっとそれどころじゃない事情などありまして

ブログをお休みしていましたが

又、少しずつ書きはじめたいとおもいます。


元気です。


昨日

「ティファニーで朝食を」のDVDを観ました。

意外と有名なものを観ていないのです。

泣いてしまいました。




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2010-09-10

不動

テーマ:喪失

あなたが ここに

目の前にいるなら

わたしは

いつまででも見ていられる。


シャツをたたむ姿も

髪をととのえる姿も


それが

わたしのもとから

出て行くあなたの

姿だったとしても


だまって

何時間でも

みつめられる。


はやい鼓動みたいな

靴の音。


蹴られたら

痛そうなつま先の形。


わたしなんか

見えないみたいに

わたしなんか

いないみたいに


裸足に靴を履いて

部屋の中を

行き来するあなたを


ベッドの端に

ひざをそろえて

シーツを巻いた

裸のままで


静かに微笑んで

待っているみたいに。


所有を

望むなんて罪の

ためいきと

舌打ちの罰を。


ただ眺めたいだけ。


美しさを

目に焼き付けたい


だけ


なら


いい?





いくつになっても

慣れないものはあります。



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2010-09-05

残暑

テーマ:喪失

愛しているふりは やめろ、と

男は、わたしを突き飛ばした。


ああ、

これからが良いところだったのに。


悪い兆候はあった。


笑わなくなったり

話さなくなったり

感じすぎたり


いつからだろう。


長い眠りの後で

からんだわたしの髪を

男が時間をかけて

櫛で梳いたりし始めたのは。


うなじ。


日に焼けた肌の中で

白い。


長い髪は

時々

男の手で束ねられ


わたしの頚動脈と

細い呼吸器官は

その目の前で

薄い皮膚に覆われているだけだ。


ふりなんてしてないよ、

そういえば

嘘つきにならない。


愛してないし、

ふりもしてない、

そこまで言えば

ただ愚かに見えるだろう。


ああ

今日こそ

アレをさせようと思ったのに。


お互いのパートナーの

名前を呼んで

秘密の場所をひとつづつ

教えあって


それなのに男は

あんなに遠くで


わたしの夢、を

ふたりの夢、なんて

言い換えて怒っている。


終わりのある暑さ。

予測できる終わり。


悲しくない。

少しは 惜しい。





体がかたいので

運動は好きだけれど

ヨガが苦手でした。


最近ジムで

バレトンをするようになって

少しヨガの動きも気持ちいいな、と

思うようになりました。


わかっていたことだけど

体の左右って歪んでいるんだなって

思ったり…。



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2009-09-05

かなしい

テーマ:喪失

どこへもいけないから

かなしい。


こうして

ここで

待つしかない。


伸びた髪を

ぬれた

そのままにして。


心の底で

最初から

わかっていたはずだ。


いつも

正しさに従うのは

やさしい。


与えられた

正しさには

何の責任もなくて


わたしはただ

あなたを

責めていれば良かったのだから。


最後に見た

あなたの目。


ゆるせないのは

わたしではないのに


小声でどなる

あのひとたちなのに


みぐるしく

わたしに

うそをつくのは

どちらか知っていたはずなのに。


たちのぼる白檀の香り。


近づく判決のとき。


見えないほどのスピードで

ゆっくり

髪はかわき


わたしは

自分を

指で梳くこともせずに


ただ

ここで

待つしかない。






なかなか前のペースに戻れず

ご心配をおかけした方々

ごめんなさい。


元気です。


良いこともありました。

この前

ある文学賞で1次選考通ったんです。


嬉しいな。




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2008-09-26

エレジ

テーマ:喪失

 
  彼岸花 川
 


2本の影は

色づいた

落ち葉の上に。


まっすぐで

まじらない

ふたつの想いが立ちつくす。


別れの伴奏に

バイオリンや

ピアノの旋律はなくて


ただ


どこかの路地裏で

途方にくれた猫が

気のよさそうな声で

高く鳴いている。


あなたは行ってしまう。


いつだって決めるのは

あなたひとり、だ。


今、予告された別れ。


あなたのための。


それまでの時間を

笑って

すごせというのだろうか。


ユウイギ?


