僕の更新 | ひより軒・恋愛茶漬け

僕の更新


       ブリッヂ



とつぜん

君を見つけた。


なつかしい

海の見える公園で。


海風になびく髪。

肌を焼く

強い日差し。


逆光になった

君の笑顔を

遠くから盗み見る。


気づかれない

距離を

慎重に測って。


木陰で

はげしく

蝉が鳴いている。


隣にいるのは

たぶん

僕の知らない

君の大切な人だ。


声は掛けない。


君に

会えない日々は

僕が

弱くなっていく日々で。


どんな自分にも慣れる。


それは


どんな自分にも成れる、と

同じくらいに

本当だった。


もう

何もかもわりきる。


そう

思っていたはずの

自分が


じっとりと

シャツの背中を

汗で濡らしながら


驚いたことに


まだ

君に与える

印象なんかに

執着している。


まぶしい。

目を閉じてしまいたい。


君の中の僕を

更新しないまま

僕は

きびすを返し


水平線くらいの

ゆるやかな曲線で


心の中の

昔の自分と今の自分の境界に

はっきりとした

ラインを引き直した。




雷が鳴っています。


昔は

稲光を見るのが好きでした。

今は

子供に止められます。