再会 | ひより軒・恋愛茶漬け

再会

唇に指をあて

し、と言う。

暗い部屋に慣れた目で

あいまいな輪郭を

だきあって

私たちは、耳をすます。

秒針。

鼓動。そして

厚いカーテンのむこうに

置きざりにしたものの

気配がする。

私のおびえを

なだめて

鎖骨に触れる指先。

細い髪の

毛先ほどの優しさで

滑り降りていく

意外にも繊細なあなたの先端。

大人になったね、と

あなたは

さっきから何度も。

朝なのか夜なのか

会わないうちに

こんなふうに

たくさんの時が流れても

あなたの前では

こども、だよ。

せんせい。

あなたも

変わらない。

夕日さす教室で

つよく

私をぶった

あのときと同じ

泣きそうな目で

静かに。

私から

けして

目をそらさずに。

その人の前では

ずっと、こどもです。

子どもでいたいのです。