有意義な愛なんてない。


結局は


名前のつかない

それだけの関係だったと

はっきりと告げられるより

つらく


わたしは

うなだれて


まだ どう作ろうか決まらない

最後の

自分の表情をかくすだけ。


両手の指先で

上着の

ポケットをさぐる。


必死に

なにかを さがすふりをする。


なにも

ない。







オフコースの

「秋の気配」という曲が好きでした。




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2008-09-05

トライアングル

テーマ:喪失

そんなつもりじゃない

なんて、嘘。


いきなり向けられた

悪意に


わたしがなにを

なぜわたしを


とまる思考


高まる鼓動


悲しみよりも

驚きが

彼女への反撃の

チャンスを奪う。


ああ

こんなにも太く

ささっている。


静かな

傷口から

ことばをぬいて


せめて

できれば

あなたを恨んで

彼女を許そうと こころみる。


ひより。


わたしの名前をよぶ

あなたの声は

優しい。


視界の隅でそっと

気づかれぬように

あなたの指が

彼女の指からほどかれる。


勝ち負けじゃない


貸し借りもできない


おんな同士で

お互いの髪をつかみあい

あなたの周りを

ぐるぐるまわっても


あなたはきっと

ポケットに手を突っ込んで

空をいく雲に

ためいきをつくだけだろう


許されたい


あなたたち以外の

だれかに

許されたい


声をあげて

叫びたい


そして

こんなことが

もうおしまいになることを


ひざまずいて


泣かないように

顔をあげて


いのりたい






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2008-07-18

苦しみを消すために

テーマ:喪失

    
    湾岸部


はじめて だったからだよ、と

その人は言った。


別れた彼を思うと

苦しくて苦しくて

たまらないのは


彼が君の

はじめての

人だったからだよ、と。


嗚咽はとまらない。


 忘れよう。


その人の声は

やさしくて


その人は

とても大人で


彼とは違うやり方で

丁寧に

わたしを塗りはじめた。


内側も

外側も

塗りつぶされて


ようやく

別の自分になれたころ


さよならでもなく

後ろ姿も見せずに

今度はその人が

行ってしまった。


 忘れてごらん。

 僕のことも忘れられるはず。


道端で

声をあげて

泣き続ける。


その声を

誰かが

また聞きつけてくる。


誰の声も

やさしくて


誰のセリフも

みな同じで


教わった忘れ方を

繰り返すたびに


愛しかたも

その笑顔も


だんだん

区別が

つかなくなっていく。


何度も

塗り重なった肌は厚く

わたしを守って


もう

誰の不在にも

傷つけられない。


名前もいらない

オトコの隣で

浅い眠りから

さめるとき


折り重なった

記憶の中から

突然

よみがえる。


具合が悪い

わたしの額に

重ねられた額の


熱をはかる

そのオトコの

唇の触れない

至近距離の


息遣い。


どこか

深い場所から

そっと

取り出して


消えないよう

大切に


その記憶を

しゃぶる。


誰の額だったかは

もう

知らない。







「顰蹙文学カフェ」を読む。

顰蹙を買いたい。

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2008-06-27

無知

テーマ:喪失


  爪と海


知らないことの罪は重い。


あなたが

じぶんの持つ刃の

その力を知らず


わたしの

悦びと痛みを

ささやきとあえぎを


ながいこと

まったく

取り違えていたとしたら


仰向けに横たわり

目をとじるわたしの横で


あなたが

泣いているわけが

わかるかもしれない。


風がゆらす

わたしの前髪。


自己嫌悪

自己憐憫

そして

自己愛


傷つけたことがつらいと

泣くくらいなら


あなたが

わたしに刻んだ

その同じ傷を


あなたの胸に

つけさせてほしい。


あなたを

えぐる

わたしの刃で


同じ深さの傷を

刻めというなら


もっとわたしを

想ってください。


わたしが

あなたを想うくらい

深く


心ごと

からだごと



強く。









睡眠不足の日々。


やりたいことがありすぎる。

あきらめたくない。

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2008-05-16

閉じる日

テーマ:喪失

   
  赤黒蕾ひなげし


自由、を感じるとき

ひとは

孤独ではない。


誰か、を

ほしがらなくても

わたし、が

いるから。


あのとき

ここにいる、と

決めたけれど


ずっと

ここにいる、と

約束はしていない。


あなたが告げた

わたしに

理解されない苦しみ。


わたしがかくした

あなたを含む世界が

理解できない悲しみ。


愛することで

縛られていく自分に

こうしてまた

少しずつ飽きていく。


ああ

あそこには風が吹いている。


草原の青い風を浴びて

はだしで立っている子どもは

孤独だろうか。


あなたのとなりで

はだかで震え

寝返りもうてないわたしは

孤独だろうか。


かきおきに

一行、

「孤独で」と書いてみる。


白い余白の大きさで

あなたの

心を傷つける。


あなたが

けして

追いかけてこないことを願って


体も

心も

かたく閉じる。





最近

なぜか

「赤」に惹かれます。

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