2007-08-31

儀式

テーマ:シアワセのかたち

お兄ちゃんの見たことのない表情が怖くて目をふせた。


かすかな息遣いが近づいてくる。

枯れた夏草の香り。

それから熟れた花のような。


月の明かりが二人の影を土の上に柔らかく落としている。


だれにも内緒だよ。


お兄ちゃんの細い指がわたしの黒い髪を耳にかける。

まっすぐな髪は汗をかいて、いつもより少し湿っている。


ああ、見られている。

わたしの赤く染まった耳たぶ。

笑われることがこんなに怖い。


自分の未熟さが恥ずかしくて、

お兄ちゃんの手がそっと肩に置かれても、

まだ目をあげることができない。


  あの子とは、つきあっちゃだめ。


おかあさんはお兄ちゃんが嫌い。

いいつけを破る。悪い子になる。

わたしを、お兄ちゃんが抱きしめてくれる。


お兄ちゃんの柔らかい唇。

上の唇と下の唇で、熱い耳たぶがそっと挟まれる。


いや。


くすぐったいのに泣きたい。


  黙れ。


お兄ちゃんが小さく囁く。

一瞬はずれたお兄ちゃんの唇が

今度はわたしの首筋に押し当てられる。


痛い。


お兄ちゃんは、わたしを離さない。

それから、ふっと気が遠くなる。

立っていられないと思う。

お兄ちゃんに抱きかかえられるようになる。


  これで本当の兄妹になったよ。


終わった後のお兄ちゃんの言葉に、

わたしは大粒の涙を流す。


あと何をしたら恋人になれるの?


初めて

泣きじゃくるわたしの唇が

濡れたお兄ちゃんの唇でふさがれ、

幸せな戸惑いとともに、

血の味が口の中へひろがっていく。甘い。






「夜想」+旧「幻想文学」で

吸血鬼のテーマの公募があったので

書いてみました。




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2007-08-25

はちみつ

テーマ:喪失

透明なビンに閉じ込められた

かたちのない想い。

いつも

かたく口を閉ざして。


匂いさえ

もらさない。


光をあびて


昼間の夢にも

誰かを思ったりしないのは

当たり前になるくらい

ずっとひとりだったから。


汚れた他人の指で

かき混ぜられるなんて

ごめん。


そんな

やわらかな

内側は

ほしくない。


ほしいのは
遠くの思考。

文字になった感情。


ただ距離をとる

弱い生き物の

防衛本能を借りて


ゆるぎないかたさの

自分という幻を

まもる。


だれかが

たすけてくれるわけじゃない。


いつか


力任せに

ふたは

ねじ切られ


もしくは

かたい床に

たたきつけられ

外気に触れて


ながれさることも

蒸発することも

ゆるされないわたしは


べたべたとねばり

甘い香りを放って

誰かの複雑な表面を覆う。


ざらざらとした

ぬれて

かわいた


オウトツのある

かたく

やわらかい場所から


自分が

自分でないものの中に

溶けて消えていくのを


感じる。


その

あたたかさ。


思わず

声をあげるほどの

心地よさに

目を閉じる。


微笑み

のかたち。


守りたかったものの

記憶は

もう、ない。









実は

ホラー映画が結構好きで

なかでも「呪怨」シリーズなど大好きなのですが


先日

清水崇監督と数人でお会いし

お話を聞きながらお酒をいただくという

夢のような機会に恵まれました。


サム・ライミとの話など

ちょっとネットでは書けないのですが

お話はとても楽しく

ますますファンになってしまいました…。


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2007-08-17

こたえる

テーマ:大切なモノ

   
狭間
 


優しくしないよ、と

あの人が言ったから

わたしは唇をかんで

覚悟をきめたのに


あれは

きっと

わたしの何かを

確かめるための言葉だった。


繊細な角度で

そっと

差し出された

あのひとの想いは


無表情な外見とは

ずいぶんと違って


やわらかく

あたたかく

わたしに触れた。


あのひとのおびえ。

同調する

わたしのふるえ。


互いに

誰にも見せない姿で


かわす

本当の温度の

そらさない

まっすぐな感情。


すべて終われば


わたしが

望んだことだったのに

あのひとは きっと

ありがとう、と言うだろう。


初めて

しっかりと

この目をみつめて。


泣かないあのひとの

大きな痛みに

涙を流す

わたしの。






そばにいて

かわりに泣くことしかできません。



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2007-08-10

酔芙蓉

テーマ:開かれたマド

赤くなるわたしを見る

笑わない

あなたの目。


そっと

触れさせた

わたしの端の


誰かのものではない

部分で。


強い日差しのせいでも

いかがわしい

誘惑のせいでもなく


自らの意思で

変わっていくなら

ひとは

罪悪感を感じない。


わたし、という

いとおしいもの。


あなた、という

あらあらしい風。


この短い季節に


たとえあなたが

あの人の大切な友人でも

たとえわたしが

あの人の最初の恋人でも


青い空が

満天の星が

もういちど訪れた

新しい空が


苦しいくらいに

美しいから


あのひとには

けして

謝らない。


汗が流れる。

目にしみてくる。


あなたも

わたしも


せいいっぱい

手を伸ばして

お互いのまぶたをぬぐい続ける。



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2007-08-04

待つ場所

テーマ:シアワセのかたち

泡立てたスポンジで

おそろいの食器を

洗いながら


日が差す居間で

男ものの

洗濯物をたたみながら


あなたのことを考える。


いつもの

でかけて行くときの

スーツの広い背中。


見つめても

けして

振り返らない視線。


その先に綺麗な

あのひとが、いる。


ラジオをつけて

新聞をひらく。


遠くに学校のチャイムの音。


よみがえる


ガタガタなる机の

こすれる床の

軽いゴム底の靴の。記憶。


いまは


人の群れの

うっとうしささえ懐かしいほど

遠く。ひとりで。


最初から


気がつけば

あなたが目の前にいて

見つけたよ、と

わたしの耳元でささやいて


わたしは

ただ

うなづくだけだった。

待つだけで

訪れた幸せが

あまりにも怖くて


録画したい番組に

しるしをつける。

安売りの広告を

半分に折る。


あのひとが知らないはずの

あなたの好きな料理を作って


今日も

明日も

ずっと


わたしは

待つことしかできない。


あなたを


あなたの心が

帰ってくるのを。



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